株式会社SUN・ROOFテクノロジーズ ‐ 縦割りの業界に革命を盲点は、防水にアリ!
株式会社SUN・ROOFテクノロジーズ ‐ 縦割りの業界に革命を盲点は、防水にアリ!
◆取材:綿抜幹夫
2013年7月から再生可能エネルギー固定価格買取制度がスタートし、太陽光発電がますます注目を集めている。しかしそんな中、太陽光パネルの設置をめぐってトラブルが相次ぎ、無視できない問題も噴出してきた。そこには日本の中小企業が抱える問題が象徴的に凝縮されている。異業種を結合させることでこの現状をビジネスチャンスに変えようと試みているSUN・ROOFテクノロジーズの緒方貞治社長に話をうかがった。
太陽光発電と防水 交流のない異業種間のトラブル
太陽光発電に対する人々の関心が高まるにつれ、各地でトラブルが頻発している現状をご存知だろうか? 裁判にまで発展するケースも少なくないという。その事例の多くは、雨漏りなどの防水に関するものである。
「太陽光パネルを設置するのは、多くの場合、電気屋さんか施工屋さんです。彼らは建物のことや防水のことはあまり知りません。そこで設置の際、穴を開けるなどして防水システムを切断してしまい、後日、雨漏りの被害が出るというわけです」
緒方社長にご説明いただく。しかし、設置の工事が原因で雨漏りするようになったのなら、それは施工業者のミスではないのか。そこで保証なり弁償ということにはならないのだろうか。
「そこがこの問題の複雑なところです。まず、防水と太陽光発電はまったく異質の業界で、両者のあいだに連絡や提携はまったくありません。防水というのは昔からある仕事で、職人の世界です。かたや太陽光発電はせいぜい20年くらいしか歴史のない業界。防水業者の多くは太陽光発電システムのロジックを知らないし、太陽光の業者も防水や屋根のことを何も知りません。しかもさらに悪いことに、太陽光発電システムは、ソーラーパネルを生産するメーカー、販売する会社、設置する会社、管理する会社と、すべて細かく分かれているんです。つまり、責任の所在がどこにもない。ですから、トラブルがあっても、オーナーさんが泣き寝入りするしかないというのが現状なんです」
なんといい加減な、と思うしかないが、しかしながらこれがまぎれもない現実である。 ちなみに防水業界はおよそ6千億円規模の市場があるが、年商100億を超える会社はわずか5社しかないという。 つまり大半は、親方1人とか、社員が全部で3人といった無数の零細企業が担っている業界なのである。
「そしてもう1つ、大きな問題があります。太陽光発電の買取期間は20年にわたって保証されています。ということは、20年持たせないといけません。ところが建物というのは10~12年のスパンで大規模修繕をやることになっており、防水もそれにあわせて修繕しなければいけません。そのサイクルにはじめから組み込まれているんです。一方は20年、もう一方は10~12年でサイクルが合わないんですが、結局は10~12年で太陽光のパネルを施工しなおすことになります。ここで莫大なコストがかかる。実にバカバカしい話ですが、こんな事態が起こるのも、防水と太陽光、2つの業界にまったく接点がないまま来てしまったことに原因があります」
防水の会社が太陽光を設置する画期的なワンストップサービス
なんともすさまじい話だが、考えてみればこれはビジネスチャンスでもある。そこで再生可能エネルギー固定価格買取制度が始まる前から、研究に研究を重ねてきたのがSUN・ROOFテクノロジーズだ。
「弊社は基本的に防水の会社であり、屋根のプロフェッショナルです。その会社が太陽光発電も手がけるようになったとお考えください。日本全国をくまなく調べたわけではありませんが、防水業者が太陽光発電を手がけている事例は、おそらく他にはないはずです」
同社が誇るのは、防水30年保証の「NOVOtan」システム。接着剤を使用せず熱融着で一体成形した耐久性に優れたシートを用いるドイツ生まれのシステムだ。このシステムを保有している会社が太陽光パネルを設置するのだから、工事の過程で防水が切れることは原理的にありえないことになる。屋根と建物という資産を守り、また太陽光という資産も守る最強の仕組みなのだ。
