株式会社EL JEWEL エルジュエル ‐ 専業主婦の〝小遣い稼ぎ〟が一転、今や上場も視野に入れる一大事業に大躍進
株式会社EL JEWEL エルジュエル ‐ 専業主婦の小遣い稼ぎが一転、今や上場も視野に入れる一大事業に大躍進
◆取材:綿抜幹夫
ごく庶民的な生活を送る記者にとって、シャンデリアに出くわす機会は限られている。それでもホテルのラウンジやレストランなどで豪奢なそれを見かけると、欧州の伝統や文化に触れたような気分になるものだ。
そんなシャンデリア業界で一躍トップランナーに躍り出た、株式会社EL JEWEL(エルジュエル)。元専業主婦の社長・森みどり氏が躍進の秘密を語った!
主婦の『小遣い稼ぎ』から始まった商売で
独立を果たす!
シャンデリア販売で日本No・1の実績を誇るEL JEWEL。その勢いは留まるところを知らない。今ではシャンデリアのみならず、ヨーロピアンスタイルのインテリアや雑貨、オーダーカーテンなど、ライフスタイルをデザインするアイテムを取り揃える『空間プロデュース』企業として勇名を馳せている。
わずか10年にも満たない期間で、EL JEWELを成長企業に押し上げた社長・森みどり氏にとって、ここまでの道程は驚きと発見の連続だったに違いない。そもそも現在の会社も、社長という地位も、まったく想像の埒外だっただろう。
「働いていた会社を辞めた1998年、巷ではウィンドウズ98が大きな話題になっていました。『これからの時代はインターネットだから勉強したら?』と先輩に勧められ、これは家で勉強しなくちゃと思い立ち、当時まだ高価だったパソコンをなけなしの退職金で購入したんです。
独学でインターネットやWebサイトのことを勉強しました。そしてネットショップやオークションにはまりまして(笑い)。最初は『ヤフオク!』(ヤフーのオークションサイト)でただ落札しては喜んでいたのですが、やがて自ら出品するようになりました。
まさにフリーマーケット感覚で、家にある不用品を出品していたんです。数々のアイテムを出品しているうちに、『こういうものが高値で売れるんだ』とか、『何曜日の何時に入札が多いんだ』とかが分かりはじめ、そこで次に何が売れるかを考えて、不用品ではなく仕入れをして売り始めたんです。
主婦業の片手間商売でしたが、間もなく細木数子さんの番組で取り上げられていたゲルマニウムブレスレットを売り始めたら、これが飛ぶように売れました。月商ウン百万を超える時もあったんですよ」
本人も思いもよらない商才が目覚めた瞬間だっただろう。だが、その才と引き換えに大きなものを失った。
「売上が大きくなったのと同じタイミングで、離婚話が持ち上がりまして(苦笑)。主人は私に仕事をして欲しくない人で、家事に専念して欲しかったんです。でも、この状況なら一人でも生きていけるという自信もあったので、その話、承諾しました」
18年間の結婚生活にピリオドを打ち、社会という大海原に改めてこぎ出していった。しかし、そのボートは思いのほか脆弱だった。
「どんなものでも、ブームは常に一過性だということは初めからわかっていましたので、ブレスレットの売れ行きが落ちる前から次の商材探しに必死になりました」
ところが、僥倖はどこに転がっているか分からないもの。身近に先行きを決定付けるような商材候補が現れた。
「独り暮らしを始めるための家具を探していたんですが、欲しかったかわいい白い家具はぜんぜん見つからなかった。それまでもネットショップなどで様々な商品を見てきましたが、自分が欲しいと思ったものはことごとく売り切れることがわかっていました。だからこそ、私の欲しい白い家具も人気があって品薄なのだと確信したんです。そこで、いろいろ当たって仕入れ先を確保し、白い家具をヤフオク!で売り始めました」
この家具販売がスマッシュヒット、女一人生きていく基盤を確保した。
「ちょうどその頃、映画『マリー・アントワネット』(米/ソフィア・コッポラ監督/2006年)が公開され人気が出ていて、数年に渡って日仏でブームになるんですが、その影響もあってか、様々なブランドの広告に豪華なシャンデリアが使われるようになっていました。それを見て、『これは日本でも需要があるに違いない!』とピンときましたね」
まさに神の啓示だった。
そしてシャンデリア販売No・1に!
