中央建設株式会社 – 突撃レポ・2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、建設業界が熱い!「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」に大学生が潜入!
突撃レポ – 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、建設業界が熱い!
為末大氏が館長を務める障がい者スポーツ施設
「新豊洲Brillia(ブリリア)ランニングスタジアム」に大学生が潜入!
着々と工事が進む「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」(2016年12月にオープン予定)
◎中央建設株式会社
渡部功治氏[代表取締役]/伊藤直治氏[専務取締役]/高田直紀氏[専務取締役総務部部長]
◎参加学生
島村涼香さん[上智大学4年]/カーン星さん[東京外国語大学1年]/金築美知さん[共栄大学3年]
元陸上選手の為末大氏が館長を務める障がい者スポーツのトレーニング施設「新豊洲ブリリア ランニングスタジアム」。現在(2016年11月)、建設中の同施設を施工するのは6年前に愛媛から東京へ進出したばかりの中小企業・中央建設株式会社だ。
元請け業者として新天地・東京で躍進する同社に、就職を控えた3人の女子大生が突撃レポ。同社の事業に取り組む姿勢や情熱、そして、建設業界の〝今〟をうかがった。
愛媛県で誕生した中央建設株式会社は創業67年の歴史を誇る総合建設業者だ。
公共事業の予算カットなど地方の建設業界が先細りしていく中、2008年に4代目社長として就任した渡部功治氏の号令のもと、6年前に東京へと進出。
ゼロからのスタートを切り、スーパーゼネコンの下請けや一般住宅の元請け案件を徐々に増やしていった。
そして、現在、同社が元請け業者となり手がけているのが、障がい者スポーツのトレーニング施設と研究施設が一体となった「新豊洲ブリリア ランニングスタジアム」だ。
運営に携わる東京ガス用地開発株式会社と建築主である太陽工業株式会社が共同で着手。
東京建物株式会社がネーミングライツを取得し、館長には元五輪陸上選手の為末大氏が就任、2016年12月のオープンを目指して目下建設が進む。
今回、突撃レポを行う学生は島村さん(上智大学4年)、星さん(東京外国語大学1年)、金築さん(共栄大学3年)の3人。
「あまり建設業界には馴染みがありません」と口を揃える彼女たちであるが、将来に控える就職へ向けて見識を深めるために、今回の企画に参加してくれた。
まずは東京新橋にある同社本社を訪ね、渡部社長、伊藤直治専務、高田直紀専務に仕事にかける情熱や信念、建設業界の現状をうかがった。
(左から)カーン星さん/金築美和さん/島村涼香さん
【本社訪問】
実物を見て買えないからこそ、お客さんは情熱を見る
星:まずは御社の特徴を教えてください。
渡部功治社長
渡部:当社は従業員50人程度の小規模な総合建設業者ですが、多色、多彩な会社です。
土木工事の分野では道路や港湾・海上施設の新設や改良、建築工事の分野では一般住宅から、ビル・マンション・商業施設などの新築・改修工事を幅広く手がけ、主要取引先も官公庁をはじめ、民間企業様や個人のお客様まで広くお付き合いをさせて頂いています。
もともと愛媛で創業しましたが、現在は東京が事業の主力となっています。
社員についても多色、多彩で、建設関連のいろいろな企業の出身者が集まって切磋琢磨しており、それが当社の特徴であり、強みとなっています。
星:いろいろな企業の出身者が集まることがどうして強みになるのでしょうか。
渡部:建設業と一口に言っても一般住宅のように小規模な物からビル・マンション・商業施設のように大規模な物までさまざまあり、用途も多様で難易度が高い現場も数多くあります。
それらを完成に導くにはその企業にとって得意な技術や現場スタッフの経験の有無などが大きくかかわってきます。
スーパーゼネコン出身の方は大規模な現場を数多く経験しておりますし、中堅ゼネコン出身の方やマンション・商業施設に特化した企業出身の方、そして中小企業出身の方、それぞれの会社での様々な役職経験者がいること。
当社は総合建設業者として幅広く工事を請け負っているため、このような多種多様な人材がいることが強みになるのです。
伊藤直治専務
伊藤:建物が完成する工程は山登りに似ているんです。いろいろな登り方があるけれど、頂上は1つ。
どんな登り方をすれば安全で経済的で合理的な登り方なのかを、いろいろなバックボーンを持った仲間と考え、頂上という完成に向けて登って行く。それぞれの建設業者の特色はその登り方に表れてきます。
金築:ホームページを拝見すると、採用ページに「情熱を持っている方」を募集と書かれています。建設業界における情熱とはどんなものでしょうか。
渡部:仕事に対して妥協しない心だと思っています。まず、プロである責任と誇りを持って全員が一丸となって仕事に取り組むこと、そして一人一人が主役であり一人一人が責任者である自覚を持つこと、それはまあ、最低限当たり前のことですね。
以前、私が担当した現場であるスタッフが「社長、ここは十分に確認いたしました」と報告してきたところ、私は妥協しないでやって欲しいという意味で「十分は二十分の半分に過ぎないから二十分に頼むよ!」と言ったことがあります。
