FCEトレーニング・カンパニー代表 安河内亮が注目企業に切り込む!伸びる会社の人材育成術:株式会社ベルパーク編
FCEトレーニング・カンパニー代表 安河内亮が注目企業に切り込む!伸びる会社の人材育成術
「伸びている企業の秘密は人材育成にあった!」
成長を遂げている企業の経営陣は、どのようにして人材育成を行っているのだろうか。
これまでに4,500社を超える企業の研修・教育を行ってきたFCEトレーニング・カンパニー代表、安河内亮が伸びている成長企業を取材し、人材育成のポイントを探る。
第5回 株式会社ベルパーク
株式会社ベルパーク(社員数:1,908名 ※2015年2月末時点)
本社:東京都千代田区平河町1-4-12 三信平河町ビル6・7・8・9F
TEL:03-3288-5211(代表) FAX:03-3288-5288
URL:http://www.bellpark.co.jp/
全国250店舗を超える携帯電話のキャリアショップを運営する株式会社ベルパーク。様々なタイプの人材が集まる同社はユニークな研修を採用し、マネジメントに役立てています。どのような研修を、どのようにマネジメントに活用しているのかキャリアショップ店長の青木氏と同社の人事部教育担当の瀧氏にお話を伺いました。
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─携帯電話のキャリアショップでの仕事について教えてください
青木:私の店舗は10名ほどの人員で営業しています。私よりも年下のクルーが多く、女性6人、男性4人をマネジメントしています。
業務時間の5~6割の時間はフロアマネージャーとして表に立ち、来店されたお客様のリクエストを伺って待ち時間をお伝えし、その内容をクルーに伝達するという業務を行っています。クルーは正社員、契約社員、アルバイト、派遣社員など、様々な雇用形態の人達がいて、マネジメントの難度が高いですね。
私自身もそうなのですが、他の店長達からも年上の部下のマネジメントが大変だという話をよく聞きます。
瀧:私は人事部の教育担当として、中途で入社してきた社会人経験の長い社員や新卒で入社するまでアルバイト経験すらない社員など、様々なタイプの社員のマネジメントをする必要があります。店長の悩みとして「自分より年上で社歴も長い部下に対してどう指示を出せばいいのわからない」、「部下に気持ちよく指示を聞いてもらえなくて不安だ」と言う話がまず出てきますね。
─ユニークな研修を導入し、マネジメントに活かしていると伺いました
青木:「7つのマネジメントスキル研修」という研修で、マネジメントに必要な「共感するスキル」「質問するスキル」「褒めるスキル」「叱るスキル」「指示するスキル」「報告を受けるスキル」「会議するスキル」という7つのスキルを学びます。
私がこの研修の話を初めて聞いた時点でコミュニケーション能力にはそこそこの自信があったのですが、自分にはないスキルが学べるのだったらぜひ参加したいと思いました。実際に参加してみて、自分が普段から取り組んでいることは間違いじゃなかったと自信になり、新しく学んだ知識を現場で使ってみたいと思いました。
コミュニケーションの取り方を学ぶ「聴くスキル」の研修は強く印象に残っています。それまでも話を聞くときには「相手の方に体を向ける」など、それなりに意識していたつもりなのですが、制限時間のある作業をしているときに横から話しかけられて、ちゃんとそちらを向いて話が聞けているか、目を見て話が聞けているかどうかといったことをより意識するようになりました。今は正対して話が聞けるようになったと思います。
また、自分はもともと話を掘り下げないタイプだったのですが、相手に理解してもらおうと思ったら絶対に話を掘り下げないとダメだということを研修で学びました。できれば短い時間で伝わり相手の行動を変えられるのが一番いいのですが、結局もう1回同じ説明をしなければいけなくなるとか、スタートしてしまって後で方向修正をするというその後の手間のことを考えると、その時は3倍の時間はかかりますが、要因を掘り下げていく時間を設けたほうが、効果は早く出やすいと思います。相手の腹落ち具合がぜんぜん違いますし、結果的に伝わるスピードがはるかに速いんですよね。
─どうしてこのような研修を導入されたのですか?
