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日本デザイン専門学校  学生も企業も、もっと自ら「動く」ことが望ましい。

就職支援課 課長/木村知弘氏 ・ 就職支援課 キャリアサポート主担当/髙橋佐也子氏

◆取材:加藤 俊 / 文:北條 一浩

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1958年に開校し、56年目に入った日本デザイン専門学校。デザイン系の専門教育機関としては屈指の伝統を持つ老舗の学校だ。芸術や創造力の部分と、産業および実生活のあいだを美しく橋渡しする「デザイン」の専門家を輩出し続けてきた同校では、激変する社会情勢の中でいま、どんな教育を行い、また産業界には何を望んでいるのだろうか。就職支援課のお二人に話をうかがった。

オペレーターではない、デザイナーをこそ、育てたい

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本校には現在、ものデザイン学科、クラフトデザイン学科、グラフィックデザイン学科、漫画・アニメーション学科など、全部で10学科があります。基本的な方針として持っているのは、自分の力で発想してモノづくりができるデザイナーを育てていきたい、という考えです。仕事の現場ではオペレーターももちろん必要ですし、そうなる学生もいますが、やはりデザイナーをこそ育てていきたいと考えています。(就職支援課 課長/木村知弘氏)

 

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そのために大切にしていることは、学生に素材を知ってもらうこと。ガラス、木、金属といった素材に、まずは一通り触れてもらうことを大切にしています。例えばものデザイン学科は2年、クラフトデザイン学科なら3年かけて学ぶのですが、初期段階であらゆる素材にしっかり触ってもらい、そこから自分のやりたいこと、特性を見究める段階に入っていきます。イメージしているだけではなく、実際に触れてみることでしかわからないことを重視するとともに、学生には幅広い知識を持ってほしいという思いもあります。(就職支援課 キャリアサポート主担当/髙橋佐也子氏)

 

 

【直言×直答】

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それではさらに具体的に踏み込んで、お二人からの「直言」「直答」を。いま、デザイン専門学校は、その学生たちは企業に何を期待しているのか?

 

Q・貴校では実際にどのような授業が行われているのか、お聞かせください。

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10学科ありますからなかなか一括りでは言えませんが、例えばものデザイン学科の場合、プロダクトやクラフトからスペースといった幅広い領域を学びます。木、金属、ガラス、樹脂などいろいろな素材を扱いながら自分がどんなデザインをしていくかを模索します。同時に、設計もできなければデザイナーとは言えませんから、図面を引く授業もあります。平面から立体まで、アイデアスケッチから実物まで、と考えていただければいいでしょうか。クラフト系の場合、今挙げた授業に加えて職人としての技術をさらに磨いていきます。(木村)

 

Q・貴校を卒業された皆さんは、主にどのようなところに就職されるのでしょうか?

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プロダクトなら日用雑貨や実用モデル(モデラー)などの仕事に就く者が多いですね。今はIT系が元気なので求人も少なくないのですが、求人票を見るとデザイナーのデの字もないことが多々あります。そういった企業を学生に薦めても、学生としては、デザイナーになりたくて本校に来ているワケですから、自分の学んできたことが活かせない環境に行く決断はなかなかできません。

企業の方にお願いしたいのは、本校に求人票を出す以上は、学生に何かしらのデザイン性を期待しているのでしょうから、そこをきちんと明記して頂けると、能力のある学生たちが志望しやすくなることをご理解いただきたいです。(木村)
「人形作家になりたい!」など、作家性の強い仕事を希望している者の場合は、頭を悩ませることになります。その場合、最も頼りになるのが講師と卒業生の存在です。長い伝統のある学校ですので、卒業生の中に学生が志望する業界の関係者がいたら、そこから情報をもらい、相談に乗ってもらうこともあります。(高橋)

 

Q・学生さんが希望する職種と企業側が求める人材は、一致しないことが多々あると思います。今、この点で最もご苦労されていることはどういうことですか?

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まず学生に望みたいのは、とにかく視野をできるだけ広く持ってほしい、ということです。少しでも自分が望んでいる仕事と違うと、「これは違う」「これもぜんぜん違う」と考えてしまう者が多い。そうやって視野を狭くしてものを見てしまうと、就職が難しくなることはもちろん、自分の可能性も閉ざしてしまうことになります。当初考えていたのとは違うけれども、自分の学んできたこと、やりたいことに、僅かながらでもつながる可能性をポジティブに考えて、進める道を見出してほしいですね。

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ただ難しいところもあって、学生は基本的に社会に出たことがないですから、世の中の仕事の実態を知らないことが多いんです。ですから企業の方にも仕事をもっとオープンにしていただきたいし、「こんなことができる子がほしいんだ」という具体的な声をあげていただきたいと思います。(高橋)

 

Q・将来ある若者を預かるお立場として、今、企業に対して特に望むことはどんなことですか?

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工場見学でも何でもいいのですが、学生や教員にもっと仕事を見せていただきたいと思います。百聞は一見に如かず、と言いますが、実際に仕事の現場を見て、若い感受性で吸収するのがいちばんいいと思います。本校でもインターンシップをやっていますが、マンガ家さんの所に行く学生なんて、半年間、場合によっては1年くらい行く者もいます。もはや半分アシスタントですね(笑い)。それと、デザイナーと美容業界は、仕事を始めて3年間は見習いだとよく言われますね。ですから少なくとも3年間はガマンして見てやっていただきたいと思います。(木村)

 

Q・企業に対して何か具体的なご提案がありましたら、お願いいたします。

2014年度は、インターンシップをもっと充実させていきたいんです。現在、やらせていただいている企業さんはまだ10社ほどですが、受け入れてくださる会社をいま、探しているところです。技術力に自信はあってもデザインは今一つだとか、今の若い人がどんなデザインをするのか知りたい方は、ぜひ、お問い合わせいただきたいと思います。(木村)

 

企業さんから「この製品で新しいデザインを考えてください」という課題をいただくことがあります。その場合は、少なくとも半年、できれば1年くらい、時間に余裕があると、その課題自体を学科の科目内で授業にすることができるので、たいへんうれしいです。もしコンセプトづくりの点から参加させてもらえるのでれば、公募形式などでほとんど予算のかからない範囲で、できあがった製品をいただけるだけでもいいかもしれませんし、様々なご協力ができると思います。(高橋)

 

わかりました。具体的で鋭いご提言、ありがとうございました。

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日本デザイン専門学校
東京都渋谷区千駄ヶ谷5−7−3
TEL 03−3356−1501(代表)
http://www.ndc.ac.jp/

 

 

2014年1月号の記事より

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