株式会社インタートレード – 金融系システム開発を手掛ける上場企業がキノコの販売に乗り出す!?
金融系システム開発を手掛ける上場企業がキノコの販売に乗り出す!?
◆取材:加藤俊
産総研も期待する希少なキノコ『ハナビラタケ』が秘める可能性に迫る!
株式会社インタートレードは、東証二部に上場している金融系システム開発会社。業界では証券会社向けのディーリングやトレーディング業務用システムの開発・販売で有名な企業だ。しかし、この会社にはもう一つの面白い顔がある。
オフィスのなかに ビニールハウス!?
インタートレード本社は、茅場町駅から歩いて数分の距離にある。そこは証券会社の密集地として名高い兜町と隣接している一帯で、この会社もまた「シマ」の住人であることを示している。
ところが、この会社のオフィスの一角には、金融系システム開発企業と考えるとおよそ訳のわからない光景が広がっているのだ。
驚くなかれ。オフィスのなかにビニールハウスである。更に中を覗けば、大量のキノコが鎮座しているではないか(※現在、オフィス内のビニールハウスは、研究拠点を生産工場に移すに伴い、撤去されている)。
実はこの会社、金融業界のイメージからは全く想像できないキノコの生産・販売が、一つの事業(ヘルスケア事業)となっている会社なのだ。
もちろんこのキノコ、只のキノコではない。国内最大の研究機関・産総研も期待を寄せる希少なキノコなのである。その名も「ハナビラタケ」。いったいどんなキノコなのか。
効験あらたかな妙薬茸 「ハナビラタケ」
近年、生活習慣病対策市場は右肩上がりで成長を続けている。背景には、高齢化問題とライフスタイルの変化に伴う生活習慣病予防意識の高まりが挙げられる。
実際の市場規模は1978億円(2011年時点・富士総研調べ)。そのなかでキノコ由来の成分から作られる健康食品市場の規模は126億円ほどといわれている。
なぜキノコがこれほど注目されるのか。広く知られる話としては、キノコに含まれるβグルカンに抗ガン作用がある、というものだ。実際この効能を謳ったヒット商品は数多く、「アガリクス」や「霊芝」など名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。
そして、ハナビラタケもβグルカンが豊富なことから注目されるキノコだ。その値も他のキノコではあまり類を見ない多さを誇る。ただ、インタートレードとこのキノコの出会いは全くの偶然だったという。
「ハナビラタケは1000m級の針葉樹林でのみ育つという、生育環境が特殊なキノコです。そんなところから『幻のキノコ』とも呼ばれているのですが、当社の西本(副社長)の知人がこのキノコを育てていまして、その繋がりが始まりだったのです」(尾﨑孝博社長、以下同)
事業を始めるまでの経緯を〝偶然〟と語る尾﨑社長だが変遷は面白い。起業当時の話から遡って見てみよう。
未知の分野に挑戦する「好奇心」と「勇気」
インタートレードの 企業物語
「現在、東京証券取引所の総合取引業者の4割は、当社のシステムを使って頂いています。中長期で見たら健康食品事業は伸びていくでしょうが、今後もシステムの開発力は強化していきたい」
インタートレードの設立は、ミレニアムを迎える直前、99年の1月のことだった。
「あの頃は、正に金融ビッグバンの時期で、またインターネットの普及時でもあったので、『これからはネットで株取引が行われるようになるんじゃないか』と考えて、ネット売買のシステム開発に参入しました。だから社名が『インタートレード』なんです」
そう語る尾﨑社長は、「世の中は規制緩和で大きく流れが変わるポイントがある」と言う。
ネットの普及や、アメリカ市場の動向を受けて、日本もネットによる株取引の規制緩和が行われた。98年12月の証券会社の許可制から登録制への変更、そして99年10月の株式売買手数料の自由化がそれだ。これによりオンラインでの株取引が一気に加速していった。
