学校法人大正大学 × 第一勧業信用組合 – 独自プログラムで地方創生を目指す大正大 新時代の産学連携を第一勧信がバックアップ
おばあちゃんの原宿に異変!?
おばあちゃんの原宿こと巣鴨地蔵通り商店街を訪れる若者がこのところ増えている。
そのナゾを探ると、独自プログラムで地域活性化を担う人材育成に取り組む大学の姿があった。
その大学とは昨年12月15日、第一勧業信用組合(東京都新宿区)と地方創生に関する連携協力を発表した学校法人大正大学(東京都豊島区)である。同大学の学生は地方に滞在し、長期の地域実習を実施、「生きた経済学・経営学」を学ぶという。それはどんな取り組みで、どんな成果を挙げているのか、取材を行った。
巣鴨の町に増える若者の姿
東京・巣鴨が元気だ。
例えば、昨年9月から10月の毎週末には「地域フェアinすがも」と銘打たれた日本各地の物産フェアが週替わりで開催され、人気のフェアには2000人近い来場者があったという。10月28日、29日にはユネスコ無形文化遺産に登録された山形県「新庄まつりの山車(やたい)行事」が出張という形で開催され、絢爛豪華な山車が町を練り歩いた。巣鴨と言えば、「おばあちゃんの原宿」として知られる巣鴨地蔵通り商店街をはじめ高齢者のイメージが強い。
しかし、ここ数年は散策などを楽しむ若者の姿が散見されるようになった。
こうした町の原動力となっているのが、巣鴨の地に設立され、今年で創立92年を迎える学校法人大正大学(東京都豊島区)である。
長年、社会貢献活動に取り組んできた同大学は2015年に地域創生と地域課題解決のための基礎研究を行う「地域構想研究所」を開設。その翌年には東京の大学では初となる「地域創生学部」を新設した。地域での実践的な研究・教育活動を通して行われる地域創生などの取り組みが評価され、昨年には「大学の地域貢献度調査(日本経済新聞社)」ランキングの「組織・制度」分野において見事1位に選ばれている。
実は、先の地域フェアを主催したのは同大学であり、新庄まつりも同大学と巣鴨の3商店街でつくる一般社団法人コンソーシアムすがも花街道が主催したもの。そして、それぞれのイベントでは同学部の学生たちが大いなる活躍を見せた。
大学の社会貢献が地域活性化に
大正大学と第一勧業信用組合(東京都新宿区)が地方創生に関する連携協力の協定を締結したのは昨年12月15日のこと。同大学にて行われた調印式にて、大塚伸夫学長は次のようにコメントをした。
「研究・調査を行う際、あるいは当大学の教育プログラムである地域実習の際に、第一勧信さんの力をお借りできれば、さらに成果が上がるものと期待しています」
同信組の新田信行理事長も「私どもが行っている地域活性化の取り組みに、もっと広がりが出るのではないかと夢を膨らませています」と期待を寄せる。
近年、大学では「地方創生」「地域貢献」をテーマにした学部などの新設が相次いでいる。
人口減少、大都市圏への一極集中が国家的な課題となる中、大学が地方の活性化やそれを担う人材育成をどう行っていくのかは、国を挙げた関心事となっている。
また、大学の本来的な機能である「教育」と「研究」に加えて、最近、強調されるようになったのが大学の「社会貢献」だ。教育や研究は、そのもの自体が社会貢献と呼べるものではあるが、国際協力や産学連携といった、より直接的な貢献が今の大学には求められているのである。
こうした流れの中、同大学が地域創生に注力するようになったのは2011年に発生した東日本大震災がきっかけだった。
「震災から1カ月後、宮城県南三陸町に拠点を置き、学生、教員、職員が一丸となって被災地支援活動を開始しました。これが契機となり、その後、北は北海道、南は鹿児島まで、日本各地の60を超える地方自治体、あるいは他大学などと連携協力の協定を結ばせていただきました。第一勧信さんも全国22の信組と連携をし、積極的に地域おこし、町おこしに取り組んでおり、当大学と目指すところが一致していると感じています。そうしたことから、今回の連携の運びとなりました」
過去の連携協力をさらに発展させ
大正大学の地元である巣鴨には第一勧業信組の支店がある。そうした関係から、両者は古くから接点があり、近年では同信組のインターンシップや創業支援イベントに学生が参加するといった交流が続いていた。今回の協定締結には、そうした動きをさらに発展させる狙いがある。
「インターンシップの中身をもっと充実させたい」そう話すのは新田氏だ。
「参加していただいた学生さんには、私どもが連携する地方の信組の活動や地方創生に関する事業を実際に見ていただきたいと考えています。学生さんに信組業界そのものを知っていただく機会が作れたら嬉しいですね」
大塚氏も次のような展望を述べる。