早速、日本におけるシャンデリアの『現在』を調べ始めた。
「日本でシャンデリアを卸している会社を探しましたが、たった4社しかなく、そのうち1社は撤退予定の状態でした。これは競合が少ないし、大チャンスだと思いました。
そこでインテリア雑貨を売っている会社から仕入れたり、製造している中国メーカーの日本支店を探したりで。おかげさまで、国内の需要の伸びに乗って事業がどんどん大きくなっていきました。日本にはシャンデリアを製造するメーカーがなく、国内の在庫がほとんどなかったので、お客様の望むような様々なシャンデリアを、短納期で納められるところは他にありませんでしたしね。
始めた当初は納品まで1カ月半かかることもありましたが、今では3週間で納められるようになっています。去年、中国に工場を持ったのであらゆるオーダー、納期にお応えできる体制を構築できました」
ネット販売を皮切りに事業を拡大していき、2014年4月現在、麻布に本店、広尾にショールームを構え、千葉市には配送センター、そして中国広州には工場と、製販一体の体制が完成し、日本におけるシャンデリア販売No・1の地位を盤石なものにしている。
短期間にここまで来られたのは、もちろん森社長の才覚によるのだが、自身の経験則も大きく貢献しているそうだ。
「現在の主なターゲットは富裕層と法人(店舗)です。ホテルとか結婚式場、レストランなどで需要があるからです。
この仕事を始めた当初は、オークションでの売買でしたから単価は低かったですし、お客様もごく一般の方でした。それが商材を増やし変えていくことでだんだん変化していったんです。
私が主婦の時代、夫の仕事の都合でずっと転勤族でした。中には田舎に赴任することもあって、コンビニに行くのも自転車で何十分とか、スーパーには車でなきゃ行けないってこともありました。今で言う『買い物難民』みたいな状態ですね。それがインターネットの普及によって買い物をする喜びを感じられるようになった。そういう気持ちを他の皆さんにも味わってもらいたくて、シャンデリア以外の商材を増やしていきました。
ですが、インターネットだけでは高い商品に不安を持たれるお客様もいらっしゃいます。実物を見て確認したいというニーズも多くありましたので、ネットと実店舗の両面販売を行っています。
今では店舗の方が売上は伸びていますね。これは客単価の影響も大きいのでしょうが。もちろん、ネット販売のお客様の不安を解消するためにも、販売や納品の実績を掲載したり、商品仕様をより細かく記載したりして、ユーザーフレンドリーなサイトを心がけています。お電話でのお問い合わせにも充分に対応できるスタッフを用意したりと、万全の体制を作っています」
こういう女性目線の気配りが、会社を今日の位置に押し上げていったのだろう。
事業推進の原動力、
それは社会貢献への熱い思い
一介の専業主婦だった森社長の中に、これだけの『事業欲』が眠っていた。開放されたきっかけは前述の通りのネットオークションだったのだが、その源は何だったのだろう。
「専業主婦をしていた7年間で貯め込んだ知識や情報、あるいは社会に対する思いが、自立するとともにあふれ出てきたのが事業を行う原動力になっているんだと思います。もっと会社を立派にして、社会に貢献する企業にしていきたいと思っています」
たぶん、元夫の気持ちを慮って無理やり専業主婦に収まろうとしていたのだろう。もちろん、主婦の行う家事労働も、究めるのは大変なことだ。しかし、森社長の資質は家庭の中だけでは十二分に活かされないものだったのだ。
では、開放され、さらに成長を遂げた『事業欲』は、これからどんな方向へ伸びていこうとしているのか。
「今の麻布本店から50メートルほどのところに、世界の一流品をセレクトしたショップを6月にオープンする予定です。本当の欧米の一流品を日本人はまだ知らされていません。日本に『本物』を広め、我が社のブランド力アップを目指しています」
安定的な成長段階に入ったシャンデリアを柱に、次の展開で会社は大きな飛躍の時を迎えようとしているようだ。
「これからはシャンデリアとともにインテリアにも力を入れていきます。『エルジュエルでベルサイユを』をキャッチコピーに掲げ、ヨーロピアンスタイルのインテリアを提案して、我が社の企業イメージを広く一般にも定着させたいですね。
コピーにあるベルサイユ宮殿のように、日本をより美しくしたいのです。海外から大々的に文化を導入した時、日本は大いに栄えてきたという歴史があります。例えば遣唐使を派遣した平安時代や、西洋文化へと転換を図った明治時代などがそうですよね。
この閉塞感に満ちた現在こそ、ベルサイユ宮殿のような美しさを導入して、来るべき2020年の東京五輪に向け、豊かで美しい日本を作ろうというコンセプトで会社を大きくしていきたいと考えています」
EL JEWELと森社長が描く夢は果てしなく大きい。そのための資金的裏付けも、2016年に予定している株式上場(すでに基準をクリア済み)で充分だろう。
この国に美と豊かさをもたらす美しき旗手、森みどりの名を覚えておいて損はないはずだ。
●プロフィール
森みどり(もり・みどり)氏…昭和40年広島県生まれ。昭和59年広島県立広島井口高校卒業。専業主婦時代にはまったネットの世界で商才が開花。平成18年株式会社EL JEWEL設立。代表取締役就任。
●株式会社EL JEWEL(エルジュエル)
【麻布本店】
〒106-0045 東京都港区麻布十番3-10-12 シティ麻布1F
TEL 03-5419-7751
【広尾ショールーム】
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