読みが当たり、順調に金融業界での地位を築いていったインタートレードだったが、一つ、気になることがあった。
「日本は世界に先駆けて超高齢化社会に突入しています。生産人口が減るのですから、必然的に日本経済はシュリンクしていくと言われています。こうした状況を鑑みたときに、従来の当社の事業では景気に左右される要素が大きかったのです。
未来を考えると、なにか新しい事業に挑戦する必要がありました。それも金融業界とは関係のない、全く新しいジャンルであることが望ましかった。そこで、目をつけたのが農業でした。
食・健康に関わる分野は、景気の影響を受けにくいし、それに高齢化社会では健康長寿を意識する層は多いですから」
実際に政府も規制緩和に動いた。2014年の11月に薬事法が改正されたことも重なり、その段階でインタートレードは農業、特に健康食品の分野に目星をつけた。
やがて、尾﨑社長は同社の西本副社長の知人がハナビラタケを栽培していることを知る。
軽い気持ちで始めた キノコ栽培だが……
「事業をスタートしたときは軽い気持ちでした。金融システムは一旦販売するとそれがヒットしようとしまいと、例え一社でもそれを使用している会社があれば、メンテナンスのために人を割かなければならない。けれども、キノコならダメだと思ったらすぐ撤退できる、そう思ったんです。
しかも最初、ハナビラタケはカラマツに寄生しているといわれたので、松茸風味だったら売れるかな、なんて考えていました。しかし、実際に試食してみると松茸の薫りは全くしなかった(笑い)」
どうやって食べようか、というレシピ作りから事業化への道は始まった。特に西本副社長は数カ月間、ハナビラタケを食べ続けることになった。すると、意外な結果が現れてきた。
「彼の持病である糖尿病の症状が軽くなったのです。医者が首を傾げるほどでした。元々ガンに対する効果はあるといわれていたのですが、糖尿に効くとは意外でした。そこで『これは本物かな』と考え、本格的な事業化に乗り出したんです。
現在、国内に720万人も予備軍がいると言われる糖尿病は、外科手術で治せる類いの病気ではないし、しかも気づいた時にはかなり進行していることが多い。だから、需要はある、と。
最初は社内にビニールハウスを作るところから始めました。栽培が難しいと言われているので、まずちゃんと生育できるようにしようと考えたんです。
しかし、当社はシステム開発がメインの会社。その敷地内にビニールハウスを建てるのですから、社員はじめ皆が驚いた。私は元々証券マンなので金融業界に知り合いが多いのですが、まず他社の友人たちから変な目で見られました。気が狂ったとまで思われていたんじゃないかな(笑い)。
それだけじゃない。社員だってなかなか理解してくれませんでした。視線でわかるんです。『何をやっているんだ、ウチの社長は』という声が今にも聞こえてきそうなところがありました」
しかし、数多くの苦労は最終的に報われ、栽培に成功する。その上で、効果を確認するため社員達から有志を募ったところ、多くの参加者が集まったという。
「私自身も服用して様々な効果を体感しました。肝機能の回復、低かった体温の上昇、美肌効果も感じることができました 。特に体温が上がったのは驚きました。
私はガン家系で、両親もガンでした。以前、体温が低い人はガンになりやすい、と読んだ本に書いてあったので、この効果は嬉しかったですね。
それから服用してくれた社員からも体調が良くなったという声が数多く聞こえるようになりました。中には実年齢52歳男性社員の肌年齢が、『38歳』と判定されたという驚くような体験談もありました。大きな可能性をもったものだということは間違いありませんでした。
だからこそ、早くこれを皆さんに提供したい。そのためには、きちんとしたデータで効能を明らかにしていく必要がありました」
産学官の 国家プロジェクトに!
