ITソリューションを利用して 売上向上を図るsmaoを仕掛ける

ネットワークサービス事業を展開する会社、と聞いてもイマドキは特に珍しいモノでもないだろう。

しかし、2012年の起業から僅か6年で売上30億円、今期は更に飛躍して50億円を達成しているという急成長の会社、株式会社H2には注目だ。

その躍進のヒミツはどこにあるのか。弱冠28歳の気鋭、株式会社H2代表取締役森田諒平氏にお話を伺った。

経費削減と売上向上を同時に生み出す「smao」

株式会社H2はネットワークビジネス事業やクラウドIPフォン、ITソリューション事業などを展開する会社だ。

 

「現在、弊社が特に力を注いでいるのがITソリューション事業です。中でも今年4月にプレスリリースを出し、7月より本格的にサービスを開始している『smao』、スマート・オーダー・システムは各方面から好評を得ています」

と、自社のサービスについて説明をしてくれたのはの森田諒平代表取締役。株式会社H2では現在、様々なサービスを展開している。

企業案内によれば、ネットワークサービス事業では自社の光回線やプロバイダサービスの運営販売を行っており、不動産管理会社やオーナーに向けた「FiL」などを提供している。またクラウドITフォン事業ではアナログ電話をクラウド化、インターネット電話にすることでコスト削減とサービスの向上を提案、特に企業の営業支援ツールとして利用されている。

そしてITソリューション事業では、SEOやMEOなど、Google検索で上位に表示されるようにするサービスを提供し、特に飲食店などの経営者をクライアントとしている。

 

「そういった飲食店の経営者向けに今回新たにスタートさせたのがセルフオーダーシステム『smao』です。これはタブレット端末を用い、お客様自身が注文を入力するもので、これによりホールスタッフを減らすことができ、場所によっては人件費の30%以上を削減することができます。また注文履歴をビッグデータ化し、メニュー表示の最適化をして注文数を上げることもできます。削減と売上増の両方を同時に実現することができる」

 

最近では居酒屋チェーンなどでよく見られるタブレットでの注文方式だが、中小企業向けにそのサービスを行おうとしたのは何故なのだろうか?

 

「実はこのサービスは、導入費用が大きいのがネックでした。初期費用で300万円ほどもかかります。それでは人件費の削減で頭を悩ませている大手チェーン店などは食いついてくれますが、個人経営などでは気にしてもらえない。……ですから弊社では初期費用でゼロ円で提案しています」

 

サービス業で働く人材が慢性的に不足している今、時給を上げなければ人を繋ぎとめておくのは難しい。そんな状況にあって個人経営の店舗は、仮にタブレット導入が経費の削減や将来的に大きな利益を生み出すとわかっていても、その大きな初期費用に二の足を踏んでいるところもあるだろう。

しかし、森田代表は初期費用を自社で負担し、月々の利用料から利益を上げるというビジネススタイルを提案している。

初期費用を自社負担となると、クライアントが閉店してしまったらどうするのですか? と尋ねると、森田代表は笑った。

 

「確かに、回収できないで閉店されてしまうと困ってしまいますね(笑い)。ですが、長く使っていだたければ弊社にとっても利益になりますし、クライアントの利益にもなる。業績アップのお手伝いができる、コンサルティングみたいな思いで提案させてもらっています。是非多くの方に知っていただいて、利用してもらいたいですね」

 

現在、飲食店は全国に約40万店ある、その中で10万店がこのサービスを利用してくれるようにしたい、というのが目標です、と森田代表は語る。

「ハングリーさです」

森田代表の「良いサービスを安価で提供し、それを多くの人に知ってもらいたい」という思いはどこから生まれたのだろうか。「私は北海道の出身なのですが」と森田代表はその思いの由来について話してくれた。

 

「母子家庭で、あまり経済的に恵まれていたとは言えない生活でした。私には双子の兄がいるのですが、二人で母の姿を見ていて、早く独り立ちして母を楽させてあげたいといつも思っていました」

 

家の家賃が払えなくなって追い出されたこともあった。高校の修学旅行の資金は、自分たちでアルバイトして稼いだという。

「そんな中、母が住み込みで働く職場を見つけて。そこの寮に住み始めたので、兄弟の実家がなくなってしまった。それで高校卒業後すぐに就職して、一人で生活するようになったのです」

 

その時就職したのが、北海道で通信事業をしている会社だった。

 

「やったのは飛び込み営業。そこで2ヶ月で社員200人のトップセールスに立つことができた。それから幾つかの仕事を経験しましたが、どれも営業ではトップの成績を獲ることができました」

 

そうして自信をつけてきた森田代表が起業する時、通信事業を選んだのは当然のことだった。

「自分も経験したインターネット回線の飛び込み販売の事業をスタートし、北海道全土を駆け回って契約者を増やしていきました。始めてから2ヶ月で従業員を増員して事業を拡大して。それをきっかけに北海道から飛び出して月の半分は北海道の外で仕事をしていました」

