中国京劇人物画家 李文培氏 & 株式会社TMセンチュリー ‐ 社団法人日中文化スポーツ協会 文培学院 玉城理恵氏 冷え込んだ日中友好は私たちが盛り上げる!
冷え込んだ日中友好は私たちが盛り上げる!
中国京劇人物画家 李文培氏 & 株式会社TMセンチュリー 社団法人日中文化スポーツ協会 文培学院 玉城理恵氏
◆取材:綿抜 幹夫/文:小川 心一
写真右:中国京劇人物画家 李文培氏 写真左:株式会社TMセンチュリー/専務取締役 社団法人日中文化スポーツ協会 文培学院/理事長 玉城理恵氏
1990年に約15万人だった在日中国人は、今や約70万人。特に一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)だけで約30万人が暮らしている。中国からの移民がこれほどの速さで増えているとは驚きだ。だが、尖閣諸島をめぐる一連のごたごたが日中関係を冷え込ませている。
この難しい時期に、民間レベルでの文化やスポーツの交流を通じて日中友好を願う人がいる。株式会社TMセンチュリー専務取締役・玉城理恵氏だ。
旺盛な中国人の不動産購入熱!
株式会社TMセンチュリーは、東京都板橋区に立派な自社ビルを構える不動産会社だ。東京・神奈川・千葉・埼玉を中心に土地、建物、マンション、事業用物件などの不動産を紹介している。その主な顧客は在日の中国人だ。
中国本土では今、若い夫婦が親の援助を受けてマンションを購入するのが一般的になっているという。それと同じような状況が日本国内、特に東京でも起こっている。20代から30代の中国人夫婦のマンション購入熱は高い。留学などで来日した中国人の収入が安定してきたことが背景にあるようだ。
東京の物件に注目するのは何も在日中国人ばかりではない。中国本土の富裕層が日本の不動産に目を向け始めているのだ。というのも、北京や上海では投資目的の不動産購入に規制がかけられているからだ。
では、日本の不動産に人気が出ているのはなぜだろうか。
その理由は、第一に日本の不動産は、それが東京であっても、中国の都市部と比べると割安感があるからだ。例えば、北京の都心部で5千万円以下の物件を見つけるのは困難だが、東京では中古・小型物件なら、都心近くでも2千万円台で買えてしまう。
第二は、中国と比べ日本の賃貸利回りが高いことだ。東京なら、2千万円台で買った都心物件を賃貸に出せば、年利回りは10%前後、手取りで月額10万円を超える収益が出る。一方、中国での利回りは非常に低く、平均2%前後。諸費用を除けば賃貸収益はほとんど出ないのが現状なのだ。
このような中国人にとって、日本不動産の状況が、TMセンチュリーの業績を大いに押し上げている。だが、市況だけが会社好調の要因ではない。同社専務取締役・玉城理恵氏の華麗なる人脈や、その魅力的な人柄によるところが大きいのである。
芸術家の娘、来日す!
玉城氏は中国北京出身。日本には1992年1月にやってきた。
「語学留学で来日しました。新宿の日本語学校に1年半くらい通いました」
だが、玉城氏の留学の経緯は一般的な中国人のそれとは少し違っていた。
「私の父は京劇人物画家で知られる李文培です。父はよく香港などの展覧会に出陳していました。そこで知り合った日本人の方が『お嬢さん、日本に留学しませんか』と勧めてくださり、保証人にもなっていただけました。当時、外国に留学する希望を持っていましたが、どこにするかは決めていませんでした。漢字が使える分、アメリカより日本の方がいいかなとも思っていましたが」
父である李文培氏は、中国京劇人物画の代表的画家である。
中国京劇院で、舞台美術監督として40年間活動。その間、京劇の名優達と交流し、数多くの名場面を描き続けてきた。香港をはじめ、様々な国で個展を開催する中国芸術界の重鎮なのだ。現在は日本を拠点に活動を続けている。
運命の出会い、そして起業
町田でホームステイをしながら、日本語学校で勉強し、その後、和光大学人文学部に入学。卒業後日本の企業で2年間のOL生活も経験した。この間には、現在TMセンチュリーの社長を務める夫との運命の出会いも待っていた。
夫は不動産会社に勤めるサラリーマンだった。
「私が持つ人脈から、在日の華僑を紹介して、主人の勤める会社に、中国人の友人を紹介していたんですが、それなら二人で独立してやっていこうということになりました」
2001年、神奈川県相模原市にTMセンチュリーを設立。2010年には現在の東京都板橋区に本店を移転した。
「我が社の顧客は90%が在日華僑です。不動産会社はたくさんありますが、なぜ在日華僑から我が社が選ばれるのか。それは日本人と中国人が共に経営している会社だからでしょう。在日華僑相手の商談は、基本的に日本語で行われます。主人や営業マンの日本語での説明で、先方は充分理解できるのですが、最終的に母国語で話ができると、安心感が違うようです。私から話を聞くとほっとするとおっしゃいます。
個人にとって、不動産は人生最大の買い物。私のような中国人がいることで信頼が増しているんです。不動産売買では、手数料は法律で定められているからどこでも同じです。だったら少しでも信頼できる会社がいいでしょう?」
