株式会社仲代金属 × BigLife21 動画
株式会社仲代金属 × BigLife21
◆インタビュアー:加藤俊
誌面では伝えきれない企業の魅力をお届けするビッグライフチャンネル。
今回のゲストは、東京都足立区から日本の匠の技を世界に発信する技術者集団、株式会社仲代金属さん。金属を「極めて細く、正確に切る」スリット加工の分野に於いて名前を知らない人はいないと言われる企業だ。仲代金属が携わる製品は、携帯電話や車のエアバッグなど多岐にわたる。
今回は、その仲代金属の桒原大樹氏(各種非鉄金属精密スリット加工工場統括部門部長)、原元樹氏(加平・東和工場長)、小林一貴氏(新潟工場長)に登壇頂いた。
↓株式会社仲代金属 HP↓
(本稿は動画を再編集し、一部を紹介するものです。本稿では触れませんが、工場内の様子を撮った動画などもあるので、ぜひご覧になってください )
加藤:御社の得意とする〝スリット加工技術〟とはそもそもどういった技術なのですか?
桒原:様々な性質をもつ薄い金属箔を細く切断加工することをスリット加工と言います。業界ではスリットとは縦に切ることを意味し、カットとは横方向に切ることを意味しています。
現代社会は、携帯電話やスマートフォンをはじめ、あらゆる電子製品で溢れています。こうした製品は今や生活の一部となり、年々小型化・薄型化とともに高性能化されています。そうすると当然、高性能化に見合った高精度な部品も求められます。
高精度な部品には高品質な加工技術が施された素材・材料が必要不可欠となり、部品を作る上で様々な性質をもつ薄い金属箔を細く切断加工するスリット加工の果たす役割がより重要となります。その要望に応えていくことが、スリット加工に携わる者には、求められています。
スリッターは、基本構成だけでいえば、”切って巻き取るだけ”のものですので、言葉で表現すると一見単純な技術と捉えられがちです。ところが、素材・厚み・幅・硬さ・要求精度を全て一体とし、お客様のご要望を満たすとなると、とても難儀な作業となります。
弊社は企業理念に”お客様のご要望を満足させる製品造りに努めます”とあるように、創業以来一貫して、薄い金属を細く正確に切る技術を追求しております。
加藤:御社が加工した金属は、最終的にどういった製品に活用されるのでしょうか。
桒原:携帯電話や車のエアバッグなどに活用されます。具体的に言うと、携帯電話やスマートフォン等の”電池・バッテリー”に使われる部品です。”蓄電できる電池”代表例としてリチウムイオン電池の中の電極部分、プラス極とマイナス極の電気を通すリード線、タブリードと呼ばれている部分に弊社の技術が活用されています。
携帯電話が普及して20年弱の歴史の中で、電池が原因となり、発火や変形、液漏れ、酷い時には爆発に至るというケースが、多々ありました。実は、それらの要因のひとつに、タブリード部材の精度が起因している場合があると言われています。つまり、スリット加工の技術が拙いことで、不具合が惹起するのです。 こう考えてもらうと分かりやすいと思います。紙をハサミで切る時もそうですが、物を切断する際には、”バリ”が発生します。金属スリットを行う際にも同様の現象が起こり、そのバリが異物となり発火を引き起こす、ないしはバリが鋭利な刃物となり電解液の漏れ防止としてラミネートされている箇所を破き、液漏れの原因になる、と。
当然、各メーカー様では蓄電池の性能を求めると同時に安全性も重視していますので、弊社では他の品質レベルを落とすことなく、バリだけを従来の3分の1に低減させるスリット技法を生み出し好評を頂いています。
最近では従来のスリット技法に加え、スリット製品に二次加工を施す事により、従来のバリの高さを3分の1以下に低減させるバリレス加工技術を新たに開発し、近未来のニーズに対応できる体制をとっています。
また、安全性を求められる点では自動車のステアリングコネクターも同様です。弊社の得意分野である細物技術が、もっとも活かされる分野でもあるステアリングコネクターは、ハンドルに搭載され、人の命を守るエアバックへと繋がっています。それで、衝突を感知した瞬間に電気信号を流し、エアバックを作動させる重要な役割があるのです。人の命を守る重要な装置ですから、当然高品質・高精度を求められ、メーカー側からの様々な試験をパスした部材のみ採用となります。
身近な例を2つ出しましたが、こうした日常生活の中に弊社のスリット技術が活用されています。
加藤:御社独自のこだわりはあるのでしょうか。
原:弊社のスリット機は様々な要望を満たすため、全ての機械が汎用機になっています。市販の機械ですと、専用機になってしまい加工範囲が限られる。やはり、お客様の広範な要望に応えるためには、仲代金属独自のオーダーメイドをして、オリジナル機を導入する必要があるのです。そうすることで、仲代独自の技法を使用できるようになり、他社との差別化を図ることができます。
