日本の三十歳にパワーを!「三十路祭り」に集まるエネルギー
日本の三十歳にパワーを!「三十路祭り」に集まるエネルギー
◆取材:加藤俊/文:菰田将司
三十路祭り実行委員の皆さん。ピースサインかと思いきや…
成人式の三十歳版「三十路祭り」。近年、20歳と同じように30歳を祝おうというイベントが全国で行われるようになり各地で盛況を博している。
特に、来年1月に東京で開催される「三十路祭り」は、他にはない規模の大きさと、高い目標意識を持っている。目指すは成人式同様の国民行事化。
「三十代をどう生きたかで人生は決まる」
毎年全国の自治体で行われている成人式にどういうイメージを持たれているだろう。毎年ニュースで繰り返し報道される「荒れる新成人」の姿に、眉をしかめている人も多いのではないだろうか。
そもそも成人式は、戦後まもない1946年に、埼玉県の蕨市で行われたのが最初と言われている。
「戦後、日本に元気が無くなっている時に『日本に活気をもたらし復興へと導くのは若者だ!』という思いから青年達が自ら立ち上がり成人式は始まったんです。
それが多くの人の共感を集めて、全国に広がっていったんです」と、MISOJIMATSURI 1986-1987実行委員会代表のはるかさんは語る。
以後、「新成人が大人になったことを自覚するための行事」として成人式は国民行事化。
しかし、そんな意義で始められた成人式だったが、近年では参加者の意識は変化して、最近の調査では「友達が再会する『同窓会』のような」意識で参加する者が三割以上を占め(横浜市教育委員会調べ)、結果、これから成人を迎える高校生たちからは「内容に興味がない」「参加したくない」という意見が多く聞かれるようになっている(同調べ)。
「二十歳でやる成人式は、まだまだ実社会に足を踏み入れたばかりの、年齢としては『成人』の集まり。けれど、成人式の後は還暦まで周囲から祝ってもらえる機会って無いんです。
だからこそ、社会を経験して、人生の難しさや楽しさを知って『社会的成人』となった三十歳の節目にもう一度集まって、ひと区切りしてもらう。自分の二十代を見つめ直して、これからの三十代をどう生きるかを考える。
どうしたらもっと幸せになれるか、どうしたら人を幸せにできるか、そのヒントが見つかる場にしたいです。そうすれば日本の三十代の人生はもっと充実するのではないでしょうか」(はるか代表、以下同)
そう話す運営団体の代表のはるかさんは、自身も勿論三十歳。彼女がこの役割を引き受けたのは今年の夏だった。
「三十路祭りの運営委員は毎年、三十歳になるその代のメンバーに入れ替わります。来年はこの人にやってもらおう、とバトンタッチしていくんです。私も1学年上のあるメンバーに紹介されて加わりました。
現在約70名になった運営メンバーも同じように、そのほとんどが紹介で集まってきています。本格的にメンバーが増えてきたのも今年の6月以降のことです。
最近では、『三十路祭り公式ホームページ』を見て『ぜひ実行委員をやりたい』と参加してくれる三十歳もいます。私たちの思いへの共感の輪が広がっていることをとても嬉しく思います。全く面識のない三十路が集結する。各々のバックグラウンドが異なるからこそ、『三十路祭り』は進んでいけるんです。
社会人としての職業経験があるから専門技術やノウハウを活かせる。例えば、映像制作の会社をやっているメンバーがCMを作ったり、広告代理店で働いているメンバーがスポンサーを募ったりしています。
また、人生経験の中で培ったそれぞれ独自のコミュニケーションの図り方や思考の仕方があり、それが組織運営で重要な役割を果たす。本当にみんな多彩です。
唯一の共通点は、年齢が同じ三十歳ということ。ただイベントを成功させたいという一心でやっています。先週も朝までファミレスでミーティングしていましたよ(笑)」(はるか代表)
北は北海道から南は九州まで、生まれたところは違えども、今は同じように関東で仕事をしている同年代が集まる。実行委員もそうだが、三十路祭りはそんな様々な人が「同じ歳」という共通点で集まる、そのこと自体に価値がある、とはるか代表は言う。
「同じ会社に勤めていたり、飲み会で知り合ったり、出会いは色々あると思うのですが、ピッタリ同年齢が出会うことって珍しいですよね。同年齢なら、共通で楽しめる話題があって、同時に、三十歳ならではの共通の悩みを持っている。互いに共感できるポイントがとても多いと思います。
三十年間の人生で得た幸せや楽しみを分かち合う。さらに仕事やプライベートの悩みも共有し、解決の糸口を見つける。そしてさらに前を向いて進む。そのために同じ年齢を集合させるんです」
三十歳同士を繋げる
「三十歳は、女性としては『もう三十歳』、男性としては『いよいよ大人としてしっかりしないとな』と思う年齢だと思います。自分の人生をもう一つステップアップさせたいと思いながらも、どこか諦めを感じ始める年頃だと周囲を見ていて思います。
