株式会社NEXTAGE GROUP(ネクステージグループ)/代表取締役 佐々木洋寧氏

 

リフォーム業を中心とした3つの子会社を持ち、全国で事業を展開する「株式会社NEXTAGE GROUP(ネクステージグループ)」。その代表取締役・佐々木洋寧氏は、俳優からのキャリア転換で一営業部員として入社し、10年後に2代目社長となった異色の経歴の持ち主だ。

 

東京都の行政指導、東日本大震災という2度の経営危機からのV字回復を主導し、現在の「顧客満足の向上が第一」とする企業文化を確立。オンリーワン企業を目指して体制の整備と社員の育成に力を注ぐ佐々木氏に、「選ばれる企業」になるための戦略と展望を聞いた。

 

役者から一転 ビジネスマンへ

中小企業で「2代目社長」 といえば、創業者の息子や娘 婿、親戚であることがほとんどだろう。しかし、佐々木氏は創業オーナーと血のつながりはまったくない。一営業部員として入社し実績と信頼を積み上げてきた結果、「社長になりたかったわけではないが、状況としてなるよりほかに道がなかった」という経緯で、社長を引き受けることになったという人物なのだ。

 

役者時代の佐々木氏

ビジネスマンとしての佐々 木氏のキャリアの始まりは、25 歳の時。子供が産まれるのを機に、役者になる道をあきらめて就職することを決めたのがきっかけだ。

ちょうどそのとき目に止まったのが、当時設立したばかりで、新支店のオープニングスタッフを募集していた株式会社NEXTAGE GROUP (ネクス テージグループ。当時は MED Communications【 メッドコミュニケーションズ】株式会社現・子会社)。

面接の結果見事採用され、営業部員として働くことになった。

役者と営業ではまったく勝手が違うようにも思えるが、「役者も営業も表現するところが多いのは同じ。仕事を通じてお客様に喜んでいただき、感動していただき、時には感謝もしてもらえる点で通じるところがある」と佐々木氏は言う。その言葉通り、入社翌月にはトップ営業マンに輝く活躍ぶりで、とんとん拍子に課長、支店長、部長と昇進。
10 年後の 35 歳の時には、社内 のナンバー2に当たる常務の役職についていた。

 

会社と社員を守るべく 2代目社長に就任

人の人生には何度かターニングポイントがあると言われている。佐々木氏の場合、16 歳で北海道から東京に来たこと、役者から会社員への転向を決めたことは間違いなくターニングポイントだろう。

だが2003年に起きた「会社が東京都から呼び出しを受け、業務改善指導を受ける」というショッキングな事件は、その2つ以上に佐々木氏のその後に大きな影響をもたらしたといっても過言ではない。

当時の同社の主要業務は、家々を回って浄水器や掃除機などを紹介する販売業。全国に支店を持つまでに成長していたが、その分管理が行き届かなくなり、中には「水道水にはトリハロメタンが含まれているので飲み続けるとがんになる可能性がある」とか「ハウスダストが多くアレルギー になる可能性があるから、この掃除機がおすすめ」など、相手の不安を煽って押し売り的に販売する営業マンもいた。

その結果、顧客からのクレームが募り、東京都から業務改善指導を受けることになってしまったのだ。

 

だがタイミングの悪いことに、オーナーは新しく立ち上げたばかりの飲食店にかかりきりで、とても同社を省みるどころではない。社員とその家族を守って営業を続けていくためには、誰かが陣頭指揮をとって改革を行う必要があった。

時に佐々木氏 35 歳。会社のナンバー2である以上「薄々自分がやるしかないとは感じていた」とはいうものの、予想外の形で2代目社長に就任。オーナーに代わって会社の采配を振るうこととなった。

 

重なる試練からリフォーム部門の新設へ

ごみ掃除は1日3回行われる。

社長に就任した佐々木氏が まず取り組んだのは、営業手法の改革と業種自体の刷新だ。行政指導の理由となった強引な手法が常となっている営業マンには辞めてもらう一方、当時の主力であった商品も将来性を考えて見直しに着手。

