「ランサーズ」その無限の可能性 クラウドソーシングで町工場に明るい未来を!
「ランサーズ」その無限の可能性
クラウドソーシングで町工場に明るい未来を!
◆取材・文:加藤俊
ランサーズ株式会社/ビジネス開発部・部長 山口豪志氏(やまぐち・ごうし)…1984年岡山県岡山市生まれ。茨城大学卒業後、クックパッド株式会社を経て、2012年よりランサーズ株式会社に入社。同社のビジネス開発部部長として、現在に至る。
ここ数年、耳にする機会が増えた言葉のひとつに「クラウドソーシング」が挙げられる。群衆(crowd)と業務委託(sourcing)とを組み合わせた造語で、仕事を依頼したい人と、その仕事ができる人とをオンライン上でマッチングさせる仕組みのことだ。
最近では、「仕事の進行、納品、支払いまでを一つのサイトで管理完結できる」サービスが中心となっており、さらに、このクラウドソーシングの裾野が広がることで、町工場をはじめとしたモノづくり企業が救われるとも言われているのだ。
一体このサービスが、どのような形でモノづくり企業と親和性を見せていくのか。業界大手「ランサーズ」の山口豪志氏にお話を伺った。
発注側・受注側双方にメリットのあるサービス
クラウドソーシングの具体的な流れを、もう少し詳しく説明しよう。
まず、仕事を依頼したい人が、『会社の名刺をこれくらいの費用で作ることはできないか?』といった具合に、クラウドソーシングのサイト上に依頼をだすことからはじまる。
それに対し、依頼を受注したいランサー(個人事業主やフリーランスの人)たちが、意向に沿った提案をする。発注側は、その提案内容やランサーたちの過去の実績を吟味し、最適な提案や相手を選択していく。
そして、そこで互いに合意すれば、晴れて契約成立となるわけだ。
仕事を依頼する側にとっては、コスト面を含め、自分の要望を満たした仕事をしてもらえることになり、一方、ランサー側にとっても、クラウドソーシングサイトが窓口になるので、営業をする手間を省くことができる。こうしたメリットが双方にもたらされる有益な仕組みなのである。
実は、小誌ビッグライフも自社のHPをリニューアルする際にこのサービスを活用している。ちょうどよい具体例になるので、紹介しよう。
下記がリニューアル前のHPの様子(2007年7月当時)。
2007年から、ずっと上記のHPを利用していた。見てわかる通り、いい加減デザインが古くなったので、2013年にHPをリニューアルしようと決め、それで最初は、顔見知りの業者何社かに見積もりを出してもらうところから始めた。しかし提示されたものは、どれもぱっとしなかった。価格も相場である30万円前後がほとんど。極力お金をかけたくない懐事情だったので、そこで、何とはなしにクラウドソーシングサイトに依頼を出してみることにした。
いや、驚いた。たちまちにして、全国から25件もの提案(しかも優れた提案)が寄せられたのだ。
最終的には、その中からこちらの要望に安価で応えてくれる業者に依頼をし、HPのリニューアルは無事に完了(上記がリニューアル後のHP)。費用はなんと、相場の半額17万円程度で抑えることができた。まさに、コストを抑えたうえで、こちらの要望を満たしてくれるという、上述のメリットを実体験として体感する機会になった。
そしてこのとき、利用したサイトが、ランサーズだった。
業界最大手「ランサーズ」
2008年にサービスを開始してから、現在の会員登録数は14万人を超える。依頼件数は延べ15万件を超え、これまでの依頼総額は76億円。紛うことなき業界のリーディングカンパニーだ。
その地歩を築くことができた理由は、仕事を発注する際の心理的なハードルを下げるための工夫、要は信頼関係の担保のとり方がうまかったことにありそうだ。
「はじめは、実際に顔を合わせて仕事をすることと、合わせないで仕事をすることとの差を、いかに埋めていくかを考えました」(山口氏、以下同)
その考えが、現在の仕組みに繋がっている。登録しているランサーを免許証やパスポートで身分確認する〝本人確認制度〟や、決済面の不安を解消するために、発注側から代金を一時的にランサーズが預かり、納品を確認した時点で支払う〝エスクロー〟などがそうだ。
「それと、オンラインだからこそ成立しうる信頼や信用という領域があることに、早い段階で気付いたことが大きいですね。会社の採用面接を例にとりますが、応募者の履歴書を見て実際にその方とお会いしてみても、依頼したい仕事が実際にできるかどうかまでは推し量ることができません。そういった、実際に顔を合わせても消せないクエスチョンを、データが堆積するオンラインでは、逆に〝情報量〟で埋めることができたのです」
ランサーズに堆積する膨大なデータ、言い換えれば一人ひとりのランサーの作品、仕事相手からの評価や成果物を確認できるから、仕事を依頼する前の段階でランサーの技術力をかなりの精度で推し量ることが可能になっている。
これが、ビジネスの心理的なハードルを下げ、安心して仕事ができる環境の土台を作り、さらにこれらの仕組みをいち早く整えたことが功を奏したからこそ、業界のトップランナーになったのだ。
しかし、こうした点を他が真似てこないわけがない。強力なライバルたちが次々に登場し、業界はランサーズの独占状態とはなっていない。そこで現在、ランサーズは次なる一手を打つ必要に迫られている。
モノづくり企業とランサーを繋げる
去る5月21日。これまで自己資本で事業を行ってきたランサーズが、有名VC(ベンチャーキャピタル)2社を割当先とする第三者割当増資に合意し、総額で約3億円を調達すると発表した。更に6月1日には、古都鎌倉から東京渋谷への本社移転が行われた。
ランサーズがここにきて、こうした攻めの姿勢に打って出るのにはワケがある。後塵を拝していたライバル会社が力をつけ、盤石だった業界の勢力図に綻びが見え始めたからである。つまり、今回の一連の出来事は、ランサーズが業界で築いてきた地歩をより盤石なものにするための王者の反撃の狼煙、その並ならぬ決意と覚悟の現れと見てよい。
そして彼らが次代への布石として見据えている戦略のひとつが、モノづくり企業や町工場とランサーたちとを繋げることである。
「モノづくり企業とランサーをうまく繋げることができれば、クラウドソーシングは、より立体的なサービスを提供できるプラットフォームになり得ます。せんだって、そういった未来の可能性を感じさせる案件がありました。とある鯛焼き屋さんが、忍者の恰好をした鯛焼きの金型を作ろうとしたのです。デザイン絵から3Dを起こす必要があったのですが、例えば、金型メーカーさんがランサーズに登録していたなら、このビジネスに一枚噛むことができますよね」
上述のたい焼き屋さんの記事。浅草の新名物になるか⁉ 美味しいたい焼き屋さんの型はITによって作られた。製造業の活路はクラウドソーシングの活用にあり!
たしかに、製造業や町工場の優れた技術力とランサーたちとが繋がることは、計り知れない可能性をもっているように思える。
クラウドソーシングは近い将来、ITやデザイナーなどの一部の領域だけではなく、モノづくり企業が仕事を受発注する際の大きな窓口になりうる。そのとき、町工場はどういった立ち位置にいるのだろうか?
いろいろな意見があるが、クラウドソーシングとは確かなスキルをもったプロフェッショナルな人材が重宝される世界。一朝一夕では決して真似ることのできない、モノづくり企業の高い技術力をもってすれば明るい未来が開けるのではないか。
そうした未来を描きつつ、ランサーズとタッグを組んだ町工場の快進撃が始まることを期待したい。
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-10-13
渋谷Rサンケイビル7F
http://www.lancers.co.jp
◆2013年7月号の記事より◆
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