PE&HR株式会社 – ベンチャーキャピタル・フランチャイズ事業から世界の無名の若者を支援する
求めるのは気骨ある経営者
ベンチャーキャピタル・フランチャイズ事業から世界の無名の若者を支援する
◆取材:綿祓幹夫
人もモノも金もない、できたばかりのベンチャー企業が成長していくためには、投資家から資金を集めて有望な企業に投資するベンチャーキャピタル(VC)の存在が欠かせない。
そんなVCの1つ「PE&HR株式会社」は、2003年に山本亮二郎代表が創業。
出資には一定の実績を必要とするVCも多い中で、創業時から「スタートアップ時からの成長支援」を掲げ、出資先と同じ「10年で100倍」の成長を自身にも課してトップクラスのファンド運営実績を上げ続ける、独立系のVCだ。
2012年からはフランチャイズ事業を展開し、より幅広い起業者支援にも乗り出している。2つの事業を繋ぐ創業から変わらない志と思いを、山本氏に伺った。
同社のフランチャイズ事業の一例。左から「サラディッシュ」サンシャイン池袋店/「GREEN YELLOW JUICE(グリーンイエロージュース)」京王渋谷店/グリーンイエロージュースのメニュー(一部)
ベンチャーキャピタルとの出合い
山本氏が初めて「ベンチャーキャピタル」の存在を知ったのは、関西で人材サービス会社、株式会社インテリジェンスの営業社員として働いていた1999年のこと。
ITバブルの最中であり、東京では渋谷周辺が多くのITベンチャーが集まる「ビットバレー」として注目されていた頃だ。
「人材会社は基本的にアウトソーシングのビジネスなので、経営側はたくさん派遣社員を必要とする大手企業に営業してほしいわけです。
だけど私はそこには全然興味がなくて、いつもベンチャー企業の社長と1対1。人も金もないけれど、頑張っている所に何とか人を紹介したくて、一生懸命に人材を口説く日々でした。
そんな時に、小さな会社にお金を出す組織があると聞いて、ビックリしたというのが最初ですね。私のクライアントのベンチャーの社長さんたちは、いい事業であってもみんな金がない。
金がないから私がいい人材を紹介したくてもできないのが問題だったわけで、なら、そんな社長さんたちをそういうVCにどんどん紹介して金を入れてもらうか、彼らの投資先に人材を紹介すれば営業成績になるなと考えたんです」
VCと組むというこのアイデアを実現するために、山本氏は早速行動を開始。さまざまなVCを訪ねて提携の話をして回ると共に、ベンチャーキャピタルやVCファンドへの理解を深めていった。
そしてこのことが結果的に、1つの新しい出会いにもつながっていくことになる。
資本と人材のトータル支援を基本に
その出会いのきっかけは2000年。
勤務先が上場を果たしたことを機に、このまま働いても独立まで時間がかかりそうだと判断。「これを機に東京に戻り、もう少し小さな会社で創業の一番初めのところを経験したい」と退職を決めた時だった。
この時、山本氏は31歳。
だが、退職のあいさつに向かった設立2年目のVC「フューチャーベンチャーキャピタル株式会社」の社長から 「だったらうちに来たらどう?」と誘いを受けたのだ。
「金融も投資も難しいことは分からないし、無理だなと思って即答はしなかったんですよ。でも、帰りの電車に揺られながらよくよく考えてみれば、まだ数名の小さな会社で、社長は非常に優秀な方。
将来は上場するともおっしゃっていて、しかもベンチャー創業時のお金のことまでわかるとなれば、まさに自分が今探している独立準備にうってつけの会社。
これはとんでもないオファーをいただいた!と思い、帰宅後すぐに〝先ほど私を採用したいとおっしゃられた件でございますが、ぜひお願いします〟というようなメールを書きました。
よくよく考えれば〝どうしても来てほしい〟と言われたわけでもなくて、かなりずうずうしい話ですけどね」と山本氏は笑うが、同社への就職は、もちろんそれまでの人材会社での経験があってのものだろう。
その後3年間で「人・モノ・金・情報」の経営資源のうち、「人」に代わって「金」の面からベンチャー企業を支援するという立場で十数件の投資を手がける一方、前職で考えていたように、投資先に人材を獲得するべく古巣の人材会社も積極的に訪問。
しかし、「できたばかりの会社に人材を紹介しても大丈夫か?」となかなか紹介が得られないということも経験したことから、「資本と人材を融合させたスタートアップからの成長支援」という会社の方向性も決まり、2003年5月に独立を達成する。
翌年5月には2つの銀行からの出資を受けて、1号ファンドを設立。3年後には1号ファンドの約6倍の規模で2号ファンドも動き始め、現在は合計5つのファンドで数十件のベンチャー企業に1000万円~8000万円の単位で投資を行っている。
各ファンドの運用成績は、対出資額倍率で2倍を下回ったことは一度もなく、さまざまなVCファンドの中でもトップクラスの成績を出し続けている。
