文責◆編集長/大高正以知

由らしむべし、知らしむべからず

本記事は2012年1月号に掲載された記事となります。

正月早々、ゼイゼイと苦しげにあえぐ人々の呼吸の音が、そこかしこから聞こえてくる。

言うまでもない。

ゼイゼイのゼイは税、消費税増税の税だ。

はっきり言ってこれほど国民をバカにした話はない。

 

任期の4年間は議論すらしないと、口角沫(あわ)を飛ばして捥ぎ取った政権である。その政権が1年も経ずして10%にと言い(菅直人首相=当時)、国民から手痛いシッペ返し(直後の参院選で惨敗)を受けて引っ込めたかと思うと、今度は「増税感を和らげるため」とやらで段階的に10%に引き上げる案を提示し、「不退転の決意で臨む」(野田佳彦首相)とまで言い切った。

おそらくは間もなく始まる通常国会に、臆面もなく出してくるのだろう。

 

とまれ増税感とは何だ。和らげるためとは何だ。段階的にとは何だ。

「俺たちは茹でガエルじゃない!上手に騙そうたってそうは問屋が卸すものか!」。そう憤慨する国民はけっして少なくあるまい。

 

そう言えば先ごろは、自民党のナントカっていう女優上がりの新米議員も、BS朝日の番組でこのようなことを言っていた。

「そもそも民主党は今頃になって消費税のことを言うから、世論の反発を買うんですよ。大震災のすぐあと、5月頃だったら仕方ないかって受け入れられたのに〝気付いて〟しまったんです」とまあ、まるで寝た子を起こしやがって、とでも言わんばかりの口振りなのだ。

早い話が、どいつもこいつも〝由(よ)らしむべし、知らしむべからず〟というわけである。偉くなったものだ。あいた口が塞がらない。

 

 

消費税1%が1.5兆円に目減りする?

それはそれとして、調査によって多少は前後するものの、おおむね国民の半数ともう少しは、今や消費税増税も已むなしと受け止めているようだ。

今やというのは、国の財政がここまで悪化したことを受けての今や、ではない。財務省にここまでまんまと洗脳されてしまったという、憂慮すべき現実を受けての今や、である。

とまれ今さら言うのも気恥ずかしいが、消費税増税については、誰がどう言おうと小欄は明確に反対の立場である。理由は2つだ。

 

1つは言わずと知れた消費の一層の冷え込みである。

このデフレ下、この不況下で増税するのは、消費者の財布の紐を余計に締めるだけで、それでなくても価格競争で悲鳴を上げている中小サービス業、小売業をいよいよ窮地に追い込むことになる。

 

今1つは、やはり中小製造業の人材や設備に向けた投資意欲を抑制する作用だ。

勝てないと見て勝負に出るバカがいないように、売れないと見て買うバカもいない。当たり前の話である。

 

ではどうすればいいか。

その前にまず、ここ数年の税収についておさらいをしておきたい。

昨年度の総額は約41兆円である。内、消費税は約10兆円で、法人税は約9兆円だ。ついこの前まで消費税は、1%当たり2.5兆円と言われていたのにこのところはほとんど変わらず約2兆円(10兆円÷税率の5)。消費の冷え込み以外の何物でもない。

次に法人税だが、こちらは5年前(平成18年)の約15兆円をピークに年々減少している(最少はリーマンショックによる平成21年度の約6.3兆円)。この流れでいくと今年は7〜8兆円というところか。

 

これらのことから何が分かるかというと、まずは消費税を上げると1%当たりの税収が(消費の冷え込みによって)確実に目減りするということだ。

おそらく10%になったら1%当たり1.5兆円、つまり税率を倍にしても増えるのは5兆円だけになる。

一方、法人税収は先の理由から更に落ち込む。下手すると5兆円くらいまでいく恐れがある。となると無理やり増やした消費税増税分の5兆円もパー。なんじゃこりゃ!というわけだ。ということでもうお分かりだろう。

税収の行方を握るキーは、消費税ではなく法人税ということである。

 

 

隗より始めよ

では法人税を上げればいいかというとまったく逆で、そんなことをすると空洞化が一層進むだけだ。

ではどうするか。

このところ鳴りを潜めているが、かつて流行語にもなったあの〝上げ潮路線〟である。

いくらぶち込んでもいいから、景気を良くするしか道はない。ただしタダぶち込むだけでは、ギリシャの二の舞だ。

 

それと並行して、それこそ〝不退転の決意〟で徹底した行政改革を断行することである。

それにはまず、〝隗より始めよ〟だ。名古屋の河村たけし市長ではないが、722人の全国会議員が、歳費を半分に減らすことである。それさえできれば、徹底した行革が遠慮なく断行できる。

 

そんな無茶な、とは思うなかれ。やる気になれば実は簡単にできる話なのだ。そもそも今、彼らが幾ら取っているかご存知だろうか。ざっと書き並べてみよう。

月給とボーナスだけで議長が3,530万円、副議長が2,580万円。平の議員で2,100万円。

平でもサラリーマンの平均給与(412万円)の5倍である。

そのうえに文書通信交通滞在費とやらが1,200万円、立法事務費が780万円、更には政党助成金から支払われる手当てが1人ン百万円〜ン千万円。それでいてグリーン車にも乗れるJRパスに、地元〜東京間の航空券が毎月3〜4往復分支給される。

議員宿舎はすべて都心の一等地で、家賃は約2万円(1K)から最高でも9万2000円(かつて問題になった赤坂の3LDK)。

ついでにいうと議員1人当たりに3人の秘書の給与が国から支払われており、これが約2,400万円。他にも献金やパーティー収入があるのはご案内のとおりである。

 

もちろん収入の多いこと自体をどうのこうのと言うわけではない。

それが国から、つまり国民の税金から出ていることを思えば、国民に更なる負担を求める前に、「これは貰い過ぎですから」と返納するのが、普通の大人の取る態度というものだ。

 

それをなんと、先の大震災の復興財源に充てるとして、僅か月に50万円(半年で計300万円)削られただけで、

「党内から、秘書を1人辞めさせなければいけないという悲鳴が聞こえてくる。このままでは政治活動ができない」(輿石東民主党幹事長)と、泣きを入れる始末である。恐ろしいばかりの吝嗇(りんしょく)家&ナンセンス揃いと言うほかない。

 

こんな方たちに、〝やる気になれば〟と言うほうが無理でしょうかね、やはり。