コロナ禍こそチャンス! インバウンド向けプロモーションを仕掛けるTokyo Creative株式会社取締役COO中川智博氏
2020年、全世界で猛威を振るう新型コロナウィルスの拡大によって、日本の外国人観光客向けの観光業界は大打撃を受けた。しかし訪日外国人観光客向けのプロモーションを行っているTokyo Creative株式会社の中川智博取締役COOは「今こそ飛躍するチャンスの時」と話し、既にウィズ/アフターコロナの世界を見据えた仕掛けを進めている。
外国人観光客が情報収集するのはYouTube!日本にいる外国人インフルエンサーを活用したプロモーション
近年、良い話題が続いていた訪日外国人向け観光業界。世界的な好景気と円安の結果、日本を訪れる外国人観光客は2013年に年間1000万人を超え、その後2016年に2400万人を突破、2019年には3188万人にまで増えた。彼らが滞在中に使うインバウンド消費金額は総額4.8兆円(2019年)と推定されており、長年の不況に喘ぐ日本経済にとって明るい数字となっていた(JINTO調べ)。
2020年には東京オリンピックを控え、この数字にも一層加速がかかってくるだろう、と思われていた矢先に発生したのが、新型コロナウィルスの感染拡大だった。世界的パンデミックによって日本政府は約100ヶ国を対象に上陸拒否やビザの無効化などの入国制限を発令し、そのため2020年1月から6月までの訪日外国人は僅か約395万人にとどまった。この数は前年比で76.3%減という大きなものだ。
「確かにこの数ヶ月は厳しい状態でした。しかし今後デジタルシフトが進んでいくことで私たちにとっては追い風だと考えています」
そう話すのはインバウンド集客設計から実行まで、プロモーションを請け負うTokyo Creative株式会社の中川智博取締役COOだ。
Tokyo Creative株式会社がターゲットにしているのは主に英語圏の、日本旅行に興味がある人々。
先程挙げた訪日外国人観光客の大半は、中国・韓国・台湾・タイといったアジアからの観光客で占められており、英語圏からの観光客は320万人程度にとどまる(アメリカ152万人、ヨーロッパ170万人。同調べ)。
「しかしその数は今後大幅に伸びる可能性がある」と中川氏は続ける。
「Tokyo Creativeで調査したところ、彼らは旅行先を検討する際、情報収集のツールとしてSNSを主に用いています。その中でもYouTubeが全体の73%を占めており、Instagram(4%)、Facebook(3%)を大幅に上回っています。弊社の強みは日本で暮らし、YouTubeを使って日本の情報を発信しているインフルエンサーたちをネットワークしていることです。彼らにはフォロワーが約1700万人もいます。この1700万人は皆、日本に興味関心を持ち日本へ旅行したいと思っている外国人たちです」
1700万人という数字は日本最大級、と中川氏は話す。彼らを抱えているインフルエンサーに日本の魅力を紹介してもらうことで、高いプロモーション効果を期待できるのだ。
外国人観光客をめったに見ない村に人を呼ぶ
「弊社のクライアントの中には海外向けプロモーションを展開したい企業も多くあります。しかし全体で見ると企業は4割ほどで、残り6割は外国人観光客を呼び込みたい地方自治体です。今、地方は外国人観光客を取り組む活動を積極的に行っています」と中川氏。
外国人観光客、特に英語圏からの観光客にとって日本の地方は、魅力的な旅行先だ。日本人にとってはあまりに見慣れている風景、神社の木造建築や石畳などが彼らにはたまらなく心惹かれる対象なのだ。
「彼らは私たち日本人と感覚が違うので、そこを間違えると彼らの心を動かすことはできません。ですからそこを見落とさないよう、弊社では外国人インフルエンサーを抱えているだけでなく、社員の半分を外国人にしています。日本人では気づかない視点を持っているところも弊社の強みです」
Tokyo Creative株式会社のプロモーション実績の1つが新潟県中部に位置する弥彦村の事例だ。
弥彦村は人口約7700人、観光スポットとしては越後国一の宮として万葉集にも登場する彌彦神社や日本唯一の村営競輪場である弥彦競輪場、そして温泉などがあるのどかな村だ。しかし日本国内でも知名度は低く、もちろん外国人観光客が訪れることも少なかった。