一般的に、日本人は中国人に対して利己的なイメージを持っているが、一旦親密な関係を築ければ、信義に厚い人々だということがよくわかるという。
「今や、会社設立初期のお客様のお子さんが、また我が社に不動産を求めていらっしゃいます。これこそが信頼の証だろうと思っています。お客様との信頼関係が出来ていなければ、ご紹介で新しいお客様が来ることはないでしょうし、ましてやお子さんがお客様になることはないでしょう。これは我が社の自慢です」
リピーター客の少ない不動産の世界では、怪しげな会社も決して少なくない。だが、TMセンチュリーは実に誠実な会社だ。
「我が社は、社長が契約等をしっかり見ていますので、中国人のお客様とも一切トラブルが起きません。不動産売買は免許が必要です。目先の金儲けで免許を取り消されるようなことをしてはいけない。会社は金儲けより、長く育てていくことが大切ですし、それはとても難しいことです。中国では、また新しく会社を興せばいいと考えるのでしょうが、日本ではそうはいきません。一度のしくじりが命取りになりますから」
地道に築いてきた信頼こそが、TMセンチュリー最大の武器となっている。そして、その信頼の源となっているのが玉城氏の人柄なのだ。誰でも、そのふくよかな笑顔を見れば、この女性の持つ品性や教養を即座に感じることができる。芸術家である父と医師である母から受け継いだ素晴らしい素養と言えるだろう。
日中友好のために……
異国の地で、ビジネスでの成功を収めた玉城氏だが、芸術への深い愛情も持ち続けている。
「小さい頃は、父に京劇の劇場によく連れて行ってもらい、いつも楽屋で遊んでいました。遊び相手は役者さんやその子供たちです。そういう環境で育ってきましたから、ずっと芸術に興味がありますし、芸術にかかわって生きてきました。日本に来てからも、大学時代にはパリに1年くらい住んだことがあります。あちこちの美術館を巡り、芸術家との交流もありました」
そして、現在日本で活動する父・李文培氏のサポートも重要な役目の一つだ。
「父は今、世界各国から呼ばれる存在ですので、それに随行してあちこち出かけています。日本では総理大臣が催す『桜を見る会』に何度も招待されています。今年はこれからインドネシアに行きます。ユドヨノ大統領ともお会いする予定です」
こうした文化交流活動を、もっと活発に行っていくために、「社団法人日中文化スポーツ協会」を2010年に旗揚げした。そして、
「昨年は『CNTV 5+東京CLUB─CNTV中国ネットTV 東京事務所』を開設しました。これは中国中央電視台CCTV系列ネットテレビ局の東京事務所で、日中の文化・スポーツの交流をサポートする活動です。昨年のロンドン五輪では、父がイメージ大使を務め、私も父と共に現地へ行って日中両国の競技の取材活動を行いました。その経験から、2020年の東京五輪招致を応援しています」
昨年は、日中国交正常化40周年の中国文化年にあたり、交流を活発化させる絶好のタイミングだったのだ。ただ、尖閣諸島問題で日中関係が冷え込んでしまったことは少なからず活動にも影響を及ぼしているようだ。しかし、これからも交流活動は続いていく。
「協会(文培学院)は、一年以上の準備期間を経て、去年、中国アモイにある国立華僑大学と提携し、日本で華語及び華文教育修士課程コースを開講しました。日本で活躍できる中国語教師を育てるコースです。中国語教師にとってとても素晴らしい勉強の機会です。現在、日本で中国語を教えている先生は数多くいますが、そのレベルをアップしていくためにとても役立ちます。先生としてのスキルアップを目指している方にとっては、大きなチャンスだと思います。私は、これからも日中の文化スポーツ交流を盛んにしていくために頑張っていきたいと思っています」
玉城氏の活動はその幅、奥行きともますます拡がりを見せてゆく。彼女一人では実現不可能なことでも、その人柄に魅せられた多くのスタッフや支援者と共に成し遂げるに違いない。
右2枚…玉城氏の父である、中国京劇人物画の代表的画家・李文培氏(アトリエにて)・左…李氏が描いた孔明
李文培画師参考サイト:
http://www.baozang.com/zt/liwenpei/
http://liwenpei.artron.net/
●プロフィール
玉城理恵(たまき・りえ)氏…中国北京生まれ。父は中国芸術界の重鎮・李文培氏。1992年に来日。和光大学卒業後、日本企業でのOLを経て、夫と共に株式会社TMセンチュリーを創立。専務取締役就任。
●株式会社TMセンチュリー
〒173-0024 東京都板橋区大山金井町56-9 TMビル1F
TEL 03-5926-5325
http://www.tmc21.com/
●社団法人日中文化スポーツ協会 文培学院
〒173-0024 東京都板橋区大山金井町56-9 TMビル5F
TEL 03-5926-5327
◆2013年10月号の記事より◆
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