株式会社トラストワン ‐ デザイン・設計・施行・管理サービスをワンストップで提供
「顧客目線」のサービスで内装業界の常識を変える
IT技術の活用による業務効率化・新事業開拓は、現代において、あらゆる分野の企業にとって避けられない課題。そんな中、積極的なIT化と真に顧客の立場に立った仕事姿勢で業績を伸ばしているのが、デザインから工事まで、店舗全体の空間プロデュースを行っている株式会社トラストワンだ。
見積もりの自動化を可能にしたWebサイト「ツボタン(https://tsubotan.net)」の展開、「東京都受動喫煙防止条例」に対応した分煙対策工事では補助金申請、解体工事、喫煙ブースの設置まで一貫して請け負うなど、同業他社とは一線を画したサービスはどのような考えから生まれたのか。同社代表取締役の森雄太氏に話を聞いた。
■家具製造会社として南相馬市で旗揚げ
株式会社トラストワンの歩みは2007年、福島県南相馬市に始まる。
設立者の森氏は南相馬市出身。東京の専門学校で建築を学んだ後、地元のインテリア・店舗内装工事を手がける企業に就職。社員数も少ない中で、資材調達から現場での寸法測定、発注管理、営業まで何でもこなし、能力を磨いてきた。数年が経ち、企業が東京、大阪に進出するに伴って森氏の仕事も拡大。それまでメインで手がけていた家具製造に加え店舗内装も担当するようになり、企業の年間売り上げ13億円のうち約半分は森氏が総括する部署が上げるまでになったという。
だが企業は間もなく、キャッシュフローの行き詰まりから倒産。それが、森氏にとっては転機となった。倒産時点で、家具分野で年間約3億円、内装工事分野で2~3億円の仕事を受けていた森氏は、所属会社の家具工場で働いていた有志12~13人と共に家具製造を主な事業とする新会社「株式会社トラストワン」を旗揚げ。約半年後の2007年10月には東京都江東区に本社を移転し、東京本社・福島本店という体制で、大手企業との取引を本格化させていった。
■「IT×家具」をキーワードに新サービスを模索
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生まれたばかりの企業が、何の障害もなく右肩上がりに成長していくことは極めて稀だろう。それは同社も例外ではなく、2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の事故によって、思わぬ苦境に立たされる。南相馬市民の し、市内でも元の住居を離れる人が相次いだ結果、福島店の社員のうち「地元に残ったのは4人だけ。私を入れても全部で4~5人でした」というまで減ってしまったのだ。
痛手からの再出発には大きな力が必要。そう考えた森氏が注目したのは、まだまだ昔ながらのやり方が濃く残る業界でIT化を進めること。そうして「家具×IT」のあり方を模索する中で、森氏は2013年に現取締役CFO(最高財務責任者)の但野謙介氏、2017年に現取締役CTO(最高技術責任者)の山下敏義氏という2人の仲間を得る。但野氏は元NHK記者で、独立してコンサルティング会社を運営した後、南相馬市の市議会議員も務めた人物。山下氏は2級建築士資格を取得後、スイスのソフトウェア開発会社で開発を手がけた人物。建築・内装業界の常識に囚われない豊かなバックグラウンドを持つ人材を得て、新しいサービス・自動での見積もり~工事施工までのワンストップサービスWebサイト「ツボタン」が誕生することとなった。
■見積もりにかかる時間を1カ月から2分に短縮
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「ツボタン」の最大の特徴は、「見積もりには時間がかかる」という内装業界の常識をひっくり返したところだろう。
開発のきっかけは「飲食店開業を考えているお客さんの話を聞くと、銀行融資の審査を受けるために、工事の見積もり金額、平面図をすぐに出してほしいという要望がすごく多いんです。でも内装業界は長らく、”不動産の現地調査や聞き取りを行わないと見積もりはできないから”と、1カ月~1カ月半待っていただくのを普通としてきました。それを何とかして簡単に金額がポンと出る仕組みを作れないかと考えたわけです」との、業界の現状に対する疑問だったと森氏は語る。
