日本ラインファースト株式会社 ‐ 突撃レポ!中小企業の新製品開発・販路開拓に大学生が取り組む!【後編】
突撃レポ!中小企業の新製品開発・販路開拓に大学生が取り組む!後編
日本ラインファースト株式会社 × やまとなでしこPJ
◆取材:加藤俊
前編からの続き。紙おしぼりメーカーの日本ラインファースト株式会社(東京都板橋区)に、学生団体やまとなでしこプロジェクトが訪問。「日本中に埋もれている素敵な文化を学び、共感し、女子大生目線でPR」するという彼女たちが、日本文化の象徴でもある「おしぼり」のPRを考えるべく、日本ラインファーストに突撃。前編での提案後、今度は日本ラインファーストの北関東工場に。
◉北関東工場を見学!
さて、場所は移り、同社の北関東工場に。
「企業秘密な領域が多く、本来あまり開示できないところが多いと思いますが、ウチはオープンにしている」という言葉に甘える形で、隅々まで見学させてもらった。
授業で遅れていた村井みどりさん(明治大学1年)もここから参加!
レーンを流れるおしぼりを見て、不良品が無いかを目視している様子。
工場裏の倉庫。いろいろな種類のおしぼりが並ぶ。
おしぼりのロール。裁断して、薬剤に付けて、包装されると紙おしぼりに。
工場を見学後、案内頂いた北関東工場生産管理部サブリーダーの野里仁氏を交えて、再度やまとなでしこPJメンバーとの座談会に。
澤:思っていたよりもずっと綺麗で整頓された工場でした。2階からの見学など、窓も見学しやすいようにあえて作られているみたいで。
野里:その通りです。窓が斜めになっているのは見学しやすいようにしているためです。見られることを意識して、常に綺麗にしようと心がけています。工場内に入る箇所にも異物を吹き飛ばすエアーシャワーをつけています。やはり、おしぼりという製品の性質上、衛生環境には気を配ります。
村井:月にどのくらいの本数のおしぼりを生産しているのですか。
野里:月に5000万から6000万本くらい生産しています。
池島:どのくらいの期間で、一人前と呼ばれる世界なのですか。
野里:最低でも、2、3年はかかります。現在の当社の年齢層は30代半ばが多いかな。42歳が最年長になります。
池島:若い方が多いというのは羨ましい環境ですね。他の中小企業からしたら。
野里:実際、体力的に結構ハードな環境ではあると思います。
今野:改善というのでしょうか。年々向上させているところはありますか。
野里:どうすれば、生産数を多くできるか、と同時に、トラブルで機械が止まってしまうことによるロスを如何に防ぐかというところにも工夫が求められます。紙がなくなったとか、フィルムがなくなったというときに、どれだけ早く交換できるか。1分間にできる本数というのは決まっていて、それ以上は作れないですから。難しいことよりも、日々の作業をどれだけ短時間でこなしていくか、というのが大切だということを新人の方には伝えています。
当たり前のことですが、(紙やフィルムが)無くなってから準備するのではなく、無くなりかけたときに準備しておくとそれだけでも時間の短縮ができる。F1のピットと一緒です。車が入ってきたらもう準備をしていてエンジンを回すだけ、という感じに用意しておく。こういう工夫の積み重ねで1、2年前だと午前中で5万本ギリギリくらいの生産本数が、今は6万5千本くらいできるようになりました。1箱1000本入りで50ケース発注が来るのですが、午前中で全部終わった時は本当に嬉しい。前は午後2時くらいまでかかっていました。
今野:仕事にやり甲斐を感じる時はいつですか。
野里:比較的若い社員が多いのですが、自分が思ったことをやれるという点です。メーカーさんとの話で出来る出来ないはありますが、基本的には自分の担当の場所を自分でカスタムしていける。自分がやり易いようにではなく、機械がよく動くようにカスタムできるというところです。
澤:大学の就活生30人くらいに「仕事に何を求めるか」というアンケートをとったことがあるのですが、多かったのが、仕事にやり甲斐を求めるということでした。自分の場所をカスタム出来ると伺いましたが、若いうちから経験させてもらえるのですか?
