株式会社MOSOmafia – 美容デリバリーでオフィスの姿を変える
人とビジネスを繋ぐ『スモールビジネスデパート』会員の声
美容デリバリーでオフィスの姿を変える
株式会社MOSOmafia CMO 清水翔さん
出張ビジネスというと、何を思い浮かべるだろう?
近年の少子高齢化に伴い、様々なサービスが出張してくれる時代になっている。
そんな中、エステやネイルなどの美容コンテンツを家に、そしてオフィスに出張させようとしている会社がある。
美容オンデマンド
「careL」では、プロのスタイリストやネイリスト、マッサージをいつでも呼ぶことができる。
仕事と仕事の合間にポッカリ空いた時間に、プロが来て身体のリフレッシュや、メイクアップをしてくれるのだ。
今回は、このサービスを提供している株式会社MOSOmafiaのCMO清水翔さんにお話を伺った。
Q:出張ビジネスに着目したきっかけは何だったんですか?
20代〜30代の女性から声を集めたら、『休日に美容院に出かける程ではない些細な髪型の直しを、空いた時間に自分の職場に来てやってくれると助かる』『オフィスでの小休憩の時に、ネイルを直したりマッサージをしてくれるようなサービスが欲しい』なんて意見があったんです。
また、私は以前ブライダルの仕事をしていたのですが、ブライダル業界で働くスタイリストさんは、どうしても仕事が週末に集中してしまう。
だから仕事に波があって、トータルの収入が少なくなってしまう。
せっかく技術を持っている彼らに、空いている時間を使って収入を増やしてもらいたい、と思ったのがもう一つのきっかけです。
それに、美容関連の仕事には女性も多いのですが、彼女たちは結婚・出産して家庭に入ってしまうと、せっかくの専門的な技術を活かせなくなってしまう。だからといってフルタイムで働いていくことも難しい。
しかし、この方法なら彼女たちの技術を使った副業を提供できる、とも考えています。
Q:このアイデアを現実にしていくにあたって、モデルにした会社や、目論みはあったのですか?
ニューヨークでは2014年からGLAMSQUADという、careLと同じように出張してきてくれるヘアメイク・サービスがスタートしていて、1年目で800万ドルという高い収益を上げています。
その結果、全米の各都市で同様のサービスが乱立状態にあって、非常に人気なんです。
また自分が以前いた会社で、3フロア数百人もいるオフィスに、会社が福利厚生で置いてくれているマッサージスタッフが2人だけで、予約をしても3週間待ち、なんてことがありました。
それを、オンタイムで自分のして欲しい時にやってもらえる。これは喜んでもらえる、と思ったんです。
Q:会社を設立することになった経緯について教えてください。
シリアルアントレプレナーの渡辺大介さん(現、株式会社MOSOmafiaCEO)と出会ったことが大きな転機でした。
彼のやっているメンズエステの開店に、モニターとして呼ばれて知り合ったんですが、その後、同じアイデアを持っているということで意気投合して。
日本でもこういうビジネスをヒットさせよう、と始めたのが2015年の1月でした。
その後、TECHFUND(テックファンド)という技術投資会社の行っている、サンライズプログラムというコンペにアイデアを応募しました。
それは、コンペに勝ったプランに投資してくれて、アプリの開発もしてくれるもので、100社の応募から、3〜5社くらいしか選ばれない。
そのコンペの育成スタートアップに選ばれたのが同じ年の6月。ローンチしたのが2016年の1月です。
日本に馴染んでいない出張ビジネス
Q:アイデアといい、ニューヨークでの先例といい、順調な船出のように思えるcareLですが、ローンチがずれ込んだのはどうしてですか?
まず、日本に出張ビジネスがどれほど浸透しているのか、という問題がありました。
例えば出張マッサージっていかがです?と質問すると『いいね!』と言われるんですが、では実際に呼びたいですか?と聞くと『いや〜』と言われてしまう。
また、オフィスでマッサージを受けるにも、隣りで先輩が必死で仕事している脇でのうのうとマッサージを受けるというわけにはいかない、という日本の職場の雰囲気もある。
Q:実際にスタートしてから、それらの懸念はどう変化しましたか?
最初は、まつ毛の育毛などをやろうとしたのですが、美容法という法律があってダメで。デリバリーして行うのはできないんですね。他にも色々な方法を試しています。
インストラクターの出張というのもやっているのですが、こういうサービスを拡張しようとするときには、スモールビジネスデパート代表の齋藤真織さんからアドバイスをもらうことが多いです。
スモールビジネスデパートには多くの業種の方が集まっているので、今どういうニーズがあるのかをキャッチし易いんです。
例えば、施術を受ける環境は様々で、それに対応しなければならないというのに気づかされました。
ベンチャーでオープンな会社は、オフィスの真ん中でマッサージをやってもらっていて、そこに自分も私も、と人が集まってくる。
しかし、別の会社ではリラックスしたいという希望で、会議室などクローズドの空間でやっている。
これからは、そういうのにも対処しながら、例えばオフィスグリコのように、オフィス街に浸透して、当たり前にオフィスでネイルやメイクをできる環境にしていけたらなと思います。
Q:逆に、施術をする側の反響はいかがでしょう?
日本は世界でも群を抜いてサービス業に対する要求が高いです。ですから、しっかりと腕のある人を雇っています。
実はローンチした翌月に、似たような業種の会社ができたんです。そこはバンバン広告を出してきたんですが、1カ月くらいでツブれてしまった。
やはり広告で知っても自分で呼ぶまではしない。だからコッチは広告費よりも人件費に力を注いでいます。
そのせいか、今までサービスに関してクレームをもらった事はないですね。プロの方々からも肯定的に受け止められています。
月に数万円の収入を確保することができるし、ある程度お客さんと顔馴染みになると『この曜日はあの会社から呼ばれることが多いから、この時間くらいには渋谷ヒカリエ辺りにいよう』と、自分のスケジュールを組めるようになったそうです。
プロにもユーザーにも、「スキマ時間」を有効活用してもらえる
Q:「日本はサービスを受けるには最高の国だが、サービスを提供する側には最悪の国」と海外の会社から言われることがあるそうです。
それだけ要求が高いことの現れだと思いますが、今後はどのようなサービス展開を考えているのでしょうか?
オフィスでの定着化、ヘビーユーザー化を第一に考えています。今、企業に、福利厚生の一環として利用してもらえるように提案していて、50社ほどが利用してくれています。
また、ヨガマットや折り畳みベッド、ネイルのキットなどのプレゼントなどを企画し、利用者が『また呼びたい』と思ってもらえるようにしています。
器材がお客さんの手元にあると、スタッフも対応しやすいですしね。
他にも不動産会社と協力して、タワーマンションで利用できるようにも考えています。
子育て中のママが、家にいながらエステやマッサージを受けられる。結婚式に出席する朝にチョット髪型を直したり、ネイルをしてもらったり、なんて利用をしてもらいたいですね。
Q:最後に、やってよかった、と感じたことを教えてください。
素晴らしい技術を持っているのに、家庭の事情で仕事ができなかった人や、HPも店舗もないという人から、技術を示せる場を提供してくれた、自分だけなら出会えなかった大企業の人にも喜んでもらえる、と言ってもらえました。
現在50名ほどのプロのスタッフが在籍しています。これからも空いている時間をドンドン有効利用して収入に繋げてもらいたい。
時間はかかるかもしれないが、プロとオフィスが互いに有益に繋がれる環境を作っていきたいですね。
……ありがとうございました。
◆2017年3月号の記事より◆
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