拡大する英会話教室市場 短期集中や業種・業務特化など 最先端の教育メソッドを取り入れ 業界に一大旋風を巻き起こすか

その名前を聞くと、思わず腰が引けてしまいそうなスパルタ英会話。

ミッションは「英語が話せない日本人をゼロにすること」だという、株式会社スパルタ英会話代表取締役小茂鳥雅史氏にお話を伺った。

既存の英会話スクールの良いところ取り

「大学を卒業後に入社したのは、世界最大手の金融会社モルガン・スタンレー。そこに入社して驚いたのは、自分以外は皆、英語がペラペラだったこと」

そう自身の体験を話すのは、株式会社スパルタ英会話代表取締役小茂鳥雅史氏。

 

「海外留学の経験もあったので、それなりに通用するだろうと思っていたら、全く(笑い)。

上司への報告や、ディスカッションの場などで、自分の考えを伝えられないことがとてもフラストレーションになった。『自分はもっと仕事できるのに!』といつも思っていました」

 

そんなストレスが溜まる日々の中で、小茂鳥代表がふと気づいたことがあった。

「英会話スクールは既に溢れるほど存在しているし、オンラインで授業を受けることもできる。これだけ多種多様にある中で、一番英語力を高められるのはどこなのか」

 

現在、小規模なものまで含めると英会話スクールは100を超える。

マンツーマンや少数教室などの店舗型とオンラインで英会話が学べるスタイルに大別されるが、それらの中から小茂鳥代表が辿り着いたものは。

 

「どの方法も一長一短がある。だからその良いところ取りをした教育メソッドでやったら効果的ではないか、と考えました。

語学教育で最も大事なのはいかに集中するかということ。ですから弊社では3カ月間などに期間を区切って徹底的に英語に浸かってもらう。それで一気に英語力をアップさせる」

 

 

日本語禁止で育つ〝サバイバルイングリッシュ〟

こうして生まれたスパルタ英会話では、いわば短期集中型英語教育。

スピーキングに特化し、スクールに一歩踏み入れたら日本語の使用は禁止。

授業のスタイルはマンツーマンでもグループでも構わないし、期間中は何度スクールに来ることも可能だ。

 

「スポーツジムで数カ月間、トレーナーつきっきりで体を痛めつけ体質改善するのと同じです。『国内留学』をしたつもりで、徹底的に英語を使ってもらう。

大事なのは異文化の中に自分を入れることです。1日に10時間、喋れなくてもその空間に身を置く。そうするうちに自然に口から英語が流れ出てくるようになる」

 

それを〝サバイバルイングリッシュ〟と呼んでいるという小茂鳥代表。

グループレッスンは通い放題で1日何時間でも受講可能だ

 

またもう1つの大きな特徴が、生徒1人ひとりの目標に即した英語教材の使用だ。

 

「いくら英語を学んでも仕事や生活の中で使わなければ意味がない。ですから各々のビジネスシーンに合わせたボキャブラリーを得られるようにテキストを何種も用意しています。

言うなれば、『業種・業務特化』した英語学習。

一例では、現在ビームスと提携し外国人のお客様が来店した際にスタッフが使う英語を集めた専用テキストを作成したりしています」

 

 

こういった学習方法や目標の設定を、生徒としっかりコミュニケーションをとって作っていくのもスパルタ英会話の大きな特徴だ。

生徒は日々コンサルティングを受け、自分の将来の姿、英語を話している自分がどういうステージにいるのかを明確にしながら学習に向かう。

 

「だから、他の英会話スクールよりも早く、確実に英語力を高めることができる。それも自分自身が必要な場面に合わせたカスタマイズをして。それがスパルタ英会話です」

 

 

冒険旅行にハマっていた学生時代

モルガン・スタンレー勤務を経て、株式会社スパルタ英会話を設立した小茂鳥代表。

だが最初から英会話スクールで起業しようとは考えてはいなかったという。

 

「小さい頃から『ここをこうしたら、もっと良くなるのに』と考えるのが好きで、いつか起業したいとは思っていた。直接のきっかけは大学の時、アントレプレナーシップの授業を受けたこと。それで大学一年生の時には家庭教師派遣の会社を立ち上げたりしていました」

 

大学時代の小茂鳥代表には数々の武勇伝がある。

「色々な冒険旅行をしていました(笑)。

ヒッチハイクで四国を一周したり、沖縄で民家に泊まったり野宿をしながら0円生活をしたり。山形で『わらしべ長者の旅』をしたときは、本当にワラから始めて、最後はバイクと交換できましたよ(笑)」

 

そんな冒険と共に熱中していたのが、小学生の頃からやっていたというアイスホッケー。

「大学時代にはカナダに留学もしました。今でもアイスホッケーはやっています。こういった経験があったからモルガン・スタンレーに就職できたのだと思います。なにせ大学の成績はギリギリでしたし、入社面接のときは旅行の話しかしていませんでしたから(笑)」