ツボタンでは、飲食店の内装工事見積もりは「坪単価いくら」との形で話し合うことが多い点に目をつけ、デザイン毎に坪単価をある程度設定してサンプルを多く掲載。利用者が「気に入った店のデザインを選び、坪数をクリックする」だけで、わずか2分で見積もり、そのまま融資審査に提出できる平面図、事業計画書がセットでダウンロード可能で、そのまま融資審査に使うこともできるようになっている。この事業計画書作成について顧客側の評価は高い。飲食店のA社は言う。
「客単価やおおよその来客数は予測が出来たりスタッフの給料等を入力すれば坪数がわかっているツボタン側で光熱費等を自動で入力して5カ年計画を作成してもらい、グラフまでついている事業計画書なのが大変便利でした」。
■顧客の視点から生まれた独自のサービス
もう一つ、「東京都受動喫煙防止条例」に関連して提供している喫煙対策工事も、「顧客ニーズに応える」ことから生まれた同社独自のサービスだ。
現在、東京都は2019年3月に制定した東京都受動喫煙防止条例の関連処置として、都が工事費の9割を助成する補助金を設けて、飲食店に分煙対策の実施を促している。ただ補助金申請の複雑さや工事手配の面倒さ、工事中は休業を強いられることなどから二の足を踏んでいる飲食店オーナーは多い。
そのことにいち早く気づいた同社は、補助金の申請から防災設備の消防署への確認、デザイン、解体工事、喫煙ブースユニット設置工事まで一括でサポートするサービスを手がけ始める。オファーは日増しに増え、2019年9月現在で80店舗以上が順番待ち状態で、カフェやカラオケなど大手フランチャイズ店からも問い合わせがきているという。
■できることではなく、求められることをする
「ツボタン」の立ち上げと分煙対策への取り組みは一見まったく違うもののようだが、その根底に共通するのは「自分都合ではなく、顧客都合で必要なサービスを提供する」視点だろう。「他社は申請も解体もやらずブースを設置するのみなのですが、それは申請の複雑さに困っているオーナーさんに”僕たちは自分の売りたいものしか売らないので、解体工事の手配も、消防署への相談も手続きも全部自分でやってくださいね”と言っているのと同じ。オーナーさんのことを考えているとはいえないでしょう。どこを見て仕事しているのかなと疑問に思います」と森氏は言う。
分煙ブース設置工事を営業時間終了後や夜間に行うのも、工事に伴う店舗休業をできる限り避けたいオーナーの希望に応えたもの。そんな徹底した顧客を中心に考える精神が、同社のオンリーワンのサービスにつながっているのだ。
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同社では目下、内装工事のパーツをユニット化することで現場での加工比率を減らし、施工期間の短縮・コスト削減につなげることをめざして3Dプリンタを使ってユニット化パーツを開発中。「ツボタン」の方も、掲載デザイン数の大幅追加、飲食店に加えて美容院の取り扱い開始などのアップデートが行われており、インドネシアやタイ進出をめざして準備も進めているという。
使える道具や環境の変化が変われば、常識もまた変わっていく。「好きなデザインを選ぶだけで2分で見積もりが出る」「10日間の工期で内装が仕上がる」のが内装業界の常識になる日は、そう遠くないことだろう。
森雄太
1979年(昭和54年)福島県南相馬市出身。
2000年に専門学校を卒業後店舗向け什器制作をしている福島県南相馬市の会社に入社。2007年にその会社が倒産してしまい2007年2月に株式会社トラストワンを設立。トラストワンは什器制作だけではなく店舗内装も請負い現在は意匠設計から施工も請負元請け工事を中心に受注している。
2019年1月より自社のサービスとして【ツボタン】を展開。
2019年4月よりワンストップソリューションでの喫煙ブースの販売を開始。
株式会社トラストワン
東京都千代田区九段北1-14-21 九段アイレックスビル6階
http://yuinet.beans-fukushima.or.jp/2013/03/南相馬市の避難の状況と市内居住の状況 より