株式会社ランプ-学生起業で月商400万円から一転 借金地獄・受託地獄を乗り越え Webマーケティングで企業成長の道を灯す京都発のベンチャー企業
インターネットやスマートフォンの普及により、顧客行動は大きく変化した。その結果、WebサイトやSNSといったオンラインで顧客接点を作るWebマーケティングの重要性が増している。
2017年1月に発表された富士通総研の「デジタル化への認識とデジタルマーケティングの実態調査」によると、35.3%の企業がデジタルマーケティングに取り組んでおり、成果を挙げていると実感しているのはそのうち37.0%だった。
引用した調査結果は2年前のものだが、デジタルマーケティング・Webマーケティングに取り組みたいが十分にできていない、取り組んでいるものの成果に結びついてない企業が多いことは今も変わりないだろう。
ユーザーにとって有益な情報を届け成果に結びつけるコンテンツマーケティングを得意とするマーケティング支援の会社、京都のベンチャー企業株式会社ランプ。
今では京都の優良企業株式会社京進や京都府などを顧客に持つ同社だが、数々の苦難を乗り越えてきた過去があったという。
同社代表取締役河野 匠氏に、これまでの軌跡と今後のビジョンについてお伺いした。
学生時代に起業、月400万円の売上を記録するも……
河野氏が起業をしたのは大学入学してすぐの19歳のとき。当時ファッションに興味があり限定品の洋服や革靴などを集めていた。そのとき目をつけたのが日本未入荷の海外限定品。「これは仕入れたら売れるのでは?」と思い立ち調べたところ、当時1ドルが78円という為替レートで、日本で手に入れる価格のおよそ半額で海外では買うことができることがわかった。そこからの行動は早く、ニューヨークに買い付けにいきBUYMA(https://www.buyma.com/)と自社通販サイトを併用しつつ販売を開始した。
友人や知人などを中心に販売していたが徐々に顧客は増え、アディダスのパーカーをカップルのペアルックパーカーとしてセット販売したところ大ヒット。なんと月に400万円の売上を記録。
「そのときにビジネスってめっちゃ簡単と勘違いをして、外車などを買って通学をしたりしていましたね。」と河野氏は当時のことを振り返る。
しかし、ビジネスの世界は甘くない。
急速な円安が進み手元のキャッシュが不足。そのため、注文を受けてからクレジットカード上限金額一杯まで使い仕入れをするようになった。1ドル100円を超え為替は好転せずに経営は悪化。このままではいけないということで新規事業を模索。
Web制作に活路を見出すも苦境に立たされる
もともと自社通販サイトの集客のためにWebマーケティングの研究をしていた河野氏は、Web制作事業を手がけるようになる。
クラウドソーシングサイトからWeb制作の案件をこなして売上を作り危機の脱するも、苦難は続く。
「通販事業と違い、受託事業をやっていく上で人手が足りないと気づき、大学の同じ学科の友人に声をかけてやるようになりました。売上が十分にない中で家賃12万円のオフィスを借りていましたし、学生企業だったからか売上が回収できなかったり、安く買い叩かれるということもありましたね。」と河野氏。
見込まれた売上の入金もなく会社の資金繰りはもっと厳しくなり、仲間とは空中分解、両親にも借金と、どうにもならない状況へ追い込まれる。
河野氏はこの時が起業の中で一番苦しかった時という。
「お金のことは本当に起業した中で一番苦労しましたね。また就業経験がなかったことで遠回りもしましたね。」
このような窮地に陥るも、人と出会いにより事業が少しずつ好転する。
偶然同社のWebサイトへ問い合わせしたことで出会った、弁護士。
当時売上回収で悩んでいた河野氏へ契約関係の助言をしてくれたという。
さらに、その弁護士のすすめで参加したセミナーで紹介を受けた100年経営研究機構の藤村氏。
藤村氏は、キャッシュフローの悪化で悩んでいた河野氏に対して、クライアントからの入金サイクルや外注先の支払いサイトについて見直しを助言。
弁護士は同社の顧問弁護士として、藤村氏はメンターとして今も関わってくれているという。
受託地獄から抜け出しWebマーケティング支援の領域へ
顧問弁護士やメンターの助けにより、業績が改善しつつあった2015年。
より安定したビジネス展開ができないかと検討した結果、SEO対策やSNS活用を支援するWebマーケティング支援事業に取り組むことになる。
同社の強みはWebマーケティング の中でも「コンテンツマーケティング 」だ。
月額20万円で、オウンドメディアの企画、記事の制作(月5本)から運用までサポートする。
SEOノウハウを生かした質の高いコンテンツ制作からアクセス解析結果に基づいた改善提案までワンストップで対応ができるのが強み。