「われわれは陸屋根における産業用の太陽光発電に特化しています。先ほどご説明したように、太陽光パネル設置をめぐるトラブルの原因は防水業界と太陽光業界の交流の無さにあり、さらに言えば、細かく縦割りに分割された業界構造がより自体を複雑化させています。太陽光の設置に関しては、すべてトータルにやらないとダメなんです。入口から出口までワンストップでできる会社でないといけない。そこで弊社は、太陽光も防水も、どちらに関しても入口から出口までワンストップでできる会社であるということが最大の特長です。これができるのはおそらく日本中でわが社1社だけだと思います」
画期的な成功例をご紹介しよう。2013年11月、千葉県船橋市に完成したとあるマンション。3棟あって広さは3500平米、14階建てというから非常に規模の大きい物件である。そこに同社自慢の30年保証の防水と太陽光発電が乗ったのである。14階建てという高層マンションでの太陽光設置は日本初の快挙だ。
「弊社は防水の会社ですが、太陽光パネルの設置に関してはもう1つ、風荷重が大きな問題になります。当該物件は海から2㎞ほどの距離にあり、14階建ての屋上ともなるとすさまじい風が吹きます。この環境でパネルが飛ばないように、しかも20年間持つ防水工事をしなくてはいけません。技術的な困難もさることながら、コストがあまりにもかかりすぎて、それで今までマンションの屋上に太陽光発電は乗らなかった。そこに弊社が初めて成功にこぎつけたわけです」
従来型のトラスフレームではなく、平置オリジナル架台を開発することによって、見事に成功を収めた画期的な第一歩である。
新しい中小企業経営のモデルを作りたい
緒方社長はそもそも防水、太陽光のいずれの専門家でもなく、長らく銀行に勤務していたという経歴の持ち主である。銀行マンがなぜ、この世界で起業しようと思ったのだろう。
「私は銀行にいた頃、中小企業開拓の最前線で営業・融資業務を担当していました。中小企業診断士の資格も持っています。多くの経営者と係わる中で、彼らの会社が短い歳月のあいだにバタバタと倒産してしまうのを見て、『どうしてこういうことになってしまうのだろう?』と常々考えてきました。1つには大企業が儲けすぎているという側面が見逃せないと思います。しかしそればかりでなく、中小企業の側もあまりにも展望がなく、社長1人に対する荷重がひどすぎる現状を変えなければいけないと思います。そこで私は、従来とは違う、新しい中小企業のモデルを作ってみたいと考えたのです」
緒方社長は、技術に関して自分は完全に素人であると謙遜する。
「防水に対しても、太陽光についても、私はスペシャリストではありません。その点は弱点なのかもしれません。しかし別の見方をすれば、素人であるがゆえに業界の慣習に囚われない柔軟な発想ができたのではないかと思っています。素人だからこそ防水と太陽光の両方をワンストップで提供するようなモデルを作れた。もう1つ私の強みだと思っているのは銀行員時代に獲得した様々な人脈や情報ネットワークです。これは他の中小企業経営者の方々にはなかなか真似のできないことではないでしょうか」
日本の中小企業は、長らく1社1業種でやってきた。防水の会社は防水だけをやり、太陽光の会社は太陽光だけをやる。そのことを誰も疑わず、他の領域に手を出すのは余計なことであり、単なるリスクとしか見なされなかった。そこに銀行からスッとやってきた緒方社長が、2つの異なる事業を1つに束ねるという、従来の業界から見れば「暴挙」ともいえる試みに打って出たのである。
さて2014年以降、SUN・ROOFテクノロジーズはどこに向かうのだろうか。
「良い人材を集めないといけませんね。人は何のために集まるかといえば、お金とやりがいだと思うんです。20年、30年保証の仕事をしているのだから、プライベート・カンパニーというわけにはいきません。およそ5年後を目途に上場し、そこを1つの通過点にしたいと思っています。今はウチの強みを最大限にマーケットに発信し、サービスに納得してもらって仕事をいただくことを徹底したいですね」
今後は、防水と太陽光がセットになったモデルでないと市場で生き残っていけない時代がやってくるのではないか。しかしまだその仕組みは、ようやく歩き始めたばかりである。
株式会社SUN・ROOFテクノロジーズ
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