リバースエイジングプランニング 代表 尾田正英氏

リバースエイジングプランニング」は、代表・尾田正英氏が60歳で創業した会社だ。主な事業は企業・法人向けの食育プログラムの提供と遺伝子テクノロジーを駆使したサプリメントの販売。健康経営に取り組む需要を掘り起こし、既に2年間で80件の契約実績を上げている。

そう聞くと「代表の尾田氏は、業界経験を生かして起業したのだろう」と思いがちだが、さにあらず。尾田氏の前職は海外建材メーカーの日本法人の社長であり、健康分野は今回が初めてだという。

まったく畑違いの仕事で起業し、短期間でしっかり利益を上げている背景には、どんな思いや工夫があるのか。ご本人に伺った。

 

第1の転機 アメリカ企業への就職

尾田氏は兵庫県姫路市の出身で1957年生まれ。人生には何度か大きな転機があるというが、尾田氏の場合、最初のそれは立命館大学法学部の学生だった頃のこと。弁護士になるという目標に挫折し、新しい道を考えていた時に、ゼミの教授からかけられた「これからはグローバルの時代だから、英語ぐらいはしっかり話せるようになっておきなさい」との言葉だろう。

「まあ実は、アメリカ企業から教授のもとに『日本人の若いのが1人ほしい』と求人依頼が来ていたんですけどね。でも教授がそう言ってくれて、私もそうだなと思って取り組んだお陰で、なんとかしゃべれるようになりました」と尾田氏は言う。在学中に英語を身につけたことで、卒業後はそのままアメリカの企業に就職。海外で社会人としてのスタートを切った。

 

第2の転機日本法人の社長へ

尾田氏が大学を卒業したのは、団塊の世代が30代を迎え住宅着工がブームになっていた頃だ。家造りに欠かせない木材の輸入も増え、東南アジアやアメリカ、カナダなどの産地には、総合商社から駐在員が派遣され現地で買い付けを行っていた。尾田氏の就職先は、そんな日本の商社向けに丸太や木材を輸出する企業で、この駐在員たちとの取引が仕事。そんな環境で研鑽を積んだ尾田氏は、6年後にはヘッドハンティングによりカナダの同業種企業へ、さらにまた6年後には、再びヘッドハンティングでニュージーランドの企業へと移籍。

ニュージーランド時代には、丸太材ではなく加工した製品の形での輸出を実現するため、当時海外工場が認定された例はほぼなかった、JAS(日本農林規格)の認定取得のために奔走し、農林水産省の担当者たちとも打ち合わせを重ねて粘り強く働きかけ、ニュージーランドでは初となるJAS認定工場を実現するなど、実績を重ねていく。

この時、尾田氏は30代後半。ニュージーランドの自然と人々、暮らしには満足しており、家族もニュージーランドが気に入ったこともあって、「ここに骨をうずめてもいいかな」と考えていたという。しかし、40歳になった年、2つ目の転機が訪れる。「日本法人を作ってそこの代表をやってくれ」という話が出たことで、10数年ぶりに日本で暮らすことになったのだ。

日本法人の使命は、商社から一次問屋、二次問屋、三次問屋、小売、工務店と、仲介の多い日本の木材流通に風穴を開け、ニュージーランド工場で作った建材を工務店や住宅会社に直接販売すること。総合商社をはじめとする既存ルートの反発は大きく、簡単にいくものではなかったが、尾田氏は10年足らずで事業を軌道に乗せることに成功。スタッフも増え、順調に業績を伸ばしていった。

 

第3の転機は大病 健康産業での独立を決意

会社が大きくなると各方面との付き合いは増えるもの。付き合いが増えれば会食や宴会の席も増え、ついつい酒量も増えがちだ。ひとつひとつは小さな無理でも、それが積もり積もっていけば、大きな問題を引き起こすこともある。それは尾田氏も例外ではなかった。営業所が大きくなってから接待などで銀座に通う回数は激増。その酒の飲みすぎと不摂生が祟って、55歳の時に大病を患い、半年ほど入院生活を送るはめになってしまったのだ。しかし、悪いことばかりではなく、「それが創業のきっかけになった」と尾田氏は振り返る。

「大病をして身に染みたのは、やっぱり健康のありがたみです。昔から言われている通り『健康第一』、『健康こそ宝』なのに、どこかでそれを忘れてしまっていたことが、痛い目を見てはっきりわかりました。病気になる前から、いずれはサラリーマンを辞めて自分でビジネスをしたい気持ちはあったのですが、それだけでなく『独立する時は健康に関連したものをやろう』と決めたんです」

 

その決意を強く後押ししたのが、同じ頃に出版された1冊の本だ。「リンダ・グラットンというイギリスの女性が書いた『ライフシフト』という本で、内容は簡単に言えば、『これからは人生100年時代になりますよ。昔のようにサラリーマン生活を終えてゆったり過ごすのは難しい時代で、もう1つ仕事をするステージを増やさないとしんどくなります』というもの。非常に感銘を受け、先の決意に輪をかけて、何とか健康に関連するような事業で起業したいと思うようになりました」と尾田氏は語る。

その決意を現実のものにするため、社長職は続けつつも、夜の接待は若いスタッフに任せ、空いた時間を使って起業の準備を開始。健康分野で優れた商材を探しながら、交流会などを利用して新しい人脈も確実に広げていった。

 