また、機械だけでなく、「切る」に欠かせない刃物も約500種類常時用意がありますので、様々な材質・要求を満たすことができます。ここまで刃物を取り揃えている企業は、同業ではまずないと自負しています。
加藤:凄い世界ですね。一般的に何年で一人前と見做される世界なのですか。
小林:当然、個人差がありますが、材料の取り扱い方から学んで、本格的に一人でスリット加工を行えるようになるまでには10年と言われています。弊社のスリット機は担当制になっていますので、毎日使用することで機械を自分の手足のように扱えるようになることが求められます。使用する刃物も自分で選定し、細かなカケや摩耗具合を触視・目視で検査し判断できるレベルとなると、やはり相当な年数を要します。
加藤:皆さんは、仕事に於ける〝楽しみ〟をどういった点に見出しているのですか。
小林:お客様から喜んでもらえた時にモノづくりをしていて良かったと実感できます。自分でも満足のいく加工ができ、さらにお客様からお礼を言われたら、この上ない喜びです。金属材料はナマモノと同じで、同じ材質の物でも製造メーカー毎によって特性が変わります。製造年月日によっても変わります。そのため、今回のセット方法で上手く加工できても、次回上手く行くとは限りません。その都度、調整が求められるので、緊張感がありますし、それが逆に“楽しみ”に繋がっている気がします。
工場内の様子。桒原さんに解説頂いた。
加藤:御社では、どういった人を採用したいと考えているのですか
桒原:どんなお仕事にも共通していると思いますが、仕事を通して喜び・やりがいを感じられる方と一緒に歩んで行きたいと思います。技術職とはいえ、決して器用でなくても構いません。この仕事には狙った通りの切れ味が達成でき、目に見える形で成果がでますので、そのつど感動と達成感が繰り返し感じられ、それが“やりがい”や“自己満足”に繋がり、充実した日々を過ごしています。
本日ここに参加している両工場長も同じ気持ちと思いますが、この金属スリット加工に長く携わっているということが、”やりがい”の素晴らしさを証明していると思っております。スリット加工を通して、この感覚を体験できた私達は幸せ者です。
この番組をご覧になり、この業界に興味を持たれた方は、ぜひ弊社にご一報ください!
加藤:今後、業界を取り巻く環境はどう変化していくと考えますか。また、そうした前提の上で、御社はどういった青写真を描いているのでしょうか。
桒原:本日ご紹介させて頂きました一例以外にも、スリット加工を施した中間製品は、極めて多岐に亘る用途に多数使用されています。モノづくり日本を支える重要な業界ではございますが、近年、同業者様では核となる熟練されたスリット技術を継承する若手不足問題や大手メーカー様からの要求、例えばISO取得義務や作業環境面(温湿度管理やクリーン度)に対応できず、残念ながら廃業を決断する企業様が多数いるのです。
比較的技術を要しない一般的な金属スリットは中国をはじめ諸外国での生産が主流になっている中、ニーズについていけない企業は自然と淘汰される時代に突入していくことになると思います。そうした中、弊社では現在の社長が築きあげた技術の継承を、私達含めた若手社員がしっかりと受け継ぎ、先ほども申し上げたように安心してご使用して頂ける製品を提供することが私達の社会的義務と思っております。
加藤:最後に自社のPRをお願いします。
桒原:引続き、モノづくりを通して社会貢献し日本の最先端を支えているという誇りを持ってやっていきたいと思います。社会貢献という意味では人の命が、その最たるもと思っておりますので、医療分野に弊社の技術が生かされれば嬉しいですね。
例えば、弊社の細物技術で世界最小のカテーテルの素材を提供し、従来の物よりも体内に挿入しても患者さんへの負担を抑え治療することができれば、これは素晴らしいことだと思いますし、目標の一つです。
加藤:今日はどうもありがとうございました。
株式会社仲代金属
〒121-0055 東京都足立区加平2-9-2
℡:03-3605-7730
桒原大樹氏(くわばら・ひろき)…1975年東京都葛飾区生まれ。金属スリット加工に魅了され、更なる技術を追い求め株式会社仲代金属に入社。各種非鉄金属精密スリット加工 工場統括部門 部長として現在に至る。
原元樹氏(はら・もとき)…1979年東京都葛飾区生まれ。地元地域で、ものづくりに取り組みたいとの思いから株式会社仲代金属に入社。加平工場・東和工場 工場長として現在に至る。
小林一貴氏(こばやし・かずたか)…1981年新潟県新発田市生まれ。安中社長の故郷でもある新潟県新発田市育ち。同社の技術に興味を持ち株式会社仲代金属に入社。新潟工場 工場長として現在に至る。
◆2014年9月号の記事より◆
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