株式会社ティ・ユー・エフ /「まずチャレンジすること」が成長の原動力 時代に合わせて常に価値ある商品を提供し続ける
「まずチャレンジすること」が成長の原動力 時代に合わせて常に価値ある商品を提供し続ける
株式会社ティ・ユー・エフ/代表取締役社長 中野孔生氏
株式会社ティ・ユー・エフは設立当初の1988年には、自動車の板金塗装や修理をメインとする小さな会社だった。しかし危機の度に新たな知恵と挑戦を繰り返してきた結果、現在では海外製品の日本総代理店へと事業を拡大。
テレビ通販をはじめマルチメディアでモノを売る仕組み作りをめざし、来期は年商20億を目標に掲げて成長を続けている。創業者で代表取締役社長の中野孔生氏にその歩みを聞いた。
■板金塗装の会社として出発
同社が今日のように成長するまでの軌跡は、そのまま創業者で代表取締役社長である中野氏が歩んできた道でもある。
中野氏は中学校を卒業後、自動車の板金塗装を学ぶ専門学校に進学。卒業したのはおよそ1983年頃のことだ。当時は中古車市場が活況を呈し、多くの中古車が市場に出回っていた時代。
中古車の値段も下がりがちな中で、マツダ株式会社が新しく立ち上げた中古車の商品開発部が最初の仕事場だった。そこで4年間勤めた後独立し、小さなプレハブ小屋を借りて塗装や修理を請け負うようになったのが同社のスタートだ。
1年半ほど後に約100坪の工場を借りて移転し、幅広く板金塗装を手がけるように。バブル直後で新車から中古車へと人気が移っていた中、米国から仕入れる派手な色をつけた部品を使ったカスタマイズなどのサービスで順調に業績を伸ばしていった。
しかし、1990年代後半になると若者の車離れが進み徐々に顧客が減少。行き詰まりを打破するために新会社を立ち上げ、米国から独自のルートで輸入した部品を「TUF」のブランドで売り出し始める。
カタログにして全国の中古屋に配ったところ注文が相次ぎ、最終的には当時国内に約1500店の代理店を持っていた自動車用品の大手・オートバックスにも商品を入れるようになった。「まずチャレンジすること」を信条とする中野氏の挑戦はここから始まった。
■一つ目の転機
若者の車離れが続く限り売り上げが頭打ちになり低下を始めるのは時間の問題。すぐにでも今後の事業展開を考える必要がある中、それまで自動車関係一筋だった中野氏は視野を広げようとさまざまなセミナーに出席し、楽天の三木谷社長の語ったネット市場の可能性に衝撃を受けたという。
そこで早速パソコンを購入して楽天市場に加入。白い壁紙に部品の写真を1枚貼るようなHPからはじめたところ徐々に反響があり、1年後には1カ月で約300万円と現場の仕事と同じぐらいの売り上げを上げるようになった。
しかしそんな期間は長くは続かない。すぐに価格競争が始まり、原価10万円のポータブルナビゲーションの販売利益が1000円未満になってしまったのだ。
■中国への期待と失望
新たな課題を乗り越えるために中野氏が打った次なる一手は、価格競争の激しい車用品の外にも商品を広げることだ。偶然の機会にも恵まれ中国に伝手を得たことをきっかけに、インターネットで中国から仕入れた格安の日用品の販売を開始。
しかし2~3年経ち日本の商社による検品サービスの導入などで不良品の割合も減ってくると、中国から仕入れる日用品も価格競争に突入していく。再び会社の将来を考えた時、中野氏が辿りついたのは同社の原点とも言うべき「僕らが車の部品をヒットさせられたのはなぜか?」ということだったという。
「その一つは〝みんながやっていないことをやったから〟。基本はやはりそこにあり、では今それを実現するにはどうすればいいのかと考えて、日本にまったくないものを企画から立ち上げていくことはできないかと思ったんです」
その目線で中国でパートナーを探した中野氏だが、専属契約を結んでも他社に同じ商品を出す会社が続出したことから中国でのパートナー探しを断念。韓国との提携を模索し始めるが、再び「伝手がない」という問題が立ちはだかった。
■ザイグル社製品との出会い
しかしここでも助け舟は思わぬところからやって来た。中国で知り合った日本人を頼ってきた韓国人が貿易会社勤務だったという偶然の出会いから、月に3~4回は韓国へ行くようになり、さまざまな製品メーカーの社長とも一緒に卓を囲む仲に。
その中からまず最初の商品として、2009年にコードレスのヘアアイロンを売り出すことに成功した。しかし女性のハンドバッグにも入れられるオシャレなデザインとしっかりした機能を売りに販売を拡大したものの、ほどなく始まった価格競争類似商品の事故で販売を一旦中止。次の商品を探していた時紹介されたのが、ザイグル社のホットプレートだった。
「2万円のホットプレートなんか売れるの?と疑問だったんですが、社長自ら僕の泊まっているホテルの部屋で魚を焼いてくれたんです。それがめちゃくちゃ美味しくて煙もまったく出なくて。〝これはすごい!〟と強く感動して、この商品なら絶対売れるだろうと確信しました」