それ以来社内では二十分に仕事をしよう!が当たり前になっています。
伊藤:建設業も製造業も物を作る仕事ですが、一番違う点は何か分かりますか? 製造業で言えば、例えば、車を買おうと思ったら、その車を売り場で見ることができます。
でも、家やビルは一生のうちで一番高い買い物であるにも関わらず、実物を見て買うことができません。何もない状態から図面をお客さんに見せて、仕事の契約が決まる。
高田直紀専務
そのとき、お客さんが何を見ているのかと言うと、この会社がどのくらい情熱を持って自分たちの建物を作ってくれるかということなんです。
建設業は無から有を生み出す仕事であり、信用で動いている業界です。だからこそ、仕事をする上では情熱が必要不可欠なんです。
星:信用によって建設が行われているなんて、今まで考えもしなかったです。
高田:情熱という点でもう1つ付け加えるならば、建物が完成するまでには多くの業者や専門職の方との協力が欠かせないということではないでしょうか。
現場の職人さんたちに希望する物を作っていただくためには、やはり人の心を動かす情熱や信念が必要になります。
コミュニケーション能力は大事なスキル
島村:お話をうかがっていると、コミュニケーション能力も重要なのかなと感じます。
渡部:人との関わり合いがないと始まらない仕事なので、コミュニケーション能力は非常に大切だと思っています。
特にメールといったデジタル的な関わり方ではなく、顔と顔を突き合わせた人間的な関わり方で互いを理解し合い、決して馴れ合いではなく思いやり(情)をもって気持ちよく仕事が出来れば最高ですね。
人間的な関わりがあってこそモチベーションやチームワークが良くなり、安全面やクオリティーの向上にも繋がり、さらにベストを尽くすことでこのうえない達成感を感じることが出来るのだと思います。
私は良い行いには限りなく良いことがついて回り、悪い行いにはまた限りなく悪いことがついて回ると考えています。
やはり手間をかけ時間を惜しまず、コミュニケーションを深め、不安や心配ではなく安心して仕事と向き合うことが新たな活力へと繋がり、成長を促していくのだと思います。
そう考えると、コミュニケーションは活力の源でもあり、成長することへの原動力といってもいいでしょうね。
伊藤:工事の基準書や法律上のマニュアルなど建設業界にもいろいろなマニュアルがありますが、人を動かすことについてはマニュアル通りというわけにはいきません。
業界によっては決まった文言をしゃべらなければいけない仕事もありますが、建設業界においてはそういう世界ではありませんね。
例えば、メールは情報を伝達する非常に便利なツールですが、定型文を駆使していくらメールを上手に打てたからといって、それでコミュニケーションが成立しているとは言えません。
「大丈夫」の一言も実際に会って聞くのとメールの文章ではニュアンスが違うことがあります。
渡部:説得力が違いますよね。この仕事はメールだけですべてが成立することはなく、必ずお客さんと直接会って、お話をして、図面などを見ながら、仕事を進めていきます。
また、社員同士の意思疎通やさまざまな協力業者さんとの連携も不可欠で、コミュニケーション能力は大事なスキルの1つになります。
「建設戦隊アンゼンジャー」がいる現場
金築:御社の建設現場ではヘルメットや立て看板に「建設戦隊アンゼンジャー」というキャラクターが使用されています。このキャラクターを制作した経緯を教えてください。
「アンゼンジャー」の旗で、「アンゼン(安全)」の反対である不安全行動=「危険」に対する注意喚起を促す
渡部:「きつい」「汚い」「危険」という建設業界における3Kのイメージを払拭したくて当社のアドバルーン的な存在として建設戦隊アンゼンジャーを作りました。
特に「危険」という言葉は建設現場では最も嫌われる言葉ですが、常に隣り合わせの言葉でもあります。危険の先には必ず事故がつきまといます。建設現場で起こる事故の大半はうっかりミスや基本動作を怠ったことによる不安全行動なんです。
私はこの不安全行動を無くすために「不安全行動アレルギー宣言」という言葉も作りました。
花粉症などのアレルギーは身体が異物に敏感に反応して起こる作用ですが、それと同じように、事故の原因である不安全行動に対してアレルギーを起こしてしまうくらい敏感になって欲しいという意味を込めています。
その「危険」に相対して、文字通り「アンゼン(安全)」のヒーローとして世間一般の方々に親しみを持ってもらえるようなキャラクターを考えました。
不安全行動アレルギー宣言の徹底にも一役買ってもらっています。特に子供たちには大いに興味を持ってもらいたいですね。
高田:建設業就労者は2013年の時点で29歳以下が約1割しかおらず、高齢化と若手の人材不足が深刻な問題となっています。当社では小学生を現場に招いて見学会を実施したり、地域の清掃活動に参加するなどCSR活動も積極的に行っています。
地域の皆さんに少しでも建設業のいいところを知ってもらって、若い方たちが就職したいと思えるような会社づくりを目指しています。
【新豊洲Brilliaランニングスタジアムの建設現場にいよいよ潜入!】
日本初の大規模なETFE膜構造の施設
ヘルメットをお借りして、いよいよ建設現場に潜入!
