安倍政権はただちに増税結を宣言せよ!!

◆文:大高 正以知

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「国が暴落する」は財務省がつくった神話

ついにご指南役からも〝待った〟がかかった。

安倍晋三首相が経済政策を決める際の、唯一で最大の拠りどころとしてきた浜田宏一内閣参与(米国エール大学名誉教授)が、来年4月に消費増税を実施すると、

「景気は一気に悪化するだろう。増税直後の4~6月期の実質成長率は、約5%減と景気を冷え込ませ、法人税などが落ち込み、トータルで歳入が減少する可能性が極めて高い」

と、全国紙のインタビューに答える形で明言したのである。

 

これに慌てたのが、言わずと知れた財務官僚だ。麻生太郎財務大臣や甘利明経済再生大臣をはじめ、財政再建派(増税派)議員らの尻を叩いて回り、何とか既定路線(2014年4月に8%、15年10月に10%に増税)を堅持しようと躍起になっているのだ。彼らの言い分は概ねこうである。

─もし今、増税を見送ったら、国債が信認を失い暴落する(長期金利が上がる)。

 

チャンチャラおかしいとはこのことだ。経済のケの字も知らないおバカ議員らの口を借りて、国民を誑(たぶら)かそうという魂胆が見え見えなのである。現に浜田氏も、これに対しては相当憤慨しているようで、

「消費税を上げようと上げまいと、インフレ期待が強まれば長期金利は上がるものだ。増税をしなければ国債が信認喪失するというのは、財務省がつくった神話で非科学的だ。IMF(国際通貨基金)なども同様の指摘をするが、それはそこにいる財務省出身者が、そう主張しているからだ」

と、一刀両断である。ということでこれまでも小誌は、消費増税に反対の声を何度も上げてきたが、今一度しっかりと理由を添えて、その姿勢を明確にしておきたい。

 

 

人間の心まで荒んじまったよ!

小誌が消費増税に反対する理由は、大きく言って二つある。一つは計量経済学から見た基本的な政策の問題で、今一つは中小零細企業の現状から見た、毎月の深刻な収支の問題だ。

計量経済学といっても、専門的な難しい話ではない。「総供給」と「総需要」の関係で好景気か不景気かを見る、経済のイロハの話だ。ご案内の通り、これまで長く続いてきた不景気の原因をひと言で表すなら、20兆円とも30兆円ともいわれる大きなデフレギャップ(総供給>総需要)である。言うまでもないが、総需要は消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)だ。とすると、このデフレギャップを解消し、総供給>総需要の状況から、総供給<総需要の状況に変えるには、消費、投資、政府支出、貿易黒字のどれか、または全部を増やしてやればいいことになる。

 

アベノミクスの三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間の投資を喚起する成長戦略)は、まさにそのための経済政策だった筈だ。黒田(東彦)日銀が打ち出した事実上のインフレターゲットも、10兆円を超える補正予算も、安倍首相がこの秋に提出すると言った投資減税法案も、すべてそのための政策だった筈である。

それなのになんで今、一方では肝心要の消費を冷え込ませる、天下の愚策を強行しようとするのか。ちょっと賢い子供なら、おそらく小学生でも首を傾げるに違いない。

 

しかし本当に首を傾げているのは、中小零細企業の経営者たちだ。筆者が取材した東京台東区のある皮革製品製造業者は、声を絞り出すようにしてこう言う。

「冗談じゃないよ。何がアベノミクスだ。円安で原材料はベラボーに上がるし、配送に使う車の燃料費だって半端じゃないんだよ。その一部だけでも価格に乗っけられればと思ってさ、あるお客に交渉に行ったら何て言われたと思う? 苦しいのはウチも同じだ。価格を上げると言うならもう来なくてけっこう。カバン屋はお宅だけじゃないんだから。これだよ。親の代から付き合ってきたお客だよ。人間の心まで荒(すさ)んじまったよ、まったく」

 

今現在でさえこの調子である。この人たちを更に苦しめて、財務官僚や財政再建派と称する先生方は、果たして心が痛まないのだろうか。

最後に、ある民間の研究機関が算出した貴重なデータを紹介しておきたい。

消費増税の根拠となっている、「社会保障と税の一体改革法案」の付則第18条(景気弾力条項)を仮にクリアした(名目で3%の成長率を達成した)ら、税収が今年度は約3兆9000億円、来年度は約4兆3000億円増えて、総額で約52兆円になるという。一方で、消費増税の実施を前提に、政府が1年前にまとめた「経済財政の中長期試算」によると、同年度の一般会計税収必要額は51兆5000億円とある。早い話が、やるべきことをちゃんとやれば、消費増税は要らないというわけだ。いずれにしても安倍政権が本当に景気を回復させる覚悟なら、消費増税は秋といわず、今ただちに凍結を宣言すべきである。

 

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