遠藤社長が見る高齢化社会の行方 は?

「手間だけかかって儲からない」と大手が皆、手を出さないという介護向け住宅リフォーム事業を専門で行っている株式会社ユニバーサルスペース。

創業10年目にして既に3万件以上の施工実績、フランチャイズチェーン「介護リフォーム本舗」を全国に43店舗にまで拡大している同社を率いる代表取締役社長遠藤哉氏には、この事業によって生み出される未来の高齢化社会日本が見えている。

人生を変えた1件のリフォーム

株式会社ユニバーサルスペース 代表取締役社長
遠藤哉氏

大手ハウスメーカーに勤め現場監督として300棟以上の新築住宅を手がけていた遠藤氏の、目を見開かされる出来事があったのは2005年、30歳の時だった。

 

「手がけた新築物件を引き渡してから、僅か1カ月後にリフォームの依頼をいただいたんです。

そんな事は初めてだったので、何か不満があったのかなと心配に思ってお伺いしたら『手摺りを付けて欲しい』というお願いだった。

実はそのお宅は、お子様が高齢の親と一緒に暮らしたいと考えて2世帯住宅として建てたものだったのですが、実際に暮らし始めてみると親が階段を上り下りする時にとても苦労している。その姿が気になって、ここに手摺りがあったらと思うようになってきて、というのです」

 

その時、遠藤社長の頭に設計段階の図面の上では考えの及ばない生活空間、特に高齢者が暮らしている家の姿が目に浮かんできた。

「それで介護リフォームの必要性に気がついたのです」(遠藤社長)

 

 

増々高まる介護住宅の需要 利益率低くてもやり甲斐

日本が突き進んでいる高齢化社会は、同時に要介護者の社会でもある。

要介護認定を受けている者は2000年に218万人だったものが、僅か15年後の2015年には608万人に増大、今後も増え続けると予想されている(厚生労働省調べ)。

だが実際に自らが介護を受ける時には「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて生活したい」と希望する者が49%と、ほぼ半数を占めるというアンケート結果も出ている(同調べ)。

 

つまり、介護を必要とする家族が常に身近にいる、同じ家の中で生活していくことをこれからの家づくりは考えていく必要があるのだ。

 

「しかし、大手ハウスメーカーはあまり介護事業に乗り気ではありません」と遠藤社長は嘆く。

 

「なぜなら単価が低いからです。介護リフォームは手摺りの取り付けや段差をなくすバリアフリー化などがほとんどで、費用は十数万円程度で収まります。そのため手間に比して利益が少なくどうしても優先順位が低くなる」

 

しかしこの事業にはやっていく価値がある。

手摺りをつけた時に受けた感謝がずっと記憶に残っていた遠藤社長が、介護リフォーム事業で独立を決意したのはそれから4年後、34歳の時だった。

 

 

結婚し子供が生まれ意識変化 幸せな社会の実現へ起業決意

神奈川県で育った遠藤社長。「高校時代はプロボクサーを目指していたこともあるんです」と笑う。

「『高校生プロボクサー』というのに憧れて。自分は世界チャンピオンになれる、と思ってやっていたのですが、当時の先生から止められました(笑)。他にもバンド活動などにも熱中していました。そうしたら入れる大学が無いことに気がついて。慌てて勉強してなんとか大学には入りましたが、それからも遊んでましたね。週に4日はクルマを飛ばして峠道に走りに行っていましたよ」

卒業後、ハウスメーカーで働き始めた遠藤社長は、高校時代から交際していた女性と結婚、28歳の時に長女を授かる。

 

「その時まで自分は子供を見ても何も感じなかったのですが、急に全ての子供が可愛くて仕方がなくなった。

考え方が180度変わりました。

自分の事だけを考えていたのが『この子供達が大人になった時のために幸せな社会を作っておきたい』と思うようになった。実は学生時代からぼんやりと起業したいなとは考えていたのですが、それから本気になって勉強に励み起業に向かって準備を始めました」

 

 

A4たった1枚の事業計画から現在の業績は累計3万件超えに

とは言え何から手をつけていけばいいのか分からない。

人脈も資金も何もなく、ただ介護リフォームにニーズが眠っているという可能性を感じてはいたが、それからもう一歩が踏み出せないままでいた。

 

創業初日の自宅事務所で撮影した遠藤社長

「そのうち2人目の子供も生まれて。その時にこのまま躊躇していてもラチが開かない、と決心して明確な道筋も立たないまま退職届を出しました。

生まれてまだ1カ月の子供を抱いた妻にも独立を宣言して。『自分のチカラを試したい』。そう言ったら納得してくれました」

 

