オビ 企業物語1 (2)

格闘技はフィットネスの手段 元プロ格闘家の戸井田カツヤ氏が語る『格闘技ビジネス』の本質 ‐ トイカツ道場

◆取材:加藤俊 /文:山田貴大

 

 トイカツ道場 戸井田カツヤ (3)

 

 

「ターゲットは格闘技に興味がある人ではなくて、健康になりたい、ダイエットがしたい人」。そう語るのは一時期に比べて格闘技ブームの熱が冷めている日本で、今も尚成長をし続けている『トイカツ道場』の経営者・戸井田カツヤ氏。

総合格闘技のプロ選手として順調にキャリアを歩んでいたものの、タイトルマッチで敗れた経験から生まれた格闘技ビジネスについて、これまでの苦労や秘められた思いを紐解いていく。

 

自身の環境に限界を感じた一戦

トイカツ道場 (3)
トイカツ道場 戸井田カツヤ (1)現役時代の戸井田カツヤ氏

戸井田氏と総合格闘技の出会いは、日本大学法学部へ進学後に遊びの領域として参加した総合格闘技サークルだったという。短い期間ながらリングス(総合格闘技団体)が主催する学生の総合格闘技の大会で優勝を収め、2年目からキャンパスが水道橋に移動する事もあって、本格的に総合格闘技を始めようと決意した。

20歳当時、総合格闘技を学べる環境が東京になく、ネット環境もない中で見つけ出したのが『和術慧舟會』東京本部。始めてから1~2ヶ月後にアマチュアのデビュー戦を迎え、その時対戦したのはお笑い芸人のハウス加賀谷だった。テレビ朝日系「リングの魂」の企画という事もあり、多くの人々が注目する一戦となったが勝利する形で格闘家人生が始まる。

 

月日が経ち、無敗の王者として名を馳せていたアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラに挑んだタイトルマッチ。結果は惨敗となり、「その時の生活は午前中はアルバイト、午後に学校に行き、夜に練習をするというスケジュールだった」と戸井田氏は振り返る。

「このままでは永遠に勝てない」自身の環境に限界を感じ、効率よくお金を稼ぐ方法を考えた際、頭の中には道場を開くという選択肢が一つあった。

 

 

拡大傾向のフィットネス市場

スポーツ施設提供業の推移 図

15~24年の「スポーツ施設提供業」をみると、「スポーツ施設提供業」が横ばい傾向で推移する中、内訳の一つである「フィットネスクラブ」は上昇傾向で推移している(引用:経済産業省・産業活動分析(平成24年年間回顧)より)。

また性年別のデータによると、フィットネスクラブを「利用したい」と回答した人は全年代で男性よりも女性の方が多かった。最も多かったのは20代女性で39.2%、次いで30代女性で38.0%。

注目すべきなのは男女ともに若いほど利用したい人が多いという点。こうした状況から、現在もフィットネスとして幅広いサービスが誕生しており、今後も市場の拡大が期待されている。

 

 

顧客ニーズに合った初めての道場

トイカツ道場 (6) トイカツ道場 (7)トイカツ道場のトレーニング風景

『和術慧舟會』東京本部の支店である『和術慧舟會』RJWが飯田橋にあることは当時の戸井田氏に追い風だった。定休日が火曜日という事もあって、道場を借りることが出来ないかと社長にお願いし、週一回という条件で25歳の時に『トイカツ道場』をオープン。

実際に始めてみるとPRIDE全盛期という背景、週一回という日程、競合他社よりも安い価格などの条件が重なり、1年ちょっとで会員数が50~60名になるほど一般のサラリーマンなどにニーズがあったという。ただ一方で、順風満帆な日々は長く続かなかった。

そんな開業当初の苦悩から格闘技の食べ放題というコンセプト、今後の展望まで、ありのままに戸井田氏に語って頂いた。

 

 

オビ インタビュー

戸井田カツヤ氏 インタビュー

 

―開業当時に苦労したことは?

 

トイカツ道場 戸井田カツヤ (2)

当初、『和術慧舟會』RJWはスポンサーさんに道場を無料で借りていたのですが、スポンサーさんが抜けるということになってしまったため、「出て行ってくれ」と言われました。そのあと東京・中野にあるフィットネスクラブ『ゴールドジム』に移って、週三回で始めることになりましたが、お客さんは全然付いて来なかった。あの頃は辛かったです。

それでも会員数は100名になったのでゴールドジム内で店舗展開(中野、大井町、行徳)をし、ある程度まで集客は出来るようになりましたが、それもあるところで止まってしまった。

なにか戦略を行うにしても、ゴールドジムに確認することが必要だったため、決断が遅くなるという弊害があったのです。

 

―格闘技の食べ放題というコンセプトの意味は?

 

トイカツ道場 (5)

自身が選手の時に練習の部分でパンチだったらボクシング、キックだったらキックボクシング、そしてレスリングというように、一度に総合格闘技をやるのではなく、パーツに分けて練習をしていたのです。

その際、それを総合格闘技と名乗るのであれば色々なクラスを作ってみようと。

一般的なジムでも打撃や寝技、レスリングなどで分けていますが、もう少し細分化して一般の人がフィットネス的に出来るようにしました。それが格闘技の食べ放題というコンセプトです。

 

―なぜ既存の格闘技ジムがライバルではないのか?

 

トイカツ道場 (2)

『トイカツ道場』の理念は格闘技を通じて日本人が強く、健康になるということ。

格闘技をやりたい人がやるのではなくて、健康になるためにうちは格闘技を使っているのです。全日本人が格闘技をやれば全日本人が強く健康に、そして医療費が削減されて経済が活性化されるとも思っています。

 

―経済評論家・上念司さんと繋がりがあるという噂を聞いたのですが

 

上念さんは渋谷店と秋葉店のオーナーです。出会いのきっかけは知り合いの社長のセミナーに行った際、上念さんも訪れていて、また格闘技好きという事もあって仲良くなりました。その後、田町に店舗を出店する時に上念さんのオフィスが大門にあったので会員として入会してくれ、練習をした後にはランチをするようになり、そこでビジネスの話をするようになりました。

 

―今後のビジョンと格闘技への思いを

 

お客は会員だけでなく、従業員やインストラクターも自身のお客だと思っている。格闘技のインストラクターを正社員にしているところは他にないと思うので、そこのサービスを充実させていきたいです。またそういう道を見せていくのが、格闘技に対する恩返しなのではないのかなと思っています。

 

オビ インタビュー

戸井田カツヤ氏…1977年長野市生まれ。本名は戸井田克也。日本の元総合格闘家和術慧舟會トイカツ道場所属。日本大学法学部経営法学科、両国柔整鍼灸専門学校柔整科卒業。経営する道場は東京・中野を中心に計10店舗を展開。

トイカツ道場

所在地:東京都中野区中野3-27-13 ハイム桃ヶ丘1階

TEL:03-3384-4662

HP:http://tkdj.net/

年商:1億円

社員数:50人

2015年9月号の記事より
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