株式会社レクチャーモア|遺伝子が教えてくれる将来の発病リスク
株式会社レクチャーモア 遺伝子が教えてくれる将来の発病リスク
◆取材:加藤俊
株式会社レクチャーモア/代表取締役 新谷江里子氏
米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーが乳房を切除した上で再建手術を施したというニュース。しかも健康な体にメスを入れたという話に驚いた人も多いだろう。理由は、遺伝子検査によって、乳がんの発生リスクが高いことがわかったからだと言う。
その遺伝子解析、日本でも研究と実用化が進んでいる。株式会社レクチャーモアでは、遺伝子の独自解析により、両親からどのような病気の発生リスクを受け継いでいるかを依頼者に提示。将来の病気発生リスクに備えて、一人ひとりに合った生活習慣、食事、必要な栄養素、運動方法などを提供している。
■1万例を超える日本人のデータベースを元に理論的な計算と解析。
各疾患のリスク判定を提供
「私自身が数年前に大きな病気をしまして、そのリスクを遺伝子検査によって事前に知っていたならば発病に至ることはなかったのにと強く思いましたね」
起業のきっかけにもなった自身の病気のことを語ってくれた新谷江里子氏。甲状腺機能低下症にうつ病も伴ったことで、つらく苦しい時期を過ごしたと言う。だからこそ、より多くの人に病気のリスクを知って未病に務めてほしいと。
「遺伝子は、一人ひとり全く違うものを持っていて、遺伝子によって、将来の発病リスクを知ることができます。また、人種や地域ごとの違いもあって、アジア人と欧米人では当然違いますし、たとえば、東京の人と沖縄の人でも、それぞれ特徴的な傾向を有しているんです。
弊社では、大阪大学医学部の1万例を超える日本人のデータベースを元に理論的な計算と解析を行い、各疾患のリスク判定を行い提供しています。実際のデータベースではなく、論文からのデータ抽出による解析のみで提供するケースが多い中、それが弊社の強みですね」
その独自の遺伝子検査キットは驚くほど簡単なもので、口内粘膜をなぞって唾液を採取する綿棒と問診票のみ。それらを郵送すると約1カ月で検査結果報告書が届けられる。
「遺伝子検査は血液でもできますが、血液を採取するとなると、何か大きな壁があるというか、なかなか取り組みにくいんですよね。簡単にトライできるようなキットにしたのは、自宅で、綿棒一つで、痛かったり怖い思いをすることなく取り組めるようにすれば、遺伝子検査による未病のための対策を広められるだろうという思いがあってのことです。遺伝子が将来の病気を教えてくれること、それを大勢の人に知ってほしいんです」
■アルツハイマー型認知症のリスク回避で幸せな余生を。そして、子供の遺伝子調査で、発病に至らない食育も
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株式会社レクチャーモアの遺伝子検査キットで発病リスクが提示されるのは、たとえばがんなら、肺がん、乳がん、膵臓がん、子宮体がん、子宮頚がん、口腔がん、膀胱がん、胃がん、大腸がん、非ホジキンリンパ腫と10種に及ぶ。また、肥満、酸化ストレス、高血圧・血管障害、コレステロール、メタボ・糖尿病、血栓、免疫、骨粗しょう症の病気のリスク、さらに、老化、肌のトラブル、心のトラブル、アルツハイマー型認知症のリスクも判定できる。
「アルツハイマー型認知症は、今のところ、薬によって進行を遅らせることはできても、治すことはできません。また、発病により、本人のみならず、ご家族も長い間の苦労が強いられる病気です。それならば、事前に発症リスクを知って、普段の生活や食事、運動などでコントロールすることによって、できる限り発病に至らないように努力することで幸せな生活を送ることができますよね」
遺伝子検査をしたことで、夫婦ともに認知症のリスクを有していることを知った方から、『今後の人生をどう生きていくかを認識し、日頃の努力によって覆すような、楽しい生活を送る決意ができました』と綴られた手紙も届いていると語る新谷氏。
「高齢者ばかりでなく、子供の遺伝子検査をしたいというオーダーも徐々に増えています。ある病気の発症リスクに対して、どのような食事によって、できるだけ未病のまま過ごせるのか、それを子供の頃に親が知ることで、食育も含めたご提案ができますし、健康な人を増やすことそのものが社会貢献につながると考えています」
■“未病産業”の市場開拓のために、
国の積極的な取り組みも仰ぎたい
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遺伝子検査キットによる発病リスク検査を、まずは日本で広めて、日本のブランドとして確立させたいと語る新谷氏だが、将来は海外への進出も念頭においていると。
「ベトナムの厚生労働省とは話を進めていて、近い将来の参入が実現できると思います。そのためにも、日本での認知度や信頼度を高めるべく努力していきたいですね。安倍内閣も、“未病産業”の市場開拓を打ち出しましたが、現在は保険の対象にならない未病のための診療。そこが多くの人々にとって壁になってしまっています。国としても、病気を発症させないこと、未病の大切さを広めてほしいですね」
企業の福利厚生としての遺伝子検査が当たり前になるような世の中を理想としたいと言う新谷氏。その検査をより高度なものにするための研究費を国が捻出することで市場が広がることも確かだろう。新谷氏は、超高齢化社会を迎えている日本で、できる限り病気を未然に防ぎ、豊かな余生を過ごせる人を増やしたいと意気込む。
●株式会社レクチャーモア
〒211‐0034
神奈川県川崎市中原区井田中ノ町34-20-616
電話044‐751‐9365
http://genesup.com
代表取締役 新谷江里子氏(しんたに・えりこ)
愛媛県生まれ。平成20年に株式会社レクチャーモアを設立。
代表取締役として、現在に至る。