人生90年となった今 日本の大問題〝健康寿命の延伸〟は 医療・代替医療の垣根をなくした地域密着の統合医療が解決策になる – iCureテクノロジー株式会社
シームレスな医療の中核担う〝かかりつけ接骨院〟
病気に苦しむことなく元気で長生きし、最期は寝付かずにコロリと逝く。そんな「ピンピンコロリ」を理想とする人は少なくない。
けれど実際には、多くの人が寝たきりや要介護状態で人生最晩年の数年間を過ごしているのが現実だ。
経営ビジョンとして「統合医療(※)で健康寿命プラス5」を掲げ、鍼灸接骨院のフランチャイズ展開に開業支援、垣根のない地域医療に役立つ電子カルテの開発など多彩な事業を展開する「iCureテクノロジー株式会社」は、そんな現状を打破し「誰もが一生健康で幸せに生きられる未来」を本気でめざしている会社だ。
iCureテクノロジー株式会社が描く変革への道筋を、CEO・小泉英一氏に伺った。
※統合医療とは西洋医療と相補・代替療法、伝統医学を組み合わせて行う療法
人生最晩年の10年は多くの人が要介護状態
「健康は人生のすべてではないが、健康の喪失は人生のかなりの部分を台無しにする」。
誰が言い出したかはわからないが、健康の重要性を端的に表したこの言葉に異を唱える人はあまりいないだろう。人は健康あってこそ、幸せを感じることもできるもの。
だが現在の日本で、高齢になっても健康でいられるのは決して当たり前のことではない。
日本人の平均寿命は、戦後ほぼ一貫して伸び続け、2017年7月に発表された「平成28年簡易生命表」では男性が80・98歳、女性は87・12歳と過去最高を更新。世界でも1、2を争う長寿国として知られている。
しかしその一方で、「継続的な支援や介護を必要とせず、自立した生活が営める状態での生存期間」を示す健康寿命の平均値は、男性72・14年、女性74・79年(厚生労働省の調査による)。
平均寿命との差は男性で約9年、女性では約12年にも及び、平均すれば人生の最晩年の約10〜11年間は支援や介護が必要な状態となっているのだ。
要介護状態になれば、本人の生活の質(QOL)が著しく損なわれるのは当然だが、話はそれだけではすまない。
その分膨れ上がる医療費・介護費は国の財政を圧迫し、また介護離職の増加につながるなど、社会全体にも大きなマイナスの影響を与えるからだ。
そんなわけで、健康寿命の伸長は日本にとって非常に重要な課題なのだが、そのための道筋は未だ見えていない。
この問題を「医療・代替医療の垣根なく、あらゆる治療法の中から患者がベストな選択肢を選択できる仕組み」を作ることで解決しようというのが、iCureテクノロジー株式会社の最終目標だ。
健康寿命を延ばす鍵は鍼灸接骨院にあり
現在、iCureテクノロジー株式会社の事業は、「iCure鍼灸接骨院」というブランドの開業支援、鍼灸接骨院経営者へのコンサルタント、療養費請求の代行サービス、健康の増進や地域の医療連携を後押しするアプリやソフトの開発といったIT支援事業、トレーナーの育成・派遣の5つだ。
このうち「icure鍼灸接骨院」は、2018年4月現在で東京・大阪に39店舗を展開。2021年には全国で100店舗、2050年には1000店舗の展開を目指している。
なぜ鍼灸整骨院を増やし、支援することが健康寿命の延長につながるのか?
その答えは「人が要介護・要支援状態に陥ってしまう原因を見ればすぐわかる」と小泉氏はいう。
厚生労働省の調査によると、要支援・要介護になる原因の1位は、膝が痛くて歩けなくなるなど「運動器の障害」で全体の25%。次点は脳梗塞の後遺症で体の一部が動かなくなるなどの「脳血管障害」で19%、3位は「認知症」で16%、4位は「高齢による衰弱」で13%となっている。
これらの理由は一見バラバラに見えるが、2位の脳血管障害の原因は高血圧や肥満、運動不足などの生活習慣であり、膝や腰の痛みが原因で歩く機会が減った結果、運動不足になり、そこから脳血管障害や心筋梗塞を発症する例も少なくないもの。
また3位の認知症の中には、脳血管障害が原因となっているものもある。
さらに4位の高齢による衰弱は、具体的には筋力の衰えなどを指し、それらも「膝が痛くて歩けない」などが原因で引き起こされる。
とすれば、要支援・要介護化防止に最も有効なのは「運動器の機能低下を防ぐこと」だ。
「その運動器の機能低下防止に一番強いのは国家資格である鍼灸師や柔道整復師であり、彼らが施術を行う鍼灸接骨院なんです。
けれど、鍼灸接骨院を利用する人は平均すると10%前後。国民の1割程度に過ぎず、一方で要介護・要支援になる人は増え続けています。
そうなってしまう一番の原因は、鍼灸師や柔道整復師の役割がきちんと知られていないから。
ほとんどの人は生涯自立して生きたいとの思いはあっても、どうすればいいのか分からない状況だと思うんですね。
そこで必要なのは、鍼灸接骨院の数を増やして認知度を高めることです。コンビニエンスストアや牛丼チェーンを誰もが知るようになったのは、店舗数が多いからですよね?