この村から依頼を受けたTokyo Creative株式会社では8人のYouTuberをアサインして彌彦神社や競輪場、近くの燕三条のペーパーナイフ作りなどを紹介する動画を作成し、YouTubeで公開した。この動画の累計再生数は300万回を超え、動画を見た外国人観光客が弥彦村に訪れる、注目の観光地となった。
「新潟県でいうと他には新潟市のプロモーションも手がけました。新潟市出身のマンガ家が多いことから『マンガ・アニメのまち にいがた』をアピールしています。市内にある『新潟市マンガ・アニメ情報館』では声優体験ができるのですが、日本人にはさほど珍しくないこの体験が外国人のアニメファンにとっては注目のコンテンツ。外国人アニメファンたちが声優体験したいという欲求は非常に大きく、『あなたも声優になれる』という動画を作ったら40万回再生され、大きな反響がありました」
インバウンド観光におけるデジタルシフトは加速する
「コロナ禍による最大の変化はデジタルシフトです」と中川氏は話す。
コロナの影響で直接面談による商談は元より、展示会などのイベントも軒並み中止になった。これにより、展示会などのオフラインプロモーションは実施できなくなってしまった。
「多くの自治体ではこれまで展示会で集客を図ってきましたが、その手段を失ってしまって、デジタルマーケティングへさらにシフトする力が強まっています。弊社はずっとデジタルですから、それで一気に問い合わせが増えました」
それにこれまでは商談のために時間と費用をかけて地方に伺っていましたが、今は足を伸ばさなくともクライアント側からウェブ会議で、と言われるので助かりますね、と中川氏は笑う。
「今後はさらに、オンラインで体験やライブ配信で日本を発信したいと考えています。先日はオンラインで香川と繋ぎ、自宅にいながらうどん打ち体験ができるイベント『うどんツーリズム@オンライン』を行いました。このように変化に対応して、現地に行かなくても楽しめるサービスを考え、提供していくことも弊社がリーディングカンパニーとしてやらなければならないと思っています」
人が観光を楽しむという本能的な行為がなくなることはありませんから、と中川氏は話す。「そのためにいつでもアクセルを踏める準備をしています。歴史上、感染症が克服できなかったことはありません。現在のコロナ禍も時期は読めないですが必ず終息するはずです。コロナ禍が終わったタイミングで一気に加速し、ステップアップしていけるようにしたい」。
アフターコロナには訪日観光客が急増する
コロナによって外出禁止・海外渡航禁止が続いていたが、現在世界中で31%の人々がコロナの終息後には海外への旅行を検討しており、その回答者のうち88%が行先を日本にしたいと考えている(Tokyo Creative調べ)。
「日本に行きたい外国人たちはウズウズしています。その人たちに日本の、ガイドブックにも載っていないような地方を好きになってもらえるチャンスは今なのです。日本人が見逃している、外国人にとってたまらなく魅力的な日本の風景を伝えれば、確実に彼らの心に刺さる。それが集客に繋がります」
こんな状況の中で情報発信するべきなのか、と自治体関係者から聞かれることもあるという。しかし中川氏は「こんな状況だからこそやるべきだ」と言う。
「ステイホームが常識化している今だからこそどんどん情報を発信し、未来のファンを作っていくべきだと思っています。町がロックダウンし、家に閉じこもっていた彼らはYouTubeで見た日本に強い興味を抱いている。日本のゲートが開いた途端、彼らはどっと押し寄せて来るでしょう」
だから今こそその時、彼らを取り込みたい自治体から私たちに声がかかる。私たちなら彼らに刺さるプロモーションを提供できますから、と中川氏は自信を示す。
「今はまだ海外向けデジタルマーケティングという分野で誰もが明確な答えを定義できていない状態です。しかし弊社の持つデジタルの強みをより伸ばしていけば、この分野のリーディングカンパニーになっていけると考えています」
逼塞し、息を潜めるようにコロナが過ぎ去るのを待っているような日本経済。その中で、もう次のステップアップに向けて力を蓄えている企業がここにある。
中川智博
1987年生まれ。同志社大学文化情報学部を卒業後、株式会社ワークスアプリケーションズ、電通アイソバー株式会社を経て2018年Tokyo Creative株式会社入社。
Tokyo Creative株式会社
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