オビ 企業物語1 (2)

単なるスケジュール管理やメモだけの手帳ではない!人生をも変えてしまう『フランクリン・プランナー』

◆取材:綿抜幹夫

フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社 芝野茂男

フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社 代表取締役 芝野茂男氏

 

世を挙げてのスマホブーム。今やあの小さな端末は、人の行動を支配してしまっているようにさえ見える。だが、こういうデジタルの時代にあっても決して廃れることがないのが『手帳』。身の周りに愛用者はたくさんいらっしゃるのではないだろうか。

その手帳業界で、今なお劇的に進化を続け、独自の地位を確立しているのが『フランクリン・プランナー』だ。その成長戦略を新社長・芝野茂男氏に伺おう。

 

ナカバヤシと言えばアルバムのイメージだが……

1984年、日本に上陸したシステム手帳は瞬く間に市場を席巻、綴じ手帳を含めた『手帳』全般は文具売り場の一大勢力にのし上がった。

それから30年。電子手帳やPDA、そして現在のタブレット端末やスマートフォンといったデジタルデバイスの激しい侵攻を受けながらも、根強いファンに支えられその命脈を保ち続けている。

成熟した市場にも関わらず、国内外の多くのメーカーが新規参入し、覇を競っているが、高価格の商品でありながら、手帳の域を超えた充実のコンテンツでユーザーをがっちり掴んでいるのが『フランクリン・プランナー』だ。

 

Franklin_planner02スターター・キット

この商品は、現在フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社が製造・販売している。2010年、あの『フエルアルバム』でおなじみのナカバヤシがM&Aで事業継承した100%子会社である。

ナカバヤシと言えば、アルバムという印象が強いが、大正12年(1923年)に図書製本業として創業。それ以来、国公私立図書館や大学図書館等での合冊・合本等の製本や資料保存業務を中心に、手帳・アルバムなどの事務製品の製造・販売を行い、一貫して『情報整理のサポート』をテーマとする東証1部上場の大企業だ。

 

そのナカバヤシから派遣され、今年4月からはフランクリン・プランナー・ジャパンの社長を務める芝野茂男氏は、このM&Aのメリットをこう語る。

「親会社のナカバヤシから見れば、相乗効果の意味合いが強いM&Aだった、と言えるでしょうね。これまでナカバヤシはずっと手帳を作り続けてきて、特に法人・企業向けの手帳に強く、大量ロット、一般価格の商品が多い。一方、フランクリン・プランナーの商品は、高価格で30~50代のミドル層、いわゆる管理職をコアターゲットにしたバリューの高いものです。同じ手帳であっても市場でバッティングすることがありませんし、高級ブランドを手に入れることができたわけです。また、製造という部分でもメリットがあります。ナカバヤシの手帳中心の工場は、法人向け手帳を多く作っている関係で、夏から秋冬が特に忙しくなるんですが、その後、閑散期に入ってしまいます。しかし、フランクリン・プランナーの商品は年に4回、1月・4月・7月・10月始まりの発売に合わせて製造することができる。これが工場操業での相乗効果を産み出すのです」

 

もともとフランクリン・プランナーの商品は、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社が販売していた。

「その親会社、フランクリン・コヴィーという会社がアメリカにありまして、出版や手帳の事業を行っていました。そこがプロダクトごとに会社を分け、その影響で日本法人も二つの事業を分けることになって、手帳の事業をナカバヤシが買い取ったのです。ブランドだけでなく、社員も同時に引き継いだので、ナカバヤシの中に取り込むのではなく、子会社として立ち上げました」

当初はナカバヤシの社長がフランクリン・プランナー・ジャパンの社長も兼任していたが、事業をきちんと軌道に乗せるためにも専任の経営者を立て、独自の戦略を持って経営に当たる必要があった。そこで選ばれたのが芝野氏だった。

 

「私は2年前にこの会社の取締役としてナカバヤシから派遣されました。ナカバヤシでは法人営業の部長をしていましたが、手帳事業の経験者ということで私に白羽の矢が立ったのだと思います。これだけいい内容のコンテンツがあって種類も豊富。私としても、この商品があればきっと面白いビジネスができるはずとお引き受けしました。100%子会社として、ナカバヤシとは財務的な部分でのつながりは深いわけですが、成果を上げ、独立した企業としても採算がとれる事業に育てなければなりません。お客様はもとより、従業員も満足する会社にしたい、と思っています」

 

論語ではないが、五十にして天命を知った芝野氏。まさに、社長就任はその天命だったに違いない。

「私がナカバヤシで培った人脈を活かしたり、他社とのコラボで新たな販路を開拓していけば、充分勝負になるという確信があります。この4月から代表取締役に就任しましたが、出来る限り早い時期に、一企業として納得のいく結果を出せる様、育てたいと考えています」

 

 

『7つの習慣』を実践するためのツール

それが『フランクリン・プランナー』

根強い人気があるとは言っても、手帳は決して成長産業ではない。今時は、特にスマホの充実したアプリが、手帳の役割のすべてを代替できてしまう。つまり、マスの勝負を仕掛けても苦しいのが現状だろう。