翌月には韓国に飛び、同商品の日本総代理店の契約を締結。年間2万4000台をめざして販売をスタートさせたが、すぐに問題が起こる。日本では無名のザイグルブランドはまったく売れなかったのだ。
■テレビ通販の世界へ
しかしそこでへこたれる中野氏ではない。
「ヨドバシカメラで実演販売をしたら、素人の僕がしゃべるだけで1日20台とか売れる。やっぱりすごい商品だという自信はありました」という体感を信じ、商品を知ってほしいとの思いから臨場感やその良さを視聴者にダイレクトに伝えやすいテレビ通販を選択。
早速展示会に出店して商談を開始した。テレビ通販に関してはまったくの素人だったが「ザイグル製品を日本で一番知っているのは俺だ」と思えば、不安や緊張は感じなかったという。
そして2011年には初めてショップチャンネルの深夜枠のテレビ通販に出演。中野氏自らの司会で40分で1000台を売り上げることに成功し、そこから大手通販会社の専門チャンネル出演にも続いていく。20分の番組で1日10台売れたら成功というところを毎日100台の注文が入るほどの人気となり、異例の抜擢で地上派生放送へと進み、そこでも15分で600台という数字を出したところでまた中野氏のもとに新しい道を開く1本の電話がかかってくる。
「それが、その通販会社の名物社長からのオファーで、忘れもしない8月2日に全国のU局チャンネルの19局ネットでの話をいただき、僕と社長の2人でやったら15分で5000台、つまり1億円分売れたんです。結局もう2日追加でやることになり、その2日間で当時あった溜まりに溜まった在庫1万5000台全部がなくなりました。たった2日間で前年の年収を越えたんですよ」
結局1年間でその大手通販会社を通して売れた台数は30万台。多い時には収録のために同社の九州のスタジオまで、1カ月に15回も通ったという。
■目指すはマルチメディアでの商品紹介
テレビ通販という「道」を得て開業以来の売り上げを記録した同社だが、もちろんそこで歩みを止めてはいない。約2年が経った所でその大手通販会社の専売商品と化していたザイグルの通販用モデルと別モデルを作る了承を取り付けると、全国の家電量販店でも販売を開始。2015年1月からは顧客の情報を自社に集められる「直販」に力を入れた新たな体制作りもスタートした。
これまで大手テレビ通販番組のザイグルの台本、構成、製作から出演まですべて1人でこなしてきた中野氏のノウハウをもとにスタートしたプロジェクトは、自社スタジオが8月に完成し、番組名も「ナカノチャンネル」として社長自ら看板になり、「本当にいい物を私の言葉でお伝えしたい」と中野氏は熱く語る。
今後はコールセンター開設も視野に入れている。今までは番組作成は外注していたが、10月に収録機材も導入し、完全自社制作に移行、2015年6月から地上波を中心に月数十本の番組を放映中だ。目指すはメーカーの立場で番組を企画し、自前の媒体で放送して受注をとるスタイルの確立である。
「そのためにまずテレビをスタートさせようと。ただ最終目標はテレビでモノを売ることではなく、マルチメディアマーケティングで商品をしっかり紹介する仕組みを作ること。そこに向かって1つずつできることを積み上げていく、その一歩としてまず更にザイグルを売るというのが今の位置づけです」
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現在、日本のテレビ通販業界は大手が独占し、新規事業社が参入するには難しい業界。番組制作、放送、受注など全てにコストが掛かりすぎているうえ、ヒット商品が生まれなければリスクも大きい。しかし、中野氏の経験と好調なザイグルの販売があればリスクは最小限になる。
「自力で成長していくには〝自分で売れる力〟が絶対に必要です。テレビ通販はこっちから仕掛けていける世界。いろいろな会社がある中で、全てを経験してきたので、これを具現化しない手はない! できるのは我が社の特権です」という中野氏。そして売り上げ目標として来期20億、3年後に50億、4年後には100億を掲げている。
困難に直面する度に「まずやってみる」の精神で乗り越えてきた同社と中野氏。今後の成長に注目が集まる。
中野孔生(なかの・よしたか)氏…東京都昭島市出身。市立昭和中学校卒業後、専門学校を経てマツダ㈱に入社。退職後、独立して株式会社ティ・ユー・エフを設立し代表取締役社長に就任。中古車の板金塗装や修理、自動車部品の販売などを手がける。後に日用品のネット販売にも事業を拡大。現在は海外ブランドの日本総代理店としてZAIGLE(ザイグル)などの販売も行っている。
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