3年間に渡る情報収集と試行錯誤の末に、東京電力がオール電化住宅に熱を入れていること、国の政策としてもCO2削減に役立つオール電 化住宅の普及が進められてい ることを知り、ガス給湯器替わりの「エコキュート」、ガス コンロ替わりの「IHクッキ ングヒーター」を主力商品とし、オール電化のメリット・ デメリットをしっかり理解してもらった上で希望するユーザーに販売するという形に切り替えていった。

社会のニーズともぴったり合ったこの戦略は成功し、ほどなく太陽光パネルの販売も手がけるようになっていった。

 

しかしすべてが上がり調子に思えた頃、またも同社に大きな衝撃が走る。2011 年3月 11 日に起こった東日本大震災により、全メーカーのエコキュート部品を生産していた東北の工場が操業不能となったために、製品の供給がストップ。エコキュートの取り扱いができなくなってしまったのだ。

会社の存続に関わる大ピンチだが、そこで佐々木氏が打った手は「新しい事業を立ち上げる」という斬新なものだ。当時同社の顧客は約 16 万人。その人たちのためにできることをと考えた結果、全壊した家屋が多い東北地方では何もできなくても、北関東エリアを中心に、今リフォームを必要としている人もいるのではないだろうか?」という考えに至り、今できることを実行することに注力したのだ。

早速、営業マンが一軒一軒ブルーシートをかける手伝いをしながら顧客を回り、リフォームの需要があることを確信。震災から1週間後には、新しくリフォームを扱う部門が立ち上がることとなった。

 

選ばれるには「オンリーワン」になること

同社施工部隊の皆さん

リフォーム市場は全国で約7兆円の規模を誇る大規模市場だ。国の「住生活基本計画」には2025年で 12 兆円規模を目指すとの目標も示され ており、今後も更なる拡大の可能性は大。しかし一方では、施工前に営業マンから説明されたイメージと実際のできが違うなど、昔から何かとトラブルの多い業界としても知られている。

 

そんな業界に参入する上で、 佐々木氏がまずこだわったのは従来のリフォーム会社との違いをはっきりさせること。

多くのリフォーム業者のように施工会社の仲介に留まるのではなく、顧客満足の高い仕 事をするために自社内に施工部隊を立ち上げることだ。

営業から施工、アフターケアまですべてのメンバーを正社員で固め、ワンストップサービスを実施することで、営業マンの話と現場の齟齬などのトラブルを避け、紹介料が入らない分だけ料金も割安で提供しているのが同社の強みであり、他社との一番の違いになっている。

 

だが、ただワンストップのサービスだけなら、ほかにも行っているリフォーム業者がないわけではない。その中で選ばれる存在になるためには、更なる「オンリーワン」の要素が必要だというのが佐々木氏の考えだ。例えば、現場近隣へのあいさつ回りや午前・ 午後・夕方と1日3回のごみ掃除を行っていること、タバコを吸うスタッフが1人もいないことなどもその表れ。

1つひとつはちょっとした違いだが、そういう他者に真似できない抜きん出たものを持つことを非常に重視しているのだ。

「オンリーワン」の工夫は、もちろん組織のあり方ばかりではない。その本質であり、常に心がけているのは「かゆいところに手が届くのはもちろん、かゆくなる前に手が届く」サービスだと佐々木氏は言う。

 

「営業・施工共に内製化されたメンバーでワンストップで展開したとしても、そのクオリティ自体を上げていかないと苦情やトラブルにつながりかねません。現在磨いているのはまさにそういうところです」という取り組みの一例が、2017 年から採用された365日 24 時間人が対応するフリーダイヤル問い合わせサービス。
これは電話問い合わせにありがちなたらいまわしを無くすことを第一目標として、さらに機器トラブルや使用方法などどんな状況であっても最初の電話で適切な対応をし、すぐにその後のアクションにつなげられるように導入されたもので、コールセンター内には危機管理対策本部も設け、最悪の事態にも対処できる備えも完備している。

365日24時間稼働のコールセンター。2017年から導入された。

さらに、現在はアフターサービス人員を増強して、午前中に電話を受ければその日のうちにユーザーの自宅へ訪問できる体制も構築中。「そんな風にまだ妥協せずに磨きあげるべき部分はたくさんある。そうやって常にブラッシュアップを図り、ワンランク上のワンストップ体制を目指すことは非常に大事にしています」と徹底してオンリーワンにこだわるのは、今後の住宅 業界を考えるとどうしても必要なことだからだ。