さて、場所を変え、いよいよ建設中の「新豊洲ブリリア ランニングスタジアム」へ。
豊洲周辺は2020年の東京オリンピック開催を控え、さまざまな集客施設や関連施設の建設が進むエリアだ。その中でもかまぼこ型をした同施設の外観はひと際目立つ。
全長は109.3m、幅は16.27m、高さは8.5m。ETFEと呼ばれる薄くて軽い透明なフィルム膜とカラマツのフレームでできたトンネル状の屋根が何といっても印象的である。
このETFE膜構造を採用した大規模な建造物は日本では同施設が初めてだという。
「ガラスのように透明な膜なので採光性が高く、とても開放的なスポーツ施設になります」と渡部氏。学生3人にとっても初めて目にする物ばかりで、同行する渡部氏や伊藤氏に数々の質問が飛び交った。
渡部:屋内には60mのトラックと競技用義足の開発・研究を行うラボを併設しています。
完成後は競技用義足の開発や障がい者トップアスリートの強化訓練を行うほか、為末さんによる子ども向けの「かけっこスクール」を開催するなど、障がい者と健常者の垣根を越えた、誰もがスポーツやアートを楽しむことができる施設を目指しています。
星:この施設を造るのにあたって、どんなところに難しさがありますか?
伊藤専務から素材の説明を受け、興味津々な学生さんたち
渡部:建造物は通常、四角い物が一般的ですが、これは不整形構造物といってアール状のフレームが両側で支え合っています。つながるまで不安定な両側のフレームをどうやって一体化させるのかに一番頭を悩ませました。
伊藤:建築主である太陽工業さんや協力業者さんと何度も会議を開き、みんなの意見を集約しながら一番いい方法を考えて実行しています。良いアイディアを持っている人間をどうサポートするかということも大切です。
着工から引き渡しまでの約7カ月間、毎日、毎週、会議を開いて問題を解決しながら完成を目指します。
島村:体育館というと鉄骨の冷たいイメージがありますが、こちらの施設は木材のフレームから日本的なあたたかさを感じます。完成が楽しみですね。
【見学を終えて】
国の根幹を支える意義のある仕事
星:今回、パラリンピックや障がい者のためのスポーツ施設があることを初めて知って、とてもいい勉強になりました。
金築:私は人と人とが関わり合うような職場で働きたいと思っているのですが、フレームを造る過程も一人一人のアイディアが活かされていると聞いて、とても素敵な仕事だなと感じました。
島村:パラリンピックが終わったあとも、いろいろな方が利用し、多くの方から愛される施設になって欲しいなと思いました。
建設業はとても意義のある仕事だと改めて実感しましたが、実際に働かれている方にとってやりがいというのは、どんなところにあるのでしょうか?
渡部:今回はこういう建物を造っていますが、次はまったく違う建物を造ります。我々の仕事は毎回毎回新しいことへのチャレンジで、それを達成し、お客様からお褒めの言葉がいただけたときは何よりの喜びですね。
また、今回のような施設だけでなく、皆さんが毎日利用する駅や学校やショッピングモール、それに住宅だって、すべて我々の業界の人間が手がけたものです。安全で快適な社会基盤を生み出す建設業は国の根幹を支える大変意義のある仕事だと思っています。
伊藤:建設業は機械がやる仕事ではなく、人がやる仕事なんです。さまざまな職種との連携があり、現場によっても毎回違う状況が生まれるため、作業を機械に置き換えることができません。
そして、設計をする人、現場で実際の建物を造る人、工場で資材を造る人、それを運搬する人、多くの人の手によって成り立つ仕事です。
だから、建設業に活気のある国はそれだけ多くの就労者が働いていることを意味し、社会全体にも活気があります。日本の経済活動にとって非常に意味のある産業が建設業だと思っています。
金築:普段、利用したり目にする建物にどれだけ多くの人が関わり、どれだけたくさんの想いが込められているのか、そしてそれがどれだけ社会にとって意義のあることなのか、今回、実際の建設現場を目の当たりにすることで、とても実感することができました。本日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
◎未来ある若者たちへのメッセージとして、渡部社長からひとこと頂きました
これから皆さんもやがて結婚をし、家族が増えたりと大きな節目を迎える日が来ると思います。私がそうであったようにそのような節目節目で人は変わって行きます。
やらなければ始まらない、あきらめたら終わりということがいかに大事であるかがわかってきます。
建設業界の現場では、確かに知識や経験が大切です。しかし、若い方の未来へと向かっていく元気は何よりも我々の希望です。
若い方々に少しでも建設業の楽しさや意義を知ってもらえるよう、これからも建設業の魅力を発信していきたいと思っています。
【取材協力】中央建設株式会社
〈本社〉 〒105-0004 東京都港区新橋4-30-6 京急中はらビル2階
TEL 03-3435-1330
〈本店〉 〒799-2303 愛媛県今治市菊間町浜210-2
TEL 0898-54-5066
◆2016年11-12月合併号の記事より◆
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