同社は社員数11名の会社だが、ほぼ全員がディレクターとクリエイターとコンテンツ制作に従事し、質を担保するために外注は極力せず内製で対応をしている。
コンテンツを制作して終わりではなく、コンテンツ制作後の解析と提案といったフォローも手厚い。その背景として河野氏は次のように語る。
「自分たちが受託でやっていた時は、納品して終わりだった。コンテンツを作った後の結果と結果を元にどう改善したら良いのかということをしっかりクライアントに報告するフォローの部分が強みになると気づいた。」
このような解析および改善提案のレポートは、クライアントからの評判も良く「先日上場したメーカーの方は製品の認知に課題を抱えていました。コンテンツマーケティングでしっかりと成果が出てきて今では毎月のレポートが楽しみといってくれています。」と河野氏。
今ではMKタクシーで有名なエムケイ株式会社のオウンドメディアMKメディア(https://media.mk-group.co.jp/)をはじめとしたエムケイ株式会社のWebマーケティングの大半を支援している。
エムケイ株式会社は、スマホ対応がされていない、サービスごとでバラバラに情報発信をされていてWebが機能していない状況だったと河野氏はいう。
「MKタクシーはメータータクシーが有名ですが、空港タクシーやガイド付きタクシーなどのサービスも提供しています。これらの認知アップを目的としてMKメディアという一つのメディアに情報を集約して発信するように提案しました。」
MKメディアはタクシードライバーから聞いたおすすめスポットという切り口で観光スポットを紹介し、エムケイ株式会社の担当と一緒に企画運営をして反応は上々という。
アフターフォローに力を入れたことで生まれた新サービス「KAGARI」
「自社でコンテンツマーケティング支援をしていく中で、ちょうど良い分析ツールがなく、だったら作ろうと判断して開発しました。当社が作るレポートはクライアントからの評判もよく、そういうプロセスも含めて開示していくことが差別化にもなると思いました。」
コンテンツマーケティング特化の解析ツール「KAGARI」を開発した経緯を河野氏はこのように語った。
「KAGARI」は、グーグルアナリティクスやグーグルサーチコンソールを組み合わせても取得できない、記事ごとの検索クエリのレポートなどを自動で作成することができる。
ユーザーは「KAGARI」を使ってサイトの課題を抽出して、課題の改善方法を提案をうける。改善方法を解説した記事が用意してあり、ユーザー自身でコンテンツの改善に取り組むことも可能だ。
もちろん同社がコンテンツマーケティング支援をする場合は、「KAGARI」を使い、毎月記事ごとの成果の報告と改善の提案をする。今は毎月230記事程度制作をしており、「どういうキーワードを組み合わせてたら成果に繋がるのかノウハウもかなり溜まってきている」と河野氏。
KAGARIのレポート(サンプル)
京都にこだわり、明かりを灯せる会社へ
2018年の京都の訪日外国人数は800万人と日本全体の訪日外国人数の25%を占める。インバウンド需要に応える形で都ホテルの宿泊者向けの多言語ガイドコンテンツ制作や、京都府KYOTO SIDEの多言語対応をサポートなどを手がけており、インバウンドは京都でビジネスを展開している同社が重要視している部分だ。
河野氏はベンチャーを経営する上で東京と比べると投資家も少なく、支援者との出会いも少なく環境としての難しさあると述べつつ、京都にこだわる理由を次のように語る。
「ベンチャー=東京という認識がある中で、京都という場所にはこだわりたいと思ってます。当社には自分が生まれ育った町が好きで役に立つビジネスをしたいという人材が多く、インターンやUターンから社員になったものもいます。京都市内の学生の数は約14.7万と人口の約1割が学生です。人口に対する学生数・大学数の割合は東京・大阪を越え、全国で一番高い。そういう特色のある中で若い京人材が働きたい場所でありたいと思ってます。さらに、京都のベンチャーでは珍しい上場も考えています。」
株式会社ランプという社名に込めてられているのは、世の中にある暗いものや不便であったりだとか困難を強いられている部分を明るく灯せるようなWebサービスを作りたいという想い。河野氏はこのように今後のビジョンを語った。
「世界で最も老舗企業が多い京都。京都の会社でも倒産している会社はたくさんいます。そういう暗い部分に明かりを灯せて、京都の人々に長く愛される企業になりたいですね。」
河野 匠 氏
株式会社ランプ代表取締役
滋賀県大津市出身。満27歳。
大谷大学文学部人文情報学科卒
株式会社ランプ
〒604-8136
京都府京都市中央区三条通烏丸東入梅忠町24-1加藤ビル2F
℡075-600-2721
従業員数 22名
資本金 4.000.000円