一般社団法人 日本自然冷媒推進協会|愛する地球がDr.ストップ!ストップフロンは地球を救う。空調機の冷媒を変える新しいフロン対策
愛する地球がDr.ストップ!ストップフロンは地球を救う。
一般社団法人 日本自然冷媒推進協会 空調機の冷媒を変える新しいフロン対策
◆取材:綿抜 幹夫 / 文:小川 心一
一般社団法人 日本自然冷媒推進協会 大日方 正人理事長(おびなた・まさと)…1951年、長野県生まれ。防衛省附属の少年工科学校を卒業後、通信、電気の保守点検などの事業を立ち上げ、2013年4月、一般社団法人日本自然冷媒推進協会を設立、理事長として現在に至る。
オゾン層を破壊するフロンガスの削減が世界規模で進められる中、日本はこの分野で大きな遅れを取っている。その理由は、巨大な利権、代替のためのコストがかかりすぎること、そして国の認識不足などにある。しかしながら今、ここに敢然と立ち向かう人物がいる。周囲からは蛮勇と見える戦いだが、そこには冷静な状況判断と勝算がある。日本自然冷媒推進協会の大日方正人理事長に話をうかがった。
メーカー主導型と真っ向対立
中身だけ自然冷媒と入れ替える画期的な仕組み
フロンガスといえば、オゾン層破壊の元凶として一時期はメディアで盛んに叩かれ、以来、削減に向けた動きがずいぶん進んだように思われている。しかし実態は、また別の困難なステージに移行したにすぎない。
「どうも皆さん、この問題をあまり重く考えていないようです。日本にいたっては、あきらかに後退していると思います」
日本自然冷媒推進協会の大日方氏は、そう断言する。
オゾン層を破壊する塩素を含んだフロンガスは、モントリオール議定書などの努力により、確かに使われなくなった。代替フロンとして登場したHFC(ハイドロフルオロカーボン)が現在の主流になっているが、HFCはオゾン層を破壊しないが地球温暖化には影響があり、京都議定書では排出抑制の対象になっている。ところが生産が規制されていないため、他でもないこの日本でも、今なおどんどん使われているのだ。
「その裏には当然、利権があります。と同時にノンフロンに向けた動きが世界の趨勢ですから、無視し続けるわけにもいきません。ところが、日本中で稼動している機器をすべてノンフロンに替えるには莫大なコストがかかります。利権とコスト、これがあるから日本では遅々として進まないのです」
フロンが使われているのは、エアコン、空調機、冷凍・冷蔵ケースなど。それらは日本全国でおよそ2200万台もあるという。それらを総入れ替え可能なマーケットとして考えれば実に魅力的なのだが…事はそう簡単には進まない。そこで、まったく別のアプローチを考えたのが日本自然冷媒推進協会だ。
「フロン全廃に向けた動きはすでに始まっていますが、現場は『どうしよう』とオロオロしているのが現状です。なにしろ機械の切り替えには多額のコストがかかり、とてもすぐにはできません。そこで我々の出番です。『機器はどうぞそのまま使ってください』と。『中のフロンを抜いて、この自然冷媒を入れるだけで解決しますよ』というのが我々のやり方です」
フロンガスから自然冷媒に替えることで、消費電力が大幅に下がるのである。HFCから、同協会が取り扱う炭化水素系ノンフロン自然冷媒に替えると、およそ15~45%、電力を節約できるメリットがある。導入時はキャッシュアウトがなく、エスコ方式にて導入。
「代替フロン削減に関して、機器を新しく替えましょうという考えが一般的で、これはメーカー主導で行われています。ですから、機器はできるだけ現状維持して、中身だけを自然冷媒に替えましょうという我々のやり方は、メーカーにとっては面白くないのです。どちらの方法がマーケットに受け入れられるのか。これからが勝負だと思います」
「今をどう生きるか」が最重要テーマ
作り終えた販売チャンネルに未練なし
できるだけ低コストで自然冷媒に移行し、その後は消費電力も抑えて会社をスリム化したい。それが企業の本音だろう。
「電力の節約といえばLEDですが、私はLEDばかりでなく、様々な分野で省エネ・省コストのビジネスを長くやってきました。電気、水道、ガスはもちろん、それこそノート1冊の備品に至るまで、支出額がその会社にとって適切かどうか、メスを入れて判断し、アドバイスすることができます。カルロス・ゴーン氏ではありませんが、〝ミスター・コストカッターマン〟と呼ばれたこともありますよ(笑い)」
36歳の時に通信関係の販売会社を立ち上げ、北海道から沖縄まで37箇所におよぶ販売網を作り上げた。と思うと次には通信から電気に移り、保安点検の仕事を始める。その仕事が大きく成熟してくると、今度は精密機器の部品メーカーに移り、そこに販売組織を入れることに努力する。変幻自在、神出鬼没のビジネスライフなのだ。
