株式会社リバネス|研究者と繋がりませんか?研究者と町工場の技術者を繋ぐクラウドソーシング『ResQue』スタート!
研究者と繋がりませんか?
研究者と町工場の技術者を繋ぐクラウドソーシング
株式会社リバネス 『ResQue』スタート!
◆聞き手・文:加藤 俊 / 文:渡辺 友樹
株式会社リバネス 写真左:執行役員 CAO 長谷川和宏氏 写真右:専務取締役CIO 吉田丈治氏
クラウドソーシングの浸透がめざましい。
本誌でも取り上げてきた業界のトップランナー、ランサーズのここ一年の飛躍ぶりを見れば、「人々の働き方を変える」という彼等の使命が、ここ日本でも着実に浸透し、雇用の在り方は、今後数年で劇的に変わるであろうと想像がつく。しかし、この手のサービスの特徴として、まだまだ取り扱われている仕事はITやWEB系の案件が多く、町工場や中小企業が利用するには、もう少し時間がかかるのだろう。
こうした状況下、町工場や中小企業を対象としたクラウドソーシングサービスが登場した。
株式会社リバネスが運営する『ResQue(レスキュー)』がそれだ。聞けば、この株式会社リバネス、理工系の大学生・大学院生が在学中に15名で立ち上げたという一風変わった集団であり、社員数46名へと発展した現在でも、社員全員が理系の博士号または修士号を取得しているという。自らを『研究者集団』と名乗る彼らが立ち上げた研究者・技術者向けのクラウドソーシングサービスとはいかなるものなのか、株式会社リバネス専務取締役CIO吉田丈治氏、執行役員CAO長谷川和宏氏に話を聞いた。
企業や個人の垣根を超えて、仕事の受注・発注を行うクラウドソーシングは、入札方式やプレゼン、コンペなど、報酬額や仕事内容も含めてそれぞれの自由度が高く、登録者同士が直接やりとりすることができる点で、可能性は無限大だ。
教育・研究現場と、町工場や中小企業。両者の橋渡しをしたい
-まずはResQueの概要から教えてください。
吉田:弊社は、社長以下、全員が在学中に理系の研究を行ってきた経験から、「サイエンスの面白さを多くの人々に伝えたい」という熱意をもって、教育開発事業・人材開発事業・研究戦略開発事業・地域開発事業・情報戦略支援事業・国際開発事業などを展開する会社です。具体的には、産学連携支援や若い研究者に対する研究費の助成、研究者を対象にした研究受託サービス、また子供たちにサイエンスに興味を持ってもらうための教育イベントなども積極的に企画して、サイエンスや教育研究の場を盛り上げようと様々な事業を手がけています。
長谷川:実は、このように一風変わった事業を営んでいるため、様々な企業から、弊社のネットワークを頼って、「実は新規事業をやりたいのだが、適切にできる人がいなくて」という相談が寄せられます。弊社では、こうした要望に対して、町工場からモノをつくれる人、プログラミングができる人、最先端の研究をしている人など、各プロジェクトに必要な知識と人を集めてクライアントの要望に応える新しいビジネスを構築することを長いこと行ってきたのです。
ResQueを作ったきっかけは、こうした知見を活かして、何かを頼みたい人と、それを解決できる人という両者をうまくマッチングするサービスを提供できないかと考えたのが、始まりになります。
―クラウドソーシング業界は、ここ数年サービスが乱立していましたが、最近は、最大手の『ランサーズ』など数社に集約されてきている節も伺えます。この段階で参入する後発組として、どういった戦略を描いているのですか。
吉田:はい、その点は、弊社は設立時から大学など研究現場に深く入り込んできたので、全国の国立大学をはじめとした大学や研究機関、学会との広範なネットワークを持っていることが、今後シェアを握るうえで大きなポイントになるかと。同時に、研究現場で求められる技術とは如何なるものかを把握してもいます。各大学では、行いたい研究があっても、それを実現する技術力を有していない場合が多い。モノを作る段階で困るケースが多々あるのです。
長谷川:この点、弊社は、昨年立ち上げた別サービス『エンガレージ』で墨田区の町工場3500軒をくまなく回り、モノづくりの現場と深く関わりました。
実際に、町工場の世界に入り込むと、彼等の技術力のレベルの高さに唸らされることが多かった。町工場で有名な浜野製作所さんなど素晴らしい出会いや体験がいくつもありました。
吉田:もうひとつ町工場サイドからの話をすれば、化学合成を手がけているある町工場から、「ある合成を行いたいが、高校の化学程度の知識で良いので、教えてくれる研究者はいないか」と相談を受けたことがあったのです。このとき、技術の場では、逆に知識が足りないことを確信したのです。日本が誇るモノづくり職人が、高校の化学レベルで困るというケースがあることを知り、これは双方にニーズが飛び交っているなと。