2009年、こうして事業を立ち上げた遠藤社長だったが、当初は自宅の6畳1間を事務所にし、あてもなく全くのゼロスタートだった。

事業計画もA4の紙たった1枚。事業の話をしても周囲からは「儲からない」と反対ばかり。

最初の半年間は利益も全く出なかった。

 

しかし2年目には自分のしている仕事に自信が湧いてきた、と遠藤社長は言う。

「家庭の中で不便に思っているけど、それをオモテに出せずに困っていた人がこんなにもたくさんいたのかと実感しました。

仕事を1つすると、すぐにその繋がりで次の仕事が舞い込んでくる。それでイケる、と思いました。だから2年目にはこの事業で日本一になる、という目標を立てましたよ」

 

その後、直営店は神奈川県内を中心に4店舗に拡大。業績は年間7000件を突破し、現在は累計3万件を超えるまでに至っている。

 

 

飛躍の原動力は事業のFC化 さらなる高速化へアプリ開発

この飛躍の原動力となっているのが、事業のフランチャイズ化だ。

「全国の工務店や1人親方たちとネットワークを構築し、情報の共有化、仕事の効率化・スピード化をする。

それにより動き出しの鈍い大手企業との差を付け、迅速に着工することができるようにしました」と遠藤社長は話す。

 

また現在、更なる高速化のためにアプリの開発も進めている。

特許も申請しているこのアプリは、お客様の要望箇所をiPadで撮影し、その画像をクラウド化したデータと照合して分析、その場で図面と見積もりの作成まで完了してしまうというものだ。

「これにより相談を受けてから現場確認し、一旦持ち帰って図面・見積を作成してからもう1度お伺いして契約、という手順を最大限短縮することができるようになり、その日の内に契約書を取り交わすことも可能になります。

また、作業時間の短縮もでき、1日かかっていたところを半日で終わらせることもできる。やはり、見知らぬ人が1日家にいて作業しているというのはお客様にとってストレスになりますから、それを軽減することもできる」

 

このアプリは年内には本格始動する予定だという。お客様の負担を和らげ、少しでも早く安心を届けたいという遠藤社長の気持ちが、そこからは感じられる。

 

 

小さな改善が大きな社会の変化へ 介護リフォームが生み出す未来

介護リフォーム打ち合わせ風景

高齢者の事故の実に77%が住居内で起こっている(内閣府調べ)。その事故がきっかけで寝たきり、要介護者になる人も数多い。

「それによって社会保障費は年々増大して国庫を圧迫しているし、そのツケはこれからの子供達にかかってきてしまう。それは避けなければならない」

 

だから私たちは介護リフォームをすることで「自立支援」することを目指している、と遠藤社長は語る。

「今まで介護を必要としていた人が、トイレや風呂に手摺りがあることで、1人でも生活ができるようになる。そうすれば国・自治体からの補助金などの介護の負担を軽減することにもなる。

ほんの小さな改善が、大きな社会の変化へと繋がるのです」

 

またフランチャイズを全国に展開することで、より生活に密着したサービスができるようにもなった、と話す。

「やはり地元の人が地元の人のお世話をするのが良いと思います。その土地の人の考えに即した支援ができる。

今ではケアマネージャーにも同席してもらい、お客様が安心して生活を送れる住まいをご提供できるのを第一にしています」

 

今後は世界各国でも高齢化が進んでいく。既にこのシステムについて中国や韓国の業者からも問い合わせが来ているという。

「この問題は普遍的な問題になっていくと思います。ですから各国でこのシステムが活用されて、多くの人々が安心して暮らしていけるようになればいい、と考えています」

 

経営理念に掲げられているのは「快適生活を創る」。

その言葉には、遠藤社長の「子供達」「高齢者たち」という弱き者、助けが必要な者たちへの温かな眼差しと、彼らが安心して暮らしていけるための「家」への熱い想いが込められている。

 

 

遠藤哉(えんどう ・はじめ)

1975年、神奈川県生まれ。鎌倉高校を卒業後、東京工芸大学入学。

卒業後は積水ハウス株式会社に入社、現場監督として新築物件300件以上に携わる。2009年、株式会社ユニバーサルスペースを創業。

2013年より「介護リフォーム本舗」を展開。現在、株式会社ユニバーサルスペース代表取締役社長。

 

 

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