「何もないところに販売チャンネルを作ることが好きなんです。しかし、一度作り上げたものにはもうあまり興味がなくて、作ったものの上に乗っかってずっと安定しているなんてのは大嫌い(笑い)。新しいことをやりたくなります。いろいろな人脈も築いてきましたし、幸い、多くの方々の助けがあって、今日まで生き延びてきました」
その人生哲学も、非常にユニークだ。
「私と同じ長野出身の羽田孜さんは、『一日一生』を座右の銘にしています。これは私も共感します。私は仕事を終えてベッドで寝る時、1回死ぬ、と思っています。死ぬ姿と寝ている姿は外からは区別できませんが、私はそういう意識なんです。そして運がよければ翌朝目が覚めると。だからその日はラッキーな一日ですね。私はそういう考え方をします。この部屋を出た瞬間、暴走してきたクルマに轢かれるかもしれないわけで、そう考えると『今をどう生きるか』がすべてだと思います。過去や未来のことを考えるのは嫌ですね」
ノンフロンは間違いなく未来のためになる事業だが、大日方氏にとっては漠然とした将来の話ではなく、今、全力をかけて取り組むべき仕事なのである。
2020年の代替フロン全廃に向け
全身全霊を賭けて突き進む
代替フロンから自然冷媒への移行に関して、大日方氏が予想するシナリオは以下のようなものだ。
「日本のマーケットを狙ってLEDが海外からドッと入ってきた時、日本のメーカーは静観しました。その後、規格を付けて締め出そうとしました。ところがマーケットのほうが熟成されてしまい、思惑どおりにできなくなった。今はすべて自由化になり、LEDを使うのは当たり前になりましたね。大手の規制も及ばないし、利権も消えました。私はノンフロンについても同じことが起きると信じているんです」
その機会を虎視眈々と狙うばかりではない。行政に対する積極的な働きかけも準備中だ。
「近々、環境省に行くつもりなんです。環境省は自然冷媒を使った機器を導入する場合、補助金を出しています。いま、どんなやり方でノンフロンを実現させるか、様々なリサーチをしているはずなのです。昨年、あるコンビニチェーンが、CO2を使った自然冷媒の機器を店舗に入れました。これ、1台あたり180万円もするんですね。フロンだと100万円ですから、約2倍です。こんなことは大手だからできることで、メーカーと同調した動きです。
メーカー主導で将来のマーケットを睨み、自然冷媒を入れた空調機を作る考え方です。いっぽう我々は、今の機器を生かしていく考え。こういうやり方もあるということを環境省にじゅうぶん認識してもらい、サポートしてもらいたいと思っています」
大日方氏は現在、62歳。様々な業界を軽快に闊歩してきたが、「これからは自然冷媒に賭ける」と言い切る。それほどに地球温暖化の問題は重大であり、人々の意識を変えたい、という思いが強いのだ。
「最近、台風の数が増えているでしょう? 昨年、風速65メートルの台風がフィリピン沖に来ましたが、このクラスがいつ日本に来てもおかしくありません。日本にとっては未経験の領域です。そうなれば、太陽光パネルなども剥がされてしまうかもしれませんね。山形のおいしいサトウニシキがいま北海道で獲れる時代になり、日本はこれからますます亜熱帯化していきます。これは大変まずいことであり、それを防ぐには、みんなの意識を変えるしかありません」
構想としては、実は環境省のさらに先までも見据えている。ターゲットはズバリ、2020年だ。
「京都議定書の取り決めにより、2020年までに代替フロンを全廃することになっています。そして2020年といえば、東京オリンピックが開催される年でもあります。私は、環境省の次は都庁に行こうと思っています。『世界中からアスリートが集まりますが、施設の機器がフロンのままでいいんですか?』と。こちらから積極的に仕掛けてイニシアチブを取ってしまえば、メーカーといえども文句は言えないでしょう。そうやって新たなマーケットを少しずつ拡げていきます」
2020年には大日方氏は69歳。通常の感覚ならそろそろ職業人としては引退を考える年齢だが、そんな常識はこの人には通用しない。
「私、110歳まで生きると決めていますから(笑い)。99歳を白寿と言いますよね。で、聞いたらまだその上があって、110歳。皇寿と言うそうです。だったらそれに挑戦してやろう、と思っています」
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