株式会社アプリ × 大学生 販促品開発会議・直撃レポート!<前編>
最近、学生と企業の接点と言えば、まずインターンシップを思い浮かべるが、学生はややもすると一方的に企業側のコンテンツを押し付けられがちである。そうすると、学生にとってはスキルアップにつなげたり、自身の潜在力を確認することができない。
一方、学生と対等の関係をつくり、学生の力を引き出すプロジェクトを上手く運営している企業もある。今の学生は、情報量、活動量も多く、戦力になる可能性を十分に秘めている。ましてや学生が当事者にもなりうるビジネスであるならば、学生の視点は非常に重要であり、学生は積極的に参加すると良いだろう。
今回、学生と上手くコラボしている、観光分野を中心にした人材サービス会社アプリ社の販促品開発会議を直撃取材した。
販促品開発プロジェクト・キックオフ
─去る8月某日、新宿にあるアプリ本社の会議室には、事業部、広報のスタッフと学生たちが集結していた。学生メンバーとはこの時が初対面で、今日はプロジェクトの説明を行う日のようだ。
アプリ:こんにちは、私は当社でいくつか事業部がある中で、リゾート事業部を担当しております。リゾート地にある旅館やホテルなどに、弊社でご登録いただいたスタッフさんの紹介先を開拓する営業の主任をやっています。実は、私もリゾートバイトの経験者で、熱海と下田と箱根に行き、ホテルで住み込んで働いた経験があります。
今回、リゾート事業部の販促品をお考えいただくのですが、実際のスタッフさんはどういった気持ちなのかというご質問にも、細かくお答えできると思いますので、何でも聞いてください。
事業概要の説明
アプリ:社名からアプリケーションのアプリと間違われたりしやすいのですが、改めてどんな会社なのかを説明していきたいと思います。当社は株式会社アプリといいまして、英字表記だとAPPTLI。こちらは、我々が作った造語でして、アプリカント=応募者とレセプショニスト=接客係、あとは、プロフェッサ=専門家この3つの単語から作った言葉です。
応募者や、接客に心を向けながら人材サービスの専門家になろうという意味です。設立は2002年の3月なので、今年でちょうど丸15周年です。社員数は、グループ会社を含めて現在124名なのですが、実はここ年年くらいで倍増しています。
事業内容を一言でいうと、人材派遣・人材紹介の会社です。主にリゾート地に特化しており、他にも留学・ワーキングホリデーのサポート、訪日旅行客の支援などもやっております。企業理念は、『若者に価値あるchallengeを』と掲げています。
その意図としては、若者が多様な価値感、豊かな人間性、タフなメンタリティを身につけるためのチャレンジの場を提供すること。元々20代の方が多くて、その方々のチャレンジとは、しっかりお金をためて次のステップへ向かうことなので、そのような方の背中を押してあげようという想いを我々は常に持ちながら事業をしています。
企業理念を実現するため、昨年に2つのサービスが始まりました。それが、『Tokyo Dive』と『Global Dive』です。Tokyo Diveは、名前からもわかるように上京のお手伝いをするサービスです。Global Diveに関しては、留学・ワーキングホリデー・バックパッカーのサポートをしています。
この3つの柱なのですが、この新しい2つのサービスができたおかげで、「リゾートで働いた後に東京で働きたい」「海外で英語を学びたい」という声が登録スタッフさんから上がってくるようになりました。ワンストップでサービスを受けられるという声や、相談していた当社スタッフに続けて相談できるなど、とても好評をいただいています。こういったサービスを提供するだけではなく、留学から帰ってきて、これからの仕事どうしようかなという相談にも乗っています。
こうして色々な若者のチャレンジを繋ぐことができるのですが、我々は、この1サービスを提供することを1カウントとして、『つなぐチャレンジ』というプロジェクトをやっています。そして、2025年までに100万チャレンジを目指しています。
会社が大切にしていること
アプリ:当社が大切にしていることは、「当たり前のこと」をやること。アプリにとっての当たり前とは、コミュニケーションです。特に大切にしているのはスタッフさんとのコミュニケーションですね。実際にどんなことをしているのかというと、仕事に入る前の準備物の案内はもちろん、飛行機・新幹線・高速バスなどの予約を取り、自宅からの経路を希望に沿って細かく相談にのります。
また、地元を離れて不安を感じる方も多いので、そういった不安を少しでも和らげてもらうために、営業社員は定期的に電話をしたり、実際に職場へ会いにも行きます。東京本社で近い場所でいうと箱根や熱海。遠い場所だと長野まで行き、「お仕事順調ですか」「不安な部分は無いですか」などをヒアリングします。その際には差し入れにお菓子を持って行ったりもします。
今回フィールドとして取り組むリゾートバイト事業とは?
