日本ラインファースト株式会社 ‐ 突撃レポ!中小企業の新製品開発・販路開拓に大学生が取り組む!
突撃レポ!中小企業の新製品開発・販路開拓に大学生が取り組む!
日本ラインファースト株式会社 × やまとなでしこPJ
◆取材:加藤俊
紙おしぼりメーカーの日本ラインファースト株式会社(東京都板橋区)に、学生団体やまとなでしこプロジェクトが訪問。「日本中に埋もれている素敵な文化を学び、共感し、女子大生目線でPR」するという彼女たちが、日本文化の象徴でもある「おしぼり」のPRを考えるべく、日本ラインファーストに突撃。その様子をレポートする。
日本ラインファーストのおしぼり。使い捨てタイプの紙おしぼりの分野では、業界屈指のシェアを握る。
はじめにメンバー紹介。提案を受ける日本ラインファーストからは…
(写真右より)代表取締役社長の成毛義光氏、チーフの大前良之氏、グループ企業 株式会社リース東京 取締役執行役員の成毛晃一郎氏の3名に参加頂いた。
対する提案者。(手前より)やまとなでしこプロジェクトは同団体リーダー澤茂奈実さん[慶應義塾大学3年]、今野玲奈さん [慶應義塾大学2年]、メンバー唯一の男性!池島香輝さん [慶應義塾大学1年]が参加。
◉提案開始・学生が考えたおしぼりPRの方法とは?
やまとなでしこPJの提案資料
最初にやまとなでしこPJの自己紹介から始まり、澤代表がこれまでの活動内容を紹介。電通や全国味噌工業協同組合連合会、日本酒造組合中央会とのコラボ実績を説明した上で、さっそく、PowerPointで提案開始。
『おしぼりの新しい販路開拓』『新商品の提案』『2020年の東京オリンピックに向けてメンバーで協力できること』の3点を事前に資料に纏めてきており、その提案を行った。
澤:私達が消費者としておしぼりを使う時って、どんな時だろうとメンバーで話し合ってきました。
手を拭く時、パソコンや携帯を拭く時、汚れたテーブルを拭く時、服が汚れた時など基本的な使用環境を洗い出してみました。
その次に、おしぼりを使いたくなる時はどんなタイミングなのかを考えました。これを、『手を綺麗にしたい時』『汚れていると感じた時』『リフレッシュしたい時』の3つに大別しました。
もう少し細かく見ますと、手を綺麗にしたいと感じる場所は、飲食店に始まり、お金や他人が手を触れたものに触れる銀行や図書館などの公共施設などかな、と。また、汚れていると感じる場所は電車内、駅のホーム、ゲームセンターなど。リフレッシュしたい時はホテル、病院といった意見が出ました。
では、どんなおしぼりがあったら嬉しいか。
一つは、『柄の入ったおしぼり』があったら良いなという声がありました。例えば、クリスマスなどのイベント向けに、ツリーやサンタさんなどが印刷されたおしぼりですね。
他には、『裏メニューおしぼり』といった意見がでています。これは今野が説明致します。
今野:居酒屋に行くと裏メニューがあるお店がありますよね。例えば、複数名の団体のお客様でお一人のおしぼりのみ、開けると、そのお店の裏メニューが書かれている、と。パーティー感覚で楽しめると思います。
澤:他には、『占い(ゲーム感覚で遊べる)おしぼり』です。開くと、その日の運勢が書いてある、という。また、『美容成分の入ったおしぼり』もあったら良いな、と。外出時に肌が乾燥した時に保湿成分の入ったおしぼりがあったら使えるのではないかと思っています。
他にも『携帯やパソコンのクリーナー的活用のできるおしぼり』やネイルの除光液が染み込んだおしぼりがあったら、女性としては嬉しいので、『ネイル落としおしぼり』といったものを提案致します。
次に、2020年の東京オリンピックに向けて、おしぼりはどうしたら良いのか。これは、外国人の方に、おしぼりを日本のおもてなしとして感じて欲しいというのが、私達の案として出ました。
だったら、外国人の方がよく行く、お土産屋やファーストフード店、日本食レストランなどの観光名所におしぼりを置けば良いのではないか。
それで、実際に外国人がよく観光に行く場所を調べたところ、お寺や神社が多くランクインしていました。
提案としては、お寺で配るパンフレットと一緒に、おしぼりを渡すことができれば、日本のおもてなしを感じて頂けるのではないか、と思いました。
提案は以上になります。
◉提案を聞いた感想
成毛:ものすごく、的を射ている。よくここまで纏めてくれましたね。私達は業者ですから、どうしても業者としての目線でモノを見がちです。なかなか消費者の目線でモノを見ることは難しく、とても貴重な意見を頂戴しました。本当に有難うございます。
ただ、頂いた意見を業者として、ビジネス的という観点で考えると、一部どうかなと思うところがあります。例えば、お寺に見学に行って、パンフレットと一緒におしぼりが出てくるというのは、アイデア的に確かに素晴らしいのですが、じゃあ、その製造費用を誰が支払うのか、というところを考える必要がありますね。
お寺が拝観料から工面できるとは思えません。色んな問題がでてきますよね。
思いは素晴らしくても、現実性に乏しいアイデアが多い。ただ、それを私達が否定してしまうと元も子もないし、本当によくここまで纏めて頂きました。ビジネスのヒントとして頂戴致します。
成毛(晃):お客様の声を直接聞かせて頂いた気がします。こうした声は非常に貴重ですし、中には次に繋がるような発想もありそうです。皆さんがここまで真剣に考えて提案してくれたこと、本当に感謝致します。
提案頂いたクリスマスの柄が印刷されたおしぼりなど、製品として季節感がでますが、業者としては、季節関係なくコンスタントに出せる製品というのが望ましいです。
また、美容成分の入ったおしぼりに関しては、保湿成分として薬剤を入れることはかなりリスクがあります。カビの原因になるかもしれません。