野里:相談をうけて、ダメだよというのはありますが、良いと思えるものは当然やります。あまりにも費用がかかるような提案ですと難しいですけど。
澤:声が通る環境っていうのは大事ですね。工場だと「入って3年は修行の身」だなんていうのが未だにありますが、入ってすぐ意見を言えて、それに対して聞く耳を持てる環境がある会社っていうのはいいですね。教育として意識されていることはあるのですか?
野里:失敗したことを伝えていくようにしています。60代の方が、定年されてもういないのですが、上手くいったことよりも、失敗したことをよく話していかれたんです。やはり、経験していないとわからないことがあるので。
今野:工員さんに求められる資質的なところで、こういう人に来てほしいとかそういった要望はありますか?
野里:すぐにダメだと弱音を吐かない人。とりあえずトライしてみるという性格の人がいいです。後は、機転の効く人。視野が広い人に来て頂きたいですね。
今野:雇用は地域の方が多いのでしょうか?
野里:ハローワークを介している時もありますし、こちらの仕事の口添え、紹介という時もある。遠くからという方はあまりいないですね。
村井:工場側として、学生さんにこういったことを期待したいということはありますか。
野里:長く勤めあげると見えなくなるものがあるので、新しい目で意見を言ってほしいです。忘れてしまったこと、見えていないモノというのがあるかもしれないので、言ってほしいと思います。
澤:学生は大企業を志望する傾向にあります。安易に自分の将来を決めているように思うのですが、中小企業の方から見て、そういった学生の風潮をどう捉えているのでしょうか。
成毛(晃):中小企業の存在をもっと知ってもらいたいですね。確かに大企業に就職して学べることは素晴らしいことが多いと思います。でも、皆さんが知らない小さな企業の中にも、大企業で得られる満足よりも、より多くのやり甲斐や感動を見いだせる場所があるかもしれないということを知ってもらいたいです。企業の大小や福利厚生のみを尺度に、企業の良し悪しを推し量ることは、結果的に皆さんの可能性を狭めるものだと気付いてもらいたい。他人の情報に流されるのではなく、自分の目で見て、企業を選定してください。
一同:有難うございました。
◇
北関東工場見学を終え、車で東京まで送ってもらった。日本ラインファーストの皆さん、本当に有難うございました。
【突撃レポ】
★後日、メンバーから率直な感想を纏めたレポートが提出された。
日本ラインファースト様 おしぼり企画感想レポート
慶応義塾大学3年 澤茂奈実
まずはじめに、このような企画を設けて下さった「BigLife21」の加藤様、私たち学生のために時間を割いて下さった社長の成毛様、そして暖かく迎えて下さった日本ラインファーストの社員の皆様に衷心より感謝申し上げます。一日という短い時間ではございましたが、大変貴重な体験を経験させて頂きました。この度は、レポートという形に変えて私なりに感じたことを伝えさせて頂きます。
先日ご縁があり、おしぼりメーカーの最先端企業である日本ラインファースト様の本社に伺う機会に恵まれました。本社のある板橋区は工場が立ち並ぶ一方、昔ながらの商店街が残り、どこか懐かしいようなそんな暖かい東京の下町でした。
おしぼり、というと日本人なら誰もが知っている日用品ですが、日本を代表するおもてなし文化の一端を担っていることもあり、この日が来るのをとても楽しみにしておりました。
まず第一に驚いたことが、既成商品の種類の多さです。おしぼりというと料理店で提供されるタオル生地のおしぼりや日本ラインファースト様が作っていらっしゃるような紙生地のおしぼりが一般的だと思っていたのですが、他にも病院用の大きいサイズのおしぼり、小さいおしぼり、高級おしぼりなど、用途も違えば生地も違う様々なおしぼりが存在することを知り、とても驚きました。中でも、薄い生地ながら絶対に破れないおしぼりには、どうやったらこんな高い技術が作られるのだろうと不思議でたまりませんでした。