鍼灸接骨院を増やしその価値をきちんと伝えることは、運動器の機能低下防止、ひいては健康寿命の伸長に非常に重要だと考えています」
スタッフ全員が有資格者完治を目的に治療行う
誤解している人が多いが、接骨院・鍼灸院と整体院、カイロプラティック、リラクゼーションマッサージなどは似て非なるものだ。
そもそも日本では、体への施術に関する医療類似行為の国家資格は「按摩マッサージ師」「針師」「灸師」「鍼灸師」「柔道整復師」の5つしかない。
接骨院(又は整骨院)はこのうち柔道整復師が開設する治療院で施術を行う人は柔道整復師、鍼灸院は鍼灸師が開設する治療院で施術を行う人は鍼灸師(又は針師、灸師)に限られるが、その他の院は特段開業に関する条件はなく、施術を行う人の資格要件もない。
そのため、内容は院や施術者によってばらつきがあり、体に関する知識や技術に習熟した施術者であればいいのだが、そうでない場合も少なくない。
神経・脊髄の損傷や骨折などの重大事故も起こっており、2017年には消費者庁から「法的な資格制度がない医療類似行為の手技による施術は慎重に」との注意喚起が出されている。
その点、同社のブランド「iCure鍼灸接骨院」は、店舗スタッフ全員が鍼灸師又は柔道整復師の有資格者。
治療は患者一人ひとりに合わせた完全オーダーメイドで、一時的な痛みの解消だけでなく完治を目的とした治療を行っているのが特徴だ。
だが、だからと言って、ただ「鍼灸接骨院を選びましょう」と伝えたいわけではないと小泉氏は言う。
重要なのは正しい情報を元に自由に選択できること
「もちろん鍼灸接骨院の価値を知り、上手く利用してもらうことは大切です。
けれどそれは一部であって、健康寿命を伸ばすために最も重要なのは、誰もが正しい情報に基づいて、医療・代替医療の垣根を越えたあらゆる治療法の中から自分にベストなものを選択できること。
そのためには、現在の“点の医療”を変えて、内科や整形外科、歯科といったクリニック、介護施設、そして我々鍼灸接骨院がそれぞれの強みを活かし、連携して1人の患者さんをサポートする地域医療体制を築いていかないといけません。
我々の目指す最終ゴールはそこなんですね。 店舗数を増やしているのは、そのためでもあるんです」
健康の増進や地域の医療連携を後押しするアプリやソフトの開発といったIT支援事業、トレーナーの育成・派遣事業も、そんな「患者を中心とするシームレスな医療連携の仕組み作り」の一環だ。
IT支援事業では、医療や介護に携わる様々な職種と患者間で相互に利用・連携が可能なクラウド型電子カルテ「みんなのカルテ」や最先端のAIを組み込み、毎日の食事や睡眠、運動などのデータを管理し美容・健康のアドバイスを行う鍼灸接骨院用の「FiNCアプリ」を開発。
また、2017年にはイタリア、セリエAリーグのプロサッカーチーム・インテル・ミラノと業務提携を行い、個人の健康状態に合った適切なトレーニングメニューを提供できるよう、効果的なトレーナーメソッドを共同開発するプロジェクトも始動した。
そこで得られた成果は、プロスポーツ選手に還元されるだけでなく、ゆくゆくは一般の人に提供できる仕組みを構築する予定だという。
赤に変わる前に黄色から青に戻すことが大切
同社が理想とする地域医療は、各地域のiCure鍼灸接骨院が医療機関や他の治療家とも連携し、「医療コンシェルジュ」として機能することで、患者は西洋医学・東洋医学双方の中からベストな治療を選択できる、シームレスな医療連携体制だ。
「今の医療は、各医療機関がそれぞれの強みを持って患者様を取り合っている形。
けれど地域医療とは本来、それぞれの強みを活かして患者様に適切な医療を提供するものです。ですから当然、当院に来られた患者様で西洋医学の治療を受けた方がいいと思われる方には、積極的に病院やクリニックを紹介しています。
いきなり病気になる人はおらず、信号が青から赤に変わる前には、必ず黄色の時期があります。その黄色の時に適切な対応をして青に戻すのが、最も重要なことなのです」
今後の上場も見据え、準備を進めている同社。その狙いは認知度や院の信頼性が高まることで、正しい情報が行き渡りやすくなることにもある。
かかりつけ医や歯科医と共に、多くの人が「かかりつけ接骨院」を持つ日は、もう近くまで来ている。
●小泉英一(こいずみ・えいいち)
1971年生まれ。静岡県出身。日本最初の鍼灸の高等教育機関である明治国際医療大学を卒業後、
東京の治療院に数年間勤務。柔道整復学校での学びを経て、2003年、32歳で「こいずみ鍼灸整骨院」を開院する。
次いで翌2004年に「有限会社SHIN9」を設立し、代表取締役に就任。2017年に「iCureテクノロジー株式会社」に社名変更。CEOとして同社の舵を取る。
●iCureテクノロジー株式会社
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