大事なニワトリを殺してどうする
大事なニワトリを殺してどうする
鳩 A 「お~い、ニワトリ君。どうしたんだよ、そんな難しい顔をして」
ニワトリ 「ん?ああ。お前たちか。どうしたもこうしたもないよ。懇意にしてたメッキ工場が倒産しちまったんだ、資金繰りに詰まって」
鳩 B 「ま、この春いっしょにお花見に行ったあのメッキ屋さん?可哀そ。でもあのときは忙しそうだったじゃない。それがどうして?」
ニワトリ 「ちょっとくらい忙しいからって、マンネリ化した資金ショートが一気に解決するってわけじゃないんだよ。内情は相当苦しかったみたいだ。要するに黒字倒産だな」
鳩 B 「銀行は助けてくれなかったの?」
ニワトリ 「へん。助けるどころか貸し剥がしだよ。返済条件の変更要請を拒否したらしい」
鳩 A 「そっか。例のモラトリアム法が終わったからだ。でもそんなに気を落とさないでよ。空から見てると分かるけど、景気はだいぶ良くなってきたみたいだよ」
ニワトリ 「バカ。逆に空から見てるから分からないんだ。下に降りてきてこの近所を歩いてみな。どこも青息吐息だよ。まったくお前たち評論家は幸せな人種、もとい鳥類だな。自分じゃ何も生産しないくせに、能書きばっか垂れてオマンマが食えるんだから」
鳩 B 「ニワトリさん。その言い方はちょっと酷いんじゃない? じゃあ聞きますけど、アナタは何を生産してるって仰るのよ」
ニワトリ 「卵だよ。それもお前らが産む卵と違って金の卵だぞ。その金の卵がだな、この国の雇用を生み、消費を生み、設備投資を産むんだよ。つまりオレたち中小零細のニワトリ族が、この国の経済を支えてるってことだ。それなのに何だ。大企業とか金持ち鳥類向けの政策ばっかり出しやがって。おまけに消費税増税だと?そんなもんどうやって転嫁すんだよ。しかも今月から年金は減るし、消費税と併せて年寄りの病院代も上がる。ウチには年寄りが3人もいるんだぜ。やってらんないよ。オレたちニワトリ族を殺して、国はどうするってんだよまったく」
鳩 A 「そ、そう言えばそうだよね。じゃあもうこの話は止めて、一杯飲みに行かない? 浅草寺に美味い豆を食わせる参道があるんだよ。なんだったら君の好きなトウモロコシとかキャベツも用意するよ」
ニワトリ 「ケッコー、ケッコー、コケッコー」