FCEトレーニング・カンパニー代表安河内亮が注目企業に切り込む! 伸びる会社の人材育成術 第2回:株式会社アクセサリーマルタカ
FCEトレーニング・カンパニー代表安河内亮が注目企業に切り込む!
伸びる会社の人材育成術
第2回:株式会社アクセサリーマルタカ
株式会社アクセサリーマルタカ 直井一高氏
〈DATA〉
株式会社アクセサリーマルタカ(社員数52名)
本部:東京都墨田区本所1-8-10
TEL:03-3625-1587 FAX:03-3623-7876
http://www.ac-marutaka.co.jp/index.html
「伸びている企業の秘密は人材育成にあった!」
成長を遂げている企業の経営陣は、どのようにして人材育成を行っているのだろうか。これまでに4,500社を超える企業の研修・教育を行ってきたFCEトレーニング・カンパニー代表、安河内亮が伸びている成長企業を取材し、人材育成のポイントを探る。
ファッションアクセサリーの総合メーカー「株式会社アクセサリーマルタカ」。現社長の祖父にあたる直井高安氏が1925年にかんざしや飾り櫛、帯留め等の製造を開始し、今年で創業90年になる老舗企業です。時代の流れとともに携帯電話周辺グッズに参入するなど、新たな商品を生み出し続けてきました。
初代から続く経営理念を中心に据えながらも時代環境に適応し、発展し続ける企業には、どんな「人材育成」のポイントがあるのか? また、中小企業の課題でもある離職率が低く、社員が定着し、成長する仕組みは何か?
三代目社長となる直井一高氏に、その秘訣を伺いました。
─現在どのような目標に向かって経営をされていますか?
弊社では、2018年に15億円という売上目標を立てています。去年、今年と順調に売上が推移しており、この目標達成に向けて、社員数を過去2、3年で一気に13人ほど増やしました。新入社員が一人前になるまでには2~3年くらいかかるので、それを見越して積極的に採用を進めてきました。2018年までの目標にしていた社員数にはすでに達したので、ここからは売上目標の達成に向けて、社員一人ひとりのレベルや人間性を高めていかなければなりません。そして、仕事をするからには、社員が楽しく、本当にワクワク、ドキドキしながら働けるような環境をつくっていきたいと思っています。
─御社は離職率が低いと聞いています。
離職率の低さは、いい面も悪い面もあるんですが……。社内に感謝し合う土壌がある部分はいいところですが、一方で少し生ぬるいというか、単に居心地がいいという面もあると思っています。もっと仕事に厳しさやメリハリをつけないといけない部分もあるかなと。リーダーが時にはきちっと厳しく叱る、指導するというところはまだまだ不足していると感じているんです。そういった不足部分を指導できるリーダーを育成するための教育はまだまだ必要だと考えています。
採用に関しては、ここ1、2年で入社している社員には、必ず経営理念を説明して、同意、共感してもらうことを条件としています。ある程度同じ価値観を理解している集団でないとうまくいかないと思っています。私は社員の職場環境や人間関係をとても大事にしているので、サンクスカードの利用のような取り組みをはじめ、社員同士がお互いに感謝する気持ちを育てていくことも、重要だと思っています。
─サンクスカードは御社の受付にありますよね?
はい。毎月、社員同士がお互いに気づいた「感謝の気持ち」をサンクスカードに書いて、それを社内の壁に貼り出しています。書く人は何十人分も書くんですよ! サンクスカードを社内で一番獲得した人には賞金を出しています。この取り組みはもう3年くらいやっていますが、だいぶ定着していて、社員同士がお互いの感謝の気持ちを自然と醸成できるいい仕組みになっていると思います。
─これからはリーダー育成に力を入れていかれるのですか?
弊社では毎年の経営計画書を作っていまして、その内容に関する発表会を全社員参加で年に1回開催しています。その計画書では、売上の目標や計画だけでなく、経営理念や社員が学ぶべき教訓など、私自身が勉強したことや尊敬する経営者の考え方を載せているんです。さらに、その内容を週1~3回ほど朝礼で私が社員に解説するということもやってきました。でもやり出した当初は、現場で社員を引っ張っていくリーダー達に、なかなかその内容や私の意図を理解してもらえないという時期が続いていたんですよね。
私自身は本を読んだり、研修や経営者の勉強会に参加することで学びを深めていましたが、やはりリーダー達もそういう刺激を受けないとこのままでは私と彼らに意識のギャップができるばかりだと思い、3~4年くらい前からリーダー向けの研修に参加させる機会をつくってきました。リーダー達は、研修を重ねる度に意識は高まっていきましたが、一方で今度は一般社員とリーダー達の間で意識のギャップが生まれるようになってしまいました。リーダーだけでなく、一般社員も底上げをしていきたいという思いがあった中で偶然、弊社の一般社員にぴったりの定額制研修があることを知りました。職種、階層、年齢もバラバラの社員が、自分に必要なもの、あったものを選んで受けられたらいいなあ、という理想が見事に実現された研修だったためすぐに導入を決めました。
─外部の研修にどのような効果を期待されていますか?
