日本青年会議所(以下「JC」)といえば、若手の経営者や役員が全国で集まっている組織である。しかし、その実態を知る人はあまりいないのではないだろうか。実は、日本JCは1949年に設立された組織で、青年会議所のOBには中曾根康弘氏・小泉純一郎氏・小渕恵三氏などの歴代内閣総理大臣や、ウシオ電機の会長 牛尾治朗氏、セゾングループオーナー 堤清二氏など、そうそうたる顔ぶれが名を連ねている。

JCとはどんな組織で、今どんな活動に力を入れているのか、日本青年会議所の2019年度 第68代会頭 鎌田長明氏にお話を伺った。

 

―JCとはどんな組織なんですか?

 

JCとは、若手のビジネスパーソンが集う全国に694ある組織です。割合としては、経営者が37%、取締役員が39%、管理職が11%、一般社員が8%、その他が5%。経営者の中には創業者もいれば事業承継者もいて、創業者が11%、2代目が36%、3代目以上が33%を占めています。私自身は創業者でもあり、もうすぐ創業140年を迎える老舗企業の後継者でもあるんですよ。今年度、日本青年会議所のトップである会頭をつとめています。

 

―JCに加入するとどんなメリットが得られるのでしょうか?

 

3つあって、ひとつはコミュニケーション能力やマネジメント能力など、さまざまな能力が身につくことですね。会社経営はお金で人を動かすものですが、JCはボランティア団体なので、ボランティアの人たちをいかに動かせるかが問われるんですよ。熱心に活動をしているとお金以外のモチベーションが生まれるのですが、お金以外のモチベーションで動く人ほど良いパフォーマンスができる人はいないなと感じています。

2つめは、人のつながりですね。JCは日本全国に組織があり、さまざまな業界・業種の人がいますし、世界の青年会議所ともつながることができます。

3つめは、コラボレーションができること。JCはいつも何かを変えようとする運動をしているのですが、さまざまな人を巻き込んで自分の目指す目標や方向性を理解してもらうことが非常に大切です。特に組織を変えていかないといけない2代目・3代目の方には非常に重要なスキルが身につくと思いますね。

 

―もともとJCメンバー間でのビジネスは推奨されなかったんですよね。鎌田会頭が方向転換されたんですか?

 

もともとJCは、国内経済の充実と国際経済との連携を掲げてできた組織ですが、その後経済が発展するにつれて、経済やビジネスの話をしなくなっていきました。しかし、近年日本は再び経済が立ち遅れているのではないかという危機感を持っています。実際に、GDPでいうと中国に2倍、アメリカに4倍もの差がつけられているので、もう一度経済を立て直す必要があると思うんです。

なので、メンバー間でコラボレーションすることによって新しいビジネスを生み出そうとしています。それをJCの中では「創始の精神」と呼んでいます。

 

―JCでは今、具体的にどんな活動をされているんでしょうか。

 

今年重点的に力を入れているのが、中小企業へのSDGsの普及です。SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことで、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で提唱されました。

もともと、JCはアメリカJCに所属していたロックフェラーが、今の国連本部のある土地を寄付したところから、JCと国連は非常に深いつながりがあるんです。それ以来JCは国連と密接に連携を進めているため、JCでも2016年ごろからSDGsに取り組み始めました。今はSDGsを推進する企業を3000社まで増やすのが目標です。

 

―SDGsを推進しようとする企業にはどうなってもらいたいですか?

 

SDGsには17個、具体的には16個の目標が設定されていますが、その16個の中で、自分の会社で何をやりたいかを見つけてほしいのです。しかし、SDGsの中であれば、貧困問題を解決することを目標としてもいいし、CO2排出量の削減を目標にしてもいい。

メンバーには今世界で起こっている問題を自分事として捉え、ひとつでも目標を設定して、その実現に少しでも近づけるよう努力してもらいたいんです。今まで企業のゴールと言えば、利益を上げて株主に配当という形で還元することしかありませんでした。しかし、近年はSDGs経営が投資家からの企業に対する評価軸にもなっているので、ぜひ熱意をもって取り組んでもらいたいと思います。

 

―JCには何歳くらいから入るのがよいのでしょうか。

 

JCの加入資格は20歳~40歳までですが、できる限り早めに入った方がいいですね。というのは、仕事をする傍ら、さまざまなJCの活動を経験しようとすると10年くらいかかるからです。

JCは若者が自分のしたいことにいろいろチャレンジできる上に、それを助けてくれる方も周りにたくさんいるので、その方々とのつながりができるという点でも、加入する価値は十分にあります。最近は特に20代の会員が少なくなっているので、積極的に加入をご検討いただければうれしいですね。

 

―この夏、日本青年会議所で大きなイベントを企画されているそうですね。そのイベントについて詳しく教えていただけますか。

 

日本青年会議所では、毎年夏に「サマーコンファレンス」という政治経済に関する会議を行っていて、我々の取り組みを共有する発表会のような場になっています。しかし、25回目を迎える今年はいつもと趣向を変え、「ワールドSDGsサミット」と称して、展示場も借りてSDGs推進に寄与するような大規模な体験型イベントを行おうと計画中です。

 

JCは世界的な組織なので、世界中に提携団体や企業があります。その方々をお呼びして、全国から参加しているJCのメンバーと交流できる場を用意し、パートナーシップを構築していただこうと考えています。JCの組織は全国の自治体をほぼ網羅しているので、市町村にアプローチしたい協力団体・企業の方にとっても、このイベントは最適な機会になると思いますね。

一般来場者の方は例年1万4000~5000人くらいですが、今年は2万人を突破するのが目標です。この記事をご覧の皆様、ぜひ同僚の方々やご家族をお誘い合わせの上、ご来場ください。

 

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【プロフィール】

鎌田長明(かまだ たけあき)

1980年 香川県高松市生まれ。2003年 東京大学経済学部卒業。

2004年株式会社情報基盤開発を創業し、代表取締役社長を務める傍ら、家業である鎌長製衡株式会社を継ぎ、代表取締役社長として経営を担っている。公益社団法人高松青年会議所に所属し、2019年に公益社団法人日本青年会議所第68代会頭に就任。

 

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