瀧:もともと弊社では社内の昇格研修であったり、携帯電話のキャリアが定めている資格試験などに合格するためのバックアップの研修は充実していました。しかし、部下を持つ上司を育成する研修などはあまり充実していませんでした。しかし組織がどんどん大きくなり、部下を持つ社員が増えていく中で本格的に取り組む必要があり、外部の研修を導入しました。
弊社ではこの研修に、本部長以下すべての役職者を参加させています。この研修に参加すると、参加した社員同士の共通言語ができてきてお互いに「ちゃんと研修でやった〝聴く姿勢〟をとってくださいよ」と気軽に言い合える環境ができるなど、社内風土として定着しつつあるのかなと感じています。
他にも副店長になったばかりの社員達は、「叱るスキル」と「褒めるスキル」の研修にとても感動するようです。マネジメントをする上では、部下の改善すべき点を指摘し、叱ってあげて、その部下達のモチベーションを保てるように褒め、また叱って、また褒めるというサイクルを回すことが必要だと思います。ですが、年齢が上の社員に対して「叱る」ということが研修を受ける前はなかなか難しかったようです。年下に注意される人を思いやりすぎたり、関係がギクシャクすることを恐れたり……。
実はこの「叱る」「褒める」のスキルを学ぶ研修の一番最後に「リーダーは尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない。」という言葉がスクリーンに大きく出てくるんですが、その言葉によって「人をマネジメントするということは、自分は嫌われてもいいと腹を決めることなんだ」と気づく人が多いようです。
「自分はこれまでのように仲のいいチームメイトじゃなくて、上司としてこの人達を引っ張っていく立場になったんだ」と、自分がその職位について覚悟というか、意識をさせる場にもなっていますね。
─店長・副店長の皆さんへの想いをすごく感じますね
瀧:本社・店舗と物理的な距離もありますし、担当する業務も異なるので、想いもすれ違いがちです。私は店舗での勤務経験がなく、入社したときから人事部にいるので、やっぱり現場のことがわかっていません。それに「わかっているつもり」にもなりたくないんです。
実は1カ月だけ店舗に入って勉強させてもらったこともあるのですが、「こういう勢いで怒鳴りつけてくるお客様もいるんだ」とか、「体力的にも本当に大変なんだ。そんな中、みんなで協力してやってるんだな」とか店舗で働く社員の気持ちを理解できました。
店舗での経験から学んだことはたくさんありますが、最も大切なことは店舗のみんなに対するリスペクトです。その気持ちを持ってお互いに負荷にならないように、研修受講のためのよい仕組みづくりをしていきたいと思っています。店舗の社員に対して「とにかく研修に来てください!」というのは筋ではないと思うので。
─青木店長の将来の目標を教えていただけますか?
青木:私はもっと上の役職に上がっていきたいです。その時に、できるだけ部下のクルーが苦しみながら働く環境ではなくて、人を思いやり、働くことで不幸な人が出ない環境を作りたいです。
そのためには今回の研修で学んだようなスキルをしっかりと持っている人達が上にいれば、そのような不幸な状況にはならないと思っています。ただ上司や上の役職になりたいということではなくて、「人を育てられるスキルがある人」を育てられる人間になりたいです。
瀧:私は野望があります。お客様から「弊社の運営するショップは他社のショップとは違うよね」と言われたいんです。「あのお店はベルパークが運営しているんだ。どうりですごいわけだ!」というお客様の言葉をたくさん聞きたいです。
さらに、人気の職業ランキングでアナウンサーや、ウェディングプランナーのように携帯電話のショップ店員がランキングに入るようにしたいんです。みんなが憧れる職業になって欲しい。そのように社会的なイメージまで上げるのが密かな野望です。
■FCEトレーニング・カンパニー代表・安河内亮の一言
今回は人事部の方と、現場の店長にスポットを当てました。非常に人を大切にする姿勢が伝わってきますが、特に注目すべきは2点と感じました。
①組織の空気をつくるのはリーダーからである
②人を育てることは会社全体が取り組む重要アクションである
組織づくりの手順でまず第1段階として「トップランナーをつくる」というステップがあります。これは組織を引っ張るトップランナーをつくることから始め、仲間をつくり徐々に組織風土を変えていく考え方です。店舗ビジネスは、特にこの組織づくりが重要です。なぜなら、狭い空間の中に少ない人数が集う場なだけに、組織の空気はよくも悪くもすぐに出来上がり、ダイレクトにお客様へ伝わります。
そして、その空気を作り出すトップランナーの一番目になるべきは組織のリーダーである店長なのです。店長のマネジメントスキル、つまり組織づくりの術について強化をされているのは、まさに本質だと考えます。
そして、上記のような人材育成と組織づくりは、店舗のメンバーだけがやればいいのではなく、人事だけが考えて一方的に場を設定すればいいというものでもありません。人材育成と組織づくりは、企業にとって最重要なアクションの1つです。
各店舗と人事が自社にとって必要だと感じるテーマで学びの場をつくっていく。そうした協力体制が企業の人材力を引き上げるのだと当社の事例からも強く感じました。
★安河内 亮(FCEトレーニング・カンパニー代表)
東証一部上場企業にて、大手小売チェーン等の経営支援に携わり、その後、人財開発部門へ。就職人気企業ランキング日本50位へランクイン、「働きがいのある会社」ランキング入賞など実績を残す。その後FCEトレーニング・カンパニーを創業。自らも人財コンサルティング、社内大学構築等を実施。嘉悦大学非常勤講師。