篠笛立平 日本の伝統を世界に

◆取材・文:大高正以知

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笛吹童子が帰ってきた!?  

♪ヒャラ~リ ヒャラリコ ヒャリ~コ ヒャラレロ 金と銀との蒔絵の笛だ──。  

今上天皇のご成婚パレードを、届いたばかりの白黒テレビで万歳しながら見ていたという年恰好の日本男児なら、この♪ヒャラ~リヒャラリコを聴いて胸をときめかさない訳はあるまい。言わずと知れた、映画「笛吹童子」(東映)の主題歌である。あの哀愁を帯びた菊丸の篠笛の音色と、敢然と敵に立ち向かった萩丸の若武者振り、胡蝶尼のえも言われぬ美しさと可憐さには、誰もが夢中になった筈だ。

 

ちなみに小欄は、縁日で買ったオモチャの横笛をいつも腰に差し、大好きなライスカレーも、大嫌いな宿題も放っぽり出して、必死に練習したものである。しかし今や、そんな笛ですら日常生活の中で見かけることはほとんどない。 そう言えば、中村錦之助(菊丸役)も東千代之介(萩丸役)もとっくに逝っちゃったしなぁ……。

 

とまあそんな感慨にふけっていたところ、なんと平成版笛吹童子、もとい笛づくり童子(笛師)に出会った。

 

 

工芸品としての美しさと正確な調律

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水落立平氏、36歳である。今や笛師と呼べる職人は、全国でも5人ほどしかいない。お察しのこととは思うが、水落氏はその中の一番の若手であり、笛や和太鼓のプレイヤーはもちろん、広く邦楽界から期待されている、新進気鋭の笛師と言っていい。氏のつくる篠笛の大きな特徴は、工芸品としての美しさと、楽器としての正確な調律とを、 「とことんまで追求し、見事に両立させた完成度の高さ」(邦楽器店関係者) だという。

 

写真を見ての通り、すべて漆でコーティングをし、更には金箔、銀箔のほか、孔版技法の転写技術を用い、一管一管にストーリー性を持たせた、独特の蒔絵が施されているのだ。

 

「塗笛と言いましてね。美しさや舞台映えだけでなく、気温や湿度、使う年数によって、篠竹の性質やコンディションが悪くならないように保護してくれるんですよ」(水落氏、以下同)

 

その蒔絵を担当しているのは、氏の実父で、シルクスクリーンの版画家としてつとに有名な水落啓氏(63歳)だ。なるほど。頷くほかあるまい。もちろん調律についても徹底したこだわりを持っている。一管当たり最低でも4回、それも必ず日を変えてやり直すというのだ。

 

「調律は長い時間、全神経を集中してやりますからね。その分、疲れから五感がマヒして、知らないうちにミスを犯す危険があるんです。日を変えてやり直すのは、その危険を避けるためです」

 

ちなみに氏のつくった篠笛は、多くのアーティストたちの手によって、今や世界に広がりつつある。

 

「篠笛は日本が生んだ素晴らしい楽器であり、工芸品です。世界の多くの人たちにもっと知っていただきたい、もっと吹いていただきたいと心から願っています。そのためにも、私たち関係者が一丸となって、まずは国内でしっかりと裾野を広げていかなくちゃと、考えているところです」

 

ということで東映さん、例の笛吹童子を、あと2~3回ほどリメイクしていただけませんかね。

 

プリント

【取材協力】
篠笛立平
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