有限会社誠伸電機・川田享社長が語る、ネジ通販サイト「ネジクル」の新活用法
【一歩先の活用法】
「経費削減」ツールから「新規事業開拓」ツールへ。有限会社誠伸電機・川田享社長が語る、
ネジ通販サイト「ネジクル」の新活用法
◆取材:加藤俊/文:菰田将司
有限会社誠伸電機の川田享さん(右)と、株式会社ツルガの敦賀社長
以前、取材させていただいたネジ専門通販サイト「ネジクル」を運営する株式会社ツルガ社長・敦賀伸吾氏から、再び興味深い話を伺った。「ネジクル」を利用して新しいビジネスを切り拓いている人物がいるというのだ。
(株式会社ツルガ/過去記事はコチラ▶https://www.biglife21.com/society/5121/)
一人でできることには限界がある、しかし……
まずは詳細に入る前におさらいから。
24時間いつでもネジを購入できるサイト「ネジクル」。部品調達を自分でしなければならない職人や事業者を中心に人気を博しているサイトだ。
そもそも、自営業者で仕事を請負っている人にとって、部品の購入のために多くの時間を割くのは死活問題。かといって手元に大量に在庫を抱えておくこともできない。
こうした要望にぴったり応えるのがネジクルだ。24時間、必要な個数だけ少量から購入することができる。また、今日注文すれば明日には受け取ることができるし、直接作業現場に届けてもらうことも可能だ。
購入履歴が残るので、そこから検索して同じものを即座にチェックすることもでき、もしその商品が品切れでも、代替品を検索することもできる。
こういった点で、利用者から好評を得ているのだが、サイトを運営する敦賀社長は「ネジクルを単なる経費と時間の削減だけのツールと考えず、新しい使い方をしてほしい」と語る。
「設計から施工までを一手に引き受けている事業者の方には、ネジクルを使って仕事の効率化をしてもらいたいのですが、そこから更に一歩進んで『時間を削減することによって何ができるようになるのか』を考え始めて、事実事業が発展したというお客さまの事例が増えてきたのです」
いったいどんな事例なのか。
有限会社誠伸電機の事例
東大阪市で発電機のメンテナンス用電源の設計・取り付けなどの仕事をしている有限会社誠伸電機の川田享さんは、以前からネジクルの愛用者だったという。
「10年ほど前に起業したときには、自分でホームセンターなどにネジを買いに行っていました。土地柄、周りに買えるところは沢山あったので。
しかし、欲しい部品の在庫がなかったりすると、入荷するまでの2、3日をムダに過ごすことになってしまう。
しかも、一度に購入する量もそうたいしたものにはならない。トータルで月3万円くらい。遠隔地で使うときなんかは、送料のほうが高くなってしまうくらいです。
だから、何か改善できる方法はないかと探していたら、同じ東大阪にネジのネット通販をしてくれるところがあった。
それで利用し始めたのですが、助かるのは、やはり自分が買ったことのある部品が履歴からすぐに調べることができることと、同時に在庫の確認もできるので、カタログ通販のようにイチイチ在庫があるかどうかを確認しなくていいところですね。
他にも、自分のように機械の設計から全てやっていると、最初からココにはこのネジ、と頭に浮かぶのですが、同じようにココはあのネジだと干渉してしまうから、近いけど少し違うカタチのものが欲しいな、ということも多いんです。
そういう時にも検索がスピーディにできるのでいいですね」
川田さんはこうして、劇的に段取り時間を削減することに成功し、業務の効率化ができた。そして、敦賀社長が言うように、削減した時間でより新しい展開を考えた。
「今までは、一つの仕事に入ると、その現場に入り浸りでした。そうすると、そこが終わるまでは次の仕事に取り掛かることができない。
しかし、ネジクルを利用し始めたことで、グループ展開をして、同時に複数の現場の仕事を扱えるのでは、と考えるようになりました。
自分が元請けになって施工管理をするけれど、実務は人に任せることができる。自分が出張して行って仕事をしなくても、仕事を増やすことができる。それで実際に試してみると、本当にまわるようになりました。
現在は、九州を中心に10社ほどが集まるグループを作り、おそらくこの先も順調に成長していることと思います」
「一人でできることは限られている。しかしネジクルを使うことでそれを広げることができたんです」。そう語る川田さんのネジクル利用法は、敦賀社長が思い描いていたものだった。
「ソリューションを広げていける」
『集客と販売』という点から考えたときに、こういった個人事業主・自営業者の方にとっては日々の仕事が『販売』にあたる。だから、どんなに一生懸命やっても自ずと仕事量には限界がある。
一方で『集客』を拡大しなければならないけれど、そういった営業努力に時間を割くことも厳しい。
しかし、ネジクルを活用したことで、全てを自分でやらなくても集客を拡大、仕事の間口を広げられるようになったということなのだ。
こうした活用の展開が増えてきていると喜ぶ敦賀社長だが、「それは日本国内だけに留まりません」とのこと。
「ベトナムにある日本企業の話なのですが、そこの従業員は2週間に一度、日本に戻って、カバンにネジをいっぱい詰めてベトナムに帰る。
ネジという部品は実にローテクな一方で精度の高いものでないと困る類のモノ。だからわざわざ日本で買って行くのですが、これではコストや時間が非常にムダ。
そこで、ネジクルを使えば現地のホテル留にでもして、直接受け取ることができる。請求も、会社請求で売掛にすれば、現地での支払いの心配は不要です。海外での事業拡大に一役買うことにもなる」
国内製造業者が海外へ進出していく時のネックの一つである部品の調達問題の一助にもなり、また全国に40万人以上いるとも言われる自営業者の仕事の効率化にも貢献できる。
「自営業でやっている人は、タテかヨコか、どうやってお客を展開させていくかを明確には考えられていないと思います。闇雲に拡大すると自分の手に余ってしまうし、まずは目の前の仕事を、と考えていることがほとんどでしょう。
しかし、ネジクルを使えば今以上にオーバーワークをすることなく、もっと深く難しい仕事に掘り進めていくことができる。
もともと、この業界の人々は手広くやる、というより、タテの人脈で深く仕事を進めていきたいという人が多い。製造業というのは小さなセグメントに分かれているものですしね。
ネジクルはそんな自分の手の届かない仕事をする手助けができるのです」
安く部品を買える、だけでなく、新しいビジネスモデルへのチェンジをお手伝いできる。
「従業員を増やさずに事業を拡大できる。ネジクルによってビジネスの形そのものを変えることができるのです。
最初は、困ったときのネジクル、みたいに使ってもらえればと思っていました。しかし単なる部品通販から、そこから空いた時間で新しいソリューションを組んでいこうと考えたお客さんがいる。
こういう事例を広く知ってもらうことで、更に次のイノベーションが生まれてくるかもしれない。昔、自分が思い描いていた風景に、今近づいていると思います。
ネットでネジを買う人は、多分全体の一割くらい。他は今も自分で買いに行っている。そもそもそれが普通なのに、しかし、わざわざネットで買うことを考えてくれる人がいる。
そういうところから意識が違ってきているのかもしれません。そういう人たちの背中を、ネジクルなら押すことができるんです」
敦賀代表が、業界に投じた一石が、今、大きな波紋を生み出そうとしている。
【取材協力】株式会社ツルガ
〒577-0045 大阪府東大阪市西堤本通東1丁目1番1号
TEL 06-6785-5551
◆2016年10月号の記事より◆
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