変化する日本企業の“英語への意識” そして、大学の“外向き改革”も始まった 【第3回】あなたの子孫をたくましく育てる方法
あなたの子孫をたくましく育てる方法【第3回】
変化する日本企業の“英語への意識” そして、大学の“外向き改革”も始まった
「海外での生活は大きな成長をもたらします」(大場)
企業の英語に対する意識の変化
当社は、学習塾と留学を事業の柱としているため、周囲から〝英語に強い会社〟と思われているようで、本業ではありませんが、これまで企業から翻訳のご依頼をいただいてきました。
実は、その翻訳業務において、数年前からある変化が起きているのです。まず、受注から納品までの期間の短縮化です。20年ほど前は、翻訳対象の原文をもらってから翻訳文を納品するまで2週間といったケースが多く、納期に余裕がありました。それが次第にお客様の希望納期が短くなり、数年前には3日以内、中には明日中に欲しい、といったご依頼も増え、今や短納期がほとんどになりました。
さらに依頼主の姿も変化しました。これまでは中堅企業から知名度のある企業まで、様々な企業から発注があったのですが、最近は中堅以上の企業はほとんどなく、ここ最近では翻訳の依頼自体が極めて少なくなってきています。
このような変化が起きている要因としては、営業活動を積極的に行っている翻訳会社の存在は無視できないわけですが、私は〝日本企業の英語に対する意識の変化〟が、この変化に影響しているのではないかと考えています。
つまり、納入期間の短縮化や翻訳依頼の減少は、企業が翻訳などの英語案件に対して、スピード感を持って〝独自対応〟や〝即時対応〟を目指すようになった結果の表れだと思うのです。もはや20年前のように、取扱説明書の翻訳に1週間や2週間もかけていられない時代になったのです。
そのような、スピード感のある対応を自社で行う上で重要になるのが、英語力のある社員の存在です。近年、日本企業の間では翻訳案件だけでなく、海外の外国人社員や外国人クライアントとメールや電話でやりとりすることも増え、英語力を備えた社員の重要性が日に日に増しています。
過去の、英語への意識の低さが生んだ代償
2015年現在、日本企業は英語が話せる優秀な人材を採用し、しっかりと活用できているでしょうか。日本企業では数年前まで、左記のような話がよく聞かれたものです。
「あの新人は、英語ができるという理由で採用されたらしいけど、仕事や社会のことがまったくわかっていない。まるで使いモノにならない。英語ができるから仕事ができるってもんじゃないな」
「TOEIC 900点とかいって、鳴り物入りで入社したけどたいしたことないな。あいつは海外かぶれで理想論ばかりだ。そんな話は海外で通じても日本の現場では通じない。ああいうやつは海外で好きなことをやっていればいいだろ」といった話です。
極端な言い方かもしれませんが当時は、「英語を使える社員に積極的に活躍してもらおう」という、ポジティブな現場の見方・評価よりも、英語が使えない社員の妬みが入ったネガティブな評価が少なからずあったことは、否定できないでしょう。
そして、そのような英語に対してネガティブな考えを持った社員を中心に「英語なんてできなくても目の前の仕事ができればいい」という合意形成とでもいうべき感覚が社内にできあがっていったような気がします。
とはいえ英語に対して保守的な社内環境であっても、日本企業は、得意とする卓越した技術力などを武器に国際競争力を保ち、グローバル展開を行ってきました。その結果として、英語力がなくても技術さえあればグローバルに戦えると思いこんだ、日本企業戦士軍団を作ってしまったのかもしれません。
そして、こうしてできた〝英語力のない日本企業戦士軍団〟による、「英語なんかできてもダメ。英語ができなくても仕事ができればいいんだ」という理論で戦い続けてきた結果が、今の日本が直面しているグローバル競争での苦しみに繋がっていると言っても過言ではないでしょう。
日本の高度成長期には、日本の技術力があれば戦えた世界市場でも、今は技術力だけではなく、英語力、営業力、言葉での伝達力、世界基準でのグローバル戦略など、ビジネスの世界では様々な能力が社員や企業に求められているのです。英語ができなくても戦えた日本企業戦士の時代ははるか昔の話となってしまいました。
私は、日本企業や日本人社員に必要とされる様々な能力の中でも、これからの時代にビジネスで勝ち残るためには「英語力」「グローバル感覚」「問題解決能力」という3つの要素が不可欠であると考えます。
大学のグローバル人材の育成 伸びるのは「問題解決能力」!!
大学では、未来の日本企業を支えるグローバル人材を育てようと、様々な改革が検討され、実際にいくつかの取り組みが始まっています。
まずは入試制度です。2020年には現在の一発勝負の受験制度から、大学入学の1年ほど前から実力を測る様々な試験や検定を用意して、それらのベストスコアを受験に利用できる方式への変更を検討しています。また、英語力を測るために、大学や国が作る試験問題を解かせるのではなく、TOEFLやIELTSといった、世界的に使用されている英語力検定試験のスコアの利用など、これまでの入試とは異なるスタイルでの受験方法の導入が検討されているのです。
そしてもう一つが、大学におけるグローバル人材の育成への取り組みです。メディアでも青山学院大学や東京都市大学が、4年間の大学在籍期間中に海外大学へ半年ほどの留学を義務付けるプログラムを始めたと話題になりました。その目的は、「英語によるコミュニケーション能力の養成」「海外で教養課程程度の授業を学びながらのグローバルマインドの養成」に集約されています。
メディアは、海外留学における「問題解決能力の向上」については触れていませんが、私は、ISC留学netの留学生の成長を見る中で、ぜひ前述の大学での留学プログラムの目的に「問題解決能力の向上」を付け加えてもらいたいと考えています。
半年の留学でも、頼れるのは自分だけという環境の中、外国人と共に学び、海外の異文化の中で生活し、海外の友人と良好な関係を構築することは重要であり、学生に大きな学びと成長を与えることは間違いなく、その過程で「問題解決能力」が飛躍的に高まるからです。
残念ながら現在、大学が取り組むグローバル人材育成プログラムに参加するためには、高度な英語力を要するためにすべての学生が経験することは現実的に難しいのかもしれません。
その場合には、大学を休学してでも、また、費用をかけてでも、将来のことを見据え、英語力を身に着けるための英語研修留学を独自にすべきだと思います。できれば1年、最低半年の英語研修留学をすることで、これまで述べてきた、「英語力」「グローバル感覚」「問題解決能力」の向上に大きな期待ができるでしょう。そして、海外経験を経て、これら能力を身につけた人材が、これからの日本企業に求められる人材となるはずです。
ISC留学netが提携するカナダの高校
プロフィール
大場規之…1963年、静岡県生まれ。慶応義塾大学理工学部卒業後、大手計測機器メーカーに勤務し、フランス、ドイツを中心に欧州に駐在。帰国後、株式会社和田塾専務取締役に就任。
静岡県議会議員、建設会社取締役を経て、株式会社和田塾代表取締役に再就任。
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