工場見学では、普段なかなか見る事のできない工場の内部を拝見することが出来ました。私と同じ女性の方が大きな機械を一人を扱っていらっしゃる姿を拝見し、目にもとまらぬ早さで不良品をチェックしていたり、休憩時間は10分しか取らないと仰っていたことに、日本人のプロフェッショナルさを感じずにはいられませんでした。
私たち学生が提案するおしぼりの認識の甘さを改めて感じましたが、社長をはじめとする社員の方々に優しいお声を掛けて頂き、学生のアイディアと社員の方々がもつ専門性をかけあわせれば、とても面白い製品が出来上がるはずだと感じました。私たちのような学生には、このように普段使っている製品について改めて考え直す機会はあまりありません。私自身、今までおしぼりについて深く考えた事はありませんでした。
正直なところ、店におしぼりが置いてあれば必要以上に持って帰って結局使わずに捨てる、といったこともありました。大量生産・大量消費を掲げる現代において、より良い商品を作り上げるためにこうして社員の方のお話を伺うことは自分の普段のライフスタイルを見つめ直すきっかけにもなりました。一つのおしぼりは小さく、手のひらサイズだけれども、それらは多くの方のアイディアが結集して出来た日本が誇る技術のたまものなのだと知る事ができました。今では、おしぼりを貰ったらパッケージのデザイン・生地の破れ具合などを調べてみるのが癖となってしまいました。
社員の方のお話の中で、印象に残った言葉があります。それは「挑戦が大事。失敗は失敗で二度と繰り返さないように伝えていく」という工場長の言葉です。
今の日本において、人間関係がどんどん希薄になっているような気がします。新宿・渋谷のような大都市では他人同士が話す事はほとんどありません。良い意味でも悪い意味でもドライで、別の言葉に言い換えれば「人のすること・なすことに無関心」な日本人が増えていっています。
そんな時、この工場長の言葉を拝聴し、若手の挑戦を認める姿勢・間違いがあればどんどん伝えていく姿勢、そして社長と社員が直に話す事の出来る体制はとても魅力的に映りました。今の若者は大企業に目を向けがちですが、日本ラインファースト様のような中小企業にこそ本来の人と人のあるべき姿、世界に誇る日本人の姿があると感じました。
「おしぼりについて知りたい」、そんな思いで実現した今回の企画ですが、おしぼりの先に見えたものは昔ながらの日本人の技術の高さ、そして暖かさでした。重ね重ねになりますが、このような機会を作って頂き、本当にありがとうございました。
日本ラインファースト株式会社との打ち合わせで感じたこと。
慶應義塾大学環境情報学部1年 池島香輝
日本ラインファースト株式会社の方々との打ち合わせ、工場見学を通して感じたことは様々ある。自分たちのおしぼりのアイデアを日本ラインファースト側に提案した後、社員の方々は様々なお話をしてくれた。
ちなみに、提案した内容は、自分たちが考えたおしぼりの新しいデザインや、おしぼりを置いてほしい場所などのアイデアだった。香りをおしぼりにつける提案も一時考えていたことを話すと、社長の成毛さんは香りにオールマイティはないので難しい、あるとしたら石鹸の香りくらい。また石鹸の香りを使っても元のイメージが強すぎて応用が難しいとおっしゃっていて、確かにそのとおりだなと感じた。おしぼりのデザインよりも、置く場所に焦点をあてることが大切なのではと考え直すことができた。
また、成毛さんの物事を広く見て深く考える視野の広さに驚いた。すぐになにか商品をつくったりアイデアを実行したりということはできないかもしれないが、自分たちの提案を良いヒントにしてもらえたら良いのではないかと感じた。