―なるほど。それで、ResQueを立ち上げたワケですね。
吉田:研究現場はソフト、製造業はハード。これまでは隔絶していた二つの世界をなんとかして繋げたい、結びつけたいのです。ここには、産学連携の促進という意義もありますし、将来的には、産業の柱となるようなビジネスになりうる可能性を孕んでいると思っています。
『クラウドソーシング』と『マーケットプレイス』、ResQueの2本柱
-教育・研究の現場に対する技術の現場としての製造業ということなのですね。仰る形でResQueが独自の立ち位置を確保することに成功した場合、その後に対してはどのようなビジョンを描いているのでしょうか。
吉田:クラウドソーシングの仕組みは認知されてきましたが、現状は、WEBの世界に留まっていることが多いですよね。ResQueでは製造業やモノづくりをひとつのテーマに、インターネットに縁遠い方たちにアプローチしていきたい。後発のサービスではありますが、第一段階として、製造業の拠り所となるサービスにしていくことを考えています。
そのためにも、町工場の世界では、まだまだ「クラウドソーシングって何?」という声が多いと思いますので、必要なところには丁寧に足を運んで、対面してお話しして、少しずつ実績を積み上げていこうと考えています。そこで、具体的なメリットを提示して、権利面を明確にし、いかに安く案件を獲得できるかという様々なメリット・デメリットを説明することで理解いただこうと考えています。
―第一段階ということですが、ではその先に、第二段階が用意されているのですね。
吉田:はい、第一段階がある程度見えてきたところで、ResQueの次の段階として、『マーケットプレイス』という仕組みを準備しています。将来的には両サービスを組み合わせて、回していこうと考えています。
マーケットプレイスとは何かと言うと、従来のクラウドソーシングではたとえば「当社のロゴを発注します」という依頼があって、それが「企業のロゴを制作しました」という実際のビジネスになったとして、でもそれは一対一、そこで完結してしまいますよね。同じロゴを別会社が利用するのは困りますから当然、複数販売する事はできません。しかし、問題解決策であれば、特許が絡まなければ再販に問題は出ません。同様な課題で困っている人に解決策を再販できる仕組みがマーケットプレイスです。再販されたお金は発注者と解決者に還元される仕組みになっていますので、「当社が最初に発注しました」「それに対してこういう解決策を得られました」「その後のビジネスとしても順調です」という企業がマーケットプレイスを通してその情報を発信し、再販することで費用を回収する事が可能になります。
殿堂入りするような画期的な解決策が得られれば、末永くそこから収益が得られ、同時に解決された当初の課題そのものもビジネスとして収益を得ていくといった新しい収益構造を生み出していけると考えています。
一緒に新しいことをしよう、未知の市場を開拓しよう
-『教育・研究と、それに対する技術』というフィールドにおいては特に、『課題とそれに対する解決策』のシェア、再販の意義や価値は高そうですね。マーケットプレイスは研究や産業の発展に大きく寄与する可能性を秘めていそうです。インターネットの世界は、本来的にシェアの考え方と親和性が高い世界だと言えますが、今回ResQueではクラウドソーシングの考え方とともに、そうしたシェアの考え方を教育・研究現場や製造業の現場に『輸入』してしまおう、それによってひとつ大きな風穴を開けてやろうという気持ちを感じます。
では、実際にResQueへの技術者サイドからの参加者として見込まれる、小誌読者層のような中小企業や町工場の経営者層に向けたメッセージをお願いします。
吉田:私は、未知の市場というものはまだまだあると思っています。弊社は、従来の市場に囚われずにビジネス展開できるようなパートナーを探しています。新しいことにチャレンジしたい、新しい業界と繋がりたいという経営者の皆さんと仲間と呼び合える関係になって、色々な新しい市場づくりにチャレンジしていきたいのです。
弊社は、研究現場や教育機関など、通常企業がなかなか足を踏み入れにくい分野とのネットワークがありますので、そういった分野と、読者である経営者の皆さんとの橋渡しをして、コラボレーションを促進していきたいですね。そのためにも、まずは、本サービスを覗いてみてください。そして、各大学の研究者と繋がってください。そうすれば、自社にはどこにも負けない尖った技術があるのに、仕事に困っているという町工場の方には、活路を開きうる案件が見つかるはずです。
