株式会社マークプランニング – 分煙にプラスアルファを。
株式会社マークプランニング – 分煙にプラスアルファを。
◆取材:綿抜幹夫 /文:渡辺友樹
非喫煙者にも価値のある空間をプロデュース。
タバコの煙を吸い込み、完全にきれいにして排出する喫煙装置がある。こうした画期的な装置を用いた分煙事業を主力に、家具のリメイクや部屋全体の消臭リフォームまで、総合的な空間プロデュースを行うのが株式会社マークプランニングだ。
設立1年の同社は、社員数4名という小規模ならではのレスポンスの早さを武器に、女性営業の力を活かして順調に実績を上げている。佐藤正昭社長に話を聞いた。
前職で出会った分煙事業
同氏が分煙事業を手がけ始めたのは、前職時代にさかのぼる。同氏の前職は、ゴミ箱や清掃用具、灰皿など環境美化用品を扱う、とあるメーカーだ。そこでは10年ほど前にJT(日本たばこ産業株式会社)に灰皿を卸し始めるが、これを担当していたのが同氏だった。JTに灰皿を卸すようになって1、2年ほど経ったあるとき、JTの担当者から、「単に灰皿を置くだけではなく、分煙をやってみないか」との声がかかる。今でこそ広く浸透した「分煙」だが、当時はそうではない。テーブルに灰皿が置いてあるのが当たり前の時代である。
JTの担当者に話を聞きながら、分煙とはいったい何をどうすればいいのかというところから模索し始める。灰皿を屋外に置き、周りをプランターで囲って、喫煙場所を見えないようにするというのが、同氏がはじめに行った分煙だった。
手探りで始めた分煙事業だったが、少しずつ実績も築き、1年ほど過ぎた頃に飛び込んできた案件が、福岡県の複合商業施設「キャナルシティ博多」での分煙だった。同所のような大規模な商業施設では、イベントなどの開催が頻繁に行われる。そういった際にも通行の邪魔にならない喫煙設備を、という要望に対し、同氏は折り畳み可能なドーム型の移動式喫煙スペースを開発し、好評を得る。これがいまから約7年前だ。
こうして同氏の分煙事業が一定の業績を上げていたことから、前職のメーカーでは分煙専門の事業部を立ち上げることになる。本来はモノを売るのみのメーカーであったが、内部に工事も伴う事業部を立ち上げ、JTとコラボしながら様々な場所に喫煙ルームを設置していく方針をとったのだ。
しかし、事業が軌道に乗るにつれ、製造メーカーであることに起因する問題も浮き彫りになる。できあがったモノを営業マンが売ってくることが本業の社内では、工事や施工などについて、経営陣はじめ当の事業部以外の社員からの理解が得られない部分があったのだ。
独立、女性の力を活かした会社に
こういった経緯があり、同氏は2013年10月に独立、株式会社マークプランニングを設立する。考え抜いた上での決断だった。
実はこのとき、同氏は前職の事業部から女性2名と一緒に独立している。女性の力に注目していた同氏は、女性を活かした会社にしたいという想いのもと、女性を責任者に置いて同社をスタートさせたのだ。
営業部マネージャーの長澤佳代子氏は、営業スキルはもちろんだが、女性ならではの視点や気づきも多く、クライアントと懇意になるスピードが早い。理解力および情報収集力にもたけ、そのスキルを活かし、重要キーマンとの信頼を築くことでクライアントの決断を早く得られるなどメリットは多い。同氏は女性営業の力を改めて実感している。
大手の下請けにはならない
もう一人の女性は営業部プランナーの鈴木満智子氏。CADのスペシャリストとして彼女を入れたことで、中小企業ならではの、大手企業にはないレスポンスの早さを実現できたという。すべての行程が分業制である大手企業は、ひとつの工事に対して営業、設計、工事担当、と多くの人間や部署が関わり、これが各部署を書面で回っていくため、時間も予算もかかり、何よりレスポンスが遅い。これに対し、同社では、代表である佐藤氏と女性2名、営業職でトップセールスのリーダー・小堺圭亮氏の4名体制。この規模を活かしたレスポンスの早さでは、絶対に他社に負けない自信を持っている。
建設業界は特に古い体質を引きずっている業種だ。同社ではレスポンスを、またニーズを的確に取り入れた提案を早くすることでクライアントとの信頼関係を早く築くことを重視している。業界の他の中小企業のように大手の下請けを目指すのではなく、独自に大手の施主、エンドユーザーと直接関わることで、彼らのニーズを直接探ることができ、下請けでない分、利益も上がる。
ゼネコンを経由して提案をすれば、単価で2、3割は割高になる。ここからゼネコンが2、3割抜いた上で、仕事自体は下請けに発注する。この下請けが更にその下請けに仕事を発注して、という構図は未だ変わっていないのだ。
クライアントとの信頼関係を最重視
