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学校法人日出学園 勉強一辺倒ではダメ!「文武両道」

多くの企業がもっと学校に存在をアピールすべきだ!

◆取材・文:加藤俊

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井上校長 日出学園5

 学校法人 日出学園/校長 井上敦雄氏

110周年という長い歴史を刻んできた伝統校、日出学園。目黒の商店街の一角という恵まれた教育環境にあるこの学校は、長いこと女子高だったため、いまなお「しなやかな強さをもった自立している人間を育てる」という特色ある教育理念を掲げている。

また、山口百恵さんをはじめ、多くの芸能人を輩出してきた学校として、その名を聞いたことがある人は多いだろう。 お話をお聞きするのは、平成22年に赴任した校長の井上敦雄氏。水泳界では知らない人のいない名監督である井上校長が大切にしているのが「文武両道」という考え方。中小企業や町工場がイマドキの若者とどう向き合えば良いのか、そのヒントをお聞きする。

  部活動で汗を流せ!

井上校長 日出学園3

日出学園 井上校長

「文武両道の武は、運動系・文化系問わず、とにかく部活動で3年間楽しい生活を送ることを指しています。部活動を通してしか学べないことがありますよね。部活動で培った交友関係は社会に出ても続きますし、一生の財産になります。だから、生徒には、『狭い教室で勉強ばかりしていてはダメ。放課後は勉強のことを忘れて汗を流せ! 』と言っています(笑い)」

 

部活動の経験が、社会で大きく活きるという話に頷く方は多いだろう。このように、日出学園の教育は、大学への進学率という尺度でしか学校の良し悪しを量れない昨今の教育現場とは、一線を画している。 これは、井上校長の経験に基づいている面が大きい。井上校長は、長いこと日大豊山高校で教鞭をとってきた。同校の水泳部を名門たらしめたのは、井上校長の指導の賜物。多くの生徒を社会に送り出した教育者・名監督としての自負が、井上校長にこう言わせている。

 

「部活動を通して人と深く触れ合うことが、最高の人間教育になる」と。

 

 

学校が教えるべきこと

それだけに、昨今の学校教育の在り方には賛同できない点があるそうだ。判を押したように同じ言葉を語る私立学校の合同説明会。ここで見る光景を「どの学校も塾とやっていることが一緒」と嘆く。

 

「『昨年度は有名大学へ何名いった 』という、その手のアピールばかりが目につきます。非常に抵抗を覚えます。学校教育はそうではないだろうと! 詰め込み式の勉強に終始するのではなく、それ以前に学校は〝楽しい場所〟でなくてはならない。生徒が高校生活でどういった思い出を作れるか、もっと真剣に考えてあげないと」

 

確かに、高校生活は大学に行くための通過点ではない。高校時代の思い出は一番色濃く残るもの。その人の人格形成に大きく寄与する時期である。その時期に様々な経験を積ませてあげたいという日出学園の考えが、生徒の親に賛同者が多いのも納得できる。 しかし、そのためにはどうすればよいのだろうか?

 

井上校長 日出学園2

「生徒自身が学校への参加意識をもつことです。その参加意識を持たせるのが、先生の役目です。『黙っていたら楽しくないよ。自分達で率先して行動しないと、楽しい学校にはならないよ! 』と教える存在が私達なんです」

 

 

日出学園の教育方針は、このように生徒の〝気づき〟を重視している。高校という多感な時期は、なんでもスポンジのように吸い込める。この大切な時期に、受験勉強に終始しない教養教育を身につけることが、後年意味することは本当に大きい。こういった教育をうけた生徒はどういった社会人になるのだろうか。

 

もうじき、井上校長が日出学園で育てた生徒の多くが社会に飛び出していく。「うちの生徒は、素直で頑張り屋だよ!将来が楽しみさ」井上校長の言葉通り、期待は広がる。

 

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ここからは一問一答。井上校長の「直言」「直答」を通して、イマドキの若者感に迫る!  

井上校長 日出学園4

Q・高校を出て、進学せずに就職する生徒もいるのですか?

 

勿論います。

 

Q・生徒の就職先はどういった企業なのでしょうか?

 

中小企業が多いです。その中でも一般企業の事務系に行く子が多い。日出学園は、元が女子高ですし、今も女生徒の方が多いですから。美容関係の方面が人気ですね。

 

Q・生徒は就職先をどうやって探すのですか?

 

定期的に進路説明会をしています。専門業者さんを通して、企業の方に来ていただきます。美容関係や鍼灸関係の企業の方が多いです。生徒には、たくさんの企業や学校の説明を聞きなさいと言っています。

 

Q・学校在学中に社会との接点を持たせる機会は設けていますか? 企業経営者の話を聞かせたり、課外授業を行ったりはしているのでしょうか?企業経営者の話を聞かせることで生徒が刺激をうけ、より自分の将来像を意識するきっかけになると思いますが。

 

近所の商店街のゴミ拾いを通して、地域の人達とは触れ合う機会を設けています。ただ、企業経営者の講演といった趣旨では行っていません。時々、卒業生を呼んで話をしてもらうことはやっていますが。ただ現状では、芸能コースの卒業生が多いです。

 

Q・生徒に企業を見学させることはしていますか? 

 

夏休みなどを利用して企業見学に行きなさいよとは言うが、強制はできないですから。休み以外だと授業の予定が詰まっていますから、現状ではなかなか難しい。

 

Q・若者が考えていることがわからないと漏らす経営者が多いです。生徒を一番身近な距離で見ている先生の視点で、若者を雇用するにあたって、理解すべき点を教えてください。

 

子供たちは、どんなに成績の悪い子でも、最初は名の知れた有名企業を志望してきます。中小企業はどうかと聞いても、中小企業のことは知らないから働くという想像がつかないんです。

メディアで中小企業や町工場が取り上げられる機会は、ほとんどありません。実は、大田区の町工場が世界でもトップクラスの技術をもっていて、下手な大企業で働くよりも、魅力的な職場だとは知らないんです。

生徒の親も知りません。それ以前に、私たち教員だって知らないんです。知らなければ具体名を挙げて、中小企業を推薦しようがないし、生徒本人も志望しようがない。

 

Q・中小企業や町工場で働くことは、やりがいや自由度など大企業にはない面白さがあると思います。多くの町工場が、後継者問題に悩み消えていっています。先生の視点から見て、企業はどうすべきなのでしょうか? 

 

生徒の目に触れる情報が圧倒的に少ない。そのため給料や休みの有無などの目に見えてくる情報が大きな判断材料になってしまう。そうなると、大企業は保証されていますからね。

 でもね、私の教え子にも中小企業を経営しているのもいるし働いているのも多い。みんな勉強ができるタイプではなかったですが、部活動は真剣にやってね。彼等は企業の中でも大いに活躍していますよ。そして卒業後会っても、みんな顔が活き活きしています。毎日が充実しているのがわかる。

そういう中小企業ならではの楽しさや素晴らしさを企業側からも発信する必要があると思います。自分達の存在を知らしめるような行動を取っていくべきです。もっと宣伝した方がいい。専門学校からは卒業後の進路として資料が送られてくるが、中小企業側から資料が送られてくることはまずありません。学校として中小企業の存在を知らないから、就職先になりえない。この点を改善すべきなのではないでしょうか?

 

 具体的な提言をどうもありがとうございました。    

 

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井上校長 日出学園1

校長 井上敦雄
学校法人 日出学園 日出中学校・日出高等学校

東京都目黒区目黒1-6-15

電話0120-686-077

http://www.hinode-s.ed.jp

 

 

 

町工場・中小企業を応援する雑誌  BigLife21 2013年10月号の記事