究極に言えば、経営理念の実現です。弊社の経営理念は「仕事を通じて人間性を高め、全員で『より良い会社』をつくり、関わる全ての人と幸せになる」です。売上が上がるということは、給料が上がったり生活が安定するということでもあります。そのためには当然、今年よりも来年、今日よりも明日「より良い会社」をつくらなければいけない。そして、それは私がつくるのではなくて、社員一人ひとりの努力でつくるものなんだ、ということを、いつも社員に伝えています。
しかし、毎朝の朝礼で経営計画書を読んだり解説したりしていても、私だけが読んだくらいでは、全然浸透しません。だからこそ、外部の研修と併用しながら形を変えて伝えたり、普段からも事あるごとに社員に話しかけたりすることで、少しずつ伝わっていくものだということを体感しています。
研修を受けた社員にはレポートを出してもらうのですが、そこには「経営計画書に書いてあることを再認識できた」と書いてあることもよくあり、ところどころに研修の効果を感じていますね。「社長だけが言っているだけじゃなくて、いろいろな人が言っている」「じゃあ、やっぱりそうなんだ」と納得するプロセスを踏めることが重要なんです。きちっと伝えて、きちっと植えつけられる会社は伸びていくんですよね。理念が浸透することによって、働きやすい人間関係、職場環境ができるので、そうすれば仕事の効率も上がるし、仕事も楽しくなる。いい循環を生み出すことで、会社がもっとよくなり、業績が伸びる。その循環を通じて、さらに一人ひとりが成長する喜び、意欲が上がると信じているので、社員一人ひとりが「その気」になって、前向きな気持ちで仕事ができるような取り組みを、これからも続けていきます。
FCEトレーニング・カンパニー代表・安河内亮の一言
株式会社アクセサリーマルタカの人材育成・組織づくりにおいて、特に注目したいポイントは2点です。
①掲げた目標と真剣に向き合うことで危機感が生まれ、やるべきことが明確になっている
②組織づくりにおいて重要なことは「好ましい組織風土」をつくることである
1〜3年の目標を掲げている企業は多くあると思います。しかしながら、計画倒れになったり、途中で忘れ去られて、目の前の売上だけを見てしまうといったことは、様々な企業で起きています。そのような中、誰よりも社長自身が2018年の目標を実現するため、足りないものを捉え、採用活動、そして社員育成に危機感を持って取り組まれている。
「安定は情熱を欠き、不安は情熱を掻き立てる」と言われますが、まさに情熱を持って人づくり・組織づくりに邁進されていると感じました。
もう1点注目すべきポイントとしては、社員が「共通の価値観」を持てるような取り組み、「感謝の気持ち」を持ち合えるような取り組みをされていることです。
やはり、個人に焦点をあてて研修等を行い、力を高めていっても、職場ではチームで仕事をし、結果を追いかけます。その際に、強い信頼関係のもとに助け合えるチームは最終的に大きな結果が出るものであると私たちも信じています。
同社は、個人に対する育成と並行して「好ましい組織風土」を持った組織づくりに取り組まれているため、チーム一丸となって目標の達成並びに理念の実現に向かうことができているのでしょう。人づくり・組織づくりに力を入れて全社的な取り組みをしていくことで、中期目標の実現に近づくという素晴らしい事例を見ることができました。
◉FCEトレーニング・カンパニー
代表/安河内 亮
東証一部上場企業にて、大手小売チェーン等の経営支援に携わり、その後、人財開発部門へ。就職人気企業ランキング日本50位へランクイン、「働きがいのある会社」ランキング入賞など実績を残す。その後FCEトレーニング・カンパニーを創業。自らも人財コンサルティング、社内大学構築等を実施。嘉悦大学非常勤講師。
https://www.training-c.co.jp/