従業員が健康になることが人材不足解消の鍵

尾田氏は、月に1度、「シニア起業応援サロン」を開催。シニア起業家たちへのアドバイスを通じて、人生100年時代における新しい働き方を提唱している。

 

扱う商材を決めるにあたり、尾田氏の頭にあったのは、「何のビジネスをやるか決める際は25年先も廃れないビジネスを見つけるのが王道」という考え方だ。では、この変化の激しい現代で、25年先のことを予測するにはどうしたらよいのか。唯一確実な方法は人口動態を見ることだという。

 

「今年生まれた子どもが100万人なら、20年後のその世代は最大100万人。減ることはあっても、増えることは絶対にないので、人口動態だけは確実に未来を予測できます。そして、人口動態によると、2025年に団塊の世代が全員75歳を迎え、75歳以上の人口は2040年まで年を追うごとに増えていく。それは健康状態を気にする人が増えていくということですから、『病気にならず長く健康で過ごすために役立つものを』と考えました」と尾田氏は語る。

そうして数年かけて捜し辿りついたのが、現在の同社が提供している食育プログラムだ。同プログラムは、過去約10年に渡って食育を研究してきた「日本エピスタイル食育協会」が開発し、尾田氏が版権を買いとったもの。食を通じて体を一度若々しく元気な状態に戻し、遺伝子レベルで若々しい状態を保つことを軸としており、簡単に言えば食を通じて疲れにくい、元気な体を作りあげるためのものだ。個人向けのプランもあるが、中心となっているのは従業員にプログラムを受けてもらう法人・事業者向けのプランの提供。敢えてBtoBを選んだ理由を、尾田氏は次のように語る。

 

「数年前より厚生労働省、経済産業省が『健康経営』を推し進めており、事業主が従業員の健康にフォーカスしない会社は生き残れなくなってきています。それに、今はどこでも人材が不足していますが、生産労働人口は減る一方なので今後も人材確保が難しい状況が続くのは確実。ならば、採用に何百万とお金をかけるのではなく、今いるスタッフの健康状態を一番いい状態に戻してあげて、70歳、80歳まで働ける仕組みを作った方が、人材不足の解消になるという提案ですね」

リバースエイジングプランニングが提供する食育プログラムの概要。主力商品の法人・事業者向けプランは、人生100年時代を見据えた企業の健康経営にとって、非常に魅力的な内容となっている。

助成金申請支援を含めた独自のビジネスモデル

一方、同社のビジネスモデル最大の特徴は、プログラム導入にかかる企業の負担を解消するため、「助成金」の申請・活用をセットで提供しているところだ。応募企業には提携する助成金申請のプロ集団である労務士事務所から社労士を派遣。聞き取りなどの調査を行い、何千とある公的助成金の中からその法人や企業にあったものを選び、申請を提案している。助成金の申請から受け取りまでは時間がかかるため、申請したからといってすぐに助成金がもらえるわけではなく、プログラムの料金は1度別に用意する必要はある。しかし、最終的にはプログラムの料金を上回る助成金が下りるため、プログラムを利用しやすくなるというわけだ。

 

「企業に対する助成金といえば、『キャリアアップ助成金』ぐらいしか知られていませんが、実は何千何百とあります。申請合格数は事業を始めた2017年が40件、2018年が40件、申請合格率は100%。遅くはなりますが、プログラムの価格より助成金の受取額の方が多いので、差額は従業員のために使ってあげれば、社内の士気もあがると思いますよ」と尾田氏は自信をのぞかせる。

 

リバースエイジングプランニング代表の尾田氏は、もともと外資系の木材輸出企業を渡り歩いた国際派。60歳になった2017年より、畑違いの健康分野で起業したシニア起業家だ。

シニア起業家へのアドバイスも

「人生100年時代」を迎えようとする現代、自由で豊かな老後を送るために「健康」と「仕事」の重要性はますます高まっている。だからこそ、どちらも人任せにせず自分の体は自分で守る意識を持つこと、そういう教育を行うことが重要というのが尾田氏の考えだ。仕事については、月に1度「シニア起業応援サロン」を開いて、これからさらに増えていくであろうシニア起業家に、起業に関しての注意点やアドバイス、情報を伝える活動も始めているという。尾田氏は、シニア起業応援サロンについて、次のように語る。

「シニア起業家が陥りやすい失敗の一つは、勤めていた時の感覚そのままで、今まで自分がやっていたことをやればすぐ売り上げが上がるような気がすること。でも、バックグラウンドが消えたら、世間は見向きもしてくれません。だから重要なのは、起業して1、2年は収入がない前提で、いかに公的資金をうまく使って仕事を回していくかです。1番悲惨なのは、失敗して家族を巻き込んでしまうところ。また、シニア起業家は1度失敗してしまうとなかなか立ち上がれないので、それだけは避けられるよう、公的資金をうまく使うことをしっかり伝えていきたいですね」

残念ながら、少子高齢化や人口減少に特効薬はない。しかし、元気で活力に満ちたシニア層の増加は、日本全体を明るく変えていくことだろう。

 

尾田正英……1957年2月20日生まれ。兵庫県姫路市出身。立命館大学法学部を卒業後、アメリカの木材輸出企業に就職。後にカナダの同種企業を経て、ニュージーランドの同種企業へ転職し、40歳で同社の日本法人社長に抜擢される。以来10数年に渡り、日本法人の運営・拡大に尽力するが、大病をきっかけに健康分野での起業を決意し、2017年にリバースエイジングプランニングを設立。現在、同社代表・健康経営アドバイザー。

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