円満な繋がる「結婚」 株式会社FAMILY清水翔代表の考える本当に幸福な結婚式
円満な繋がる「結婚」
株式会社FAMILY清水翔代表の考える本当に幸福な結婚式
◆取材:加藤俊 /文:菰田将司
結婚式を挙げない夫婦は今や珍しいものではない。 経済的理由で、というのがほとんどだが、そもそも式を挙げることに疑問を持つ人が増えているのも大きな要因だ。 株式会社FAMILY代表清水翔さんは「結婚=ゴールではなく、結婚はスタート。
それが永く続く家庭になるかが一番大切。生き方働き方も多様化する中で、結婚のあり方も多様化されて当然。夫婦によって見出す意味は異なり、それをくみ取ることが大切」と語る。 清水さんの考えている結婚式は従来のような「形式」に捕らわれないものだ。
新郎も新婦も、招待客も不満がある「結婚式」
「結婚式をあげたことがある方なら、見積りの三百万円がいつの間にか五百万円になってしまう、なんて経験をしていると思います。お二人にとってみれば一回限りのイベントということで妥協はしたくない。
多少の値上がりもしょうがないと思われる方が多い。そこにウェディング業界とてビジネスですから、上手くつけこんでどれだけオプションをつけられるか値段を上げられるかが、大きな商流になっています。でも、これは新婚夫婦にとって本当に嬉しいものなんでしょうか」
現在、日本では年間約65万組が結婚しているが、その内30万組ほどが結婚式を挙げない「ナシ婚」だ。地味婚の風潮とはいえ、やはり結婚式には費用がかかる。平均400万円(『ゼクシィ』調べ)という高額を出すことに、結婚を考える若い世代が二の足を踏むのは致し方ないだろう。
「しかも、式の形式もほとんど決まっています。料理・入場・衣装替え・キャンドルサービス・ビデオ上映に両親へのお手紙。その一つ一つにウェディングプランナーが値段をつけて、足したり引いたりして値段を決めていく。けど『一生のコトだし、我慢したくないし』と考える新郎・新婦の思いによって、値段は吊り上がっていく。二人の大事な貯金がそうやって失われていく」
そう語る清水さんは同時に、招待客が表に出せない心の声にも注目している。
「ご祝儀に三万円包むとして、結婚式での料理や引き出物に満足していますか?もちろん、お祝い事だから損得じゃない、という気持ちもわかります。ですが、不満を抱えて帰って行ったら、招いた新郎・新婦も本意じゃないでしょう。
約二時間拘束させられ、お金も払わされて。現状では、招いた方も招かれた方も不満を持っている。これでは結婚式を挙げたくなくなる気持ちも分かります」
しかし、結婚式を挙げない夫婦は、挙げた夫婦より離婚率が高いという数字がある。また、費用の高すぎる結婚式を挙げた夫婦は、低額で抑えた夫婦より3.5倍も離婚率が高い、というデータも。結婚式を、無理ない金額で挙げることは、その後の夫婦円満に大事な要素なのだ。
「ナシ婚層」を動かす
「ですから、結婚はスタートとは思っていません。むしろ良い家庭を作るための過程の一つだと考えています。よく言われるように花嫁の為・女性の為とか、ましてや親族の為に結婚式を上げるのではありません」
参加した誰もが満足し、記憶に残る結婚式にしたい。そのために清水さんが考えたのが、旅行のプランと結婚式のコラボレーション。
「招待客は東京駅などの集合場所から、バスで移動します。着いた先で温泉があるならそこでひと汗流してもらって、それからゆっくり結婚式に参加してもらう。実は参加される方の大きな不満の一つに、他の参加者と会話できる時間が少ない、というものがありまして。
二次会に参加しなければ、話をする時間なんて、式が始まる前だけじゃないですか。そんなソワソワした時間ではあまり話も弾みませんし。せっかく、新郎の友達と新婦の友達の出逢いのチャンスなのに、今まではその時間があまりに短かったんですね。ですが旅行に結婚式を組み込んだこのプランなら、二次会やキャンプファイアーなど、ゆっくり時間を作ることができます。結婚式以外で集まる機会もあまりない、両親族の交流の時間にもなると思います」
もちろん、宿泊となると尻込みしてしまう参加者もいるだろう。そこは参加者の層によってプランを選択することができるようにし、日帰りの場合にはキャンプ場や、ゴルフ場の中のレストランなどの会場を用意する。
「結婚式場のパンフレットは、東京や横浜のベイエリアが表紙になっていることが多いのですが、東京近郊に風景のいい会場は他にもあります。また人気の式場は日に複数の組が挙式することも多く、使える時間が厳しく制限されている。式の後、すぐに退出しなければならないことも珍しくないのですが、このプランならそういう我慢をしなくていい。終わってからダラダラおしゃべりする時間って結構大事なんです」
更に、施設を借りて挙式することで、もう一つ大きなメリットが生まれる。