その点、フランクリン・プランナーの商品はユーザーを選ぶ。

「手帳は競合メーカーがたくさんありますから、弊社は、『手帳』という売り方ではなく、人々の人生の目標や夢を叶えるためのツールであると自社商品を捉えています。単なるスケジュール管理のための手帳という位置付けではないのです」

 

これはフランクリン・プランナーのバックボーンとして、『7つの習慣』があるからだ。

全世界3000万部、国内180万部を超え、今も読み続けられるベストセラー、『7つの習慣』について、ここで詳細に語るだけの紙幅はないが、簡単に言えば、実りある人生を送っている人々には共通する習慣があること、そしてその習慣が人生において高い効果を発揮して継続的に結果を出し続けていることに注目し、それらを分析して、『7つの習慣』にまとめたものだ。

 

「他社の手帳は、スケジュール帳としての機能が主ですが、フランクリン・プランナーが他社と一線を画するのは『コンテンツ』があることです。利用者の生き方にまで影響を与える『中身』があるのです。時間管理のマトリックスや『7つの習慣』を実践できる手帳になっている。全世界で1500万人が実践し、日本でもコアなファンがついています」

 

入門商品と言うべき『スターター・キット』を見ても、その特徴が凝縮されているのがわかる。

「スターター・キットには、人生の価値観や目標を書き込むページがあります。これは一般の手帳にはないフランクリン・プランナーの大きな特徴の一つです。手帳を使い始める前に、自らの価値観を明確化して、日々の行動に落とし込んでいく。何を目標とするのか、何に価値を置くのか。サラリーマンであれば会社の価値観もあるでしょうし、主婦であれば主婦の価値観もあるでしょう。その人なりの価値観をキッチリ押さえていくことが、このスターター・キットを使い始める前に大事なことなのです」

 

手帳を単なる道具としてではなく、生き方の指針となるいわば『指南書』にする。もちろん、主体は利用者本人であるが、そのための優秀なガイドが『フランクリン・プランナー』の商品なのだ。

「手帳に求められるものの中には紙の質がどうとか、ビジュアル的にどうとか、そういう部分を重視する需要があるのは確かです。しかし、弊社の手帳は、まず考え方や目標があって、それを実行するためのツールなのです。お客様の会社内での役職が上がったり、あるいは独立して何かを成していったりと、そうあって欲しいと願っているプロダクツなのです」

 

とは言え、これらの商品は決して新しいものではない。会社の更なる成長のためには『次の一手』が必要だ。

「新しい販路開拓という意味でも、昨年から始めた研修と手帳をセットで売っていくやり方が当たってきたのは大きいですね。東急ハンズやLOFT等の文具流通と紀伊国屋や丸善等の書店流通、あるいはアマゾンや楽天、自社サイトでのネット通販が主な販路でしたが、セミナーの販売も含めて『販売の三本柱』が構築できました」

 

そして、新商品開発も欠かすことはできない。

「昨年から女性向けの新商品『ビジョナリー・ウーマン』というシリーズを展開しています。昨今の話題として女性管理職の登用がありますが、そういった今後増加する女性管理職向けの商材として、バインダーも含めて品揃えを強化しているところです。また、ティーンズ(中高生)向けの商品も開発しました。『MY GOAL』という商品ですが、受験やクラブ活動の目標設定や時間管理などに役立つものです。そして、将来に渡って弊社の商品を愛用し続けて欲しいという願いもある。これはそのための入門商品でもあるわけです。その他にも今年は大手企業とのコラボ手帳の企画を進めているところです」

 

これまでのミドル層向け商品から、若年層への訴求も喫緊の課題であろう。

「例えば専門学校や塾、ロースクールなど、入学の時点から目標がハッキリしている学校の学生などに、弊社の商品は非常に合致するのではないかと考えています。志望大学への入学や資格の取得といった明確な目標がある人にとって、フランクリン・プランナーは大変有効に機能するからです。確かに少子化でマーケットそのものは縮小傾向でしょうが、逆に一人あたりの教育費がかけられるということにつながります。これは弊社のような高額の商材にとってチャンスがあるということでしょう。子供の頃から弊社の製品に親しんでもらうことで、彼らが社会人になり、さらに管理職になった時に、また弊社の製品を使ってくれることに期待できる。そういう仕掛けづくりで、長期のファンを増やしていきたいところです」

理想の生き方が手に入る『フランクリン・プランナー』を使いこなす人が増えれば、この国のビジネスはきっと新たなステージへと進化することだろう。

 

フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社 (1)

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オビ ヒューマンドキュメント

芝野茂男(しばの・しげお)氏

昭和38年大阪府生まれ。大阪府立大学卒業。ナカバヤシ株式会社入社。平成24年、フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社取締役営業本部長就任。平成26年同社代表取締役就任。

 フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社

〈本社〉〒104─0061東京都中央区銀座2─6─8日本生命銀座ビル4階

℡03─5159─3380

http://www.franklinplanner.co.jp/

〈八重洲本店〉〒104─0028東京都中央区八重洲2─1八重洲地下街中3号

 

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