美食探訪 串焼き処彩酉|〝心残り〟 その一品に魅せられて
美食探訪◆串焼き処彩酉
〝心残り〟 その一品に魅せられて
◆取材・文:加藤 俊
東京・神田にうまい焼き鳥屋がある。小誌が紹介するのだから、最近流行のべらぼうに高くてオシャレな店構えの店ではない。とはいえ、赤提灯をぶら下げた典型的な焼き鳥屋でもなく、店内には木の温かみあるカウンターとテーブルが並ぶ。
神田駅の西口を出て、徒歩で一分。オフィスビル街の地下にその焼き鳥屋「彩酉」はある。
ここの特徴は、「肉卸問屋直営店だからこそ用意できる鳥の希少部位の数々をお安く提供すること」との店長、浪川歩氏の言葉が全て。
ちょうちん、ふんどし、オタフク、白子、ハラミ、心残り。ここまで希少部位を数多く取り揃えているお店は全国的にも珍しい。
彩酉 左から 心残り・まめ(脾臓)・白子・ふんどし(十二指腸)
おススメは「心残り」。他の焼鳥屋だと「つなぎ」とも呼ばれる部分。鶏の心臓と肝臓をつなぐ大動脈にあたる大変貴重な部位だ。名前の由来も小さすぎて通常他店では使いものにならないから捨ててしまうので、ハツ(心臓)の残り物という意味で「心残り」。
なにせ一本の串に、7~8羽の鳥が必要になるとのこと。その手間がかかる分、非常に美味しい。焼き鳥の希少部位の中でもツウが頼む一品だ。肉卸問屋直営店だからこそ、食べられる珍味。
口に頬張った瞬間、プリッとした弾力に驚く。皮に近い感触だが、噛むごとに、たっぷりのった脂が舌全体に溶けて、濃厚なうまみが何度も口に広がる。絶妙な焼き加減。紀州備長炭で焼き上げた串ならではの残香が鼻腔をくすぐり、抜けていく様、そのすべてに虜になる。
この一本によく合うのが、芋焼酎「不二世」。濃厚で骨太な味わいを愉しめる芋焼酎だ。ブニセとは鹿児島の言葉で、〝ブ男〟という意味なのだが、これは敬愛の念を込めて、かの西郷隆盛公を指す言葉なのだそうだ。
「焼き鳥屋って、希少部位を一本数百円で出すところもありますけど、焼き鳥の魅力って、〝気軽に寄れる良さ〟にあると個人的には思います。仕事終わりに足繁く通ってもらってこそ、焼き鳥屋の意味があるのでは」(浪川氏)
そうしたこだわりが評価されて、最近はすっかり繁盛店に。入店さえ、なかなかできなくなった。
「ごめんなさい。今日はもう満席で……」
浪川氏にそう頭を下げられて、「心残り」を食べられない〝こころのこり〟を筆者は数回経験している……。
※現在、彩酉では、働き手を募集しています。アルバイトは時給1100円~。美味しい 賄い付き! ご興味のある方は、下記℡番号まで。
℡03-3525-4640
●串焼き処彩酉(いろどり)
〒101-0047 東京都千代田区内神田3-12-2 萬創神田ビルB1
℡03-3525-4640
店長・浪川歩氏(なみかわ・あゆむ)
◆2014年1月号の記事より◆
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