人口減少により社会全体で新築の着工数は減っており、将来的にハウスメーカーのフランチャイズ店や代理店が減少することはほぼ確実というのが住宅業界の現状。
代理店が廃業すれば、それまで代理店が請け負っていたアフターケアはメーカーが自前で行うことになり、余裕のないメーカーがリフォーム業者に依頼する機会も増える。

現に、同社の現在の顧客の3割はハウスメーカーや太陽光パネルのメーカーから、ユーザーの同意の上でアフターサービス代行の依頼を受けたもので、自社ストックは残り約20 万件ほどだ。

 

「メーカーさんがどこと取引しようか迷った時、喫煙者が1人もいないとか、365日稼動のコールセ ンターとか他者に真似できない抜きん出たものがあれば〝あそこを選んでみるか〟と思われる可能性は高まるはずです。アフターサービスの依頼は今 後強化していきたいと思っているところ。そこで選んでもらえる状態を作っていくことが今の弊社の課題です」。

 

上場検討も 社員のために

「選ばれる企業」であるためにはもちろん「人」も重要 だ。同社では、グループ3社合わせて約400人の社員には、役職や役割によるグループを作って月2回ペースで2泊3日の研修合宿を実施。価値観や意識などを明確にするマインドセットをしっかり行い、営業テクニックだけでなく感謝の心や与える喜びをしっかり身に付けることに重点を置いている。

一方現場では、現場監督やサービスエンジニアといった部門ごとに月に1度会議を行い先月の振り返りと改善点の抽出、新たなプランを立てて実行するというPDCAサイク ルを実践。継続的な業務改善を行っているのが特徴的だ。

 

女性限定研修の様子

また、社員のやる気を引き出すために「向こう5年間のうちに5人以上の社長を作る」計画も進行中。

「頑張れば社長というポジションにつけるんだということで、働くメンバーのモチベーションが上がってくるはず。私の役割として、そういうポジションを作る必要はあると思うんです」というのがその狙いで、すでに数名が近年M&Aで取得した子会社や事業統括部長として任命されている。さらに現在検討中のマザーズから東証一部への上場も、その目的は資金調達ではなく社員のモチベーションアップのためだという。
「上場の目的は3つあり、1つ目はブランド力を高めることで取引先からの信用力を上げること。2つ目は、どこまで効果があるかはわかりませんがリクルートに役立てること。3つ目は、社員のモチベーションを高めることです。例えば、社員が家を建てるのに銀行でローンを組む場合、上場会社勤務かそうでないかによって借りられる金額はまったく違う。そういうところを上場の目的にするのもありかなと思うんですね」

顧客に選ばれる企業とは、 従業員にとっても働き甲斐のある企業のこと。それを改めて教えてもらった。

 

佐々木洋寧(ささき・ひろやす)氏 1968年1月生まれ。北海道名寄市出身。16歳 で東京に出た後、俳優を志しアルバイトの傍ら 役者とした活躍。「江戸ワンダーランド日光江戸 村」キャストのほか舞台を中心に活動する。1993 年、25歳の時にビジネスマンへの転身を決意し、 MED Communications株式会社に営業部員と して就職。支店長、営業部長、常務を経て2003 年に同社2代目社長に就任する。2012年に持ち 株会社として株式会社ネクステージグループを設 立し代表取締役に就任。現在に至る。

 

株式会社NEXTAGE GROUP (ネクステージグループ)

〒108-0074 東京都港区高輪3-26-33 京急第10ビル 9F

TEL 03-6831-7777

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従業員数:300名(グループ連結)

年商:80億円(グループ連結)

〈グループ企業〉

◉MED Communications (メッドコミュニケーションズ)株式会社

1993年4月設立

〒108-0074 東京都港区高輪3-26-33 京急第10ビル 9F

http://med-com.jp/

◉株式会社トータルリフォームサービス

2001年10月設立

〒323-0807 栃木県小山市城東2-31-24

http://trs-co.com/

ひたちなか支店/いわき支店/前橋支店

◉ミスターデイク株式会社

1999年12月設立

〒400-0043 山梨県甲府市国母7-5-9

http://mrdeiku.jp/

南アルプス店/甲斐韮崎店