広範囲に応用可能で時流にのる人を育てる秘策は、スポーツ心理学と見つけたり!

一般社団法人 社会整備サポート協会/代表理事 河合一広氏 

一般社団法人 社会整備サポート協会/代表理事 河合一広氏

優れた人材の確保や育成は、どの企業にとっても課題のひとつだ。人材育成の方法は多種多様だが、何がフィットするかを見極めることも難しい。

そんな中、「一般社団法人社会整備サポート協会」では、スポーツ心理学という、一見、企業の人材育成には関係ないような分野からアプローチする。代表理事の河合氏に、人材育成とスポーツ心理学の結びつきをはじめ協会が目指す将来像を聞いた。

 

■eラーニングで効果のあるコンテンツを探って

もともとはメガバンクや外資系銀行で法人営業やコンプライアンスを担当していた河合一広氏。2012年に社会性の高いスキルを持つ専門家を発掘、強い個人の育成に貢献するコンテンツ創造のために、一般社団法人社会整備サポート協会を設立した。

「社会整備サポート協会」としたのは、国や市町村、大企業などでは行き届かないサービスや商品を同協会が提供することにより、地方格差や所得格差などを是正し、社会基盤整備のサポートをしながら強い個人と豊かな生活を実現することが目的だからである。

 

今ではインターネットを使った学習形態「eラーニング」で展開するさまざまな検定ビジネスコンテンツの企画・制作・販売に加え、実際の研修にセミナー開催、エージェント・マネジメント業務などを行っている。

 

だが、設立当初は仮にも順調とは言えないスタートだった。まずは同氏の得意分野であるコンプライアンスと数学をeラーニングのコンテンツにしたが、あまり普及しなかったのである。次に提供したのはオリジナル検定だ。社内用検定とお客さま向けの2方向からアプローチした。それは、社内検定では義務感のある研修より自発的に取り組めて社員の競争力を刺激できる、お客さま検定では広告よりも確実に自社ファンを増やせる、と好評を呼ぶ。

 

そして同じ頃、同氏のアンテナがキャッチしたのは“スポーツ心理学”だった。最近注目を集めているスポーツ心理学ではあるが、学べる大学は意外に少なく、日本では7、8校しかない。さらに大学院を卒業し、プロやアマチュアのスポーツ選手に対して現場で教えることができる人はわずか数人しかいない。

同氏はすぐに数人のうちの一人でスポーツ心理学の第一人者ともいうべき作新学院大学の笠原彰准教授に会いに行った。「eラーニングのコンテンツにすれば、全国の人に勉強してもらえる」と提案しつつ、笠原准教授のプロデュースも引き受けた。

 

「うちが人材育成や研修など行っている競合他社と差別化できる点は二つあります。その一つがスポーツ心理学を使った研修ができること。もう一つは人をプロデュースするということです」その言葉通りに、“スポーツメンタルトレーニング”(学研)という書籍の出版に尽力し、テレビ出演や講演の機会も増え、結果的にスポーツ心理学の認知につながった。

 

■体のケアとメンタルケアは同じ

スポーツ心理学というと、普通はアスリートなどを対象とする心理学だと考える。まして近年スポーツ界ではメンタルトレーニングの必要性が高まっていると聞く。当然、一流のアスリートはスポーツ心理学に基づいたメンタルトレーニングを受けていると思っていた。

 

ところが河合氏曰く「日本ではメンタルトレーニングを組織的に利用しているところはまだ少ないですね。過去に受けたことはあっても定期的ではない。個人では何人か受けている人もいますが」

それも当たり前だ。前述のように日本には専門家が少ないからだ。アメリカの場合はどうか。

 

「大リーグにはメンタルトレーナーの部屋があって、何かあると選手が普通に相談に行ける環境にある。体のケアとメンタルケアは同じという意識があるのです」

 

もう一つ日本で普及しない要因が日本人特有の“メンタルを相談するのは弱い人間のすること”という考え方が根強く残っているからだという。メンタルトレーニングを積極的に取り入れているアメリカの場合は、体のケアとメンタルケアをほぼ同列に考えている。

「日本でメンタルトレーニングを受け入れやすくするためには、たとえばよくも悪くも日本人の好きな精神論、これさえもスポーツ心理学に当てはめ理論的に説明すれば納得感が生まれます。そのことがヒントになるかもしれない」と同氏は話す。

 

■ビジネスにも活用できるスポーツ心理学

同協会では、スポーツ以外のビジネス分野でもセミナーに活用している。

「結果を出さなければならないのはスポーツもビジネスも同じ。では勝つためにはどうやったらいいかと、こういうことですね。たとえば著名なプロアスリートにしても一日にしてその地位を築いているわけではない。

スランプの時もあったと思うし、トレーニングしても思うような結果が出ないなど様々な問題を乗り越えてきている。

問題に直面したときにスポーツ心理学では『どうやったら緊張や不安、プレッシャーをコントロールし、良い結果を出せるのか』ということをメンタル面からアプローチしていく。“ビジネス分野でも共感し実践できる部分は大いにある”との声がお客さまから必ず出ますね」

 

すでに某地方銀行やIT企業、証券会社などではスポーツ心理学を応用したセミナーで実績をあげている。最近特に注目されているのが若手管理職向けのリーダシップ研修と就活生向けのメンタルトレーニングだ。

 

管理職だからリーダーシップがあるわけではないが、リーダーシップを体系的に学ぶ機会も少ない。何より、20代後半から40代前半までの比較的若手の管理職に共感を得やすいのは、人材育成でありがちなMBAを取得した高名な人が創ったようなコンテンツとは異なり、同世代のスポーツ選手の生き様などを交えたスポーツ心理学だからだ。

それは就活生においてもいえること。「以前と比べて経済基盤の違いもあり、今の就活生は自分をどう上手く見せるのか、聞かれたくないことを聞かれた時の対処法などが必要で、それにはスポーツ心理学に則ったトレーニングが向いている」

 

突き詰めれば、人間力を高めることなのだろうか。

「強い個人を作るということですね。強い個人というのはちゃんとした目的意識を持たないとなれない。スポーツ心理学では、感情、思考、身体反応、行動の4つある要素のうちの2つを鍛えます。トレーニングの対象となるのは思考と行動の2つ。我々はスポーツ心理学を通してそのスキルを提供できる」

社会整備サポート協会によってもたらされた人材育成×スポーツ心理学。この化学反応のような新しいコンテンツで、人材育成の分野に風穴を開ける日は近いのかもしれない。

 

河合一広 (かわい・かずひろ)氏…名古屋出身。1988年、みずほ銀行(旧富士銀行)に入行、国内にて法人営業・コンプライアン ス対応、ドイツ・スイス拠点にて法人営業。2004年、ドイツ銀行グループ入社。国内にて法人営業、当局対応およびコンプライアンス対応。2012年、一般社団法人社会整備サポート協会設立、代表理事就任

 

一般社団法人 社会整備サポート協会

〒160-0022 東京都新宿区新宿1-24-7 ルネ御苑プラザ7階

TEL 03-6380-0458

http://social-navi.jp

 

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