「外国人を最低賃金で働かせている限り、日本はずっと落ち目のままだ」。

小沢和宏代表の考える近未来の日本は、今とは大きく異なった姿をしている。

 

規制が緩和され、外国人労働者の受け入れに大きく舵を切った「今」と「未来」について、その先陣を切って進む小沢代表に伺った。

 

規制緩和で外国人も介護業界で就労可能に

2017年10月の調査で、日本国内には外国人労働者が約128万人存在する。

この数字はこの5年間は常に10%以上の伸び率を示していて、特に16〜17年の1年間では18%という高い数字で増えている。

 

その内訳は中国人が29%と最大で、続いてベトナム18・8%、フィリピン11・5%と続く。また職種は建設・製造業に携わるものが35%と最も多く、その次に小売業・サービス業が続く(厚生労働省調べ)。

 

「この数字は今後大きく変わってくると思います。それは2015年3月の閣議決定により、在留資格に『介護』が新設され、外国人労働者が介護職に携わる規制が大幅に緩和されたからです」

 

そう話すのは、小沢和宏氏。

株式会社外国人就労データバンクの代表取締役社長として外国人労働者の受け入れの最前線に立つ人物だ。

 

日本の介護の現場の人手不足は深刻だ。昨年度の段階で全国の介護現場からの需要に対して12万人が不足、それが2020年度には20万200人、そして2025年には37万人以上が不足するという予測が出されている(厚生労働省調べ)。

 

この逼迫した状況に対して、国内の労働力でカバーするのは不可能と考えた日本政府は、従来は医療・介護分野での就労ができなかった外国人に対して、技能実習生の部門に「介護」を新設して、最大5年間就労することを認めた。

 

その条件は「母国で看護大学や専門学校を卒業・介護の実務経験があること」と「日本語能力検定N4(小学校高学年レベル)の資格を持っていること」。

これを満たせば晴れて外国人が日本の介護の現場で働けるようになる。

インドネシア看護教育協会/送り出し機関LPPR/千葉トレーディング協同組合とパートナーシップ契約の調印式

 

 

仕事に対して真摯に取り組む外国人労働者

この条件緩和について小沢社長はこう語る。

「N4レベルの日本語なら、数カ月の勉強で取得できます。あとは日本に来て現場で覚えていけばいい。

大事なのは日本で働いてもらうことです。それ以外に人手不足を解決できる策はない」

 

しかし小学生レベルの日本語で、コミュニケーションが重要な介護の仕事ができるのだろうか?

「ある程度のコミュニケーションなら、3カ月から半年ほども日本で暮らせばだいたい理解できるようになります。

言葉のコミュニケーションより介護の現場で大事なことは、相手の様子を観察する力です。

 

ベトナムやミャンマー・フィリピン・インドネシアなど東南アジア諸国から来た人たちはとても素直で純朴で、相手の気持ちを必死で読み取ろうとしている。

一方、経済感覚が発達した国で暮らしていると、どうしても最小の労力で最大の利益を得ようとするようになってしまう。それだと、労多くて益の少ない介護の仕事には積極的になってくれないのです」

 

例えば、と小沢社長は言う。

巡回をしてこいと言われた時、日本人のように経済感覚が発達していると、必要最小限のルートしか回ってこない。

「仕事をした」という実績を残すためだけの仕事しかしない。

 

ところが東南アジアの人々はそうではない。

巡回中にドアが開いていたら何があるのか確認してくるし、入居者の様子を見てこよう、異常ないか見てこよう、と向上心や好奇心を持って仕事をしてくれる。

一生懸命、与えられた仕事をこなそうとする。報酬と仕事のバランスではなく、仕事そのものを一生懸命に頑張る気持ちが東南アジアの人々にはあるのだ。

 

「だから、言葉でのコミュニケーションに難があったとしても、相手をちゃんと観察し、何を求めているのかを汲み取ろうという意識があります。

これは介護の現場で最も必要な意識ではないでしょうか」

 