長谷川:大学や研究者など、いままで接したことのない相手とのビジネスは、まずはコミュニケーションから始まります。困ったことを相談したり、逆にお金になるかどうか分からない段階でも、困りごとを聞くところから始まります。既に大学などとビジネスを行っている町工場や中小企業も、はじめはそうでした。自分たちと違う分野で、なにやら難しそうなことを言っていそうな相手でも、まずは話を聞いてみて、何かその人たちにとってプラスになることはできないかを考える、そんなコミュニケーションからスタートできれば、将来的には仕事に繋がっていくのではないかと思います。
事務的に見積もりをとって、やる、やらない、いくらで、という数字だけのやりとりだけだったり、書類はFAXで送られてこなければ仕事ができなかったり、そういった商習慣から脱却することで、広がる世界もあると思います。
―仰ることはわかるのですが、そのためには、従来の商習慣にとらわれない感覚を持った若い世代を多く採り入れるしか打開策はないように思いますが。
吉田:ええ、それこそ、インターネットをやるかどうかとか、スマートフォンを使いこなせるかどうかなどから、人脈や、経営感覚などの面まで、とにかく若い人を入れるというのは重要だと思います。もちろん学歴がすべてではないですが、ほぼ家族でやっているような小さい工場に、大学を出た人が一人加わるだけで、劇的な変化をもたらした例を私たちはいくつも見てきました。
-ただ、どこの業界もそうですが、いかに若い人に来てもらうかで、皆さん苦労している。現状、学生の就職活動では、福利厚生とか知名度のある企業とか、そういった点ばかり重視されてしまう。
しかし、中小企業や小さな町工場の中には、この人の下であれば働いてもいい、いやぜひ働きたいと思わされるような大人物も大勢います。ところが、肝心の高校生や大学生たちはそういう世界があることを知らない。現状の産学連携にしても、大企業間での動きが多く、中小企業間では、ジョブマッチングという観点では機能していないと感じます。
吉田:学生の側も、学校に関係なく自らアクションを仕掛けていく姿勢が欲しいですね。以前、ある台湾のメディアに弊社が紹介されたのですが、それを見た海外の学生から、インターンさせて欲しい、就職させて欲しいというメールが届いたのです。言葉の通じない国に飛び込んでいく、そのエネルギー、行動力に驚かされました。異国の企業に直接メールを送ってしまう、日本の学生たちにそこまでできるかを考えると、足りないものが見えてくるような気がします。
-学校がお膳立てする就活、みんなと一緒に行う就活、といった枠組みを飛び出して、個としてアクティブに自分の未来を選択していく、そんな姿勢が必要なのかも知れませんね。同時に、企業の側にも、言えることですよね。そうした時代が既にやってきていることのひとつの表れであり、また個としてアクティブに自分の未来を選択していく上で有効なツールが、クラウドソーシングなど新しい仕事の在り方なのではないでしょうか。御社のResQueにも大いに期待しています。本日はありがとうございました。
ResQue(レスキュー)
研究者・技術者による課題解決型クラウドソーシングサービス
株式会社リバネス
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町1-4飯田橋御幸ビル5階
TEL:03-5227-4198
FAX:03-5227-4199
プロフィール
吉田丈治氏(よしだ・じょうじ)
株式会社リバネス専務取締役CIO。中央大学理工学部時代にリバネス創業に立ち会う。東京工業大学大学院修了、工学修士。専門は電気電子工学。修了後、デジタルハリウッド大学大学院2期生として入学した経験よりインターネット・ソーシャルメディアを活用したサービスに強い。
長谷川和宏氏(はせがわ・かずひろ)
2005年4月にリバネス初の社員として株式会社リバネス入社、人材開発事業部長に就任。2010年から2012年まで名古屋産業大学客員准教授を兼任。2012年より執行役員に就任、地域開発事業部を担当。同年11月より、スタートアップの投資・経営支援事業を行う株式会社グローカリンクの代表取締役に就任。ものづくり分野のインキュベーション事業「TechPlanter」を立ち上げ、新規事業創出や産学連携事業、ものづくり企業の活性化などを担う。
◆2014年8月号の記事より◆
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