2024年の飲食業界のM&A件数、前年比44%増~コロナ禍前に迫る

2024年の飲食業界のM&A件数は85件と23年比で44%増え、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年(101件)以来、5年ぶりの高水準となった。24年のM&Aの85件のうち、支配権の移動を伴うものは69件だった。コロナ禍後の景気回復に伴い、買い手である同業他社やファンドの業績が回復したことで潤沢な買収資金を確保できていることが背景にある。

戦略的売却型M&Aが最多
飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)が、全上場企業に義務づけられた適時開示情報などから集計した。24年の飲食業界のM&Aでは、事業の選択と集中で生産性を向上させる「戦略的売却型」が52%(44件)と前の年の47%(28件)から比率を高め、最も多かった。二番目に多かったのは「事業承継型」で28%(24件)を占めた。
M&A件数は19年には101件と過去最多に達していた。ところが、20年に新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、政府は緊急事態宣言を発令。人が集まって食事や飲酒などを楽しむ店舗型ビジネスの経営は大きな打撃を受け、M&A件数も23年に59件とピーク時から4割減少していた。
ただ、政府は23年5月に新型コロナウイルスを感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げた。景気回復も背景に飲食業の業績が急回復し、24年は飲食業のM&A件数も4割超の増加となった。
金融政策の動きは当面M&Aに大きく影響せず
日銀は1月23~24日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げることを決めた。市場関係者の間では金利の先高観も根強い。飲食業界のM&Aへの金利上昇の影響についてM&Aプロパティーズの中村幸司社長は「金利が上がったとはいえ、全般的にはなお低金利が続いており、買い手の投資余力が高まっていることから当面は大きな影響はない」としている。