その後もお互い意見交換を行うとともに、とても参考になる様々なお話を聞かせてくれた。例えば、社長の成毛さんが人を選ぶときは、人間性とその人の歩んできた道のりを見ており、できる人は常に勉強熱心であるということをおっしゃっていた。それは社会生活の中でも非常に参考になる考え方であり、そのような信念をもって人を見て生きているからこそ大きな事業を続けられているのだと思った。
そして、お話の中で特に印象に残っているのは、モノの見方について社長の成毛さんが何度も話してくれたことである。
「日本だからこそ生まれているビジネスがたくさんある。世の中には見つからないでいる同じようなことがまだたくさんある。そういう目で世の中を見ることが新しい発見につながる」
常に世の中で何か発見しようという気持ちで物事を見ていることがおしぼりという心遣いのおもてなしのビジネスにつながっているのだろうと思った。
実際今まで生きてきて、おしぼりにそこまで注目してこなかった自分だから余計にその言葉が心に残った。
その後の工場見学では、ものすごいスピードでおしぼりが生産されている場を見せてもらった。どんどんおしぼりが袋詰めにされている光景は、素直に面白かった。働いている人たちも、一時も手を止めることなく働いていた。実際に、社員の人たちが休むために椅子をおいたことがあったそうだが、誰も休まず使わなかったというエピソードもあった。社員の人たちの仕事に対する思い、真剣さが伝わってくる現場だった。
見学後、サブリーダーの野里さんからもお話を伺った。機械を少しずつ改良し、生産スピードを早める際に苦労したこと。地元で働く素晴らしさ。様々な思いで仕事をしていることが伝わってきた。自分も地元を活性化したいという気持ちもあるのでとても共感できた。
今回の経験で、企業を知る、働くということを学ぶとても良い経験をさせてもらった。
これからも企業の見学やインタビューに行かせてもらえたらと思う。
日本ラインファースト株式会社にお邪魔して
やまとなでしこプロジェクト 慶應義塾大学2年 今野玲奈
おしぼりは飲食店でサービスとして使用するイメージがあるが、実はオフィスや介護の場でも使用されている。介護の場で求められるおしぼりは、通常のおしぼりの何倍も大きく丈夫なものだが、逆にアミューズメント施設で配られるようなものは、手を拭えれば十分なので小さくてよい。このように用途に合わせて様々な大きさ、厚さ、質感のおしぼりがあり、中には破れにくく加工がされているものもあってその種類の多さに驚いた。
工場ではおしぼりをつくる機械などを見せていただいたが、その生産スピードには目を見張るものがあった。その早さの秘密は、社員さんたちの弛まぬ努力にあるのだ。一日に生産できる数量を増やすために、工夫に工夫を重ねていらっしゃった。作業効率化がはかれそうな意見は積極的に取り入れる方針で、意見を出す人が社員でもパートさんでもいい意
見は採用されていく。自分の声が反映されやすい職場だと感じた。これによって従業員のモチベーションも上がりそうだ。また、工夫のため試行錯誤した過程では、もちろん失敗することもたくさんあったが、より早く確実に商品を届けるために失敗を恐れずにどんどん挑戦していくという姿勢に感動した。
おしぼりは普段から使う機会が多いが、実際に製作している企業・工場でお話を伺うことで、今まで自分は「おしぼりについて何にも知らなかった」ということが分かった。
新製品開発や既存製品の販路開拓という分野で大学生の突撃レポを受けたい企業の皆さん、ビッグライフまでご連絡ださい!
info@biglife21.com
【取材協力】
日本ラインファースト株式会社
〒175-0081 東京都板橋区新河岸2-7-7エンドレスビル
TEL:03-5997-7200
〈北関東工場〉
〒347-0042 埼玉県加須市志多見85-5
TEL:0480-61-6777
◆2015年3月号の記事より◆
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