 

とは言っても、まだ支店を持てるほどの余裕もなく、車を使って青森から少しずつ南下しながら訪問販売をする毎日だった。

「岩手・秋田・宮城……と南に向かって行き、栃木までたどり着いた時に、長年営業で使っていた車が故障してしまって。たったそれだけのことなのですが、それだけで営業する手段がなくなってしまった。それでずっと訪問販売のスタイルでやり続けることにはリスクがある、電話営業に切り替えよう、思ったのです。それが2012年のことでした」

 

また、インターネット回線の販売代理店の事業は所詮、代理店に過ぎない。手数料をもらうことはできるけれど、それがずっともらえるわけでもない、ということを考えるようになったのも同じ時期だった。

「それで2013年には初のオリジナルプロバイダサービス『Pコネクト』をリリースしました。また初期費用から利益を得るのではなく、月々の使用料からコンスタントに収入を得るというスタイルに改めた。これによって加入者数は急上昇し、業績も上がりました。また、一つの事業に固執しているとそれが頓挫したときに致命傷になってしまうということも自覚していたので、得た業績を更に先の事業への投資に回した。こうして多角的な経営をはじめましたが、2016年頃からはそれも軌道に乗ってきました」

 

結果、起業から6年間で売上は60倍にまで拡大した。

「常に新しいことに挑戦したい、という気持ちもありますし、今までも常に先のことを見越して投資を続けてきたという思いもあります」と話す森田代表。

 

この思いの根源について一言で現すと? と問われて、「ハングリーさです」と森田代表が答えてくれたのには、そんな自身の半生が反映されているようだった。

 

10年後の「時代に即したサービス」を考える

「飲食業界は難しいです。成功率は低い。だからこそ、使えるサービスがあることを知ってもらいたい」

と話す森田代表。提供するサービスの初期費用を抑えることに心を砕いているのにもその厳しい現状に配慮しているからだ。

 

「日本の現状を鑑みれば、労働人口はずっと減り続けて、いてこれは一朝一夕で回復するものではありません。手をこまねいて待っていても若手の人材が戻ってくることはない」

 

だから20年後・40年後のことを見据えて経営を考えなくてはならない、と話す森田代表。株式会社H2は「Human×Happy」を意味しているという。その企業理念は「圧倒的に人々を幸せにする」ことと、同時に「圧倒的に社員を幸せにする」こと。

 

「顧客の幸せとともに、社員の幸せも叶えられる会社ではないとならない。今、弊社には社員・アルバイト含めて約200名のスタッフが働いています。彼らが働く意味を見出していける会社にしていかないといけない」

 

森田代表は積極的にスタッフのコミュニケーションを取り、意見の交流をしているという。

「仲間の成果を祝福できる環境作りには配慮しています。そういう人の繋がりが強い会社を生むと思っています。若い人が稼がなければ日本は良くなっていかない。医療介護の費用などはこれからも上がっていきます。だからこそ、若い人は経済力を身につけないとならない」

 

そうして若い人材に「日本の未来はあなたたちが引っ張っていなければならないんだ」ということを伝えたい、と森田代表は話す。

「今は情報革命、第4次産業革命の真っ最中です。情報を先に得ている者は先に走り出し、利益を上げている。ですから私は常に10年・20年先を見越して活動をしてきました。それが今の事業を支えています」

 

しかし、と森田代表は続ける。

「今、提供しているサービスが10年後・20年後の将来にも役立っているとは限らない。ひょっとしたら全く存在すらしなくなっているかもしれない。……だからこそ、常に時代に即したサービスを今後も展開していくことが私たちのミッションです。そして、そのサービスを誰でも利用しやすいものにしておくこと、も」

 

創業2年目には既に自社を100億円企業にすることを考えていたという森田代表。今はその目標を上方修正し、1兆円企業を目指す。また3年後の2021年には株式上場も視野に入れているという。

「世界に目を向ければ、経済にはまだまだ伸びしろがある。私たちは今はまだ時代を追いかけていますけれども、今後は時代の先を行き、そこにクサビを打ち込む活動をしていきます」と語る森田代表。

 

平成生まれの若き経営者は、遥か未来を見据えている。

<プロフィール>

森田諒平

1989年北海道生まれ。高校卒業後、通信系営業会社に就職し、トップセールスになる。その後ITベンチャー会社や通信会社を経て、2012年株式会社H2を立ち上げ、代表取締役就任、以後現職。

 

<団体情報>

株式会社H2

東京本社:〒107-0061東京都港区北青山3-12-9 青山花茂ビル8F

TEL:03-4400-6279

URL:www.H2-g.co.jp

札幌支店:〒060-0003 北海道札幌市中央区北3条西3-1-44ヒューリック札幌ビル9F