 

 

僅か3年で年商2億円にまで成長

「モルガン・スタンレーを選んだのは将来起業をするための資金集めと、人脈作り」

という小茂鳥代表は、モルガン・スタンレーを辞して後、幾つかの会社を立ち上げていたがその中で最も強く将来性を感じたのが英会話スクール事業だった。

 

「きっかけは留学したときに知り合った友人たちとやっていた英会話サークルでした。

そこで思ったのは、相手をよく知れば争いは防げるということ。それに祖父母・両親とも教育者でしたので、教育業界でやっていきたいという気持ちもあった」

 

モルガン・スタンレー時代に、自身が英語を学ぶ上で感じたことも後押しした。

「どうせなら楽しく英語を学びたいと思って、マンガ『ワンピース』の英語版や『ハリーポッター』の原文を読んだりしていたのですが、自分が好きなことなら頭に入ってくるし、理解も早い。それが、弊社の『業種・業務特化』という特徴にも反映しています。

必要だから学ぶし、使う場面があるからこそ生きた英語になる」

 

そんな思いから2014年に設立された株式会社スパルタ英会話は、毎年売上を3倍ずつ伸ばし、僅か3年で年商2億円にまで成長している。

 

 

英会話業界の市場規模も年々拡大

「今、日本にはかつてないほど外国人が訪れている。2020年の東京オリンピックに向けて英会話のスキルはもっと必要不可欠なものになっていくでしょう」

 

2013年に初めて1千万人を超えた外国人観光客は毎年過去最高を更新し、2017年には2869万人を数えた(日本政府観光局調べ)。

それにつれて英会話業界も伸び続け、現在約8400億円という市場規模に拡大している。

 

「生徒の多くは25歳から40歳ほどで転職・転勤に際して必要になったので短期に学びたいという人が主。

若い人は今後のキャリアアップのために、というのが多いですね。職業では看護師・医師が目立つのが、昨今の外国人観光客の対応に苦慮している現場の様子が伺えます」

 

 

アプリの開発やVR授業などもスタート

現在、ネイティブの講師は30人弱在籍し、生徒の教育にあたっている。また生徒のコンサルティングに当たる日本人スタッフも10人程度在籍している。

レッスンはネイティブスピーカーの講師が担当する

 

今後の経営展開について小茂鳥代表に伺った。

 

「現在アプリの開発、VR授業などもスタートしています。実はこれらの方法は他の大手が既に取り入れているのですが、弊社は他と比べて後発ですし、また身軽でもあるのでこういった新しい方法のメリット・デメリットを把握してからやれるという利点があります。

それに多店舗展開はせず、これからも少数教室で1人ひとりの生徒に懇切丁寧に向かい合って成長させていきたい」

 

それに学んだ後、使わなくては意味がないから、と小茂鳥代表は続ける。

 

「これから外国人向け観光ガイドをマッチングするアプリと提携していきたいと考えています。ここで学んだ事を実際に使い磨いていってもらいたい。言語力はそういった現場でのみ鍛えられますので」

 

日本人は、完璧な英語を身につけないと話そうとしないのが成長を妨げている、と言われる。

もし完璧ではなくてもまず話してみること、相手の意志を聞き取ろうとすることがコミュニケーションには必要だ。

 

「〝グロービッシュ(グローバル+イングリッシュ)〟とは勇気をもって、自分の英語力を信じて相手との意志疎通を試みること。それが自分の世界を広げる第一歩になるのです」

 

大学時代、3カ月の集中ダイエットで10キロ減量したことがあるという小茂鳥代表の語る「短期集中」「専用カスタマイズ」の英語教育が今、英会話業界に旋風を巻き起こしている。

 

 

小茂鳥雅史(こもとり・まさふみ)

1986年生まれ。

慶應義塾大学理工学部卒業後、モルガン・スタンレーMUFG証券入社。英語が全くできない状況で、同期全員がTOEIC900点以上の外資系証券会社に入社したため、英語に苦しんだ経験をもつ。

祖父母、両親ともに教育者であった影響もあり、教育業界での起業を志し、完璧ではない英語であってもビジネスの場で通用すること、勉強方法とマインドセットが大切なことを広めるためスパルタ英会話を設立。

当初は小さなカフェからスタートし、わずか3年でスピーキングに特化した短期集中型の「スパルタメソッド」が人気に。

設立後、毎年3倍の売上を達成、年商2億円企業へと成長させた。

小茂鳥はこれからも「英語が話せない日本人をゼロにすること」をミッションに取り組んでいく。

 

 

●株式会社スパルタ英会話

〒160-0022東京都新宿区新宿1-16-10コスモス御苑ビル702

TEL:03-5411-0066

URL:http://spartan-english.jp/