「地方の信組の取り組みや地方創生に関わる企業の活動を直接知ることで、学生にとって進路を決める際の指標になるのではないかと思っています。また、そうした現場に触れ、地域と企業がどう関わっているのか、人と人とがどう関わっているのかという学びを学生には体験して欲しいと考えています」
そのほか、今回の連携では地方創生に関する事例などについて共同調査・研究を実施。地域社会や民間企業に学術的知見や情報を提供し、地域社会の発展に貢献していく。
加えて、講演会やセミナーなどの共同開催も計画している。「私どもが提携する糸魚川信用組合(新潟県糸魚川市)の地元では2016年に起きた大規模火災の復興作業が現在も続いています。そうした現場でも、大正大学さんの知見をお借りできればと思っています」と新田氏。
東京一極集中の解消を目指す独自の教育プログラム
大都市圏への一極集中とは、学生の一極集中も意味する。東京の大学としてこの問題と向き合い、大正大学が出した答えが、さまざまな地域から受け入れた学生を「地域へと回帰させる」教育システムづくりだった。
その軸となる独自のプログラムが「地域実習」だ。
学生は1年のうち8週間を地方で暮らし、フィールドワークを通じて地域活性化についての実践的な学びを得る。実は、冒頭で挙げた地域フェアや新庄まつりの開催も、この地域実習によって生まれたアイデアである。
「受け入れ先の自治体で学生はボランティア活動や町内事業所でのインターンシップ、地域イベントの企画・運営などに携わります。地域と密接に関わることで『生きた経済学・経営学』を学び、都市問題にアプローチする力を身につけます」と大塚氏。
例えば、先の地域フェアで行われた「あなんフェス」では、1年前に地域実習で訪れた徳島県阿南市を2年生が紹介。
「地方と都市の共生」をテーマに同市の豊かな食を通じて阿南市のよさを知ってもらおうと、すだちやシイタケといった地域の特産品のほか、地域実習で学生が「おいしい」と感じた食パンなどを販売した。
自分たちが実際に販売することで、プロモーションにおける問題点や仕入れ商品の見直しといった課題を見つけ、3年次に再び、阿南市で実習を行う。「卒業後には、受け入れてくださった地域の役所や企業に学生が就職し、地域活性化の一翼を担ってもらうのが理想です」と大塚氏。
第一勧業信組との連携協定により、今後はこうした学生の受け入れ先が拡大する見込みだ。
「学生にとっては選択肢が広がり、将来の夢や希望にそった活躍の場を、より見つけやすくなるのではないかと期待しています」
地域に根ざした大学として
2013年、巣鴨に新名所が誕生した。
大乗仏教思想である「智慧と慈悲の実践」を建学の精神とする大正大学が30年来の構想のもと、大学構内に建立した仏教文化施設「すがも鴨台(おうだい)観音堂」、通称「さざえ堂」である。
堂内の回廊は往路と復路が交わることのない二重螺旋構造となっており、堂内を進むことで巡礼が叶うという。
昨年5月には、前述のコンソーシアムすがも花街道が経営する共同アンテナショップ「座・ガモール」が2店舗同時に巣鴨にオープン。同ショップには地域実習などで連携する山形県と宮城県の6市町が参画し、店内にはそれぞれの地域の産品が並ぶ。
店内スタッフのほか、企画や経営にも地域創生学部の学生が参画し、フィールドワークの場として産学共同で運営を行っている。
巣鴨は高岩寺や眞性寺などの門前町として発展した町である。信仰の町の新たなランドマーク、観光スポットとしての同大学の各施設や取り組みが、巣鴨の町に活気をもたらしているのである。
「当大学は社会に貢献する大学として、特に地元・巣鴨との連携に力を入れてきました。地域創生学部が新設されたことで、当大学の地域貢献活動は特色のある学びとして広がりを見せています。地域に根ざした大学だからこそできる教育プログラムで、今後も日本の未来を築く人材の育成に尽力していきたいと思っています」と大塚氏。
産学連携と大学における社会貢献のあり方に新しい風を吹き込む同大学。そして、地域密着型の協同組織金融機関として地域活性化に積極的に取り組む第一勧業信組。
両者の連携により得られる学びがどんな人材を育てるのか。地方は今、元気な若者の力を渇望している。
●プロフィール
大塚伸夫(おおつか・のぶお)氏…1957年生まれ。
非常勤教員を経て、2009年、学校法人大正大学人間学部仏教学科特任准教授、2014年より同大学仏教学部仏教学科教授。
同大学の綜合仏教研究所所長、学長補佐等を歴任し、2015年、同大学の学長に就任、現在に至る。
●学校法人大正大学
〒170-8470東京都豊島区西巣鴨3-20-1
TEL:03-3918-7311
●第一勧業信用組合〈本店〉
〒160-0004東京都新宿区四谷2-13
TEL:03-3358-0811