ネクスター株式会社 ‐ 会社も政治も、目指すは「時代に合った豊かな国造り」 これからの日本を担う次世代の力
ネクスター株式会社 ‐ 会社も政治も、目指すは「時代に合った豊かな国造り」 これからの日本を担う次世代の力
◆取材:綿抜幹夫
世田谷区羽根木 ネクスターのオフィス前。
しばしば「ゆとり世代」と揶揄される平成生まれ世代。だが、中にはこんな熱い会社があるのをご存知だろうか。ネクスター株式会社は平均年齢なんと24歳。「若者」と「IT」をキーワードに若い世代をターゲットにした企業PRを次々と手がけ、地方創生事業でも都道府県と提携したPRを展開。徐々にその存在感を増している。
力とアイデア溢れるチームを率いる同社の代表取締役社長・細田悠巨氏に創業の思いや将来のビジョンを聞いた。
東日本大震災で挑戦を決意
同社の社名「ネクスター」は、「ネクスト」と「プレイヤー」と足し合わせて生まれた造語だ。
細田氏は平成元年生まれ。大学では某飲料会社のプログラムに参加し、マーケティング活動を行うなどして活躍した。そうした実績と大学でのイベント企画・実行などの活動を買われ、2011年の就職活動では早々に大手企業2社の内定を獲得。「就職先はこの2社のどちらかだ」と考えていた矢先、東日本大震災に遭遇した。
「自分の人生を考え直す、というと大げさかもしれませんが、これらの会社のために生きるわけでもないな、と。自分の人生と死、世の中について深く考えた1年でした」と細田氏は当時を振り返る。宮城県で3カ月間ボランティア活動に参加し、それまでの感覚では〝あり得ない〟多くのストーリーを聞く中で、「自分にできることは何か」を突き詰めた細田氏は、「〝自分の人生は自分で切り開く〟ためにチャレンジしてみよう」との思いに従い、両社の内定を辞退し起業する道を選択。21歳で、1つ年上のメンバー2人と共に最初の会社を立ち上げた。
そして同社が当初の目標を達成して解散した後、続いて22歳で新たな仲間と共に、名前の通り「次世代の力」をキーワードに立ち上げたのが現在のネクスター株式会社だ。
起業を支えたのは人脈を築く人間力
もちろん、いくら思いがあっても、会社を立ち上げ継続していくことは並大抵なことではない。それを可能にした1つの要素は細田氏の人間力、さまざまな人と出会い関係を築きあげていく力にあると言えそうだ。
「飲料会社のマネージャーをしていた時、バブル時代─1989年に学生イベントの最前線で活躍していた人が今は出世されてローソンの幹部をされていることを知りまして。同じ早稲田大学であり、同じイベントだということから、何でもいいので一度会っていただけないでしょうかとツイッターで話しかけたんです。そうしたら会ってくださって。その方の雑務からお仕事を始めて、その方個人の事務所で会社を立ち上げたのが始まりです」と、持ち前の行動力を発揮して積極的にアプローチ。
「雑務でも何でもやらせてください!」と申し出て、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会の前身となる組織に参加した。立場や業種を越え、本気で日本の未来を考えるさまざまな人たちが集まる会合だった。
若者向け企業PRの仕掛け人に
同社の事業のキーワードは「若者」と「IT」だ。「この2つの資源をどうはめ込むか?」というコンセプトの下、オンラインではスマートフォン向けアプリの開発やWebサービスの提供。オフラインでは、県や市の観光大使のように企業専属のブランド大使(アンバサダー)を設置してファンを増やしていく「アンバサダーマーケティング」、「ゲリラPR」の開催など、若者をターゲットにした広告代理店事業を展開している。このアンバサダーマーケティングでは、すでに約30社を手がけているという。
地方創生×若い世代の可能性
これまで企業のPRを中心に手がけてきた同社だが、細田氏が今最も注目しているのは「地方創生」に関わる分野だ。地方では若者の不足が叫ばれて久しく、各都道府県によるUターン・Jターンなどを呼びかけるPR活動も行われているが、成功例は決して多いとはいえない。
地方はいわば慢性的な「若者不足」の状態にある。そんな中、東京だけは人口が増え続けておりほぼ5人に3人は地方出身者。そしてまるで大使館のように、各都道府県のビルや事務所が置かれている……。