投資先の経営者と同じ高みを目指して
通常、投資の判断には実績を見るが、スタートアップ時から投資するファンドでは、審査段階ではまだ製品がなかったり、事務所や名刺さえないところも少なくない。
そんな中、出資判断の決め手となるのは経営者の「商人としての力」だ。
製品を作る力、気迫、執念、思いやり等々さまざまな要素を合わせた全人格的な要素で「商売ができるか、できないか」を見て、「10年で100倍に成長できること」が一つの出資の基準になるという。
だが、本当に大事なのは実はそこではないとも山本氏は語る。
「もっと大事なのは、ファンドの仕事が終わる10年の後、次の10年でもう100倍にする可能性があるかどうかです。
GoogleやFacebookをはじめとする、アメリカの本当にすごい会社たちは、最初の10年で100倍×100倍×100倍というものすごいスケールでやっています。
一気にそれを実現するのは無理でも、20代、30代で起業して、10年ごとに100倍を3回やれば売り上げは10兆円。世界企業の仲間入りを果たせるレベルになります。そこまでの気概がある人と仕事をしたいと思うんです」
そんな人材に出会うための唯一の方法は、自身も同じ高みを目指して努力を続けることだとも山本氏は言う。
「よくいう話ですが、どんな人に会えるかは自分の映し鏡でしかありません。投資先だけに高い基準を求めるのは無理な話で、私自身が同じ高みを本気で目指しているか。その覚悟は常に問われていると感じています。
10年で私たち自身の会社も売り上げが100倍になりました。次の10年で1000億、その次の10年で10兆にするつもりです。
達成できるかはわかりませんが、重要なのは世界企業になろうという気構え、世界中の方々のお役に立ちたいという気持ちを本心から持っているということ。
それだけがそんな気概を持っている人と出会える、唯一の道だと思っています」
夢はすべての起業家に支援を届けること
メニューだけでなく、店舗の内装や外装にもこだわりをもった「ベリーベリースープ」
PE&HR株式会社は、2012年9月に長野県内に数店舗を構える飲食チェーン「ベリーベリースープ」を子会社にし、フランチャイズ(FC)事業にも乗り出した。
年内には50店舗を超える見通しで、このほかにも東京メトロの駅構内等に11店舗を展開するジューススタンド「ジュースの森」など、2016年8月現在で約60店舗のFC本部として機能している。
なぜ、一見VCとは何の関係もなさそうに思えるFC事業なのだろうか。
東京メトロの駅構内等に展開するジューススタンド「ジュースの森」
「ファンドビジネスは皆様から大切なお金をお預かりしている身としてなんとしても成功しようと思いますし、もっともっと大きくしようと思っています。
けれども、このビジネスで関われるのは、上場していくような本当に一握りの人たちだけ。FCビジネスを始めたのは、住んでいる地域・地方で自分の店を持って独立したい人に関わっていけるものだからです。
多くの人は、独立したいけれど店のコンセプトや業態を作ることまでは得意ではなかったりします。そこにブランドや屋号を提供することによって、個人で店を持ちたい人も応援できるようになる。
より広い範囲で起業家を支援することができるのです」
日本初のラップ&ボウルサラダ専門ファーストフードレストラン「サラディッシュ」
日本の年間開業者数は約18万人(中小企業白書2016より)。世界まで含めれば、その数は何百万人に膨れ上がる。
最終的には、「それらすべての独立開業主に何か支援を提供していくのが夢」だと山本氏は語る。
「理由はシンプルで、その人たちが好きだから。〝次の10年で1000億、2000億のビジネスをする〟というと荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、この夢を数字化すると自然に出てくる数であるはずです」
今日本は「世界的ベンチャー企業が育たない」国だと言われている。10年後、20年後、その評価はきっと覆っているはず。
そんな期待の明かりが灯った。
●プロフィール
山本亮二郎(やまもと・りょうじろう)氏
神奈川県出身。早稲田大学第二文学部卒。大学卒業後、株式会社インテリジェンス等に入社。フューチャーベンチャーキャピタル株式会社での勤務を経て、2003年5月に34歳でPE&HR株式会社を設立・代表取締役に就任し、現在に至る。同時に、投資先数社の社外取締役も務める。
PE&HR株式会社
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-12-12-4F
TEL 03-3265-7661
◆2016年9月号の記事より◆
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