株式会社NIPPON PAY – これからの世界標準は「現金が存在しない社会」 2020年に向けて日本のキャッシュレス化に貢献
昨今世界中で進められているキャッシュレス化。現金を持たずに、カードやスマートフォンで支払いを行う国が急激に増え、日本でも経済産業省によるキャッシュレス化が推進されている。そんな中、株式会社NIPPON PAYは「日本のキャッシュレス化」へ向けた事業展開を始めた。
しかし、日本が持つ根強い現金主義の壁が世界標準への進化を阻んでいる─。
NIPPON PAYが提言する「現金が存在しない社会」は、人類が持ち続けた貨幣価値にどんな変化をもたらすのか。同社代表取締役社長、續 仁(つづき・じん)氏に伺った。
「日本をキャッシュレス化する事で、 国家コストは激減し国力は成長する」
中国ではスマホ決済が当たり前訪日外国人のための決済システム
昨年10月に設立した株式会社NIPPON PAYは、中国モバイル決済システムのサービスを中心とした決済代行ソリューション事業と、インバウンド向けマルチ決済サービスの提供を行うベンチャー企業だ。
設立と同時にECショップ向けの中国三大決済サービスを開始し、今年1月11日には中国二大スマホ決済「WeChatPay」と「Alipay」を、ひとつのアプリで対応可能にしたマルチ決済サービスを始めた。
中国二大スマホ決済システムは、アジア圏からの訪日観光客の利便性を高めることができ、訪日外国人の集客効果が期待できるとして、精力的に展開している。
なぜ、中国の決済システムの導入推進を最初に始めたのか。それは、日本に来る多くの外国人の割合が中国・韓国・台湾や香港などのアジア圏であり、そのほとんどが電子マネーによるスマホ決済を利用していることに起因する。
「中国やインドでは、現金を使わないスマホ決済がほとんどです。しかし、日本ではスマホ決済が出来ないところが多く、訪日外国人は不便を強いられています。彼らが日本の決済システムに合わせるのではなく、自国で日常使っているお金の払い方、サービスの受け方をそのまま日本で利用できるようにと開発しました」と、同社代表取締役・續仁氏は語る。
「日本に観光に来る外国人で一番多いのは、日本でお金を使いたがっている中国人です。消費力のある彼らが日頃使っているスマホ決済を導入することで、消費をさらに促すことができます。システムを導入することで、日本のキャッシュレス化も進むと考えています」。
先進国では最下位?遅れる日本のキャッシュレス化
NIPPON PAYが現在展開しているスマホ決済システムは、世界中に普及され始めているキャッシュレス決済方法のひとつだ。世界では今キャッシュレス化の方向へと動いており、2014年には経済産業省が「2020年に向けたキャッシュレス化」の方策を発表している。その甲斐あってか、日本でもクレジットカード利用に加えて、nanacoなどのチャージ系、suicaなどの交通系、金融系のデビットカードなどの利用率が高まってきた。
しかし、續氏によると日本のキャッシュレス普及率はたったの6%。先進国では最下位だ。中国では96%が現金を使わずにスマホで決済が行われているという。「中国では、今や銀聯カードのシェアは、スマホ決済『WeChatPay』と『Alipay』に奪われています。日本がグローバル化するためには、世界の常識に合わせることが必要です」という。
ケニアの山奥で見たスマホ送金 ビジネスチャンスは常識とのギャップにあり
同社の訪日外国人向け決済サービス事業は、これから行っていく事業のごく一部だ。「最終的には、現金が存在しない社会にすることが目標です」と同氏は語る。なぜ、同氏は日本のキャッシュレス化社会を目指すのか。そのルーツは、同氏が創業メンバーと共に体験した出来事にある。
「創業メンバーのひとりであった彼は、海外で今何が起きているのか知りたいと様々な国へ行き、見たことを報告してくれていました。その中で本当に驚かされたのが、世界で進められているキャッシュレスの実情です」
彼が報告するところによると、アフリカのケニアでは、現金を使わずにスマホでの支払いや送金が日常的に行われているという。「山奥にいるマサイ族も現金を使いません。彼らは中東へ出稼ぎに出ていて、雇用主からの給料は瞬時にスマホで送金されます。彼らは給料をマサイ族の村にいる母親にスマホで送金し、受け取った母親はナイロビにいる息子にやはりスマホで送金しているというのです。まさかと思いました」。
同氏が自ら現地へ確認しに行ってみると、確かに彼らは目の前でスマホでのお金のやり取りを普通に行っていた。さらに調べていくと、中国などアジア新興国の多くが、スマホ送金や決済を日常的に行っていることがわかった。中国ではホームレスですら、QRコードを掲げて物乞いをしている。
「アフリカ人はくしゃくしゃの紙幣で支払っている、中国人は銀聯カードを使っていると思い込んでいるのは日本人だけなのです」