 

国内だけでまかなえない労働力をどこに求めるか

日本の人口は10年後には1億2千万人を割り込み、2053年には1億人を切る、と想定されている。

 

「それは労働者が大幅に減るということなのですが、それでも日本人は同じ経済水準を求めるでしょう。

そのためには、減った分の労働力を何かで補わなければならない。日本人が2千万人が減少すれば、それは総人口が18%減少したということになる。

しかしそうなると残りの1億人は現在より120%仕事をしなければ水準は維持できなくなる」と小沢社長は笑う。

 

現在、労働に従事していない外国人も含めると在留外国人は約250万人にもなる。彼らの経済活動が今後、更に重要になっていく。

 

「これから更に外国人労働者が増え、日本に住む人々の10人に1人が外国人、という状態になっていけば彼らの労働力や経済力に依存する率は増えてくる。

日本のマイノリティとして無視できない存在になっていくでしょう。

今でさえ、コンビニ、ファーストフード店で外国人の店員さんを見ない日はないしょう?彼らがいなくなったら、どうやって営業する気ですか(笑)」

 

彼らの大半は日本には永住せず、ごく短期間日本で働き、母国に帰ってしまうが、しかしそれも考え方を変えれば新しいビジネスチャンスを生むものになる、とも言う。

 

「日本の企業が海外に出て一番苦労するのは現地での人の育成です。

それが進まないと、いつまでも日本人が現場に残って指導しなければならない。

しかし日本で仕事や技術を学んだ人が、帰国して母国の現場の指導的立場に就いていけば、彼らに業務を任せることができる。既に大手ゼネコンはそういう手法で東南アジアに進出し高い業績を上げています」

 

 

外国人学生らの負担減らす教育プログラム

それは介護業界でも同じだ。

日本の介護業界がピークを過ぎた頃、今度は東南アジア各国も高齢化を迎え、介護のニーズが増してくる。その時に日本で技術やノウハウを学んだ人が現地にいれば、日本の企業が進出しやすくなる。

インドネシアのレセプション会場でプレゼンする小沢氏

 

「その時、彼らが日本でどういう仕事をしていて、どういう経験を積んだ人だったのかをデータベース化してすぐ見れるようにしておけるのも、弊社の管理システムです。

先日、インドネシアに飛んで現地でプレゼンをしてきました。

インドネシア看護教育協会のレセプションで、230校以上の看護学校や看護大学の集まりがあったのです。看護学校に通う学生たちに日本で介護の人材が足りないから来てもらいたいことと、そのために日本語を勉強してもらいたいということを説明してきました。

学生のうちに必要な日本語能力を身に着けて卒業と共に日本の介護施設に就職できる、そうなれば、学生達は現地の5倍〜7倍もの給料を日本で受け取れるようになる。

 

看護学校、看護大学の就職率も上がるし、入学の希望者も増えて優秀な人材もどんどん育成できるようになるでしょう。

看護学校や看護大学の通常の授業や課外授業で日本語の教育を行えれば、現行の寄宿舎制での日本語教育にかかる費用や時間を大幅に少なくすることができると思います。

 

学生達や家族の学費の負担、雇用する日本の介護施設の負担、教育や送出業務を行う現地送出機関、紹介や監理を行う日本の監理団体、全ての負担が小さくなり、それは就労する本人の給料の増加分となって還元することができます」

 

学生達が全員、この教育プログラムで日本に来るようになればいいですね、と小沢社長は今後について語ってくれた。

 

 

ホテルマンから始まりさまざまな職種を経験

都立高専に通っていたという小沢社長。しかし卒業前にそこを飛び出してしまった。

「卒業しても行き着く先が工場長しかないのだったらそんなのはイヤだ、と思って辞めてしまいました。それから入ったのがホテル業界。すぐに認められていわゆる黒服を着れるようになりまして。当時は景気がよくホテル業界も上向きでした」

 