そう考えた時、細田氏が思い至ったのが、同社の「若者とIT」の力を地方創生というフィールドにはめ込むこと。東京でそれぞれの地元を応援する「○○県創生アンバサダー」を立ち上げることだった。
「地元愛や家族愛は三大欲求より上の領域。ほとんどの人が地元を応援したい、自分の地元が豊かになってほしいという思いから利害関係なく自発的に動いてくれるので、コストの部分も最低限にすることができます。一方、東京にある各都道府県の大使館とも呼べる事務所は県が運営しているので、Uターン・JターンのPRにしても、対象である僕ら平成世代への接触の仕方がわからず上手く運営できていないことが多く、そこには入る隙がある。そこで〝人を動かすこういうマーケティングができます〟という部分で現在提案を行っています」
その際にこだわっているのは、県や市の看板を得た上で仕事をすることだ。「何もないと、ただ僕たちが作ったルールになってしまう。たとえ少額でも大阪なら大阪、三重なら三重の看板をいただいて仕事をすることが大事になってくると思っています」と、細田氏。精力的に活動を展開し、現在は全国各地の市長に会う日々だという。
政治の世界を見据えて
細田氏は現在26歳。同社は2018年の株式上場を目標に掲げているが、細田氏自身の最終目標はどこにあるのだろうか。
「根本にあるのは、その時代に合った豊かな国造りに貢献していきたいという思いです。今弊社が行っている地方創生に関する事業もそうですが、最終的に目指しているのは政治家としてそこに関わること。そのために会社は5年間、30代で次のステップへ行くと決めているんですが、まだ未熟な所ばかりなので1つひとつ学びながら、今の経験をどういう政治に活かせるかを模索しながら、日本のあるべき人口の数と地域の形、あるべき法律のあり方に行き着きたいと思っています」
日本の人口は2000年代後半から2011年ごろにかけて減少に転じたと言われている一方、東京への人口一極集中は進んでいる。2014年には内閣府「選択する未来」委員会から、「外国からの移民を毎年20万人受け入れれば、100年後にも人口1億人を保てる」という試算も出されたが、移民受け入れ政策には賛否両論が渦巻いているのが今の日本の現状だ。「そういった部分の問題にどう関与していけるかが政治的なミッションだと思っている」と、細田氏は話す。
「僕の抽象的な目標は、その時の人口に合った豊かな国です。このまま人口が減り、例えば人口比率的に47都道府県が15ぐらいになることもそれ自体が悪いことではないと思うんですが、現在の日本は悪く言えば平和ボケ、よく言えば日々の生活が充実している状態。けれどこのままでは、確実に現在の豊かさは失われるか、外国人にどんどん国籍や参政権をもたせるような時代が来る。僕自身は、そうやって外国人を日本化していく政策には賛否ありますが、では5年後の自分が30歳になるタイミング、40歳、50歳、60歳になる時代それぞれに合った人口や法律、インフラ、日本人とはどういうものなのか。その時代に合った正しい方向造りに関わっていきたいと思うんです」
◇
政治家への道に焦点をあて、早くも5年後の東京都区議会選を見据える細田氏。2018年の同社上場という目標は長い目から見れば1つの通過点ではあるが、しかしそれは細田氏にとって決してただのポイントではない。
「地方創生事業を担う会社がパブリックカンパニーになることで、それぞれの人が自分の地元を応援することで自身も豊かになるし会社が提供するサービスを通じて地元も豊かになる、会社の株も上がるという関係が作れる、そういうサービスの提供が大事だと感じています。時代に合った豊かな国造りに貢献するためには、自分に関わった人たちを経済的に豊かにすることも必ず達成すべき大切な要素。まだまだチャレンジ中ですが、まずは今期の目標を目指し一歩一歩進んでいきます」
まさに「ネクスター」にふさわしい、未来を感じさせる言葉を聞いた。
プロフィール
細田悠巨(ほそだ・はるおみ)氏…1989年5月17日、東京都世田谷区生まれ。現在も世田谷区に在住。帝京高校から帝京大学に進学し、後に早稲田大学に編入した。現在も休学で在学中。某大手飲料会社のマーケティングを経験し、21歳で一度目の起業。解散の後、22歳で「ネクスター株式会社」を立ち上げ、代表取締役社長に就任。現職。
Twitter:@Haruom1 LINE@:Haruom1
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