また、キャッシュレス化には意外なメリットがあることもわかった。「現金を持ち歩かないので、アジアの新興国では強盗が減り、治安が良くなりました。紙幣やコインを触ることがなくなったので、疫病が減りました。さらに、決済のデータが残るため、賄賂や脱税がなくなります」。現金がなくなることで、世界が平和に進んでいくというのだ。
同氏の見解によると、キャッシュレス化を推進する国はこれからもっと増えるという。実際、インドではブラックマネー対策のために高額紙幣が廃止され、欧州中央銀行では500ユーロ札の発行を取りやめる。ケニヤやナイジェリアでも、既に50%がキャッシュレス化されている。
日本の常識はこんなにも遅れていたのか。「日本に広まっていないことにビジネスのチャンスがあるのではないかと考え、NIPPON PAYの設立に踏み切ったのです」。
キャッシュレス化が進まない原因は進化をやめる日本の国民性
世界中でこれだけキャッシュレス化が進んでいてもなお、日本で現金第一主義の思想は根強く、キャッシュレス化への進みは遅い。その原因について同氏は、日本の国民性によるものだと考えている。
「総中流化社会の弊害とも言えるかも知れません。自分たちはものすごく進化していると思い込んだまま、ある程度にまで達すると満足してしまう。進化することをやめてしまうんですね」
かつて、ソニーはウォークマンという画期的な商品を生み出した。しかしそれは、ウォークマンに電話機能をつけたiPhoneに抜かれてしまった。docomoがiモードを生み出した時は、世界中のビジネススクールがそのビジネスモデルを研究した。その画期的なシステムもまた、スマートフォンに取って代わられてしまった。
日本のキャッシュレス化が進まない原因は、業界の最低限の利益を守るために、競争を避け進化をやめてしまう国民性にあるのではないか。護送船団方式が蔓延する日本を同氏は憂いている。
現金がなくなれば本来の価値が見えてくる
日本の現金第一主義について憂う同氏は、キャッシュレス化が進むことによって、モノやサービスへの本来の価値観を取り戻すことができると考えている。
「今、人々は政府が発行する紙幣や硬貨に一番価値があると信じています。しかし、歴史上、貨幣に一番価値があるとした時代は数百年です。本来、ひとはモノを受け取る時、対価として同じ価値のあるモノを差し出したり、思いやりや感謝、優しさを返すなど、ダイレクトなコミュニケーションを行っていたはずなのです」
さらに、キャッシュレス化は「国」という壁を取り払うことができるとしている。この先世界は、国境を越えた体験や購買を求めるようになる。支払方法や通貨など国の常識や制度に縛られることは、ナンセンスとなるだろう。
「2020年、日本の歴史上で最多の外国人がやってきます。このタイミングが日本のキャッシュレス化のチャンスです。貨幣への執着から離れ、人が本来持っている価値観へと戻ることができるのです」
キャッシュレス化で貨幣概念はボーダーレスへ
NIPPON PAYの日本キャッシュレス化へのステップはこれからも進む。6月30日から始まっているのは、POSシステムを置かない施設でも、メールやチャットでQRコードを送信することにより中国三大決済が利用できるサービスだ。中国人による爆買いは医療や美容などの消費に移っており、そのニーズに応える形となっている。
また、現在「WeChatPay」と「Alipay」に対応しているスマホ決済アプリに、仮想通貨ビットコインの対応機能を追加する。8月以降は、仮想通貨イーサリアムなど他の仮想通貨の決済機能も追加していくという。
「我々の取り組みは日本初です。訪日外国人が増える中、シェアはこれからもっと広がるでしょう。2020年を目標にした日本の100%キャッシュレス化へ、さらに貢献していきたいと思っています」
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キャッシュレス化が進む国はGDP成長率も伸びているという説がある。キャッシュレス化が急速に進むアジア新興国ではGDPが好調な伸びを見せているが、現金使用率が未だ高い日本のGDP成長率は横ばいのままだ。通貨や貨幣の概念がボーダーレスとなったとき、日本は眠りから覚め、経済は再成長へと向かうのか。NIPPON PAYが仕掛ける貨幣革命に期待が高まる。
プロフィール
續 仁(つづき・じん)氏…主に通信業界に数社勤務。2017年2月に東証1部上場の通信事業会社の子会社役員を退職し、株式会社NIPPON PAYの代表取締役社長に就任。
株式会社NIPPON PAY
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-5 銀座ウィング南3F
TEL 03-4546-1766