メキメキと頭角を現した小沢社長は、1980年代後半に次々にディズニーランド付近に建設されたヒルトン東京ベイやシェラトンなどのホテルの立ち上げにも参加、ホテルマンとして青春を過ごした。

 

「27歳でホテルを辞め、その後は歌舞伎町に(笑)。飲食店や麻雀荘の開店のお手伝いとか、経営のアドバイスなどしてました。

その時に気づいたのは、バイトで働いていた学生が、ちゃんと就職したのにまた舞い戻ってきたり、場所が場所だけにドロップアウトして裏の仕事に向かってしまうこと。

彼らがそういう道に進んでいかないように、表の仕事を用意してあげられる、その受け皿を作りたいと思った。それが34歳くらいの時です」

 

それから現在までの15年以上経緯の中で、医療コンサルティング関連の人物とも出会い、日本の医療・介護の現場の置かれている状況について知ることもできた。

「色々な仕事や人物を知って思い知らされたのは、お金持ちも貧乏人も1日は24時間で、この24時間をどれだけ多く笑って過ごせるか、が大事なのでは?ということです」

 

 

モチベーションを上げるためには、心を通わせること

「笑っても泣いても怒っても、いつかは死ぬのが人生、ならば仕事もプライベートも笑える仲間と一緒にやりたい、その為には、気持ちよく働ける環境が必要です。

だから、外国から労働者を呼ぶ時も、最低賃金で働かせるのではなく、できる限り報酬を増やす。

そうする事で、彼らのモチベーションも高くなり、質の良い労働力の確保が出来、それは高い品質を生みます。お客様も喜んで頂けるし、売り上げも伸びるでしょう。

しかも、高い報酬のウワサは彼らの母国に広まり、さらに質の高い人材を受け入れられるようになります。労働者が笑い、お客様が笑い、経営者が笑う。そんな日本になるといいですね」

 

今後AIが作業を負担するようになる時代になればなるほど、心の交流が人間の仕事として重要になってくる、と小沢社長は話す。

 

「これからは、日本国内だけでは労働力は慢性的に不足になります。今だってITエンジニアなどはどこかの会社から引き抜いて他の会社に廻しているだけで、常に足りていない。

だから外国から呼ばざるを得なくなる。

その時『日本に呼んでやる』ではなく『日本に来てください』というスタンスでやっていかないと、もう見向きもされなくなる。もっと景気の良い、給料の良い国にドンドン持っていかれる。

そうなったらジリ貧です。それを企業も理解し、彼らが働きやすい、魅力的な環境を作っていかないとならない」

 

日本という国がこれからも在り続けるために。小沢社長の視野は国境を越えて広がっている。

 

 

小沢和宏

都立高専3年高等課程終了後、中退。ホテル業界に就職。

その後経営コンサルタントとして活動するかたわら、外国人労働者の受入問題に注目し、2017年7月、株式会社外国人就労データバンクを設立、現代表取締役社長。

他、国際貢献グループ外国人技能実習生受入事業の事業協同組合ぜんにち及び、千葉トレーディング協同組合(介護事業)のアドバイザーも務める。

インドネシア財団法人LPPR(技能実習生送出機関)日本側窓口。

 

 

株式会社外国人就労データバンク

〒188-0011 東京都西東京市田無町3-9-4-306

tel:042-497-5721

mail:ozawa@dbfftw.com

 

事業協同組合ぜんにち

〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤10-15-16

浦和常盤10丁目ビル4F

Tel:048-834-4444

mail:zennnichi@top-jpn.co.jp

 

千葉トレーディング協同組合

〒279-0002 千葉県浦安市北栄1-15-10-502

tel:047-307-9388

mail: k_ozawa@chiba-tr.org

 

インドネシア財団法人LPPR

Head Office

Jl. Boulevard iL Lago Ruko Mendrisio I Gading

Serpong Blok A -15-16 Tangerang,Banten 15810

Tel:+62-21-2222-6968 

mail:ozawa.lppr@gmail.com