同社のような方法で差別化を図るには、顧客との信頼関係が何よりも大切だ。下請けという立場ではなく直接クライアントと関わる以上、トラブルがあれば100%が同社の責任になり、仕事も失ってしまう。レスポンスの早さはもちろんだが、現場での施工に関しても安全面やクレーム防止に最大限の注意を払う必要があるのだ。ここには同社社員だけではなく、同社が依頼する職人たちとの意識共有という大きな問題がある。
昨夏、同社はホテルチェーンである「チサンホテル」の内装工事を請け負った。2000万円を超える大規模な受注だったが、このときも職人たちとの意識共有を特に重視したという。ホテルでの仕事は、利用者(宿泊客)に迷惑をかけないことが最優先だ。対策のひとつとして、宿泊客に迷惑がかからない時間帯のみに作業を行うことを徹底したが、工期に追われる職業柄、思うように理解してくれない職人もいたという。しかし、こうした取り組みの結果、チサンホテルでの内装工事は先方から「来年もお願いします」との言葉を得られたという。
分煙を入り口に総合的な空間プロデュースを
さらに、同社では、分煙事業はあくまで入り口に過ぎないと捉えている。まずは分煙事業で反響営業を行い、大手顧客と口座開設し、懇意になる。そこで終わらずに、そこからどれだけ広げられるかが重要であると考えている。
分煙事業のほかに手がけている事業のひとつに「家具リメイク」がある。古い家具にフィルムを貼ったり、塗装したりすることで新品同様に「リメイク」するサービスだ。
このほかに「消臭リフォーム」事業も現在準備中だ。ホテル業界では、外国人宿泊客が増加傾向にあるが、彼らが室内でお香を焚いたり、香りの強いものを飲食したりすることで、部屋に匂いが残ってしまうケースが増えているという。こうした問題の解決のために、特殊な素材のクロスや床材、消臭剤を使って1日で完全に部屋から匂いが消える消臭リフォームサービスを行おうとしているのだ。
こうした話からも分かるように、いま、同社の視線の先にあるのはホテル業界だ。2020年に東京オリンピックの開催が決まり、どこのホテルでも外国人宿泊客を迎え入れる態勢づくりに追われている。匂いの問題の他にも、ホテル内施設のバリアフリー化やユニットバスの大型化などホテルのニーズは様々あり、改善できる点は多いのだという。
非喫煙者にも付加価値のある喫煙設備を
本業である分煙事業についても、同社では喫煙者にとって良い空間にするだけでなく、非喫煙者にいかに迷惑をかけない喫煙空間を提供できるかを重視している。また、たとえば、災害時に電源を得られたり、担架やAEDなどが設置してあって救命措置が可能など、プラスアルファの付加価値をつけた喫煙所の普及を目指しており、既に試験的にソーラーパネルを備えた喫煙所を役所に設置した実績があるという。
ソーラーパネルからコンセントを喫煙所内にいくつも引いておき、4日間は蓄電できる大型のバッテリーを積んでいるため、災害時に携帯電話を充電したり、ラジオを聴いたりすることが可能なのだ。
主力商品「スモークポイント」
今後、同社が分煙事業の主力商品として注力しようとしているのが、デンマーク製の「スモークポイント」なる製品だ。タバコの煙を吸い込み、3層のフィルターによって完全にクリーンな空気へと浄化して排出する。排出される空気にはまったく匂いがなく、我々が吸っているものと同じ空気だ。これまで煙を吸うものはあったが、匂いを完全に除去する機能を有するものはなかったという。
この「スモークポイント」、空気の浄化機能以外に優れている点は、装置自体が煙を吸い込む仕組みのため、換気扇が不要であることだ。従来の喫煙設備は必ず換気扇が必要で、必然的に設置の際には壁に穴を開けなければならず、ビルオーナーからは非常に嫌がられるという。また、ホテルのロビーなど、天井が高く3メートル以上もあるような場所では、パーテーションで仕切って換気扇を設置しても、完全に間仕切ることは難しい。建物の躯体を傷めずに喫煙設備を設置できる「スモークポイント」は、換気設備の問題によって喫煙場所を設けられなかったクライアントからの反響が非常に大きいという。
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まずは2020年に向けて、女性営業の力を武器に、喫煙者にも非喫煙者にもクリーンな空間づくりを。世界からの来客をもてなす日本づくりへ、同社の貢献が楽しみだ。現在設立1年、社員4名の同社は、そのときどこまで発展しているだろうか。
株式会社マークプランニング
〒111-0052東京都台東区柳橋1-30-2伊藤ビル2F
TEL 03-5829-8707
http://marcplanning.com/
従業員数:4名