「結婚式の費用は多くの場合、新婚夫婦が先に支払って、後でご祝儀で取り戻す、という形なのですが、仮に一人平均三万円、招待客百人としても、ピッタリ三百万円の予算にはしません。それだと、思ったよりご祝儀が少なかった場合、まあほとんどそうなのですが、新婚夫婦が自腹を切る金額が増えてしまうからです。
このプランでは、移動・料理・宿泊費とご祝儀代をひとまとめにして先に参加者に支払ってもらいます。そうすることで、新婚夫婦の支払いもなくなりますし、予算を超過することもなくなります。招待客も、全てコミコミですので気が楽ですし、何より満足の度合いが高まるのではないでしょうか。引き出物も地元の名産品なんかにしたり。リンゴ農園と提携して、リンゴの木の一口オーナーになったりしたら、毎年リンゴの収穫でその地を訪れることになるでしょう。
そうすれば地域との繋がりも生まれますし、訪れるたび、結婚式に思いを馳せることにもなる」
金額面と時間的な制限を取り除くこのプランを、清水さんはstay+wedding(ステイプラスウェディング)と名付けている。
「『ナシ婚層』を動かすためには『ナントカ婚』とか名付けるだけではダメです。 ウェディング業界としてはその方が打ち出しやすいというのもあるし、お客さんもその方がイメージし易いのかもしれませんが、 お客さんだって具体的なイメージを持っているわけじゃない。
だから『ナントカ婚』と名付けることで私たちの話じゃない、と思われてしまう。 30万組の『ナシ婚層』に目を向けてもらって、幸せな家庭に向けて満足のいく結婚というスタートを切ってもらいたい」
作るのは「結婚式」ではなく「家庭」
「私は、元々家族といるのが好きな子供でした。友達と遊ばずに親と遊んだりしていたくらいです。将来の夢はお父さんみたいになりたい、と言っていました(笑い)。また、以前ソニー生命でライフプランナーをしていたことがあるのですが、人生の中でいつ、どんなお金を使うのかということを考えているうち、やはり家族の姿を基本に考えて計画しないといけないと気付かされました。
もし、望み通りの結婚式ができなくて家族が上手くいっていないのなら、それは変えていかないといけない。私はそう考えています」
『ナシ婚』30万組のうち、8割にあたる24万組は実際に資金があれば式を挙げたかったと言っている。これらに対して間口を広くすること、それが使命だと清水さんは語る。
今後の課題は?と尋ねると、 「これでもまだ、やりたいサービスの半分でしかないんです。これからは、結婚後の家庭についてのサービスを提供していきたい。例えば夫婦単位で発信していくSNS。様々な職業・立場の先輩夫婦をロールモデルとして、事例を知ることができるようになれば、結婚生活の失敗を減らせると思います。
仕事が忙しく家庭にいなくても、どういうところでコミュニケーションをとれば夫婦が円満になるのか、とか、お父さんが将来娘に嫌われないようにする方法とか、知りたいのではないでしょうか(笑い)。
また現在、年間25万組が離婚し、平均200万円の慰謝料が支払われているという現実もあります。人生全般を考えるのであれば、こういったところもカバーしていく必要もある、と考えています」
今、ウェディング業界では新規参入が相次いでいる。その中には、注目を集める企画を持っているところも少なくない。
「面白いところがドンドン参入しているので、早いもの勝ちの状態です」と清水さんは語る。
「しかし、私は結婚を作るより家庭をつくることが念頭にあります。家庭は家+庭。庭ってなんだろう?と考えたとき、それはコミュニケーションの場だ、と考えました。だから、家族を結びつける『家庭』を守るためのサポートを今後も続けていきたいと考えています」
いずれは福利厚生のサービスまでも届けていきたい。そして家族の衣食住についても安心できるものを提供していけるようにしたい。清水さんの家庭を思う気持ちは広がっていく。
事務所で飼っている猫ちゃん
【プロフィール】
清水翔(しみず・しょう)…1986年5月22日生 慶應義塾大学で家族社会学を学び、ベストブライダル社勤務 自社演出部門の立上げ、提携ホテルコンサルティングに関わる中で年間1000件を 超えるブライダルに触れる中でノウハウを蓄積。 しかし結婚式のみではその後の家庭の幸せにアプローチできないと思い、また結婚業界の 働き方に疑問を覚え、退社し株式会社FAMILY設立 結婚をゴールでなくスタートととらえ、その後の結婚生活=家庭を支えるサービスを提供したいと事業拡大中。
【会社情報】
企業名 株式会社FAMILY
所在地 東京都港区南青山5-12-5第一和田ビル8階
事業概要 マリッジデザイナー事業:出張型ウェディングコンシェルジュサービス 結婚式を行わない方も対象。 Stay+事業:滞在型ツアー式ウェディングパーティの企画運営。 ゲスト満足度特化型の結婚パーティを提案