仕事である程度のポジションに就いているけれども、『じぶんはこの程度までか』と疑問に思う気持ちもある。そんな、微妙な年齢ですよね」
「だから、まだまだ三十歳はやれるんだ!ということを再認識できるイベントにしたいんです」と話すはるか代表。では、具体的にどのような内容のイベントにしたいのだろうか。
「私たちが三十路祭りを行うことで、対等に対話できる新たな仲間ができる機会を提供できます。例えば、新たなビジネスに繋がるような出会いがあったり、故郷が一緒と分かったら東京での同郷人会を作るきっかけにもなったり。
フリーターをしている三十歳が、同じ年で経営をしている人と触れ合って、自分も起業しよう!なんて思ったりするかもしれませんね。転職や保険の相談・資産運用に関するブースも設ける予定です。
他にも、ご夫婦でどちらかが三十歳なら家族揃って参加可能にしています。三十歳の新米パパ・新米ママ同士が繋がれば、精神面でもより良い子育て環境を作れるのではないでしょうか。特に首都圏では子育て世代の平均年齢は高いですしね。
また、家族連れで来ている様子を見て、自分も家族が欲しい!と思い立って、恋愛・結婚のブースを覗きに行ったり、というのも面白いかもしれません。自分を見つめ直す場であると同時に、そんな屈託の無い出会いの場にもしたいと思っています」
当日の賑やかな様相が目に浮かぶようだが、ビジネスの面ではどのような構想を持っているのだろうか。
「現在、3000人ほどを集客する想定でいます。会場は東京ビッグサイト。同じ年齢の人が3000人も集まることはとてもレアなケースだと思っているので、それに興味を持ってくれる企業をスポンサーとして募集しています。
転職エージェント、ヘッドハンティングの場としても使っていただきたいし、三十歳に見てもらいたい商品のプロモーションの場にもなる。協賛していただける企業はまだ募集しています」(はるか代表)
当日の会場では某有名お笑い芸人を招いてMCをしてもらい、鏡割り、アーティストライブなど様々な企画も用意しているそうだ。
「共通の趣味、出身が同じなのに出会ったことの無い人たちが、フラットに出会える場を作りたい」という思いが、徐々に形になりつつある。
実行委員によるミーティングの様子
見えなかったモノに気づくチャンス
メジャーリーガーのダルビッシュ有や、サッカー選手の長友佑都や本田圭佑、芸能人では沢尻エリカや上野樹里、北川景子、石原さとみなど錚々たる人々が、今年三十歳を迎える。
そんな彼らと同級生である彼らが、このイベントをやろうとしたきっかけは何なのだろうか。
「三十代に希望を持ちたい、という気持ちがまずあります。私たちの世代は、好景気の時代を知りません。学生の頃からずっと不況だと聞かされ続けていて、社会に出てみても、周りに行き詰まり感がつきまとっている。自分の同年代も、これが限界、と思っている人も多い。
けれど皆、心の中ではこれで頭打ちになりたくないって思っているんです。その意思を行動に移すきっかけづくりがしたいです。皆で背中を押し合いたい」
1月第3週目の日曜日は「三十路の日」
実はこの「1月第3週目の日曜日」は昨年、日本記念日協会から「三十路の日」として認定を受けた。今年三十路まつりは1月が第一回で、来年は第二回の開催となる。
「今後は本家の成人式と同じように、全国で恒例行事として続いていくものにしたいですね。 毎年この日に開催してもらえるように。
けれど、今行われている二十歳の成人式とは違い、三十路祭りは、今まで生きてきて気づかなかったモノ、今までの価値観をひっくり返すような発見に出会えるような、そんなイベントにしたいと思います。
行ったら人生を変えるような何かに出会える、だから三十歳になったら必ず参加する! 親御さんに『今年三十歳になるんだから三十路祭りに行きなさい』と言われるようなイベントにしたいですね」
……彼らが生まれた1986 年は「写ルンです」や「ドラゴンクエスト」が発売され、上野動物園ではパンダのトントンが生まれ、落合博満とバースが三冠王を獲った年だ。
そんな年に生まれた世代が今、社会の第一線で、周囲の期待や不安な世相に押しつぶされそうになりながらもさらに成長しようと戦っている。
足搔き、苦しみながらも、より良い未来を築くビジョンを確かに描いて彼らはもう一歩、前に踏み出そうとしている。
三十路祭りでは現在クラウドファンディングで資金集めを行っている。ぜひ、下記ページをご覧いただきたい。
https://readyfor.jp/projects/misoji
「三十路祭り」公式ホームページ
http://www.misoji-matsuri.com/
◆2016年11-12月合併号の記事より◆
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