こうした点をクリアしていく必要はありますね。
大前:今聞かせて頂いたことは目からウロコでした。僕らはこういったことはわかりきっているという前提に立って、コストなどを考えている。
原点に返るというか、そうだよな、こういうことって、一つ一つ糸を解いていったことをもう何年もしていないよな、と気づかせて頂きました。「おしぼりを使いたい時ってどういう時?」と資料には書いてありましたが、そこから改めて考えることをしばらく忘れていました。本当に有難うございました。
◉質問タイム
ひと通り提案が終わった後、同社の製品を使用させてもらいながら、質問タイムに。
池島:業界において、御社の強さは何処に基づくのでしょうか。
大前:短納期、且つ大量生産にも対応できることです。当社は、お客様からご注文を頂いたら、次の日には出荷できる。タイムリーにお客様の要望に応えられることでしょうか。
それというのも当社は生産ラインが多い。業界比較で、20台の製造機を持っているのはかなり珍しいのです。
今野:新しい販路はどのようなところを考えているのでしょうか。
成毛(晃):やはり介護分野でしょうか。この分野は今後の成長が見込めますし、衛生という観点からも望ましいです。
例えば、当社では、介護・福祉・医療の現場をサポートする大判ウエットタオル『プレシアL─A』という製品があり、これは厚手の大判サイズで、且つ丈夫にできているので破ける心配もありません。
今野:そういった新製品の開発はどうやって企画するのでしょうか。
大前:お客様からの要望を頂いて開発を始めることが多いです。また、色々な方との会話や世の中の傾向にヒントを得て、自社で開発しております。
澤:東京オリンピックは海外の目が日本に向きますから、おしぼりという日本文化を海外に広める良い機会になると思うのですが、この点はどういった展開をお考えなのでしょうか。
大前:先程も話がありましたが、商品が動くときは、お金の出どころがどこになるか、そこを考えるのが難しいところです。でも、オリンピックの会場の前で、企業名のCMを入れたおしぼりを配るなどしたら、ものすごいPR効果が期待できそうですよね。
澤:私は電車の手摺りに触れることに抵抗があります。電車や、市や県が運営している公共施設などにおしぼりを置くことは難しいのでしょうか。
大前:そこにも、お金を出して頂ける方の存在が必要になりますので、もし、お話に乗って頂ける方がいるのであればOKです。
池島:例えば、電車にしてみても、広告主は欲しいですよね。おしぼりの袋に広告を載せるというのはどうでしょうか。
大前:その場合はゴミの問題がでますよね。座席に座って、他人が使用したおしぼりを踏んでしまったら、非常に嫌な気分になります。そういったことをどうできるか。
成毛:電車であれば、もう既におしぼりが置いてあるところもあります。新幹線などですね。これは、掃除をして頂く方がいたり、ちゃんと管理が行き届いているからできるんです。日本がそれだけ管理が行き届いている国とも言えます。
おしぼりの海外展開ということを考えた時、衛生観念や管理が行き届いていない国では、おしぼりは受け入れられにくいと考えられます。不特定多数で管理が行き届かないところは難しいでしょうね。
提案後、成毛社長が、やまとなでしこPJに以下のことを語った。 非常に良いお話だったので、別掲します。
◉成毛社長からのメッセージ
ビジネスチャンスを見つけるモノの見方
「皆さんに伝えたいのは、この日本という環境だから成立するビジネスがたくさんあるということ。それを知ってもらいたいです。皆さんが普段何気なく目にしている多くのことも、実は、世界的に見れば珍しいビジネスだったりすることが結構あるのです。
例えば、海外の方が日本に来て驚くことのひとつに、屋外に設置されている自動販売機の数の多さが挙げられます。これは海外だと有り得ない。治安が本当に良い国でないと、サービスの継続がままなりません。
同じことが当社の製品でも言えます。グループ企業の日本エンドレス株式会社ではレンタルマットを扱っているのですが、正にそうです。実は、レンタルマットの普及は日本が世界一なのです。私は、昔アメリカに行った時、レンタルマットサービスを見て、日本に輸入しようと思って会社を起こしたのですが、その時からこれは日本で流行らせることができるという確信を持てました。そして事実、気付いたら本家のアメリカを追い抜いていた。
ところが、他国、たとえば韓国や中国では、このビジネスは広がっていない。なぜか。他の国だったら、貧富の差ゆえ、マットが玄関に置いてあったら盗る人がいるのです。日本にはそうした人がまずいないから、当社のダストコントロールのビジネスが成り立つのです。
同じようなことが世の中にはたくさんあります。これは普通に過ごしていては、なかなか気づけません。逆に言えば、こういったことに如何に気づけるか。そこに商売のヒントがあり、世渡りの上手さが生まれてくるのです。
私は、世の中を見るにも、そういうモノの見方をしている。このクセを会得して世の中を見渡すようになると、人が何を考えているかまで見えてくるようになります。すると、世の中が面白く見えて仕方なくなってきます。
ですから、是非、目に触れるものをただ受け流すのではなく、意識を研ぎ澄まして、その中にある情報を拾うようにしてください。きっとビジネスチャンスを見つけることができるはずです」
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この質問タイムが終わった後、成毛氏の「ぜひ、おしぼりができる工程を見てください」とのお誘いを受けて、メンバーは日本ラインファーストの北関東工場へ移動することに。その様子は後編で!