そこでインタートレードは、第三者機関に依頼して臨床データを収集することにした。これが結果的に、産総研も参画する産学官が手を取り合う国家プロジェクトになるきっかけとなった。
まず東京女子医大に持ち込んだそうだ。実は以前、一度門前払いされたそうだが、改めて臨床データと仮説をもって再挑戦したらしい。数カ月後呼び出しを受けた尾﨑社長は驚いたという。
「伺うと大学の先生方の他に役人の方も同席していました。国としても、ハナビラタケの何の成分が肝機能や糖尿への効果があるのか、美肌効果で高い影響を発揮しているのか等、調べる価値はあるなと感じて頂けたのだと思います。例えば、βグルカンが作用しているのであれば、他のキノコでも同じ効果が見られるはずです。でも実際にはそうではない。この点に対する疑問を解くために、産業技術総合研究所を交えた産・学・官での研究が始まりました」
安全・確実・効果のある ものを、早くに
高品質な国産ハナビラタケを原料とした同社商品の一部 ▶健康いいもの Online
そこから月日は経った。ハナビラタケの販売は行いながらも、一方で「きっちりデータをとってやっていく。その姿勢は変わりません」と語る尾﨑社長だが、だからこその苦労もあるはずだ。
産学官の連合体で発足してから今年の9月で丸2年になるが、まだその効果の原因成分の特定にはいたっていないようだ。
つまり事業としてみると、販売を開始こそしているがまだまだR&D投資の時期を脱却できていない。決算書を見ても3期連続の赤字となっており、インタートレードとしては一日千秋の思いで、産総研からの期待する結果が欲しいといったところだろう。
原因成分の特定を迅速に行わなければならない理由は他にもある。
ハナビラタケは、海外でも自生しているキノコだ。下手をすると海外メーカーに先を越されるかもしれないのだ。というのもアガリクス茸の事例が思い起こされる。爆発的にヒットした後、『発ガン性がある』という噂が立って多くの日本メーカーが手を引いていった。
ところが、発がん性云々の話は、生産地の中国の土壌が悪かったという話で、その原因が分かったときには、もうアメリカの会社に特許を取られてしまっていた。
「今度はそうならないようにしたい」尾﨑社長は力強くそう語った。
サプリメントだけでなく、化粧品やキャンディー、お粥といったさまざまなハナビラタケの商品を展開している
「是非日本発として提供したいのです。きちんと成分の特定ができれば、多くの消費者の方に信頼頂けるものになります」
日本の薬事法では、どうしても成分を特定・抽出してからの商品化が求められる。しかし海外には、そんなことお構いなしに、効果があるなら早く欲しい、と手を挙げるメーカーがあるそうだ。
「アメリカでは錠剤の形で送ってくれればコッチでパッケージするから、と言われていますし、他にもロシアやサウジアラビア、バングラデシュなどからもお話があります。
サウジやバングラデシュなどイスラム圏では、飲酒ができない代わりにお菓子を食べる人が多い傾向がありますから、糖尿病が国民病とまで言われています。サウジなどは国民の四人に一人は糖尿病、というデータもある。そういった国からハナビラタケに寄せられる期待は大きいのです。
同様の効果を謳った商品にプラセンタがありますが、現在市販のプラセンタはブタの胎盤から生成しているもので、イスラム圏では販売・使用することができませんから」
壁を飛び越える 「好奇心と勇気」
金融業界というお固い世界で、未知なる領域に挑戦していく、という気概を見せる企業は殊更珍しい。この挑戦を蛮勇と笑う人はいるかもしれない。
でも、手の平を返すタイミングは近づいている。産総研が研究に乗り出すということは、国としても事業化の可能性を大いに感じていることに他ならない。ヘルスケア事業が主軸となる企業に化ける日もそう遠くはないかもしれない。
「経営者にとって日々の仕事をキッチリこなしていくことは重要です。でもそれでは進化はない。新しい領域に踏み込んでいく勇気も時と場合によっては必要になる」
尾﨑社長のこの言葉の裏には、なんとしても成功させたいという思いが覗けた。
「ハナビラタケがこちらの期待通り上手くいくかは、最後のところは運否天賦、私にはわかりません。でも何が何でも成功させたい。社員たちにも面目が立ちますし、まだやってんの?と言った証券会社の社長にも胸を張れる(笑い)。
ただね、何より今の日本にはワタシらみたいな挑戦があってもいいと思いますし、必要だとも本気で思っているんですよ」
「マネするよりマネされたい」と語る尾﨑社長。同社経営理念には「好奇心と勇気」という言葉が掲げられているが、それを体現しているようだった。
●プロフィール/尾﨑孝博(おざき・たかひろ)氏
1965年大阪府生まれ。1989年に日本勧業角丸証券㈱(現みずほ証券㈱)に就職。多額の資金をトレードするトレーディング業務を中心に証券会社にて10年間勤務。1999年に現副社長の西本と共に㈱インタートレードを起業。主に事業本部長として現場の最前線でシステムの開発や販売に携わり、2009年に代表取締役社長に就任し、現在にいたる。
●株式会社インタートレード
〒104-0033 東京都中央区新川1-17-21
茅場町ファーストビル3F
TEL 03-3537-7450
同社運営サイト
ビューティーグルカン (大人のきれいに、免活美力)
http://beautyglucan.com/
健康いいもの Online
http://kenko-iimono.com/
◆2016年9月号の記事より◆
WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!
▸雑誌版の購入はこちらから