オビ コラム

五輪シンボルマークは「非」類似である

◆文:西郷義美(西郷国際特許事務所所長・元弁理士会副会長・国際活動部門総監)

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東京五輪のシンボルマークがベルギーの建築家からクレームがついている。ベルギーのデザイナーが自分が作ったロゴマークに似ていると主張している。つまり、大会の組織委員会が発表した東京オリンピックの大会エンブレムを巡って、ベルギーのグラフィックデザイナーが2年前に作った劇場のロゴマークにデザインが似ていると指摘している。

このデザイナー側が法的措置を検討しているとのニュースが駆けめぐった。

 

JOC=日本オリンピック委員会は、ベルギーのグラフィックデザイナー側から7月31日に、大会のエンブレムの使用の差し止めを求める文書が届いたことを明らかにした。JOCはすでに、この文書を大会の組織委員会に送り、組織委員会は今後の対応について検討しているとのことである。

 

しかし、ベルギーのデザイナー側のロゴマークは商標登録されていないとのことである。思うに、日本国内で訴えられた場合、結論としては(商標権、著作権などの知財権の侵害等として)使用の差し止めや損害賠償請求などは認められないと思われる。

 

両者は、相当に異なるデザインで、例えば、ベルギー側も、オリンピックロゴ側も両者が商標登録出願をすれば、両方登録されうると考える。配色も異なるから両者は違うと言っている人もいるが、正しくない。

 

まずは、構図的なデザインである。モノクロとしての、である。たとえば、「CANON」と言う商標があったとして、これを五輪カラーの配色にしたら、別物に一歩近いとでも言うのだろうか。

そこで、商標制度においては、商標の類似非類似の判断はどのようにしているのだろうか。本題とも言うべき、商標のロゴ(「標章」)が類似するとした場合、どのような態様があるかという問題である。

通常、外観上の類似、称呼上の類似、観念上の類似という三つの態様が挙げられている。

そして、特許庁の実務では、この中の一の態様において比較する商標が類似するときは、他の態様で非類似であっても、それらの商標は原則として類似商標とされている。

 

1.外観上の類似とは、文字、図形、記号などを視覚でとらえた場合に外見が相紛らわしいため、取引上商品・役務の出所の混同を生ずるおそれがあるということである。

 

(1)

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(2)外観上類似するとされた例

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b.「SONYLINE」と、「SONY LINE」又は「SONY/LINE」と「SONY」

 

c.「PAOLOGUCCI」と「GUCCI」

 

d.「JALFLOWER」と「JAL」

 

e.「東宝白梅」と「東宝」

 

 

(3)外観上類似しないとされた例

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b.21_Saigou09_05

 

 

c.「TOSHIHIKO」と「IHI」

 

d.「アルバイト」と「ALBA/アルバ」

 

e.「せがれ」と「セガ」

 

 

2.称呼上の類似とは、商標の呼び名・呼び方が紛らわしいため、取引上、商品・役務の出所の混同を生ずるおそれがあるということである。

(1)

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(2)称呼上類似の例は、

a.「NHK」と「MHK」

b.「LYRA」と「ライカ」

c.「OLTASE・オルターゼ」と「ULTASE」

d.「レジエール」と「リジェール」

e.「SPRA」と「SPLA」

などがある。

 

(3)称呼上非類似(似ていない)とされた例は、

a.「ポンフィール」と「ポンシル」

b.「ハイシミン」と「ハイシー」

c.「どさん子大将」と「どさん子」

などがある。

 

3.観念における類似とは、商標の表す意味・意義が同一若しくは極めて近似するため、取引上商品・役務の出所の混同を生ずるおそれがあるということである。

(1)

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(2)観念上類似(同一)とされたもの、例えば、

a.「王様」と「KING」

b.「薔薇」と「ローズ」

c.「星(図)」と「レッドスター」

d.「アトム」と「鉄腕アトム」

e.「夢二」と「竹久夢二」

f.「ふぐの子」と「子ふぐ」

などがある。

 

(3)観念上類似では無い例は、

a.「椿」と「カメリア」がある。

 

なお、立体商標と平面商標との間でも先後願の関係があり、両者の間で類否判断される。

ともに商品又は役務の識別標識として観察し、出所の混同のおそれに関して、外観、称呼又は観念上から判断されるのは平面商標の場合と同様である。

 うん、アイデアがある。ベルギーのデザインよりも前に似ているモノが、あるはずである。シンプルなので。これを探し出すことをお勧めする。

そして、その新たに発見したデザインを盾に、このデザイナーさんとともに、逆にベルギー側の使用停止を督促してみてはいかがであろうか。

 

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西郷義美 西郷国際特許事務所 (2)

西郷義美(さいごう・よしみ)…1969 年 大同大学工学部機械工学科卒業。1969 年-1975 年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)。1975 年-1977 年 祐川国際特許事務所。1976 年 10 月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。

《公職》2008 年 04 月-2009 年 03 月 弁理士会副会長、(国際活動部門総監)

《資格》1975 年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)・2003 年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。

《著作》『サービスマーク入門』。商標関連書籍。発明協会刊 / 『知財 IQ」をみがけ』。特許関連書籍。日刊工業新聞社刊

西郷国際特許事務所(創業1975年)

所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義

行政書士/西郷義光

弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)

事務所員 他7名(全10名)

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2丁目8番地 西郷特許ビル

TEL : (03)3292-4411(代表) ・FAX : (03)3292-4414

Eメール : saipat@da2.so-net.ne.jp
Eメール : saigohpat@saigoh.com

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