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東京都立農産高校 基本モットーは「成すことで学ぶ」農業を通して生き方を教えます

◆取材:加藤俊

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食と緑の学園 東京都立農産高校/副校長 須賀秀次氏

 東京・葛飾区といえば、大田区と並んで多くの中小企業がひしめき合っている地域。製造業の盛んなこの土地に、東京都立農産高校という学校がある。TPP問題に揺れ、零細企業が厳しい現実に晒される中、若者を社会に送り出す高校では、しっかりと地に足の着いた指導が行われている。須賀秀次副校長に話をうかがった。

 

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体を動かすことで学んでいく

都立農産高校は、戦後まもない昭和23年の創立。65年の歴史を持つ堂々たる伝統校だ。しかしながら、「都立」と「農業」は、イメージとして結びつかない人のほうが多いのではないだろうか。

 

「確かに、農家の子弟の方は基本、いらっしゃらないと考えていいと思います。卒業後もストレートに農業に就く子は少ない。食品の販売や製造業が主です。しかし、農業の実習はやはり体を動かすことが多いですから、机の上で勉強するだけではなく、そうした実践を通して人格形成されていくということだと思います」

須賀秀次副校長はこう語る。同校には全日制に園芸デザイン科と食品科があり、定時制には農産科がある。生徒さんの学習意欲は総じて高いという。

 

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「希望者には土曜日も授業を行っています。これが実に6割もの生徒が希望し、それぞれの講義に出席しているんです。英語、数学、国語などのほか、農業や情報、調理師や造園関係の国家資格の検定などに関する授業もあります。年間を通して皆勤の子も多く、そうした子には表彰もしてあげて、士気を高めています。こういう環境ができあがっていくと、学校を辞めてしまう生徒も減ります。また一般に定時制の場合は学力レベルが全日制に比べてかなり低いことが多いのですが、この学校では定時制でも、甘えさせません。一定のハードルを設けています。だから生徒もがんばれるんですね」

 

外国籍の学生の受け入れにも積極的だ。

「東京都に日本語指導外部人材活用支援事業というのがあります。教員免許を持っていない人でも、外国籍の生徒を相手に日本語を教えることができます。そうした支援と連携しながら、授業を進めています。今年はフィリピン、タイ、エクアドルなど、7人の外国籍の生徒が入学しました」

 

 

格段に向上した定時制の環境

定時制の学習環境は、近年格段に向上したと須賀さんは語る。

 

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「昭和50年代頃、私が全日制に勤務し、定時制に講師として来た頃は、そもそも1時間目は生徒がほとんど来ていないんです(笑い)。給食を挟んで2時間目からやっと集まる状態。汚い、怖い、暗い、のいわゆる3Kと称された時代もありました。今はそういうイメージはまったくありません。それは、チャイムで始まりチャイムで終わることを徹底させたことも大きいと思います。授業が早めに終わるとどうしてもざわつきますね。都立農産高校の定時制は茶髪禁止です。パーマやアクセサリーも基本は禁止。食品製造実習では必ずマスクと帽子を着用します。食品をつくることを学ぶ学校だから、衛生・清潔感が大切だ、という指導が、ここ10年でずいぶん徹底されました」

そのことが学校の評価と人気につながっていく。

 

「授業がまず落ち着いていること、そしていつでも授業を見て回ることが可能なので、親御さんが安心できるんですね。定時制は募集定員に達せず、実際この学校でも0・7倍になってしまったことがありますが、今年は1・7倍と過去最高でした」

さて、進路指導はどのようになされるのだろう。

 

「農業系の大学、短大、専門学校含めると、実は進学希望者が半数以上になります。先輩を呼んで話を聞くなどの進路指導、就職ならハローワークで学習会などがあります。そこで求人票の見方や選び方を学びます。4年生になると民間の講師を招いて仕事の選び方を学んだり、面接の仕方を指導したり、という時間が増え、担任をまじえ二者面談、三者面談でしぼっていく。求人票を提供して本人にしぼらせ、企業と連絡を取り、見学に行きます」

 

 

企業にお願いしたいこと

須賀さんの懸念は、せっかく就職しても、辞めてしまう人が少なくないことだ。

「特に定時制の場合、様々な困難を抱えている生徒が少なからず在籍しています。でもこの学校にやってきて、同じように悩んできた仲間がいることを知り、のびのびと育っていく子が多いのですが、それでも当然まだ、人とのコミュニケーションに問題を抱えた子はいます。販売の仕事などではそうした子はなかなか採用されない。それもわかるのですが、企業の方にも、一定数、そういう子がいるということをご理解願えればと思います」

 

若い世代を受け入れる企業に望むことは何だろうか。

「求人票だけではわからないことも多いので、中小企業の方には、いったいどんな仕事なのか、もっとよく見えるようなカタチでPRしていただく機会、オープンな場所がほしいですね。大学なら、東京ドームを貸し切った就職説明会などがありますが、高校ではあっても職員や担当者が行くだけで、生徒まではなかなか届いていません」

中小企業と学校を輝かすのは同じ理屈だと、須賀さんは力強く語る。

 

「学校評価、という機会を設けています。地元の方に参加してもらい、〝この学校はもっとこうしてほしい〟などの意見をうかがいます。そこに生徒も参加し、クラスごとに要望事項をまとめて来ます。生徒と教師と地域が一緒になってよりよい環境を作っていく。中小企業も同じではないでしょうか。資本金の額じゃない、〝ウチはこれだ〟という特長と、良い職場環境があれば人は来ると思います」

暗く荒れたイメージのあった定時制高校が自助努力で改善されたように、今は逆風の中小企業にも、いますぐ見直せるポイントが必ずあるはずだ。

 

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