アプリ:さて、いよいよリゾートバイトについて掘り下げてご説明したいと思います。リゾートバイトというのは、全国のリゾート地にあるホテルや旅館などで、寮に住み込みながら働くお仕事です。ですので、都市部の居酒屋でアルバイトするよりも、非日常的な体験ができます。
実際に、どんなお仕事をしているかというと、ホテルですとフロントやレストラン、旅館ですと仲居などです。あるいは接客が苦手な方は、ハウスキーピングや皿洗いなどの裏方をすることもあります。また、季節によりますが、夏は沖縄でマリンスポーツの受付をしたり、冬はスキー場でリフト係をするお仕事もあります。
お仕事の平均期間は大体3カ月程です。3カ月やってみて、この現場でもっと働きたいとなれば延長することも可能です。最終的には職場に正社員として就職した方もいます。
販促品を開発するミッション
アプリ:今回は、就業中スタッフさんの満足度向上、新規登録者への登録促進、この2点を踏まえて販促品を考えるのがミッションです。その際、つなぐチャレンジプロジェクトを訴求していくことも忘れないでください。
現在当社が扱っている販促品は、エコバックを活用したつなぐチャレンジのPRであったり、弊社サービスを記載したカレンダーです。ちなみに、誕生日タンブラーというものもありまして、こちらはスタッフさんの誕生月にお渡ししています。
会社のことをよく知る
ファシリテイター:皆さんが、今回のミッションに取り組むにあたっては、1つの船のクルーと思ってください。今回の皆さんのミッションは、今、まさに出していただいた課題に対して答えることによって、もっと販売促進することができるか、売上を伸ばすことができるか、スタッフさんの登録を伸ばすことができるか。
そして、リゾートバイトというもの自体が、もっと世の中で価値が高まり、それ自体が日本だけではなく世界にも広がっていくような、そういうようなものに、たった1つの販促品かもしれないのですが、つながっていくと思ってください。
では、そのためには、企業から課題をもらって一番最初にやらなければいけないことって何だと思いますか?
学生:業界分析でしょうか?
ファシリテイター:業界分析も大事。すごい当たり前で、そんなこといちいち聞くなよっていうかもしれないけれど、業界分析と同じくらい重要なことは?
学生:自社分析ですかね?
ファシリテイター:そう、自社分析と専門用語的に言っていただいたのですが、会社のことを知る、社員の方のことを知る。会社って元から箱みたいなものがあるわけではなくて、ある創業のメンバーの方たちが、起業するのが始まり。何かをかたちにするのが起業であり、それが、次第にお客様を得て、お金が流れて、社員の方が増えていって、1つのビジネスが始まる。
なので、すごく大事なのは、どういう想いで始まって、どういうことをやりたいのか、その会社のことをよく知ることが、すごく大事になります。
先ほどのつなぐプロジェクトでいえば、スマホでも見れますが、このようなサイト(https://apptli.co.jp/tsunaguchallenge/)もありますので研究してください。
では、みなさんの頭の中でイメージをしっかり持つため質問をしてください。
学生:1人何回くらいリゾートバイトに行かれるんですか?
アプリ:20カ所以上の現場に行かれている方もいます。また、同じ現場で長く続けたほうが、仕事を覚え直さなくて良いという考えの方や、色々な仕事を経験することで、先の目標を見つけたいという方もいます。リピーターの方も比較的多くいて、2〜3カ所に行っていただく方が多い印象です。
学生:面接のタイミングで、「私、海外に行きたいんです」っていう人は大体何割くらいでしょうか?
アプリ:最近は特に増えてきているように感じます。意外と海外志向の方が多くなり、「英語苦手なんですけど、色々な方と関わりたいという気持ちがある」という方もいて、3人面接すると2人くらいは海外に興味を持っている印象です。
ファシリテイター:ミッションは、社内資料では販促グッズ開発プロジェクトとなっていますが、これは当然、販促品というものを作らなければいけない。アイディアではなく作るということです。
学生:予算はどれくらいなんでしょうか?
アプリ:予算は1個200円くらいと考えてください。
学生:配布する数量はどれくらい?
アプリ:就業者向けでしたら、だいたい1万個くらいです。
ファシリテイター:今回の課題をよく理解するために、まず会社のことをよく知るということをやっていただきました。さらに、質問していただくことで、課題を明確にするということをやっていただいた。言葉って意外と難しくて、課題を出す側が言っていることと、受け取る側が認識していることが違っている場合がよくあります。
将来のビジネスの中では、せっかく考えたのに「いや、ちょっと違うんだよ」とか、いろんなことが起こります。なので、自分は課題を本当に理解できているのか、コミュニケーションをとって確認することが、ビジネスの上でもとても重要になってきます。
アイディアを出す
ファシリテイター:じゃあ、コミュニケーションを途中でもやっていただきながら、次は、一番大事なポイント、アイディアを出すことを最初にしていかなければならないのですが、アイディア出しには何が大事かというと、量が大事なんですね。グループワークとかで、アイディアを一番最初に皆で出す時、どれくらいの個数が必要か?
ビジネスでよく言われるのが100個。1人100個です。それぐらいの量を考えるということが、日常のシーンの中で与えられるいろんな課題や、クライアントからの課題に取り組むために必要です。実際に100個というのは、今回はいきなりやってくださいとは言わないですが、今与えられている『販促品を考えよう』というものについて、50個くらいのアイディアを考えることにトライしてください。
50個の考え方、アイディアの出し方なのですが、アイディアを考えていく時にすごく大事なのは、まず、今日皆さんここにいらっしゃるのは、大学生の方。で、自分っていう視点だけだと、自分としての好みとか、自分としての好き嫌いとか、自分が経験してきたことの中でしかアイディアが浮かんでこない。
そこで、視点をずらす。視点をずらすというのは、自分以外の年齢層、自分以外の性別、自分以外の国籍でもいいし、あるいは趣味でもいいし、違う人の視点にどれだけフォーカスできるかということがアイディアを増やしていく。自分を中心に考えると、その中で経験してきたことでいうと、10~20個くらいアイディアを考えるのが限界値です。さて、自分の視点をずらすのって、どうしたらいいと思いますか?
学生:やっぱり周りの人に聞いたりする。家族とか友人とか親しい人に聞いて、その人に視点をずらす。
ファシリテイター:良いと思います。他にありますか?
学生:アンケートとかを作って、ツイッターで発信します。
ファシリテイター:そうですね、今は便利なツールがたくさんあって、ソーシャルとかいろんなツールで繋がって、一緒に考えることができる。そういう意味では、アイディアシェア。たくさんの人と繋がって考える。そういうのはまさに、そこに参加してる人たちがみんなで考えるとすごい。
自分以外の人に聞くこと以外に、自分の頭の中だけでどうやってアイディアを増やすことができるか?
学生:あるものとあるものを一緒に組み合わせる?
ファシリテイター:いいですね、例えばどんなものを?
学生:例えば、よく使う日常品の文房具×行事とか、場所とか、そういう組み合わせを数多く考える。
ファシリテイター:要は、組み合わせという時に大事なのは、普通だと組み合さないものを組み合わせる。そういう日常品と場所とか、頭の中であえて異質なものを組み合わせると、面白いアイディアが生まれます。普段ありえないだろうと思うものを、あえてくっつけてみる。
そして、いろんなバリエーションをどんどんどんつくっていく。実現可能かどうかは、アイディアの中では1回忘れる。つまり、他の人が考えつかないようなものをどれだけ豊かに考えつくか、アイディアの量からそれは生まれてきます。
空間や、時間、シチュエーションの要素も重要ですね。場所のバリエーションを増やすのと、あとは季節などですね。冬の北海道のリゾートでもらうのが嬉しいものと、沖縄のリゾートで貰うのが嬉しいものは当然違う。他にも、人と人とが繋がる時に、誰かから何かを貰うとかっていう時に、どういう渡すきっかけがあるのか、シチュエーションです。どういうシチュエーションで渡すのか。
こうやっていろいろな切り口からアイディアを増やしていく。そうやって考えてくと、それぞれごとにアイディア50個なんてすぐに出ます。
この後に、ステップとして絞り込みが入ります。最終的に何をして、どのアイディアにするか決断しますか?
フィールドワークでアイデアを絞り込む
ファシリテイター:さて、次のステップ、ビジネスでは商品開発において重要視するのは、フィールドワークなのですが、実際にそれをやってみた時、そのアイディアの中で絞り込んでいく50個の中で最大3つに絞っていく。
その3つについてフィールドワークしてみた結果から、最後に1つに絞る。いろんな人に聞くでもいいし、いろんな人に類似品やプロトタイプを試しに使ってもらう。フィールドワークをやることによって、リアリティが生まれ、それを選ぶ人にとって、どんな人が、どんな使い方をするのかということを一緒に提案すると、根拠が生まれます。
なぜそのアイディアがいいと思っているのか、自分1人が思っているだけではなくて、これだけの人が、こういう属性の人が、あるいは実際にそれに対してこういう反応だったという根拠を手にすることによって、アイディアが提案に変わります。
で、最終的には、この提案をプレゼンというかたちで、次回皆さんが集まっていただく時には、お1人ずつプレゼンをしていただきます。このプレゼンが最後、実際によければそれをアイディアとして採用し、販促品を制作していくことになります。
提案書の作成
アプリ:学生の皆さん、フィールドワークをしっかりやっていただき、リアリティのある提案を楽しみにしています。次回の再会が待ち遠しいですね。
◆ ◆ ◆
【企業情報】
会社名:株式会社アプリ(Apptli Inc.)
・コーポレートサイト https://apptli.co.jp/
・はたらくどっとこむ https://hataraku.com/
電話番号:03-6311-9833
代表取締役:庄子 潔
本社所在地:〒160-0022
東京都新宿区新宿3-1-22 NSOビル4F
従業員数:124名
年商:50.4億円(2016年度)